オススメ度 | A- |
---|---|
原作 | ライトノベル |
ジャンル | ファンタジー、異世界転生 |
放送情報 | TVアニメ(2019年秋)/全14話 |
ストーリー | |
設定 | |
世界観 | |
感情移入 |
原作ライトノベル未読。
TV放送録画にて鑑賞。一気見。
こんばんは。時文です。
TVアニメ『本好きの下剋上』分割2クールの第一部(1クール目)最終14話まで鑑賞しました。
原作は小説投稿サイト「小説家になろう」に2013年から投稿され完結している作品。
ライトノベル小説は現時点で24巻まで刊行(2020年3月時点)。
#まだ完結まで書籍化されていません。
原作は次のように輝かしい評価をされています。
宝島社『このライトノベルがすごい!』単行本・ノベルズ部門
2017年版 5位
2018年版 1位
2019年版 1位
2020年版 2位
今回(1~14話)アニメ化されたのは1~3巻(第一部:兵士の娘)です。
区切りの良い所で終わり、既に4月から第2部の放送も始まっています。
最初は地味な展開に感じるかもしれませんが、少しずつ面白くなってきますよ!
では、TVアニメ『本好きの下剋上』感想レビューをどうぞ。
- 「はじめに」は【ネタバレなし】
- 「感想レビュー」「おわりに」は【ネタバレあり】
目次
はじめに
本作品の正式な名称は──
『本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜』
タイトル見ただけで物語の展開が分かるのは、他の「小説家になろう」作品にも見られる特徴(苦笑)。
本作もタイトル通り。
本が身近にない世界に転生した主人公が、本を求めて様々なことに挑戦、努力する物語。
ジャンルは異世界転生ファンタジー。
だけど、魔王はもちろん亜人やモンスターすら出てこない。
なので、魔物退治や異種族との戦闘といった派手なアクションシーンもありません。
唯一、異世界らしいのは、魔法が存在すること。
ただ、誰もが魔法を使えるわけではなく、魔術具も貴族しか持てないような超高級な物。
一般市民は、極々限られた用途で、魔法をツールとして使っている程度に控えめ。
つまり、本作は、異世界転生した主人公が、前世(現代)の知識”だけ”で、あとは知恵と工夫と、ど根性・・・いや、周りの協力を得て目的を達成していく物語。
言うなれば、これまでの異世界物は「体育会系」。
『本好きの下剋上』は「文化系」と言ったところか。
文化系と言ってもあなどるなかれ!
努力、友情、家族愛。
障壁やハンディキャップ、失敗どころか歴然とした格差まで。
それらに立ち向かう姿が、じんわりと感動をもたらします。
最後まで完走した私に取っては、今や、OP曲「真っ白」を聞くだけで、グッと来る。
#年のせい?
#OP曲「真っ白」は下のPVでも聞けますよ
最初のうちは、キャラクターデザインが子供向けっぽく、引き込まれず。
主人公マインの性格がとても”中身は大人”とは思えないのがちとイラッときました(苦笑)。
それもこれも恐い物知らずの無鉄砲性格を表すため。
大きな事を成すには、これくらいの向こう見ずなところがないといけないのかな、と。
次第に周りも見えるようになり優先順位が変わってくる。
成長を見せるためにマイナスから始めたのかなと。
よって、最初は本作は子供向けかと思いましたが、分別がないと、自分勝手なことをしても良いのだと勘違いされそう。
大人相手に交渉したりと、こまちゃくれた態度を見せる箇所もあり、なるほど深夜アニメのほうが無難かも。
それでも私は小さい子に見て欲しい作品だと思いました。
もちろん、大人でも充分楽しめますよ。
さあ、あなたなら、好きな物がない世界に転生したらどうしますか?
ハピネットピクチャーズ
感想レビュー (以降、ネタバレありです)
『本好きの下剋上 (第一部)』ストーリー概要
第一部では、5歳のマインが洗礼式を向かえる7歳までの約2年が描かれます。
第1話の冒頭。
本編ではずっと先に登場する神殿の神官長・フェルディナンドが、様々な物を生み出したマインの過去を探ろうとしているシーンから始まります。
そこから本編が始まり、神官長フェルディナントがマインの過去を見ていく構成に。
これにより、次回予告で神官長フェルディナントが出てくるのと整合性を取ってます。
何があっても、神官になれるのだという安心感はありますが、1話にして、ネタバレされてる気がしないでもないですが・・・
#まあ、タイトルでネタバレしているので、今さらか(苦笑)
前半 本がなければ作ればいい
舞台は異世界。
念願だった図書館への就職が決まった大学生・本須麗乃は、命を落とし、貧しい兵士の娘・マインとして転生する。
本好きだった彼女は本を探すが、この世界では印刷技術が発達しておらず、書籍どころか雑誌や新聞と言った文字が書かれた媒体すらなかった。
「本がなければ作ればいい」
マインとなった彼女はそう決意するのだが・・・
まずは、文字を書く媒体作りに挑戦をするマイン。
なかなか上手くはいかない。
一方、前世の知識を使って、本以外で身近な人に喜ばれることに貢献していく。
第一部(1~14話)では、本作りの知識より、女子力が周囲に絶大な影響を与えていくのが見所!
正直、私は最初は本作に引き込まれませんでした。
本好きなマインが必死に文字を求めるのは分かります。
が、それは文字そのものではなく、文字で書かれている内容に興味があるのであって、自分で書いた文字では満足などできないはず。
だから「本がなければ作ればいい」というのは何の解決にもなりません。
雑な発想に納得できませんでした。
トコトン本を探した上で、本を読むためには金がなくてはならない、本を安くするためにはもっと安価に本を作れなければならない、という理屈であれば”まだ”理解できるのですが・・・
(私は共感できない)「本作り」に対して、ひたすら情熱を注ぐマイン。
その上、マインは本のこととなると周囲のことはお構いなく、猪突猛進。
言うことは聞かない、ワガママは言う、これが就職決まった大学生なのかと・・・
ところが、3話ラスト、姉のトゥーリに髪飾りを作る辺りから感動的な話に。
なるほど、本作りを主軸に置いておきながら、物語は本以外のことで推進していく構成なのです。
後半 商売人として開花していく
大商人ベンノに見出され、商人見習いとして働くマインとルッツ。
「髪飾り」「簡易ちゃんリンシャン」を商品化。
マイン工房を立ち上げ、紙の試作品に取りかかる。
一方、不治の病「身食い」に悩まされ続けるマイン。
少しずつ症状が重くなっていた・・・
第一部の後半は、大商人ベンノの元で、商人としてビジネスを成功させていく展開が痛快。
申し訳ないですが、本以外の創出物エピソードと家族愛、友情関連の方が見応えあり!
「本作り」はしばらく横へ置いといて、こっちへ振り切った方が面白いのでは?と思う程(苦笑)。
が、そうできなかった理由も分かります。
「身食い」のせいですね。(後述)
一方で、マインは生まれながら病弱で、熱を出しては家で寝たきりという生活を繰り返す。
不治の病である「身食い」、生きながらえるには高価な魔術具を使うことが必要で、それは貴族の奴隷になることを意味する。
「身食い」というマインに与えられたハンディキャップ。
この不治の病により、病弱で力も強くなく、異世界物でよくある無双展開にはならず、ハラハラドキドキさせるのが上手い。
と同時に、一人では生きていくこともできず、周囲の協力を得なくてはやりたいこともできない設定にしているのが憎らしい。
身食いの設定が実に効いてます!
マインの成長が見て取れる
『本好きの下剋上』で一番見て欲しいのは、マインの葛藤と成長。
序盤で描かれた、転生直後のマインの性格は最悪でした。
前世の本須麗乃の性格なのでしょうか?
転生したことを自覚し、母親に会えないことを悲しむも・・・
次の瞬間「本さえあれば!」。
本が存在しないと分かると泣きわめき。
欲しいモノを見つけるとすぐに欲しがり、自分が作った本に関するものは人にその価値を教える事もなく、壊されると烈火の如く怒り出す・・・
あげくに、自分が転生して引き継いだ、元マインについてはなんの感情もない。
#これ、気をつけないと、体を乗っ取ったように感じる人もいるのでは?!
と言った始まり方をしたマインの異世界生活。
異世界は、現実世界で言うと中世ヨーロッパ時代。
本どころか、生活レベルが全く違う。
その上、転生したマインの体は病弱。
家族や周囲に助けられながらでないと、満足に生活すらできない。
これまで(前世)は一人でできたことが、誰かに助けてもらわなければできない。
コンビニやお店に行けば手に入った物が作らなければ手に入らない。
一つ一つ乗り越えていくことで、精神的にも成長し、家族や友に感謝していく。
11話、マインは貴族に飼い殺されて生き延びるか、家族の元で死を迎えるかの選択をする。
マインが選んだのは、家族と一緒にいること──
この時には、本のことなど微塵も考えてない。
ただ純粋に家族、父ギュンター、母エーファ、姉トゥーリと一緒にいたいと願う。
同じように身食いのフリーダは、貴族の愛妾を選ぶが、夢だった自分の店を持てると前向きに捉える。
マインも貴族の元へ行けば、本に囲まれる生活の近道となることだってある。
が、マインは家族の元へ残る選択をする・・・
マインは、本より大切な物を見つけ、その選択をする強い人間になったのです。
なぜマインが転生したのか、なぜこの異世界に転生したのか、私には分かりません。
しかし、前世にいたときよりもずっとずっと良い経験をして人間的に成長しているのです。
科学が発達してなくても、貧乏でも、ましてや本がなくても、充実した人生が送れるのだという普遍的なことを『本好きの下剋上』では描いているのです。

魔法を使ってないのに魔力の使い方が上手い!
最後に『本好きの下剋上』での魔法について触れておきましょう。
異世界ものでは、魔法や魔術の類いは見所の一つ。
『本好きの下剋上 (第一部)』では魔法が全面に出てきません。
最初は、この異世界は魔法もないのか?と思ってました。
明確に魔法の類いが出てきたのは7話。
大商人ベンノと、紙の開発に必要なものの発注書を交わすときに出てきた契約魔術。
「契約魔術」
魔力による契約。これにより契約者の同意なしに解約できなくなる。元々、横暴な貴族に対して拘束力を持たせるために作られた。特殊な契約用紙とインクを用いる。
『本好きの下剋上』公式HP 用語集より
横暴な貴族との契約に拘束力を持たせるため、大事な契約は魔術具を使っているのです。
これは面白い発想!
王族や貴族が圧倒的な力を持つ『本好きの下剋上』の世界。
このような契約魔術の存在は、貴族から身を守る手段があることを明示。
同時に、視聴者に「契約相手が裏切るのでは?」と言った余計な心配をせずに物語に集中できる役目を果たしているのです。
攻撃魔法どころか治癒魔法ですらない、見た目は地味な契約魔術。
だけど、ここまで魔法が出てこなかったから、マイン同様テンションアップ!
出すタイミングが上手い!
続いて、登録証ギルドカードと扉も魔術具。
こっちもワクワクしました。
#やっている内容はICカードと入退室管理なのに(苦笑)
7話で『本好きの下剋上』の世界には魔法が存在することが判明。
その後にマインの病である「身食い」も魔力が原因だと分かってくる。
「身食い」
魔力を宿して生まれた平民のこと。体内に溜まった魔力が許容量を超えると体調に異変が生じる。生きるためには平民にとっては非常に高価な魔術具が必要。
『本好きの下剋上』公式HP 用語集より
魔法が存在しないかのように抑えておいて、魔法の存在を見せたら、実はマインの「身食い」の原因も魔力だったという妙。
そして、ここでは魔力は人の体には悪いものだと印象づける。
ところが、第一部終盤、マインの体内にある魔力が神殿に必要とされ、次の手立てが見つかる。
マインの生死をさまよわせていた「身食い」の原因となる魔力。
これが一転、強みになる展開。
『本好きの下剋上』の世界では、どうやら魔力はエネルギーのようなもの。
それが明らかになってないのは、平民には有利な情報は流さない貴族の傲慢。
差別と格差社会という社会問題を作ると同時に、「身食い」に秘められた可能性を隠す理由にもなっていたのです。
上手い設定です!
ここまで分かると、序盤のマインのワガママな性格、「本がなければ作ればいい」という無理な展開も理由が見えてきます。
「身食い」はある程度は精神力で抑えることができる。
それは情熱と比例している。
前半、マインの調子が悪くなったのは、紙作りに失敗、失望したとき。
マインの場合、本への情熱が身食いを抑えていたのです。
「身食い」を抑え続けるためには、マインは「本への情熱」を持ち続けなければいけない(作品上の)構造になっていたのです。
だから、本以外で資金を作ってから、という展開はNG。
本のことを一瞬でも忘れてない、という展開にしたかったのでしょう。
マインは、常に本に関わってないと死んでしまう。
文字通り「本が(本に情熱を注いで)ないと生きていられない」だったのです。
おわりに (『本好きの下剋上』とは)
あなたなら、好きな物がない世界に転生したらどうしますか?
私がマインの立場になったら、”分別ある大人”だし、合理的に物事を考えるので、マインのような挑戦はしないでしょう。
#自分の性格に対する皮肉を込めて言ってます
それでは、世界どころか町すら変えることはできない。
他人に影響を与え動かすには、何が何でも願いを叶える強い思いと、実行に移す行動力が必要なのだと、『本好きの下剋上』を見て感じました。
いや~~楽しかった。
ぜひ、多くの人に見て欲しい作品です。
以上、TVアニメ『本好きの下剋上』の感想レビューでした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
『本好きの下剋上』は第二部の放送も開始。
第一部と第二部の間に位置するエピソード14.5話があるのを御存知でしょうか?
14.5話の感想レビューも書いているので良かったらどうぞ。
ではでは。
何気に魔法で最新技術が実現!?
関連レビュー
