どろろ

TVアニメ【どろろ】1~24話(最終話) 感想レビュー 正義が必ずしも正しいわけではない

どろろ
オススメ度 B+
原作 コミック
ジャンル 時代劇、ダーク・ファンタジー、冒険活劇
放送情報 TVアニメ(2019年冬)/全24話
ストーリー
設定
世界観
感情移入

原作コミック未読。
TV放送にて鑑賞。一気見。

あらすじ

舞台は室町時代後期の戦乱の世。

父親である醍醐景光の天下統一のために、鬼神に体を奪われた百鬼丸(ひゃっきまる・主人公)。
孤児のどろろ(もう一人の主人公)と、体の一部を取り戻す旅をする物語。

こんばんは。時文です。
TVアニメ『どろろ』最終話まで観賞しました。

原作は言わずと知れた巨匠・手塚治虫先生の少年漫画。
漫画は1967年から「週刊少年サンデー」に連載され、コミックは全4巻。

1969年にアニメ化、2007年には実写映画化。

今回は2度目のアニメ化になります。
原作は完結しておらず、アニメオリジナルのラストになってます。

ラストだけではなく、キャラクターデザイン、設定、展開も現代風に変更。
近代の解釈をして、まったく別の作品と言っても良いほど。

それでも原作の肝の部分は押さえているので手塚治虫作品らしい内容に。

ただのアニメ化ではなく、その時代に合わせた改変。
前向きな改変は大賛成です。

では、TVアニメ『どろろ』感想レビューをどうぞ。

  • 「はじめに」は【ネタバレなし】
  • 「感想レビュー」「おわりに」は【ネタバレあり】

はじめに

知ったかぶりな書き出しをしましたが、原作未読です(すいません)。
どろろ』どころか手塚治虫作品は『ブラックジャック』を少し読んだ程度。
#小学生の頃、床屋か喫茶店の待ち時間で読んだ記憶がかすかに・・・

正直に言うと、手塚治虫を舐めてました。

手塚治虫が天才だということ、様々な作品を世に生み出したこと、今の漫画やアニメの礎を築いた偉大な人、というのは知識としては知ってました。

が、昨今これだけ漫画やアニメが溢れ、新作も次々に出ているのに、今更昔の漫画やアニメを見る気にはなりませんでした。

こんな状態で見たTVアニメ『どろろ』──

衝撃を受けました。
これほど深く心に刺さり、強烈な内容だとは・・・

室町時代後期の戦乱の世(戦国時代初期)。
加賀の国の配下、朝倉領との国境を任された醍醐の国。

終わりが見えない戦、たび重なる飢饉と流行り病により、民は死を待つばかり・・・

領主・醍醐景光は「天下を取らせてくれるなら、代わりにそれ以外の物は何でもやる」と鬼神と取り引きを行う。
鬼神が奪ったのは、生まれてきた子の体の十二の部位だった。

なんとか生きながらえた子は、義手義足を付け、百鬼丸と名付けられ──

時は流れ、16歳となった百鬼丸
自分の体を取り戻すために、鬼神を倒す旅に出る。
途中、孤児のどろろと出会い一緒に旅をすることに。

二人は、鬼神を倒すだけでなく、必死で生きている人びとの思いに触れていく──

これだけ聞いても、重い展開だと分かると思います。
が、単純に重いだけではありません。

圧倒的な説得力を持つ”絵ぢから”、半端ない”熱量”。
今どきのアニメと一味違い、戦国時代を生き抜く難しさが描かれます。

明日さえ分からない、自分の力ではどうしようもない、やるせない世界。
誰もが貧しい戦国時代初期。
それでも民は力強く精一杯生きている。
その手段が真っ当でなくても・・・

旅する二人は何を思うのか。
視聴者に何を見せてくれるのか。

特に序盤から中盤(1クール目)が素晴らしい

何が正解なのか?
どうすれば良いのか?
一体誰が悪いのか?

2クールかけ、地味だが淡々と静かに・・・時折、熱く描かれます

後半から活劇系に変わり、よくある展開になってしまうのが少し残念。
だが、各キャラクターの葛藤を最後まで描ききり一応の結論を出しているのはうれしい。

「重い」系が大丈夫な人にはオススメです。
物語の性格上、残酷な表現も多々あるので、苦手な人はご注意を。

さあ、あなたは何が正しいと思いますか?

TVアニメ「どろろ」第1弾アニメPV
ツインエンジン

感想レビュー (以降、ネタバレありです)

「善」と「悪」

戦国の世、人の命が今よりずっと軽い時代──

領土の民の為に、村民の為に、家族の為に、愛する人の為に、時に人は外道な選択をする。
それが間違っている、人の道を外れていると分かってはいても、他の手立てがなければ、その道を選ばざるを得ない。

そんな人々が、必死に生きる姿が描かれる。

この手の作品では珍しく、メインとなるキャラクター(単発登場キャラも含め)は道理を知っており、分別がつく人が多い

陰惨な話になりかねないのを、悪いことだと分かってしている、仕方なくやっているのが、見ていて救われる。

そして、その「仕方ない」が自分の為ではなく「誰かのため」が多い。
実に優しい。
残酷な選択をしていても、奥底に「誰かを想う」気持ちが見えるのだ。

優しく丁寧なキャラクター設定により、嫌な気分になることなく、じっくりと見ていられる

だから「善」と「悪」を見極められるのだ。

いや、描かれるのは単純な善悪ではない。

どうすれば良かったのか?
何が悪かったのか?
どこで間違ったのか?

「正解」ではなく「最善」、どうすれば「最悪」を避けられるか、それぐらいの所を突いてくる

実に考えさせられる作品になってます。

これが手塚作品か・・・

「どろろ」と「百鬼丸」

とにかく、どろろと百鬼丸の二人の組み合わせがとても良い。

どろろは、最初うるさいだけのガキだと思っていた。
#と同時に、タイトル『どろろ』はこっちなんだ、と驚き(笑)

生きるために盗みをやっていたが、実は正義感に溢れ、人を殺めることに対しては反対。

中盤以降は道理も分かり、物事を冷静に判断し、年上の百鬼丸よりずっと大人。
そして、とにかく明るく、前向きで元気!

百鬼丸も自分の体を取り戻すために純粋に前へ進み、目的は違えど、力強く生きていく。
共通する部分が二人を引き寄せるのか

後半になると、百鬼丸には奪われたモノを取り返す、ただそのこと一点に全てを正当化していく
その行為は百鬼丸が闇落ち(鬼神)へ向かっている兆し。

そこで、どろろが百鬼丸の心の拠り所となり、人でいることをつなぎ止めている存在に。

百鬼丸にとって、どろろが指針であり「善」なのだ。

なるほど、だからこの作品は『どろろ』なのですね。

ラストの金の使い方は少し安易に見え先が不安だが、人に戻った百鬼丸との二人の行く末を見てみたい・・・

原作は、この先どころか、決着してない状態で完結。

アニメ版の続編を期待したい気持ちだ。

体を取り戻していくことが本当に良いことか?

百鬼丸が体の一部を取り戻していくことは念願。
だけど戻っていく度に弱くなっているように見えるのが興味深い

体のパーツを取り戻すと、失うのは義手義足。
義手義足の性能がどれだけよくても、(当時の技術では)生身の体よりは劣る。
本来の体が戻れば、より動きやすくなるはずだ。

なのに、弱くなっている?

痛みを取り戻したから恐怖が生まれるのか、それとももう二度と失いたくないという気持ちからか・・・

五感を取り戻していき、今まで「魂の炎」しか外部の情報は得られなかった。
それが、痛みを取り戻し、音が聞こえ、周囲の情報を知ることができ、事前に知識を得ることも。
途中から百鬼丸は考えてしまっているのではないか。

戦いに集中するために、より憎しみや怒りに感情を集約させることにより強くあろうとする。

ロボットのような無感情の強さから、人間味ある強さに変化しているのが興味をかき立てられる。
もしくは「人ならざる者」から「人」へ戻っているのかも。

百鬼丸の命を救ったのは母親!?

百鬼丸が生まれた時(1話)鬼神に命を取られなかったのは、母親の強い信仰心だと、私は解釈してます

母親・縫の方(ぬいのかた)は、出産時も観音菩薩に祈りを捧げていた。
鬼神がいる世界、神がいてもおかしくはない。

2話に出てきた化け物・万代のセリフ。

よもや生きていようとは。
アレが奪い損なった・・・そのせいか?

アレだけがお前を取れなかった。

by 万代 (『どろろ』第2話)

鬼神が生まれたばかりの子を奪おうとしたとき、観音菩薩が身代わりとなり12柱目の鬼神だけは百鬼丸の部位を奪えなかった。
それが百鬼丸の命につなぎ止めたモノ。

「心臓」か「脳」か、それとも生き抜くための強い「力」か、生きたいと願う「心」か・・・

とにかく、信仰心の強かった縫の片の思いが、子に対する愛情が、百鬼丸の命をすんでの所でつなぎ止めたのです。

もしそうだとするなら、優しい母のためにも、母を愛していた百鬼丸のためにも、その辺をもっと表現して欲しかったです。

鬼神は律儀?!

一方、12柱目の鬼神は何も得られなかったが、取り引きを忠実に守り、醍醐の国を繁栄させている

決して代わりに他のモノを奪ったり、次男・多宝丸の体を奪ったりはしない。

まるで、百鬼丸の全てを奪えなかったのは鬼神、自分たちの責任だと言わんばかりに、他の鬼神や化け物を使って、百鬼丸の命を奪おうとする。

鬼神は律儀なのか、最初の契約が大事なのか・・・
#最初に交わした血の契約が大事というのは、悪魔的ですかね。

それとも、12柱目の鬼神に部位を与えていたら、醍醐景光は国の繁栄だけでなく、天下を取っていたのでしょうか?

この辺りも考察し甲斐がありますね♪

おわりに (『どろろ』とは)

後半の、百鬼丸と多宝丸との関係と対決は、兄弟対決でよく見られる鉄板展開で少し物足りないが、それ以外の展開は今見てもとても斬新でした。

“絵ぢから”だけでなく、強烈な印象を与えるカットや展開。
強烈だからこそ、その結末に至った過程について思いを巡らす。

「自分の正義が人の正義とは限らない」

では、どちらが正しく、どうすれば良かったのか?

一見、正義と正義のぶつかり合いに見えますが、根底に他に選択肢がない根深い問題が垣間見えます。
このような状況で、一体誰を責めることができようか・・・

作品の終盤、少しだけ、解を見せてくれます。

「自らの手で得た物でなければ身にならない」

努力をせずに、他力で手に入れたモノは、いずれ失う。
このことを手塚先生は教えようとしてくれたのではないでしょうか。

これが50年以上も前に描かれたのです!

原作漫画にも興味が湧いてきました。
読んだらレビュー投稿しますね。

ではでは。

きょうのひとこと

つくづく色んな面で、今の時代に生まれて良かった

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