オススメ度 | B+ |
---|---|
ジャンル | SF、冒険 |
作者 | 篠原健太 |
出版社 | 集英社 |
ストーリー | |
設定 | |
世界観 | |
感情移入 |
時代は、宇宙への往来が当たり前になった西暦2063年。
惑星キャンプに出かけた男女9名は突如5000光年離れた宇宙へ飛ばされ、惑星を経由しつつ戻るしかなかった。
第1の惑星ヴィラヴァースで危険に遭遇するも、乗り越えたことで一行の信頼関係が深まってきた。
次の目的地、第2の惑星シャムーアを目指す。
こんばんは。時文です。
TVアニメ『彼方のアストラ』鑑賞後、原作コミックを読みました。
今回は2巻の感想レビューです。
コミック2巻はTVアニメの3~5話中盤に相当。
TVアニメ 話数 |
サブタイトル | 原作巻数 (リンク先はレビューへ) |
1話 | PLANET CAMP(1時間SP) | 1巻 |
2話 | WILDERNESS | |
3話 | METEOR | 2巻(本レビュー) |
4話 | STAR OF HOPE | |
5話 | PARADISE | |
3巻 | ||
6話 | SECRET | |
7話 | PAST | |
4巻 | ||
8話 | LOST AND FOUND | |
9話 | REVELATION | |
10話 | CULPRIT | 5巻 |
11話 | CONFESSION | |
12話 | FRIEND-SHIP(1時間SP) |
本レビューでは、原作コミック2巻を取り上げます。
ストーリー全般についてのレビューは、TVアニメ感想レビューへ記載。
良かったらご覧下さい。

目次
はじめに
「アニメ」⇒「原作コミック」の順で見た感想レビューです。
本レビューはここでは、原作コミックとアニメとの違い、原作を読み初めて分かった情報についてレビューします。
次巻以降のネタバレはしてませんが、伏線となる箇所については含みを持たせた表現をしているので、気になる方はご注意下さい。
見出しの頭にアニメオリジナル、原作のみの記号を記載したのでご参考に。
- ア):アニメオリジナルシーンに関する記述
- 原):アニメではカットされたシーンに言及
TVアニメ 第3話「METEOR」
原) 毎日修学旅行?
原作2巻冒頭は、次の惑星への移動途中の船内生活。
船内のルールや生活パターンが紹介される。
アニメでは丸ごとカット。
アニメはテンポ良く進むので忘れてしまいがちですが、惑星から惑星への移動は20日前後。
その間、ずっと船内で過ごす。
よって、朝食や消灯時間、お風呂に入る順番なんかもルール化。
アリエス曰く、毎日が修学旅行のようらしいです。
楽しそうですね。
ちょっと羨ましいかも(笑)
原) 流星体が衝突した原因はザックの確認不足
突然ウォーターサーバーが爆発。
メテオロイド(流星体)、宇宙を飛んでいた小石が衝突して穴が開いたことがすぐに判明。
アニメではザックが「船のデフレクターが作動してなかったんだ。俺のミスだ」としか説明されず原因がよく分かりませんでした。
#私はアニメ鑑賞時、刺客がデフレクターをオフにした可能性も考えてました。
原作ではキチンと説明されています。
第2の惑星シャムーアに近づき、ザックはアストラ号を「通常航行」に切り替えました。
「超光速航行」は目的地まで局地的なフィールドを発生させその中を航行。
#1巻、設定情報より。
「超光速航行」から「通常航行」へ切り替えるということは、そのフィールドから出るということ。
その際は、外の物に影響を受けるので「デフレクター」を作動させないといけないわけですね。
ザックはそれを忘れていたのです。
通常航行に切り替えた時、作動させたと思ってたが、確認が不十分だった。
by ザック 『彼方のアストラ』原作2巻
ザックは、はっきりと「忘れた」とは言ってません。
デフレクターを作動させたが、刺客が切った可能性もあります。
が、ザックがその後このことにこだわっている様子はないので、本当に忘れていたのでしょう。
ア) 銃は100年前に撤廃?
TVアニメ3話ラスト。
未登録飛行生物をグルーガン(接着銃)で見事仕留めたウルガー。
興奮したルカとカナタのセリフはアニメオリジナル。
ルカ:ウルガーさんの銃さばき凄かったんすよ。本物があったら無敵っすね。
カナタ:何言ってんだ。漫画の読み過ぎだ。銃なんて100年も前に撤廃されたぞ。
by TVアニメ『彼方のアストラ』3話
何気に、気になる設定を言ってますね。
ネタバレになるので、ここでの記載は控えますが、随分早いアニメオリジナルの伏線です。
TVアニメ 第4話「STAR OF HOPE」
原) 食料や水があっても”見つかる”とは限らない
第2の惑星シャムーアへ到着。
水と食料を探すのに苦労しました。
原作1巻で、数ある惑星の中から、水と食料がある惑星を選定していることは説明がありました。(詳しくはこちら)
が、それはあくまで無人探査機の調査のデータ。
決して、水や食料が簡単に見つかるとは言ってません。
アリエス:本当に水はあるんでしょうか、この惑星には。
ザック:それは間違いないが、海や川のような形で存在してるとは限らない。もし水が地下に閉じ込められてるとしたら相当やっかいだ。見つけるのも取り出すのもお手上げになる。
by 『彼方のアストラ』原作2巻
上記セリフがアニメではカットされてます。
次の項目で紹介するようように、アニメではすぐに水問題が解決するので、相反するセリフは外したのでしょう。
原作では、しっかりと語られてます。
惑星データから水と食料が存在するのは分かってはいるが、すぐに見つかる保証はない。
「あまりに都合が良すぎる」でもなく「過酷すぎて物語が進まない」わけでもない。
主人公達に、楽でも絶望的でないバランスを作り出すベースになってます。
巧い!
原) 水の確保
水を確保する一連のくだりは、アニメでは大幅カット。
アニメはサボテンを見つけたことで水問題解決。
原作では、サボテンを見つける時も少し段階があり、サボテンを見つけても水問題は解決してません。
まずは、サボテンを見つける段階について。
原作では──
- グルッピーを見つける
- グルッピーを追いかける(きっと水飲み場を知っている)
- グルッピーがサボテンから水を飲む
- 水の発見
- グルッピーに乗り、アストラ号へ戻る
アニメは省略されていたとは言え、とても良いテンポで、楽しい展開でした。
しかし原作は、この辺の流れで、シャルス、フニ、そしてウルガーの会話がとても楽しいので、ぜひお読み下さい。
もちろん、キトリーのツッコミは絶好調ですよ!
更に!
草食動物の死骸を見つけたシーンでは、シャルスが食物連鎖の講義をしてくれます。
生態系を作り出す食物連鎖を理解しているからこそ、この後の展開、「毒」があれば「解毒剤」がある推理がストンと腹落ちします。
原) 必要なサボテンは2000個・・・
アニメではサボテンを見つけ、水問題はアッと言う間に解消した描写でした。
が、原作では、もっときっちり描かれてます。
サボテンはそれほど大きいものではないので、必要な水を確保しようとするとサボテンを2000個運ばないといけない計算に・・・
サボテン2000個を運ぶのは非現実的。
彼らは別の方法を模索します。
結果、毒胞子がまかれた際、グルッピーが逃げた方向を調査し、地底湖を見つけ、水問題を解決します。
ここでもシャルスの才能が遺憾なく発揮されました♪
このシーンも面白いのでぜひ原作をお読み下さい!
原) キノコが毒を持つ理由
キノコが毒を持つ理由については、アニメでも説明されてます。
が、尺の問題でしょう。
最低限の説明しかありません。
原作では、この星の生態系を、もっと詳しく分析しています。
そして、かなり勉強になります。
以下、シャルスを通じて説明される、一つの考え方。
毒を持っている植物の目的は、動物に食べられないようにすること。
だからどぎつい色をしている等、見た目で判断できるようになっている。
が、キノコは毒キノコと安全なキノコは外見では判断できない。
キノコは動物に食べられることを拒んでない?!
キノコは菌類。
菌類は動物の死骸を分解して植物の栄養に変えるのが役目。
つまり、毒キノコは動物を殺すために毒を持っている・・・
原作者は、この「キノコの毒は動物を殺すため」という説を、惑星シャムーアのポールツリーに発展させたわけです。
だから「惑星シャムーアの支配者はキノコ」なわけです。
これは凄い発想!
それに、なんだか実際にもありそうな説得力。
これぞSFですね!
原作では、結構しっかりこの辺の説明をしています。
アニメは尺やテンポの関係もあるのでしょう。
ストーリー上必要な最低限の情報に抑えられてます。
SF作品として論理的な設定があるので、知りたい方は原作をお読み下さい。
ちゃんとSFしてますよ♪
原) 外へ出てないキトリーがなぜ発症した?
船内で治療をしているキトリーも発症。
アニメ鑑賞時、外に出てないキトリーも発症し、船内に毒が回ったのか、はたまた感染するのか?
と心配しながら見てました。
原作では、キトリーが言ってました。
ごめん・・・
留守番してる時、1度外に出たの。
問題ないと思ってたけど、胞子がまかれた時間だったのね。by 『彼方のアストラ』原作2巻
胞子がまかれている時間に、ヘルメットを被らず外へ出てしまったのですね。
吸いこんだ量が少なかったので、発症が遅くなったと思われます。
カナタとユンファは外ではずっとヘルメットをしていたから毒が体内に入らなかった。
#宇宙船に入るときは空気清浄しています。
アニメでは分かりにくいですが、胞子はそうとう広範囲にまで飛んでいるようです。
原) 突然歌いだしたのはなぜ?
カナタが戻ってくるのを待っている間、キトリーまで発症し、ユンファ一人で何かできることがないか探す。
そして歌い出す──
アニメを見た時、良い歌とは思いましたが、あまりに唐突過ぎて、正直なぜ歌い出したのか意味不明でした。
#すいません鈍くて(苦笑)
原作では、ユンファの回想シーンにその解がありました。
私にできることはないの?
ユンファの回想──
カナタ:遭難したときは時間が過ぎるのがすげえ長く感じたよ。キツかったぜ。娯楽もないから、この状況が永遠に続く気がして。by 『彼方のアストラ』原作2巻
皆の、永遠に続くかと思われる苦しい時間、諦めてしまいそうになる気持ちを、歌で繋いだのです。
このことが分かると、より感動するシーンになりました。
原作でも2巻ラストを盛り上げる流れになってます。
並行して描かれる解毒剤を取りに行ったカナタの姿。
解毒剤を見つけ、症状は回復しますが、体が動かない。
原作では、カナタの体が動かない場面で、待っている仲間のために足掻くシーンが描かれてます。
そこへグルッピーが現れる・・・
これがユンファの歌と相まって感動シーンに。
アニメでも見たかったーー
おまけ:GRAPHIC SHIP’S LOG 4コマ船内日誌
巻末に四コマ漫画が掲載されています。
カナタ達の普段の船内生活の様子が垣間見られて楽しめます。
まさに「毎日が修学旅行」という感じです♪
ビーゴの仕組み
フニがいつも手に持っているパペット。
オモチャですけど凄い機能のようです・・・
ビーゴ
手にはめた人が、頭の中で考えてる事を、言葉にして喋る人形である。
by 『彼方のアストラ』原作2巻
おまけの四コマ漫画では、イタズラで、寝ているカナタの手にビーゴをはめます。
なんと、カナタが夢の中が言語化されます。
フニに限らず誰でも考えていることを言葉にすることができるのです。
凄いオモチャ!
と言うか、凄すぎて、ちょっと恐いぞ!?
ん?
うーーん・・・
これ使ったら、刺客がアッと言う間に分かったのでは?!
なんて言ったらヤボでしょうか?
でもこれ嘘発見器より凄いですよね?
頭で考えていることが言語化されるのですから。
これをはめて「お前は刺客か?」と尋ねれば良かったのでは?
まあ、ミステリーがなりたたなくなるので面白くありませんが・・・
試して欲しかったな・・・
おわりに (原作コミック『彼方のアストラ』2巻とは)
TVアニメ1、2話で原作1巻をアニメ化。
TVアニメ3、4話で原作2巻をアニメ化。
同じペースに見えますが、TVアニメ1話は1時間スペシャル。
原作1巻はおおむね原作通りのアニメ化でしたが、2巻はかなりカットされました。
アニメレビューへ記載した通り、アニメ作品全体を通して描かれるのは「絆」「本当の自分を見つける」。
それらに直接関係ない部分は尺が許す限りとし、結果、SF設定の詳細な部分がカットされたのだと思われます。
原作を読むと感じるのは、経由する惑星(特に前半)の設定にかなりこだわりを感じること。
2巻で着陸した第2の惑星シャムーア。
惑星独自の進化を遂げ、キノコが支配者となった星。
それを、現代科学の説も取り入れ、実際にあり得るかのような生態系として、根拠と説をもって説明されてます。
その説を地球上で描くと無理が出てきます。
遠い宇宙の惑星で、独自の環境を作り、我々が知っている生物とは別の進化を歩んだ生態系を作り出す。
これは、原作者・篠原健太先生のSF的アイデアを具現化した作品でもあるのでしょうね。
漫画という形式で、ハードな状況にも関わらず楽しく読めるSF作品。
SF初心者向けとして最適ではないでしょうか。
以上、『彼方のアストラ』原作2巻のレビューでした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
原作3巻のレビューも書いているので良かったご覧下さい。
ではでは。
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