文豪ストレイドッグス

TVアニメ【文豪ストレイドッグス(13~16話)「黒の時代」】感想レビュー 小説原作エピソード。彼の退屈を埋めるものはこの世にはない。ならば人を救う側に─

文豪ストレイドッグス
オススメ度 A-
原作 小説
ジャンル 異能力バトルアクション
放送情報 TVアニメ(2016年秋)/全4話(「黒の時代」編)
ストーリー
設定
世界観
感情移入

原作小説未読。
TV放送にて鑑賞。一気見。

あらすじ

時代は(1期から)4年前。
横浜を縄張りにする悪名高い犯罪組織「ポートマフィア」側が物語の舞台。

ポートマフィアの最下級構成員、織田作之助(おだ さくのすけ:通称 織田作)。
「絶対に人を殺さないマフィア」と言われる変わり者。

ポートマフィア幹部・太宰治(だざい おさむ)と情報員・坂口安吾(さかぐち あんご)とは友人。

ある日、坂口安吾が行方不明となり、織田作はボスに捜索を命令される。

こんばんは。時文です。
TVアニメ『文豪ストレイドッグス』13~16話「黒の時代」鑑賞しました。

13話からは分割2クールの2クール目。

原作は「ヤングエース」連載の漫画。
コミックは現在17巻まで刊行。(2019年7月時点)

TVアニメ13~16話は外伝的位置づけの小説2巻「太宰治と黒の時代」が原作
原作コミックとは時代設定も登場人物も違います

それゆえ公式でも2期と分け「『黒の時代』編」としています。

内容だけでなく、テイストもトーンも違い同じ原作者とは思えない程。
渋い雰囲気で私はこっちの方が好みです♪

1期を見なくても分かるような作りになってますが、より楽しむには1期からご覧下さい

では、TVアニメ『文豪ストレイドッグス(13~16話)「黒の時代」』感想レビューをどうぞ。

  • 「はじめに」は【ネタバレなし】
    1期のネタバレはあるのでご注意を!
  • 「感想レビュー」「おわりに」は【ネタバレあり】

はじめに

黒の時代』編の時間軸は1期序盤から4年前。
太宰が武装探偵社へ入る前の、ポートマフィアへいた頃──

よって主役の中島敦は出てきません。
それどころか武装探偵社の面々は殆ど出てきません

物語の舞台は犯罪組織「ポートマフィア」

主人公は織田作之助(通称:織田作)と言って良いでしょう。
織田作太宰の物語。

太宰と織田作、そして坂口安吾の3人はポートマフィア内では立場は違えど、時々酒を酌み交わす友人。

その内の1人、坂口安吾が行方不明になる事件が発生する。
坂口安吾はポートマフィア所属の情報員。

彼の頭の中には貴重なマフィアの情報が詰まっていて、どんな手を使ってでも吐かせたい敵組織がいるほど。

その調査依頼をポートマフィアのボス・森鴎外は、”なぜか”最下級構成員の織田作へ依頼する。

一方、太宰は海外からやってきた敗残兵の一団を追っていた。

当時の太宰は18歳。

18歳にしてポートマフィアの幹部。
その実力はポートマフィア内部でも一目置かれているほど。

太宰はなぜポートマフィアに入ったのか──
そしてなぜポートマフィアを抜け、武装探偵社へ入ることとなったのか──

その理由が分かります。

1期とはガラリと変わって、ハードボイルド風
太宰も性根は変わってないが、コミカル部分は幾分抑え気味(笑)

ピリピリ漂う緊張感、ハードボイルド風になると『文スト』セリフが実に合う。

1期が合わなかった人でも『黒の時代』編は楽しめるかも
それくらい、テイストとノリが違います。

一瞬の隙、一言でも間違えると命が危ない緊迫した状況、非常に見ごたえあるサスペンス物でした。

オススメです。

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感想レビュー (以降、ネタバレありです)

「死」は悲しむべきものだが楽しまれてもいる

人は死を恐れ、そして同時に死に引き付けられる。
街で文学の中で、死は繰り返され、消費されていく。
何物にも変換不能な1回限りの死・・・
それが私の望みだ。

by 太宰治『文豪ストレイドッグス13話』

現実世界では人は自分の死を恐れている。
それでいて、死に興味を持っている。

TV等で報道される他人の死に関心を持ち、フィクションの世界では死をイベントとして消費していく。

一度死んだら生き返ることはできない、死は”不可逆”かつ”1回限り”。

そんな”死”に太宰は引き付けられているようだ。
決して「死にたい」わけではないことが読み取れる。

死に値する場所を探すために、戦場を求める

13~16話『黒の時代』では、死にまつわる考えが違う三者が対峙する物語構成

  • 死に場所を求める者
  • 死を手にかけない者
  • 美しい死を求める者

太宰は自殺愛好家を公言する変わった人間。
死に対する様々な考えを持った者達と絡ませることで、太宰の死生観にアプローチしている。

死に場所を求める者──敗残兵集団「ミミック」

「軍人として死ぬ」と仲間に誓った敗残兵集団「ミミック」。
戦いの末、死を求める者。

ミミックは、単に死に急いでいるのではない。
戦場を求め続け全力で戦い、戦場で死ぬためにより強い相手を探しているのだ。

そのためには人を殺して良いと考えている。
もっと言うと「自分を殺してもらうために、人を殺している」のだ。

太宰は自殺愛好家と言ってるが、ミミックとは根本的に違う。
死に興味を持っているが、死を求めているわけではないのだ。

死を手にかけない者──織田作之助

一方で、人を殺さないマフィア──織田作之助。

織田作は将来小説を書くために、人を手に掛けない。
どんな状況でも決して殺さない。

これも太宰とは根本的に違う。
(特にこの頃の)太宰は冷酷で、敵と見なした相手や、失敗をした部下でさえ、手に掛ける。

この三者三様の変わり者が、ぶつかり合い、太宰に一つの方向を示す。

太宰はなぜポートマフィアに入ったのか

単身敵陣へ乗り込もうとする織田作を止める為に、生きる理由を見つけてもらうために、太宰は自らの事由を話す──

なぜ私がポートマフィアに入ったか分かるかい?

そこに何かあると期待したからだよ。
暴力や死、本能や欲望。
そういった剥き出しの感情に近い所にいれば、人間の本質に触れることができる。
そうすれば何か・・・
何か生きる理由が見つかると思ったんだ。

by 太宰治『文豪ストレイドッグス16話』

織田作に考え直させるシーンで、メインキャラの境遇の核心を話すシーンを持ってくるとは!!
どれだけ織田作が太宰にとって大事な人間かが分かりますね。

太宰は「死の近くにいて何かを掴もう」としていた。

マフィアをそのように捉えるとは!!

人殺しや暴力、スリル、金、力を求めているのではない。
太宰にとってはそんなことが目的なのではない。

だから「人を救う側」に心変わりすることができたのだ。

太宰の立ち位置が分かる

この頃の太宰は冷酷で、敵には情けを掛けない。
が、一方で、暴力一辺倒のポートマフィアに頭を使う方法を推進する。

それは部下である芥川に対しても同様。

芥川の失態に、太宰は容赦なく殴りつけ、銃を放つ。
それは、芥川の異能力を防御にも使ってもらうための荒療法にも見える。

芥川の異能力はあまりに鋭く攻撃に適してはいるが、使い方、使い所を教えている最中だから。

#これだけ厳しくされても、この頃、既に芥川は太宰を好いているようですが(苦笑)

この後、太宰はポートマフィアを抜けたので、芥川は暴走したままだったのですね。
納得。

太宰の「目指すもの」「思想」「考え方」が垣間見え、段々好きになる。
最初(1期)は軽くていい加減なキャラクターで嫌いだったのに・・・

こうなると太宰の活躍をもっと見たくなる。
が、『黒の時代』編では太宰は参謀役。

結局、今回太宰は異能力”異能力無効化”を使ってないのだ。
この点は残念!

ポートマフィアのボス・森鴎外

1期終盤に登場し、最終12話で、ポートマフィアのボスだと正体を明かした森鴎外
いい引きでしたが、これからと言う所で終わったのは中途半端だと思っていたら・・・

なるほど!
ここでがっつり森鴎外が出てくるので、あそこで切ったわけですね(笑)。

『黒の時代』を見たことにより、太宰と森鴎外の関係性も分かり、物語をより理解できました
全体構成が上手い!

全ては森鴎外の企て

今回『黒の時代』で起きた騒動は、全てポートマフィアボス・森鴎外の企て(くわだて)

坂口安吾が「内務省 異能特務課」のスパイだと知り、ミミックを引き入れ「異能開業許可証」を手に入れるために一計案じたわけだ。

太宰は森鴎外と異能特務課の密会を知り、この一件に裏があると睨む。
が、ボスの部屋で「異能開業許可証」を見るまで気付かなかった。

この時太宰治は18歳。
優秀とは言え、まだまだ力及ばず。

が、森鴎外は言う。

彼の実力は飛び抜けている。
あと4~5年もすれば、私を殺してボスの椅子に座っているだろうね。

by 森鴎外『文豪ストレイドッグス13話』

4年後と言えば、原作コミックの時代。(つまり現在)

原作者である朝霧カフカ先生がこのセリフを言わせているので、現在はそろそろ森鴎外と渡り合えるほどの実力を備えているということだ。

今後の展開が楽しみである。

「予知能力」の使い方が面白い。

自分の身に起こる5~6秒の未来を見ることができる異能力「天衣無縫(てんいむほう)」
無敵な気がするが、2つの弱点を見せてくれた。

  1. 同じ能力を持つミミック司令官ジイドには、同じように先読みされて有効打にならない。
  2. 未来に起こる危機を察知したとき、既に罠にはまっている場合は、どうしようもない。

②が面白いですね。

あの場に不釣り合いな「手まり」が転がってきた不自然な状況。
それを無造作に掴んだのは織田作の完全なミス。

私は最初爆弾ではないかと思いました。
が、織田作視点では、爆発の映像は勿論、危険な映像が見えなかったので、手まり自体に仕掛けはないと確信したのでしょう。

つまり、危険を予知する能力を過信しすぎ、不自然な手まりでも疑わなかったのです。

この「6秒先までしか見えない」「自分に起こる危機」しか見えないことの隙間を突いたワナはお見事!

ラストのジイドとの対決でも、この欠点を突いた攻撃を見たかった・・・
#手まりのワナに引っかかったのは、てっきり伏線だと思いました(笑)

ラストシーンを相撃ちにするためには仕方なしか・・・

「予知」VS「無効化」が見たかった

「予知能力」の欠点を突いた戦い以外に見たかったのはもう一つ。
「予知能力」と「異能力無効化」対決を見たかった

最強と言われる「予知能力」ができるジイドには、同じ能力を持った織田作しか対抗できない、と作中言ってました。

太宰の「異能力無効化」では対抗できなかったのか?

単純に考えて、太宰に触れられれば、ジイドは先読みができないのではないのか?
それとも先読みされるから太宰に触れさせることすらできなかったのか?

織田作同様なら、自分の身に危機が及ばないと未来予知はできない。
なら、太宰が触れただけでは危険にはならないので予知できないのではないか?
身体能力と格闘技術の差があり、近づけないのは分かるが・・・

それでも、織田作とのコンビなら、ジイドに触れる事ができたのではないか?
織田作だけ先読みができれば充分勝てただろうに・・・

対決を見てみたかった。

願わくは、織田作に生きていた欲しかった・・・

まあ織田作は相撃ちだからこそ、最後の言葉が響くので展開上無理なのは分かりますが・・・

惜しい人を亡くしました・・・という気持ちなのは私だけではないはず!

おわりに (『文豪ストレイドッグス(13~16話)「黒の時代」』とは)

2クール目序盤の4話は、1期の続きではありません。
4年前の物語で、かつ、想定外のシリアス路線!!

お笑い、というか、おちゃらけ、悪ノリのシーンは極力封印。

一体どうしてしまったの!?と思う程、渋い!
そして悲しい物語。

この結末しかなかったのか?
こんな結末にしかできないのか?

『文豪ストレイドッグス』は”人の死”を通じて、何かを伝えようとしています

だから、日常は異常なくらいハイテンションなのかもしれないですね。

事件終息後の2週間後。
太宰の武装探偵社へ繋がるエンディング。

#アニメでは4年後に続くとありますが・・・
#TVアニメ6・7話「蒼の使徒」は小説1巻が原作。
#小説1巻の時間軸はアニメとは違い2年前。
#詳細は小説1巻のレビューをどうぞ。

驚いたのは、今回の”事件直後”にポートマフィアを抜けたこと。

この2年後に武装探偵社に入社したのは小説1巻を読んでいたので知ってました。

ポートマフィアを抜けて、太宰の汚れすぎた経歴を消す地下での出来事を知りたいですねーー
それと、どのようにしてポートマフィアを抜けたのか?

森鴎外にとっては、できすぎた部下は必要なかったのでしょうか?
でも知りすぎた幹部をみすみす見逃すわけもなく・・・でも始末するには強すぎる??

まだまだ謎の多い太宰ですね♪

ではでは。

きょうのひとこと

安吾が働いていた会計施設。
こういう空間が好きなので、私も配置替え出したい・・・

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