こんばんは。時文です。
TVアニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』鑑賞後、原作を読みました。
本レビューは、原作コミック1巻を取り上げます。
『荒ぶる季節の乙女どもよ。』は『別冊少年マガジン』で2017年1月号から2019年10月号まで連載されていた漫画。
コミックは全8巻で完結。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の脚本家・岡田麿里さんが、連載漫画の原作に初挑戦したことで有名。
「好きなモノを書いて良い」と言われて取り組んだ漫画原作。
内容は今までなんとなく避けられていた女性目線の”性”。
最初は、男が読んでも良いのかな?と思いましたが、「少年マガジン」連載なのでれっきとした男性向け漫画。
私は原作未読でアニメから鑑賞。
性に関してストレートな表現がありますが、純粋な青春恋愛物と感じました。
詳しくはアニメレビューをどうぞ。

荒ぶる季節の乙女どもよ。-各話リスト
TVアニメ 話数 |
サブタイトル | レビュー (リンク先はレビューへ) |
原作巻数 (リンク先はレビューへ) |
1話 | 豚汁の味 | 全体R |
1巻 (本レビュー) |
2話 | えすいばつ | ||
3話 | バスガス爆発 | 2巻 |
|
4話 | 本という存在 | ||
3巻 |
|||
5話 | 私を知らぬ間に変えたもの | ||
6話 | 乙女は森のなか | 順次レビュー 投稿予定 |
|
7話 | 揺れ、の、その先 | ||
8話 | Legend of Love | ||
9話 | キツネノカミソリ | ||
10話 | 穴 | ||
11話 | 男女交際禁止令 | ||
12話 | 乙女心のいろいろは |
目次
はじめに
本レビューは「アニメ」⇒「原作コミック」の順で見た感想レビューです。
アニメと原作コミックの違いをメインに、原作を読んで改めて感じたことをレビューします。
アニメは、岡田麿里さんが原作だけでなく脚本も手がけているので、かなり忠実。
1巻については一語一句変わらないと言ってもいいほど!
それだけに、構図が違うだけでも意図を探るのが面白い!
では、順に紹介していきましょう。
- アニメでカットされた原作部分
- アニメオリジナルシーン
- 原作を読んで分かったこと
見出しの頭にアニメオリジナル、原作のみの記号を記載したのでご参考に。
- ア):アニメオリジナルシーンに関する記述
- 原):アニメではカットされたシーンに言及
TVアニメ 第1話「豚汁の味」
原作コミックを読んで驚いたのは、アニメがかなり原作に忠実なこと!
キャラクターデザインや、原作が持つ雰囲気。
構成は勿論、セリフも殆ど変わらない。
さすがに構図やカット単位で見ると違いはありますが意図は変わってません。
漫画はコマ割り、コマの大小や形、バランスで物語の強弱や流れを表現します。
アニメの画面は基本的に同じ大きさ。
にも関わらず、ここまでアニメと同じように感じるのは、漫画自体がダイナミックに描かれているから。
『荒ぶる季節の乙女どもよ。』は勿論アクション系ではないしキャラクターが動き回るわけではありません。
なんて言えばいいんでしょう・・・
キャラクターがちゃんと芝居をしているというか、表情だけでなく、まるでそこにいるかのように感情に呼応して手や足、体が動いているのです。
決して、言葉を発している、発せられている対象者だけではない。
その場にいる子達が、ちゃんと反応しているのです。
この表現が、多感で元気な年頃の女子高生をとてもよく表している。
そこへ、コマ割り、コマの大小、吹き出し内の文字の大小、吹き出し外で「ボソッ」とつぶやく言葉。
表情やバックのエフェクトでコロコロ変わる感情を表してます。
既にアニメを見ている私にとっては、漫画のキャラクターがアニメーションのように動いて見えるのです。
そんなアニメを見るような感覚で漫画を読めました。
特に、衝撃的なシーン・・・
1巻で言うと、菅原氏が死ぬまでにしたいことを言った瞬間、和紗が泉のアレを見た場面──
アニメでも衝撃的なシーンでした。
が、原作では、そのコマ自体が衝撃的なのはもちろん、そこへ持っていく過程、衝撃を受けた後の反応が、とても繊細で上手い描写と運びに。
衝撃的なシーンに限って言うと、個人的には、アニメより漫画の方がインパクトありました。
言葉では表現できないので、ぜひ原作をお読み下さい。
では、数少ない、アニメと原作の違いについて順に取り上げていきましょう。
ア) オープニングの語りは表紙裏から
アニメのオープニングにいきなりセリフが入り、初めて聞いたときは驚きました。
慣れてくると歌と同様、心地よい言葉に・・・
(OPのない)漫画には、できない表現だな、と思っていたのですが・・・ありました(笑)。
表紙裏、よく著者コメントが書いてあるスペースですね。
そこにそれらしき文言が書かれてました。
1巻の文言は、1話OPのセリフと最初だけ同じ。
「どうしてみんな、『あれ』を知ろうとするの?」
2行目からは、違います。
2巻以降に書かれているのでしょうか。
#分かったら報告しますね。
原) 「友よ!!!」
帰りの電車内、和紗と百々子の初「友よ!」シーン。
最初、見た時は、アニメらしい表現だなーー実際に電車の中でこんなシーンを見たら引くな・・・と思ってました(すいません)。
アニメでは、二人が抱きついた瞬間、背景は演出画像に変わりましたが、原作では周りも描かれてます。
何が起きたのかと、呆気に取られているような大人達の表情が(笑)。
やはり、そう感じますよね(笑)。
リアルな感じが、いいです。
原) 純文学は一気に大人の世界!?
和紗が家へ帰り、文芸部は楽しいが、皆で読む本が一気に大人の世界と言うシーン。
原作では比較するように、セリフに合わせて和紗の本棚が描かれます。
文芸部のみんなで読む本は、今まで読んでいた本とは違って・・・
一気に大人の世界。
by 小野寺和紗『荒ぶる季節の乙女どもよ。』アニメ1話
before
- 『モモ』ミヒャエル・エンデ
- 『ハリーポッター』シリーズ J・K・ローリング
after
- 『伊豆の踊子』川端康成
- 『眠れる美女』川端康成
- 『痴人の愛』谷崎潤一郎
- 『卍』谷崎潤一郎
などなど・・・
確かに、これは変わりすぎですね(笑)。
文芸部に入ったことによって、どれだけ一気に大人の世界に入ったか、よく分かる比較です。
アニメでカットされたのは残念。
#大人の都合でしょうかね・・・
ちなみに「一気に性の香り」と言うセリフのバックにはエッチィ・・・失礼。
「文学的な愛情表現」が描かれてます。
この後のセリフもアニメではカット。
読むとすごい作品だって分かるし。
性描写も・・・
人間を語る上では重要なんだって思うんだけど・・・
by 小野寺和紗『荒ぶる季節の乙女どもよ。』コミック1話
和紗は、人が生きる上で”性”が重要なのは理解している。
が、自分事としては受け入れられない。
恐らく、自分にはまだ早い、もっと未来の話だと思っている。
そんな迷いを表し、1話終盤の衝撃シーンへの伏線となってます。
その後、「破瓜」の意味を調べて恥ずかしくなり、アニメでは一呼吸置いて自ら階下へ降りていきます。
が、原作では、恥ずかしさが頂点に達しテンパっている時にいい匂いがしてきて階下へ降りていく。
これも、和紗がいわゆる「花より団子」、性はまだ興味対象ではないことを表現しています。
ちょっとした違いですが、原作は原作で丁寧に描いてあり興味深いですね。
「そこまで大きくなったかは知らない」の「そこ」って?
泉の所へ夕食を持っていく和紗。
子供の頃から変わらない泉の笑った顔を見て、子供の頃を思い出す・・・
笑った顔は全然変わってないんだけどなぁ。
おっきくなった。
おっきく・・・
-中略-
“そこ”まで大きくなったかは知らないよ!?
by 小野寺和紗『荒ぶる季節の乙女どもよ。』アニメ1話
アニメを見ていた時、全然気がつきませんでした。
「そこ」って「アレ」のことだったのですね(苦笑)。
この時の和紗は性的なことに過敏に。
泉を見て(背丈が)大きくなったと考えながら、子供の頃「ちょんまげ」をされた時に見た、泉の「アレ」を自然に思い出していたのです。
だから、泉に「どした?」と聞かれて、咄嗟に「”そこ”まで大きくなったかは知らないよ!?」なんて答えたのです。
原作では、自分が変な事を考え口にしてしまったと、顔面全赤面しています。
アニメを見た時は、自分だけ勝手に盛り上がっていきなり冷たい態度を取ってイヤな女だと思ってました。
が、原作を読んで分かりました。
この時の和紗は、自分が想像してしまったことに恥ずかしくなり、その場を去った。
泉はその態度を見て、昼間声を掛けたとき逃げ出したことと合わせ、和紗から避けられていると感じたのです。
すれ違いだったわけですね。
ア) 「私、もうすぐ死にそう」
菅原氏が「私もうすぐ死にそうなので」と言って部室を出て、和紗に呼び止められ、「地球の歴史」から見ると「私の命は儚い」と話すシーン。
アニメは部室のすぐ外。
原作は校舎の中でようやく追いつく。
#昼休みに集まったので校舎へ戻ったのです
ここはアニメの方が絵になってます。
最初は階段を上りかけた菅原氏の目が冷たく「そんなことも分からないの?」と言う目で見る。
が、菅原氏は階段に座り、和紗と目線の高さを合わせ、丁寧に説明をする。
菅原氏はミステリアスだが、性格が悪いわけではないことが表されていますね。
アニメでは印象的なシーンとなり、良い改変です。
ア) 「はっ、はいった」
和紗が泉のアレを見て、外へ駈け出し、電車がトンネルへ入る所を見るシーン。
原作では、横から眺め、既に電車はトンネルへ突入。
アニメでは、電車と垂直に立ち、和紗の足の間を通過し、トンネルへ・・・
これはアニメの方が勝利! (←勝負ではない!)
まあ、アニメの方が直接的というか、分かり安いですね。
このシーンで思い出すのは、原作の表紙裏に書かれた台詞。
#アニメでは1行だけOPで使われてます。
どうしてみんな、『あれ』を知ろうとするの?
考えたくない。振り回されたくない。でも、自分だけ置いていかれるのも嫌で・・・
ねえ。みんなで手を繋いで、誰も一歩も踏み出さないで、『あれ』を知らないまんまで終われたらいいのに・・・
by 『荒ぶる季節の乙女どもよ。』コミック1巻
今まさに、和紗は性に振り回されたくないと思っている。
だけど、性に関することが自分の目に飛び込んでくる、変わらないと思っていた泉まで・・・
アニメでも原作でも衝撃的なシーンでした。
TVアニメ 第2話「えすいばつ」
原) 先生に立ち聞きされていた?
文芸部室で「セックス」の別の言い方を議論中。
アニメではカットされてますが、原作では2コマに渡って、部室の外に先生らしき人が立ち聞きしてます。
この時の会話を聞かれて、後の廃部を言い渡されることに繋がるのでしょう。
大事な伏線になるのに、なぜアニメではカットされたのか?
それを考える以前に、アニメの部室は校舎とは離れたプレハブのような場所。
原作では、どうやら校舎の中にあるようです。
確かに部室の前を誰が通り聞いているか分からない状況で、文学的表現とは言え、純文学のああいうシーンを朗読するのは良くないかも・・・
なので、アニメのように校舎と離れた場所を活動拠点にしているのは意図してか無意識かは分かりませんが正解ですね。
部室を校舎から離れた場所にしたのはアニメオリジナル。
すると、人通りの少ない離れた部室前に先生が立っていたら気付いてしまうだろうから、アニメではカットした、ということでしょうか?
原) 和紗はそのまま川辺へ・・・
泉がクラスメイトから告白されるのを見た後。
アニメでは、和紗は一人真っ直ぐ帰宅。
次の日に、廃部の通告をされ、川辺へ行って2話エンディング。
原作では、告白シーンを見た直後、和紗達3人は川辺へ。
和紗の興奮が醒めやらぬうちに、菅原氏の「さっきのは可哀想」「誰としたい?」と和紗に突き付ける。
和紗は感情が高ぶっているからこそ、勢いもあり、正直に答える・・・
こっちの方が自然ですね。
泉が告白されるシーンを見た和紗。
彼女のその後の夜や次の日の放課後を何も描かずにいきなり放課後の部活は違和感がありました。
ただ、アニメは違和感がありながらも、和紗の鬱積した気持ちが「廃部」の通告と重なって断固反対する気持ちに繋げてます。
涙を流す和紗も、上手い流れにしています。
「えすいばつ」と言い直すのも、早速使って上手い!(アニメオリジナル)
和紗の涙を見て、菅原氏が「ウォーター(涙)している」と言うもアニメオリジナル。
このセリフもいいですね。
原作とアニメ、どちらも甲乙付けがたく仕上げているのが憎い!
ア) 和紗は知恵熱を出して寝込む
「えすいばつ」の議論の際、和紗がいるのはアニメオリジナル。
原作では、先の項目でも触れたように、泉の告白シーンを見て川辺に行き、「泉が好きだと気付く」。
その夜、和紗は熱を出して寝込みます。
母親は和紗は体が丈夫なので、風邪は珍しいと不思議がる。
和紗は「知恵熱」と答えてます。
今まで知らなかった知識に触れ、思いがけない経験をし、自分が知らなかった感情に戸惑い、思い詰めてしまったのです・・・
翌日、和紗は学校を休み。
「えすいばつ」は和紗の「ダイイングメッセージ」として伝えられるのでした(笑)。
おわりに (原作コミック『荒ぶる季節の乙女どもよ。』1巻とは)
コミックを読んで分かったのは、アニメはとても原作に忠実だと言う事。
私は、もっと『荒ぶる季節の乙女どもよ。』のことを知りたいと思い原作を購入。
違いの少なさに(新たな発見ができないので)残念でしたが・・・
原作は全8巻。
アニメ13話だと削った所もあるはず!
この先は、もっと発見があることを期待して、次巻以降を読み進めたいと思います。
以上、『荒ぶる季節の乙女どもよ。』原作コミック1巻のレビューでした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
原作2巻のレビューも書いているので良かったらご覧下さい。
ではでは。
関連レビュー

アニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』の感想レビューには、全体通じて感じたことを書いてます。
良かったらご覧下さい。
