原作 | 小説 (アニメ化を前提とし公募/後に小説刊行) |
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ジャンル | SF、ファンタジー、仮想現実 |
放送情報 | アニメ映画(2016年冬)/67分 |
オススメ度 | B |
ストーリー | |
設定 | |
世界観 | |
感情移入 |
原作未読。DVDにて鑑賞。
時代は近未来。舞台は「知識の箱」と呼ばれる仮想空間。
アンチウイルスプログラムのデュアルとドロシーは
プログラムの不具合修正や、ウイルスの駆除を行っていた。
あるとき、データではない少女・リモと出会う。リモの正体は?
目次
はじめに
いや~1回見ただけでは理解できず、公式HPでしっかり勉強をして再鑑賞。
なんとか理解できました^^
#1時間程度の長さなので簡単に見直せるのはありがたい♪
鑑賞中はアニメを見ていると言うより、難問パズルに挑戦している感覚に近いかも^^
もちろんアニメ映画ですよww
言葉も聞き取りにくい箇所があったので、
再鑑賞時は字幕表示(英語しかなかったのですが・・・)をして鑑賞。
#こういう時は(劇場より)DVD鑑賞便利ですね♪
色々な解釈ができる作品で、見ごたえがありました。
さて、内容について少し触れておきましょう。
アンチウイルスソフトという無機物が主要キャラになっています。
擬人化が売りの作品かと思ったら本格的なSFでした。
それもサイバーパンクや近未来系SFでもありませんでした。
いわゆるSFの王道を描いています。
#ネタバレになるので、ここではこの程度で。詳しくは後ほど。
SFの王道を最近流行の(と言っても5年10年前からありますが)仮想空間と擬人化で表現しているのが今風です。
いきなり始まる仮想空間での出来事。
キャラデザは少し古い感じですが、背景描写は素晴らしい。
あるシーンでは実写と見間違うほどのクオリティでした。
擬人化されたアンチウイルスソフトが、ウイルスを駆除する様子は、
現実世界のPCのウイルスと駆除方式を知っていると思わずニヤリとしてしまうほど♪
残念なのは、擬人化されたメインのキャラクターに感情移入しかかった頃にはクライマックスを迎えてしまうこと!!
もう少しじっくりと見たかったと思う程、3人がよい関係になっているし、
クライマックスは物語も拙速になったのでもっと丁寧に描いて欲しかった。
ま、残念がるほどよくなっていったということですね。
1時間は短すぎ!!
見終わって振り返ると、私の場合、
アクションやらキャラやらストーリーを楽しむと言うより、
この作品は「何を言っているのか?」「何を言いたいのか?」を
理解したいという欲求に駆られる
実に社会風刺系SFの王道を行く作品に仕上がっています。
よって作中のセリフの意味や、世界はどうなった?ヒロインの行動の意味は?
ということをパズルを解くような感覚で理解することに楽しみを見出し、
理解することにより、難問を解いた時の達成感のような感情の方が
ストーリーを楽しむ事より大きいという不思議な感覚でした。
#私個人としては、アニメはエンタメ系の方が好みなのですが^^
いかんせん、重いテーマを描いているのでセリフ等全てを理解しようとすると
なかなか骨太な作品の部類です。
初見の方は、まずは雰囲気を楽しんでください。
キャラの絵はともかく、背景描写は美しく、
中盤に差し込まれるロードムービー風のシーンは必見ですよ。
私はここで一気に作品に引き込まれました。
作品をもっと理解したいと思った方は公式HPのIntroductionを読んで、
作品の世界観、設定を理解して下さい。
(公式HPのIntroductionはこちら)
さて、以降はネタバレ全開で(私なりの)解説&考察していきます。
未見の方はご注意を!
劇場アニメーション「ガラスの花と壊す世界」特報
ぽにきゃん-Anime PONY CANYON
感想レビュー(以降はネタバレ全開です)
本作の全容およびSFジャンル
この作品をSFの分類で整理すると”終末もの”あるいは”破滅もの”SFでしょうか。
が、作品内では滅亡の過程そのものを描いてはいません。
現実世界で人類が滅亡しかかっている最中(もしくは滅亡後)も、
動き続けていた仮想空間の中で、
環境管理プログラム・マザーが
理想の人類(そして地球)を作り上げようとしている過程を
第三者(アンチウイルスソフト)の視点から描いている
という構図になっています。
作品で描いている範囲と切り口が
関連する全体像の一部分過ぎて、理解することが難しい作品になっています。
説明不足というより、尺不足が原因なのかと。
スピード感は大切ですが、もう少し丁寧な説明があれば
より理解が深まったのではないかと思います。
具現化された世界がリアルでまぶしく美しい。
仮想空間で具現化された世界は美しかった。
冒頭の現代の日本の風景描写をはじめ、
仮想空間に構成される現実世界がとてもきれいでした。
圧巻は中盤にリモとデュアルとドロシーの3人が様々な時代と場所を巡る
ロードムービー風の映像が素晴らしい!!
セリフはないが、三人が様々なモノを見て、いや体験ですね、これは。
暑さ、寒さ、海や、風に空気を、そして食べ物や、なんと修学旅行まで!?
五感で味わう姿が、素直に羨ましい!!
#いいなーーこれ!!体験したい!!
3分程だが、写真のような美しいシーンもあり、ここだけでも必見!!
私はこのシーンで一気にこの作品に引き込まれてしまいました♪♪
「圧縮して削除」アンチウイルスの描き方が面白い♪
デュアルとドロシーの仕事はプログラムの不具合の修正とウイルス駆除。
「ヒューリスティック・エンジン」というワードが出てきますが、実際にある技術です。
難しいですが、少し解説します。(できるだけ簡単に!)
以前からあるウイルス駆除の方法は、対象のプログラムを
今まで解析したウイルスのプログラム(パターン)と比較をして、同じであれば、
ウイルスと判断し、隔離、削除しています。
この方法だと既知のウイルスは検知できますが、未知のウイルスや、
既知のウイルスを少し修正したものは検知できないという問題があります。
そこで考え出された技術が「ヒューリスティック技術」
ヒューリスティックは実際にプログラムを実行させて、行動を監視。
怪しい動き(OSへの介入や、外部への不必要なアクセス等)をしていれば、
ウイルスと判断し、隔離、削除するという仕組み。
実際には外部から送られてきたデータ、例えばメール添付でアプリが送られてきた時、
本番環境とは違う仮想空間で、仮に実行し、怪しい動きをしないかチェック・
問題ないメールだけ通すというシステムも今は商品化されています。
こういう技術的なことを知っていると、本作のデュアルとドロシーの行動が
アンチウイルスプログラムとして、とてもうまく映像化されていると理解でき面白い♪
圧縮されているデータは実行できないから、
その都度解凍して、ウイルスチェックをしなくてはならないわけですね。
戦いのシーンは正直申し訳程度の映像なのですが、
実際のPCの世界でのウイルスチェックと同じようなことをしているので、
見ていてニヤリとしてしまいました♪
本作の特徴(「ガラスの花」とは?)
本作で描いているのは、SFでは鉄板の設定。
地球の環境を維持し管理する環境管理プログラム「マザー」が始動したが、
マザーは地球の環境を維持するために人類を滅ぼす選択をした。
ここまでは昔からよくあるSF設定ですが、ここからがこの作品の個性的な所。
マザーは理想の人類を作るために、色々な時代の色々な場所を仮想空間として記録。
更にその中から美しいモノを集め始める。これが『ガラスの花』
ガラスの花を集めさせていたのはマザーの分身(バックアップ)であるリモ。
ところが、リモがウイルスに襲われ(偶然か必然かは不明)、
大部分の記憶(データ)を失ってしまう・・・
本作で描きたかったこと
マザーは地球環境を維持するためには、環境を破壊する人類を
排除しなくてはならないという決断をし、(現実世界の)人類を滅亡へ導く。
が、リモ(マザー)は記憶を失い、アンチウイルスの二人と出会った。
デュアルとドロシーはプログラムであり、冷めた対応しかできない。
(本来の目的を忘れてしまった)リモは
二人に美しいモノ、おいしいモノ、楽しいことを
知らないのは損だと言わんばかりに、
世界の良さ、素晴らしさを伝えようとする。
その過程で、デュアルとドロシーは人間のような感情を持つように・・・
同時にリモは、どうして世界のバックアップがあるのか、
ウイルスに汚染されるとどうして世界を消去しなくてはならないのか、
他に方法はないのか疑問を持ち始める・・・
ラストでリモは二人を守る為に自分を消去する方法を選択・・・
人類を地球環境の破壊者と判断し滅ぼしたマザーが、
仮想世界で擬人化されたプログラムと生活していくうちに人間というモノに惹かれ、
自らを消去することを選択する、という皮肉と切なさを描いています。
もう一つ、マザーは人間を悪と判断したのは「意志決定する人間は邪魔だから」。
マザーは理想の人類を「意志決定をしない生物」と言っているのに、
マザーの分身であるリモが仮想世界を見てまわっているうちに
マザーのやり方に疑問を持つ「従順ではない」人間のようになってしまった皮肉・・・
この辺まで理解できると、ラストのリモの決断が興味深くなる。
人類を滅亡させてしまったが、マザー(リモ)がいなくなっても
デュアルとドロシーと世界のデータがあれば、希望はあるという想いが分かり、
別れのシーンは少し感動できました。
(なぜ「少し」なのかというと展開が早すぎてww)
これはハッピーエンドなの??
さて、とは言え人類は滅び、仮想世界の中でデータとして残った人類。
果たしてこれが「人類の希望」と言えるのかどうか・・・
マザーがやろうとしていた理想の人類を作り上げるというのは何を指していたのか?
本当に現実の人間を作ることが可能なのだろうか?クローン人間のようなモノ?
ぜひ続きを見てみたいものである。
また、現実世界で起きていたマザーによる管理社会、そして人類の滅亡に至る話、
こちらも見てみたいですね♪
おわりに (『ガラスの花と壊す世界』とは)
さてさて、私の場合、作品自体のストーリーを楽しむと言うより、
テーマだとか、裏に隠れている事実を考察するのが楽しい作品に。
でも、こういうのがSFの定番であり醍醐味ですよね♪
逆に分からないとモヤモヤ、イライラしてしまう作品になったのでしょうね・・・
#解けそうなのに解けないパズルをしている時の、あの感じです・・・^^
とは言え、私が全てを理解したわけではないでしょうし、正解があるわけでもない(多分)
それでも私の中ではある程度結論に至ったので、スッキリしました。
ぜひ、皆さんもこの作品を見て難問パズルへ挑戦して下さい♪
#完全にアニメに対して言うセリフじゃないな・・・
長文失礼致しました。
最後まで読んでいただきありがとうございます。