オススメ度 | B+ |
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原作 | コミック |
ジャンル | ラブコメディ、ファンタジー |
放送情報 | TVアニメ(2021年夏)/全12話 |
ストーリー | |
設定 | |
世界観 | |
感情移入 |
原作コミック未読。(アニメ鑑賞後に読了)
TV放送録画にて鑑賞。
こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『死神坊ちゃんと黒メイド』最終話まで鑑賞しました。
触れたいのに触れられない。
触れてはいけないのにやたらと距離が近いメイドのアリス。
呪いが解けるのが先なのか、誤って触れてしまうのが先なのか・・・
ギャグテイストの中で死を扱うのかと思いきや、別の意味でガツンとやられました(笑)。
本作は死がメインの話ではありません。
死と隣り合わせだからこそ見えてくる、本物の友情、愛情が描かれる優しい作品です。
原作は『サンデーうぇぶり』に連載中のイノウエ先生の漫画。
コミックは13巻まで刊行。(アニメ放送時点)
アニメ化されたのは1~5巻。
最終話放送後には、続編の制作決定!
この調子だとアニメ3期までいきそうですね♪
では、TVアニメ『死神坊ちゃんと黒メイド』感想レビューをどうぞ。
- 「はじめに」は【ネタバレなし】
- 「感想レビュー」「おわりに」は【ネタバレあり】
目次
はじめに
あなたは想像できるだろうか。
想いを寄せた相手に指一本触れることすらできない人生を。
── 触ったものの命を奪う ──
それが魔女が彼にかけた呪いだった。
実の母には距離を置かれ、友人には化け物と罵られ、見知らぬ人にまで森に住む死神だと噂された。
だが・・・
── 彼は決して孤独ではなかった ──
TVアニメ『死神坊ちゃんと黒メイド』本編より
舞台は、とある貴族の別邸。
移動は馬車、連絡手段は手紙の時代。
現実と違うのは──この世界には魔法を使う魔女が存在していた・・・
魔女に「触れた相手の命を奪う」呪いをかけられた”坊ちゃん“は家族と離され、別邸で執事のロブとメイドのアリスと3人で暮らしていた。
坊ちゃんは呪いを解く方法を探すが、今一番の悩みは別にあった・・・
これはやられました・・・(涙)。
見始める前は、正直ノーマーク。
見始めても、最初は呪いの制限付きドタバタ日常ラブコメだと思ってました。
が、時折見せるシリアス路線、少しずつ分かる呪いに関連する情報。
気が付くと、様々な障害を乗り越える、切ない・・・いや、力強い純愛ラブストーリーに。
ドタバタの日常は、それだけ自由で平和だと言うこと。
逆セクハラを繰り返しているのは、信頼と距離が近い証。
強力な”呪い”を中心に据え、純愛作品鉄板の身分の違い、種族の違いも取り扱う。
混ざり具合が絶妙で、それでいて決して呪いの存在は忘れない。
一つの設定でよくぞここまで物語を組み立てたな・・・というのが素直な感想。
正直、序盤のギャグテイストは今ひとつ。(ごめんなさい)
だけど少しずつ見えてくるメインストーリー。
段々かわいく、そして頼もしく見えてくる登場人物。
物語が進めば進むほど盛り上がりますよ♪
全編、トゥーンレンダリング技法の3DCG。
もし、画で避けていたなら勿体ない。
画以外の魅力たっぷりです。
いつも死と隣り合わせのラブストーリー。
そのはずなのに、つい呪いのことなど忘れてしまうほど・・・
アリスの行動にいろんな意味でドキドキハラハラ。
坊ちゃんの愛情に本当の優しさ。
見終わった後には切なくも温かい気持ちに、そして勇気をもらえる。
『死神坊ちゃんと黒メイド』をぜひご覧ください。
NBCUniversal Anime/Music
ストーリー概要&感想 (以降、ネタバレ全開です)
序盤 (1~3話) 坊ちゃんの境遇とアリス

幼いころ「触れた相手の命を奪う」呪いをかけられた貴族の坊ちゃん。
家族にも拒絶され、遠く離れた別邸に執事のロブ、メイドのアリスと3人で暮らしていた。
普通の生活をするためにも一日も早く呪いを解きたいが、坊ちゃんが今抱える一番の悩みはアリスの逆セクハラだった。
鑑賞前、呪いを解くのがメインだと思ってました(苦笑)。
#私は事前情報を完全遮断するタイプです
見始めるとすぐに違うと分かりました。
次に思ったのは「呪いを前提にした特殊設定ラブコメ」。
実は互いに好きなのだけど、アリスは身分の違いから、坊ちゃんは呪いがあるから、お互い素直に言えない。
こんな構図の主人とメイドのラブコメだと。
それもすぐに違うと分かりました(苦笑)。
1話ラストで「あれ・・・もしや?」と思いましたが、2話のダンスエピソードで確定。
この二人は既に相思相愛!?
早いっ、もうゴール!?あとは呪いを解くだけ?
・・・と思ったのも早計。
『死神坊ちゃんと黒メイド』は坊ちゃんとアリスが相思相愛の状態から始まる物語なのです。
好きだけど触れられない。
触れられないから、二人の関係がそれ以上進まない。
いや、実は奥手だから進まない?(笑)
呪いを強力な足かせにして、恋人との一番ドキドキする段階を、自然な形で保っているのです。
さらにそこへ逆セクハラという相性最悪の性格を重ね合わせる。
「距離が近い=危険」なのに、死とセクハラの二重の意味でドキドキさせる。
呪い設定の使い方、活かし方が上手い!
だが、アリスとの関係以外は最悪。
坊ちゃんの呪いが解ける気配はなく、方法すら分からない。
家族からは拒絶され、坊ちゃんは別邸に隔離状態。
幼なじみの友人でさえも坊ちゃんを怖がり、よそよそしい。
坊っちゃんを取り巻く境遇が不遇なだけに、アリスとの関係が際立つのです。
推測
この頃疑問だったのは、アリスは「本当に坊っちゃんのことが好きなのか?」。
坊っちゃんに触れると死ぬのにアリスは超接近、一歩間違えれば・・・
アリスの色んな意味で大胆な行動が理解できず。
つい・・・本当は呪いは人には効かない、もしくはアリス”だけ”には効かないのでは?と邪推してしまいました(笑)。
それもこれも最初の内は、アリスが何を考えているのか分からないミステリアスな女に見えていたから。
中盤まで(特に8話を)見た後の私の解釈は──
アリスは坊ちゃんを、好きで好きで堪らない。
キスして死ぬのも本望というのも本音。
だけど坊ちゃんはそんなことをしないとも思っている。(3話)
アリスは見た通り、坊ちゃんをいじって、からかって楽しんでいるのです。
坊ちゃんに近づけば「呪い」と「逆セクハラ」のダブルで坊ちゃんが焦る。
アリスは、坊ちゃんが焦る姿を楽しんでいるのです。
中盤 (4~6話) 坊ちゃんとアリスと魔界

迷い込んできた魔女カフ、その幼なじみの魔法使いザインが登場。
カフとザインは坊ちゃんと友達に。
呪いを解く方法を探れればと、カフとザインは二人を魔女の集会「サバト」へ連れて行く。
家族に拒絶され、友達もいなかった坊ちゃんに、魔女と魔法使いの友達ができる。
人間と魔女のハーフ・魔女カフ。
カフの幼なじみ・魔法使いザイン。
魔女の集会サバトに潜入する坊ちゃんとアリス。
坊ちゃんに呪いをかけた魔女を知るダレスに直接話を聞けたが・・・

あなたの呪いの解き方なんて、私には皆目見当もつかない。
- 中略 -
一つ忠告。
その呪いは、そこらへんの中途半端な魔女がかけたものとは違うのよ。
早めに諦めることをお勧めする・・・わ。by ダレス『死神坊ちゃんと黒メイド』TVアニメ6話
ダレス曰く、坊ちゃんに呪いをかけた魔女は既に死んでいた。
魔女が死んでも呪いは解呪されない!?
ダレスの言葉が本当なら、呪いを解くのは無理。
結局、それ以上の詮索はダレスに拒まれ、手詰まりとなる。
だが、魔女の呪いを恐れない頼もしい友達ができた坊ちゃん。
怖い思いをして魔女の集会サバトへ行ったことは無駄ではなかったのです。
◇◇◇◇◇
4話辺りまで、坊ちゃんとアリスのイチャイチャぶりが描かれてきました(笑)。
5話辺りから深みを増してきたのは──
本邸の妹が登場し、別邸でアリスとロブに支えられながら過ごす方が幸せだという一面。
ザインから見ると、二人は思ったことを素直に伝えられる珍しいくらいのいい関係。
坊ちゃんが、ある一面から見るととても恵まれていることが描かれます。
中盤 (7~9話) 坊ちゃんとアリスの過去

呪いをかけた魔女を知るダレスに話を聞けたが、呪いを解く手がかりは得られなかった。
いつもの生活に戻った二人。
別邸にヴィオラやカフ、ザインが訪ねてくるようになり、坊ちゃんは賑やかな時間を過ごしていた。
ここまでは、どちらかと言うと楽しい話でした。
8話から、坊ちゃんとアリス二人の関係を知る上で重要な過去が描かれます。
正直言うと、私は7話までは普通に見ていました。
面白いですけど・・・平和で普通のラブコメだな、と・・・。
触れた相手の命を奪う呪いは危険極まりない。
家族も使用人も友人も離れていった坊ちゃんには同情します。
が、衣食住は確保され、身の回りの世話をしてくれるロブがいる。
なにより大好きなアリスがいつも近くにいてくれる。
口は悪いが、妹は坊ちゃんを気にかけてくれている。
呪いを恐れない魔女の友達もできた。
坊ちゃんは、死神と恐れられている割には、十分幸せに見えるのです。
ところが、それは全てアリスのおかげだったと8話で分かります。
坊ちゃんが幸せそうに見えたのも。
坊ちゃんが自分の境遇を過度に気に病む様子がないのも。
呪いにかかった5歳の頃から約10年、ロブと二人で別邸暮らし。
坊ちゃんは誰も信用せず、なぜ生きているのか分からないほど自暴自棄になっていた。
そんな坊ちゃんを、アリスが変えたのです。
坊ちゃんはアリスに、生きると誓ったのです。

そしてもう一つ判明したのは、呪いにかかる前から、二人は互いを意識していたということ。
アリスは、坊ちゃんに一途です。
どうしてここまで坊ちゃん一筋なのか疑問でした。
アリスは幼いころ病弱で一人ぼっち。
坊ちゃんに優しくしてもらって救われていた。
アリスの孤独を救ったのが坊ちゃんであり、坊ちゃんもその頃出会ったアリスに淡い恋心を抱いていたのです。
二人の再会は、いわゆる運命。
互いに好きどころか、二人とも相手が、かけがえのない存在になっていたのです。
◇◇◇◇◇
8話で私は、本作に対する思い入れがグッと強くなりました。
特に、アリスの見方が変わりました。
この子の愛は本物だと(笑)。
そこからは完全に感情移入。
何気ない日常も愛おしく、二人の感情、呪い関連の情報があれば真剣に考えるように。
本気でハマってしまいました♪
終盤 (10~12話) 坊ちゃんの呪いと母親

坊ちゃんの呪いを解く手がかりになればと、ヴィオラは昔の使用人の業務日誌を見つけ、アリスに手渡す。
その様子を見ていたダレスは、ザインに処分するよう命令する。
一方、呪いが解け坊ちゃんが家長になれば、アリスは自分の恋は終わってしまうと覚悟する。
そんな折、坊ちゃんは母親から呼び出され本邸へ行くことに・・・
呪いはあるものの、幸せ一杯、順風満帆に見えた坊ちゃんとアリス。
終盤になると、呪いの裏に見え隠れする新たな謎と、坊ちゃんとアリスの関係もただ単に呪いを解けば万事解決というわけではないことが分かってきます。

ヴィオラが見つけた使用人の業務日誌がアリスの手に渡ると、ついに動き出すダレス。
業務日誌に何が書いてあるのか。
ダレスは誰に何を隠したいのか・・・
現時点では不明。
ここで明らかになったのは、呪いのこと?もう一人の魔女のこと?それともシャロンのこと?何かは分からないが「重要なことをダレスは知っている」ということ。
直後に写ったアリスの母、シャロン。
皆が口をそろえて「シャロンは亡くなった」と言ってます。
推測
シャロンと仲が良かった坊ちゃんの母親。
母親だけは「シャロンは死んでいる」と言ってませんね。
#まあダレスも言ってませんが(笑)
それどころか母親は「会いたいわ、今でも」と言ってます。(12話)
亡くなった人に対して、こんな言葉は普通は言いません。
普通なら「生きていて欲しかった」というたぐいです。
「会いたいわ」とは、「死んでない」ことを知っているからこそ思わず出てきた言葉ではないでしょうか。
もちろん、あまりに仲が良すぎて「シャロンが死んだ」ことを認めたくない、と考えているのかもしれませんが(苦笑)。
それならそれで、メイド達にシャロンの死を軽々しく話させない気がします母親の性格からして。
考えすぎですかね?
ダレスの所にいたシャロンは死んでいるのか、生きているのか?
生きているのなら、どうしたのか?なぜ隠されているのか?
そして、坊ちゃんの呪いと関係があるのか、ないのか・・・
今後の展開が楽しみです。
余談
呪い関連はダレスしか糸口がないのに、坊ちゃんはダレスに接触しようともしなかったのは、なぜなのでしょう? 集会サバトで見つかり、ほとぼりが冷めるのを待っていたのでしょうか?
一方、貴族の家長とメイドとの身分差に焦点が。
呪いが解ければ、坊ちゃんは家長を継ぎメイドとの結婚などあり得ない。
坊ちゃんがアリスと結婚すると意地を張っても、アリスが身を引きそう。
そうです。
坊ちゃんが別邸へ隔離され、周囲にロブとアリスしかいない状況は、坊ちゃんとアリスにとって好都合だったのです。
坊ちゃんが呪いにかかったから今があるのか。
別邸に隔離されたからアリスは坊ちゃんに再会できたのか。
運命に導かれた坊ちゃんとアリスを見て、ロブはもう一つ運命を重ね合わせる・・・
ロブが思い浮かべたのはアリスの母・シャロンと、シルクハットの男性。
年齢からシャロンの相手は坊ちゃんの父親だと思いました。
が、母親はシャロンを慕っているので、父親とは考えられない・・・
#母親は二人の関係を知らなかったという可能性もありますが
となると思い出すのは、2話のダンスホールの会話──
ロブに聞いたんだけどさ。
昔、僕のおじいさまが、どうしてもダンスができなくて、夜中にここで練習したんだって。
そのとき、相手をつとめたのが君のお母様だったらしい。by 坊ちゃん『死神坊ちゃんと黒メイド』TVアニメ2話
坊ちゃんの祖父とシャロンがダンスの練習をしていました。
まさか、ロブが坊ちゃんとアリスに重ねた運命とは、祖父とシャロンのことなのでしょうか?
まだまだ謎多き関係の中、坊ちゃんが母親に対してアリスとの結婚を宣言したところで一区切り。(12話)
11話では、屋根の上でザインの男気に、優しさと友情で返す坊ちゃん。
アリスに何があっても君を守ると宣言する坊ちゃん。
単に優しいだけではない、強い姿を見せつけてくれたのでした。
そんな兄に、自然とついていく弟妹がいいですね。

感想レビュー
時代設定
『死神坊ちゃんと黒メイド』は、魔法が存在するフィクション世界が舞台。
現実世界とは違うので、史実に合わせる必要はありませんが、貴族や古いしきたりが出てくるので時代設定が気になりませんか?
手がかりとなるのはカフが口にした魔女狩りを始めとして、日常生活、そしてアイスクリーム(笑)。
魔女狩り

魔女狩りってあるだろ?
大分前から人間のやってるあれだ。いまだに過激派が存在していて魔女を殺して回っている。
魔法を使えば返り討ちにもできるが、なにせ人間は数が多いからな。私も幼なじみも、親を魔女狩りで殺された。
奴らは見境がないんだ。
私の父は人間だったのだがな。by カフ『死神坊ちゃんと黒メイド』TVアニメ4話
魔女狩りが激しかったのは1400年代(15世紀)後半から1700年代(18世紀)。
カフとザインの両親は魔女狩りで殺されています。
カフの口ぶりから大分前から魔女狩りは行われているそうです。
このことから、時代は1500年代から1700年代、もしくは魔女狩りが下火になった1800年代で残党が残っている設定だと思われます。
科学技術
主人公の坊ちゃんの家は貴族。
本邸の使用人の数から相当裕福だと思われます。
設備は最新鋭を取り入れていると想定でき、照明はろうそく、連絡手段は手紙、移動は馬車が時代の最先端だと思われます。
電気や電話が普及したのは、1800年代(19世紀)後半。
ガソリン自動車が普及したのも、1800年代後半から
馬車は1800年代前半まで使われていました。
科学技術の面からは1800年代前半よりも昔だと言えます。
アイスクリーム
時代設定を考証するにあたり、意外とキーになるのがアイスクリーム(笑)。
坊ちゃん:なにこれ、おいしい!
アリス:アイスクリームです。by 坊ちゃん『死神坊ちゃんと黒メイド』TVアニメ3話
坊ちゃんとアリスの会話から想像するに、坊ちゃんがアイスクリームを食べたのは初めてっぽいですね。
裕福な貴族で、食事にも気を遣っている様子の中でアイスクリームを食べたことがない。
それは、アイスクリームが普及し始めた頃だからではないでしょうか。
アイスクリーム自体は紀元前からありました。
が、一般に普及したのは、ものを冷やす技術が発展した1500年代(16世紀)初め。
最初はイタリアで食べられ、後にフランス。
1600年代(17世紀)前半にイギリスへ伝わりました。
『死神坊ちゃんと黒メイド』の舞台がヨーロッパかどうか分かりません。
が、魔女狩りや貴族が出てくることからヨーロッパの可能性が高し。
ヨーロッパのどこの国か分かればもっと限定できるのですが・・・、アイスクリームの歴史から1500年代前半から1600年代前半の時代と言えます。
これは、魔女狩りと科学技術から導き出した年代の条件もクリアしています。
よって、『死神坊ちゃんと黒メイド』の時代設定は、1500年~1650年ではないでしょうか。
一つの設定
現代とは違い、時間がゆっくり流れていた時代。
その上、俗世から隔離され、そこだけ時間が止まったかのような別邸で過ごす主人公。
作品は、一つの設定を軸として組み立てられています。
「触れたモノを死に至らしめる呪い」
坊ちゃんは呪いのせいで、家族から隔離され別邸に住まわされることに。
触れると死ぬので、使用人もおらずロブ一人だけで世話をすることに。
どうしようもない境遇のせいで、自暴自棄になり死のうとさえ考えた。
荒れ果てロブ一人では手に負えなくなり、アリスが呼ばれた。
そして──
呪いにより使用人が少なかったことで、アリスと親密になれた。
母親と別々に暮らすことにより、返って自由に笑って過ごせるように。
カフを認めたのも、カフの過去が自分と同じ境遇だと同情したとも言えます。
ザインが話しかけてきたのは、呪いのせいで坊ちゃんが魔力を帯びていたから。
呪いを解くエピソード以外でも、しっかり呪いを絡めている。
例え呪いそのものが描かれなくても、呪いによって生み出された状況や結果が関係しているのです。
よくもまあ、一つの設定でここまで思い付くな~~と感心しました(笑)。
妄想に近い推測
ここまで物事が呪いに絡んでくると、もはや作者のこだわりとお見受けしました(笑)。
となるといらぬ”妄想”がわいてきます。(私の悪い癖(苦笑))
全ての出来事が坊ちゃんの呪いに関わってくるのではないか・・・
ダレスはもちろん関係してくるでしょう。
が、アリスの母シャロンがあの状態なのも呪いに関係するのではないか?
ならば、父親が寝込んでいるのも呪いのせい??
そうなってくると、呪いとは坊ちゃん個人ではなく、家にかけられた呪いでは??
ザインの魔法は特別とみた。
ならば親も特別だったのでは?
カフとザインの両親は魔女狩りで殺された。
ダレス曰く、呪いをかけた魔女は魔法の天才だった故に殺された。
まさか呪いをかけた魔女って!?
などと妄想が止まりません。私の勝手な妄想ですよ!(笑)
今後が楽しみです!
呪いを解く──主軸であって主軸でない!?
5歳の頃、坊ちゃんにかけられた呪い──
「触れたモノを死に至らしめる呪い」
物語を引っ張るには単純だし、呪いが解ければ展開が苦しくなるだろうと思っていました。
ところが描かれるのは、魔女の呪いをどうこうではなく──
触れたいのに、”触れられない”状況下でのラブストーリー。
触れると死に直結、周囲から”恐れられている”状況下での人間ドラマ。
普通の作品であれば、逆です。
よくあるのは、呪いを解く過程で、人間ドラマや恋愛が描かれる構成です。
『死神坊ちゃんと黒メイド』は、呪いを解こうとはしていますが、それ以外の日常や、呪いに関する情報を得るまでの過程に焦点を当てているのです。
余談
そのため反対の感想が出てきてしまいますね・・・
期待していた話とは違う、見たい展開にならない。
呪いの解除は周囲の命に関わり、坊っちゃんの将来にも関わる最優先事項なのに努力が見えない、話が一向に進まない・・・等々。
描こうとしているテーマが違うのです。
『死神坊ちゃんと黒メイド』で描こうとしているのは、呪いを解くために努力するヒーローではありません。
誰にも触れることができない強力な呪いをかけられた状況でも、明るく前向きに生きていく少年と、それを支える少女の物語です。
呪いの謎について描いてないと言っているのではありません。
しっかり盛り上げポイントにしています。
が、よく見てください。
呪いの謎がメインではありません──

11話、ダレスがザインに命令して、業務日誌を処分するシーン。
ザインがカフを大切にする気持ちと、曲がった事への反感。
坊ちゃんのザインとカフに何かあっては呪い云々関係なく許せない。
坊ちゃんとザインの二人が、友人から共犯者(親友)へと変わる転換点がメインであり、業務日誌は道具に過ぎないのです。

12話も同様ですね。
坊ちゃんが母親に、呪いを春までに解くと約束しました。
が、メインはアリスとの関係を”あの”母親に言い切ったこと。
呪いは話題でしかなかったのです。
『死神坊ちゃんと黒メイド』で描かれているメインテーマは、ラブストーリーと人間ドラマ。
魔女の呪いは舞台装置に過ぎないのです。
そう考えると『死神坊ちゃんと黒メイド』はラブストーリーや人間ドラマとして見るのが正しい味方であって、「呪いを解く物語」として見ると物足りなく感じてしまうのではないでしょうか。
私は本作にディズニー映画と共通する部分を感じました。
どれだけ魔法やファンタジー世界を舞台にしようと、根幹にあるのは人と人のドラマだと。
構成の上手さ
ラブストーリーと人間ドラマを描くことに加えて、構成の上手さが際立ちました。
アニメは原作コミック1~5巻をアニメ化。
少しゆっくりめのペースで丁寧に描いています。
うれしいですね!
そのせいか、音楽と止め絵で引っ張ったりと少し時間稼ぎのようなシーンもありましたが(苦笑)。
補足
責めているのではありません。
致し方ないと言う意味です。
原作コミック5巻ラスト、母親にアリスのことを宣言し、アリスとトランプをするシーンで締めくくる。
素晴らしいラストでした。
このシーンをアニメのラストにもってくるために、12話まで引っ張った結果だと思われます。
総集編やオリジナル温泉回(は見たい気もしますが(笑))で尺を稼ぐより、ずっと嬉しいですね。
前半は、物語の進展は遅く、同じ内容を繰り返しているようにも見えました。
正直、私はシリアス部分だけ真剣に見てあとは流して見てました(苦笑)。
毎話ラストに、シリアス路線、あるいは盛り上がるエピソードを持ってきています。
終盤へ向かうに従い、シリアス路線の比率が多くなっていく。
この辺の構成がとても上手く、尻上がりに面白くなっていきました。
言い方悪いですが・・・
いや、ものすごくイヤらしい言い方をすると・・・
前半を乗り越えた人ならば、後半はめちゃ楽しめる、みたいな構成(笑)。
前半を楽しめたとまで言わないまでも、問題なく見た人は、キャラデザ、3DCG、キャラクターの性格と行動に拒否感を示さなかった。
遅々として進まない展開に嫌気を差さなかった。
前半を見た(乗り越えた)人は、坊ちゃんはアリスと幸せそうだし、慌てて呪いを解かなくても「このままでも良くね?」と思ったのでは?
坊ちゃんの別邸での隔離生活は、外から見たら不幸な境遇かもしれない。
が、8話を見て私は、アリスの幼い頃からの想いを知り、実は今は二人にとって一番幸せな時期なのではないか?と思うようになりました。
誰からも愛されず、誰も愛さない?
とんでもないっ!
誰からも”邪魔されず”、誰も”邪魔させない”。
二人は苦難を乗り越えて、別邸で幸せを掴んだのです。
呪いにかかっていることを忘れてしまうようなひと時。
世間や母親がなんと言おうと、別邸は”二人”の家。
まさに本作は「坊ちゃんとアリス」なのです。
願わくば、二人のこの時間を永遠に──
二期は待ち遠しいですが、”春”は永遠に来なくてもいいのに・・・
とさえ思ってしまいました(笑)。
おわりに (『死神坊ちゃんと黒メイド』とは)
触れたいのに触れられない、このもどかしさが堪らない。
特殊な環境に置かれた二人が、一途な恋に突っ走る。
誰からも愛されず、誰も愛さない。
みじめな人生を送ってちょうだい。by 魔女『死神坊ちゃんと黒メイド』TVアニメ1話
みじめな人生を送るよう呪いをかけた魔女。
だがしかし、アリスのおかげで坊ちゃんは楽しく過ごし、人を愛することができた。
“呪い”にかかったことで本物の愛を見つけた、この皮肉!
さて、呪いをかけた魔女は、今の坊ちゃんを見てどう思うのでしょうか?
さらなる邪魔をしてきそうだが、本作はその手の流れにならないのが嬉しい。
この二人には・・・
いえ、ザインとカフも、坊ちゃんの弟妹も幸せになって欲しい。
だが、物語なのですから、簡単な道ばかりではないでしょう。
早く先を知りたいですが、私はアニメ派。
アニメ2期制作が決定したので、アニメを待ちたいと思います。
以上、TVアニメ『死神坊ちゃんと黒メイド』の感想レビューでした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
2期のレビューも必ず書きますが、まずは放送を心待ちにしております。
ではでは。