ケムリクサ

TVアニメ【ケムリクサ】1~12話(最終話) 感想レビュー 序盤は謎がたっぷり、終盤は愛情たっぷり

ケムリクサ
オススメ度 B+
原作 アニメオリジナル
ジャンル SF、ファンタジー、バトルアクション
放送情報 TVアニメ(2019年冬)/全12話
ストーリー
設定
世界観
感情移入

TV放送にて鑑賞。一気見。

こんばんは。時文です。
TVアニメ『ケムリクサ』最終話まで鑑賞しました。

2010年から自主制作されたアニメオリジナル作品の設定を元に再制作。

『けものフレンズ』(1期)のたつき監督&ヤオヨロズ制作。
『けものフレンズ』同様、3DCGで描かれて、共通点が見られます。
が、世界観と設定は、かなりダークになってます。

ジャンルはSF、ファンタジー、バトルアクションと言われているようですが、私はSFとして見ました。

あまりに謎だらけで、途中が辛いですが、ラストは心地よい。

これから見る方は、ぜひネタバレなしで見て欲しいですが、もう少し知りたいという方は、「はじめに」で少しだけ踏み込むので参考にして下さい。

  • 「はじめに」は【ネタバレなし】
  • 「感想レビュー」「おわりに」は【ネタバレあり】

では、TVアニメ『ケムリクサ』感想レビューをどうぞ。

はじめに

あらすじ

赤い霧に包まれ、人気がなく、廃墟と化した世界。

3人姉妹(りん(主人公)、りつりな)は、赤虫と戦いながら、今日も水を求めて探索していた。

人が住んでいる気配がなく廃墟と化し、「ケムリクサ」を使って様々な事ができる世界。

3人姉妹は苛酷な状況で協力しながら生きている。
彼女達は人間の姿をしているが、水のみで生きており、「人(ヒト)」なのか何なのか明かされない。

ただ、自分たちのことを「人」だと認識しているようだ。

ある時、水の中から少年・わかばが現れる。
姉妹は初めて見る人型の生物に警戒感を示すが・・・

こんな感じで始まる本作。

とにかく序盤は謎だらけで、初めて見るモノ、初めて見る映像に興味を惹かれます

3DCGで描かれた絵は、お世辞にもクオリティが高いとは言えない。
が、廃墟は目新しいものではないが、それ以外の、姉妹達や、「ケムリクサ」とケムリクサが繰り出すモノ、そしてミドリちゃんと呼ばれるモノが斬新。

一体なんだこれは?!と次々と好奇心が湧いてくる♪

多くのアニメが作り出される世の中で、これほど多くの斬新なモノや世界観を一度に見ることができるだけでも価値あり♪

ちょっと辛いのは、しばらくは、謎が説明も解明もされないまま進むこと。

不思議だと思うことが、姉妹達には当たり前のことのようで、気にせず進む。
見ているこっちは、まさかこの調子で終わってしまうのでは?!と不安になるほど(笑)

私は一気見タイプなので、とにかく我慢して(←ごめんなさい)、最後まで完走。

最終話まで見ると、全ての謎が解明されるわけではありませんが、大概は解消♪
実に気持ちの良い読後感(後味)を得ることができました。

ネタバレなしで紹介できるのは、こんな感じ。
SF好き、考察好きの方なら、見て損はないと思います。

あとは「好き」がテーマになってます。
引っかかる方はオススメです。

では、ここからは「ネタバレ全開」でいきますよ!

ナノ-KEMURIKUSA(Short Ver.)
Flying Dog

感想レビュー (以降、ネタバレありです)

世界観が堪らない!

私は、たつき監督作品は『けものフレンズ』くらいしか見てません。
なので、たつき監督押しではなく、是々非々で作品を判断してます。

その上で、この監督の世界観には惹かれます。

『けものフレンズ』の時もそうでしたが、『ケムリクサ』の世界観も、

作品の世界観(設定)

  1. 現実(現代)の世界ではない
  2. 完全なファンタジー(創造物)でもない

現実世界でもなく完全創造でもない、狭間の世界観が堪りません。

現実世界にはありえない非現実的な物が存在するので、我々がいる世界が舞台ではないことは、すぐに分かります。

が、人工物があり、どこか現実世界と繋がっている、はたまた時間軸が違う。
作品世界と現実世界との繋がりを巧妙に散りばめ、作品世界を”知りたい”と言う欲求を高める。

しかも、その構造(現実世界との関係)に毎回新しい仕掛けを見せてくれるのです。

期待をしてしまうのも致し方ない?

終末感と不思議な姉妹と生物?

『ケムリクサ』で提示される世界観は、これまた謎で一杯。

どこか見たことがあるような日本の景色。
ただ、全て廃墟で、人が住んでいた形跡はまるでない。
#最初は作画の省力化と思ってました(笑)

『けものフレンズ』のオチが頭に浮かびました。
が、どうも、地形や隣の島との距離感が違うので、それとは違うようだ。

それに不思議な姉妹達は、擬人化という次元ではありません。

人間離れした身体能力を持った、りんは、とうてい人間とは思えず。
水だけで生きているのも決定打。

終いには、りな達のスカートの裾部分を取り外して使うワザまで・・・
#丸いのが、一人で歩き出すやつです!

もう笑ってしまいました、うれしくて!!

りつが、育てる「ミドリちゃん」はとても万能。
路面電車を家代わりにしているのもワクワクしましたが、ミドリちゃんが足を出して移動したときは、身を乗り出してしまいました(笑)

姉妹や生物?(ミドリちゃん)だけではなく、小道具も奇抜。

ケムリクサという万能グッズ?
植物の葉のような形をしていて、用途は様々。
水が少なく、土も太陽も見えない状況で、どうやって育っているのか不思議ですが、それなりにある様子。
しかも色や発光具合や使い方により、効果は多用。

そこへ赤虫という人工物の暴走。
人間?らしき、わかばの登場。

序盤は次から次へと見たことがない映像が描かれる。
なんだなんだと思っている内に終わっていく(笑)

何も知らないわかばが疑問に思った事を聞いたり調べたりすることで、明らかになると思ったら、それほどでもなく、姉妹にぞんざいに扱われる。
まあ、それはそれで面白いのだが(笑)。

暗い世界で、苛酷な環境にも関わらず、前向きな姉妹が非常に魅力的。
#死すら、気にしてないのは、最初は恐かったが・・・

展開の盛り上がりは少ない

ただ、残念なのは、序盤から中盤までの盛り上がりが少ない。
せっかく、盛り上がる要素が多いにも関わらず、だ。

先に挙げた、見たことがない現象や映像は楽しいが一瞬。

それ以外、盛り上がるのは赤虫を倒すときに少し盛り上がる。
が、それも思ったよりあっさりとしているのだ。

4話で、ヌシと対決したシーン。
わかばのアイデアで、姉妹の能力を活かした連携で、ヌシを倒す!
ようやくわかばの存在意義も出て、気持ちよく勝利!
そうだよ、これだよ!こんな展開を見たかったのだよ!!

と、ここからは期待できると思ったのに、また淡々と・・・

謎に関する情報も提供はされるが、なかなか核心に触れない。

ようやく11話で「記憶の葉」を見て、いわゆる過去回想形式で、大体の謎解明。
気持ちよいのだが、終盤へ偏り過ぎか。

島を再び出るシーン、ヌシと対峙するシーン、大量の赤虫に飛び込んでいくシーン。
いくつか盛り上げられるシーンがあるのに、意外とあっさり。

なぜでしょうか?

先がない世界で何をするか

私が思い至るのは、この作品をSFアクション物にする気がなかったということか。

この作品で描きたいことは、この終末の世界で、姉妹が如何に生き、生きようとしているか。

終末の世界は、ただの終末ではありません。

  1. 他に人がいる気配が全くなく、過去にいた形跡も情報も手掛かりもない
    ⇒自分たちだけで生きていかなくてはならない
  2. 姉妹達は水があれば生き続けられるが、その水は限りが見えている
    ⇒寿命がある程度分かっている
  3. 遠くへ水を探しに行こうにも、どこまで行けるか分からない。
    ⇒これが唯一の希望だが・・・

この先、望みもなく、生きてられる保証もない。
先のない「完全な終末世界」なわけです。

そんな中、どのようにして生きるか。
何を目指して、何を希望に、あるいは生き甲斐にして生きていくか

それを(見ている側に)問うているのではないでしょうか。

作品内の姉妹達は、自分の”好き”を見つけ、限りある命を堪能する。
それはまるで、いつ死んでもいいかのように・・・

りつ姉は、聴覚が発達。
ミドリちゃんを育て、やさしい音を楽しむ。
りな姉妹は、味覚が発達。
何でも食べたくなり、つまみ食いしたりして味を楽しむ。

それぞれが”今”を楽しんでいるのだ。

たとえ先のない世界であっても、好きなことがあれば、生きる目的ができ、立ち上がることができる。

このテーマを見せる為に、関係のないアクションシーンはあっさりとし、日常やロードムービーに重きを置いたのではないでしょうか。

12話、最終話のアクションシーンは力入ってましたねーー
それは、最後の戦いは、りんの”すき”のために戦っていたからに他ならないですね。

単に、生き残るための戦いは重要視せず。
反対に、“好き”なものに対しての行動は、アクションに限らず、こだわって描写していたのではないでしょうか。

実は姉妹のことを大切に思っていた

集大成が、10話からのラスト3話

姉妹達は、他の姉妹をとても大切に思っていた

一見、好きなことを、好き勝手にする姉妹達。
先がなく、ずっと生きていても仕方がない。
だって、他に人はおらず、世界は変化していない。
子孫を残すこともできず、繁栄は望めない。
生命線の水は、減る一方・・・

好きなことを充分堪能すれば、いつ死んでも良い、と割り切った考えになるのも致し方なし。

だから、死に対して、恐れてない。
だって、いずれ死ぬのだから。
死に供えて、生きている間は好きなことをやろう、と。

そんな姉妹たちにも、心残りが・・・

それは、りんが好きなことを見つけてないこと。

姉妹達が、自分の命よりも、りんの好きなことを優先するのがいじらしい。

りつ姉や、りな達ですら、最後は自分の命は惜しくなく、りんの為に使う。
いや、自分の生き方に悔いはなく、それでも生きていたのは、まるで、りんが”生きて欲しい”と願っているから、生きていた。
そんな風にも見えてしまう。

もしかすると、一島を出る判断を、りんに任せていたのは、最初から、りんの”好き”を叶えさせたかったからではないか。
りんのやりたいようにさせることが、りんの”好き”を見つけることができる最短だと思ったのではないか。

姉妹の間に、そんな優しさを感じてしまうと、もうこの作品から離れる事ができません

初見は、序盤から中盤まで辛かったですが、今ではOPを聞くと心が躍り、EDの本編とのシンクロに鳥肌が立つ。
どっぷりと浸かってしまいました♪

ラストは何を言わんとしていたか

最終話ラストの宇宙船外。
地球と呼ばれる世界には、これまで見てきた風景とは違い、緑も水も豊か。
何十年、何百年経ったか分からないが、人間がいなければ、地球は滅ばないとでも言っているよう。

メッセージとして込められているのは、自然を破壊するのは人間で、自然は(長い目で見れば)滅びない

今回、赤い木は、宇宙船の中にいた状態で、りん達が対処することができた。
もし、赤い木が、宇宙船から外へ出たら、水も豊富にあり更に強大になったことだろう。
#宇宙船外で赤い木やケムリクサが有効かどうかは不明

「星の文化財の途中経過」も、本当の目的は分かりませんが、呼び方から考えられるのは「文化財の保存」。

それが、例え、りりが勝手にやったこととは言え、保存する力は、使い方を一歩誤ると文化どころか世界そのものを破壊してしまう。

あらゆるものは、毒にも薬にもなる」by パラケルスス(医師)

ケムリクサと言った便利な技術も使い方次第、と言った所でしょうか。

SFによくある最新技術に対するアンチテーゼと言えばそれまでですが、
言うのは簡単で、ここまで見事に物語に昇華させるのはお見事ではないでしょうか。

おわりに (『ケムリクサ』とは)

いや~~終盤、面白かったですね~~

「怒濤の展開のラスト2話」と聞きますが、私はラスト”3話”が大好きです!

謎が解明される事よりも、最初の人から繋がる姉妹達の想いが、明らかになっていく過程がジワリと心に染みます

一体、彼女たちは、ここまで来るまでに、何年生きてきたのでしょう・・・

元となった、自主制作アニメ『ケムリクサ』の冊子には最初の人が姉妹を産みだしてから2000年、という記載があるようです。

11話の(元)ワカバも、りりに向かって言ってます。

また会えるから心配しないで。多分だけど・・・
あと、すごく時間かかっちゃうかもだけど・・・

TVアニメ版の設定は不明ですが、最終話ラストに見た、地球らしき光景は、数千年経過したと言われても不思議ではありませんでした。

仮に、数百年だとしても、それだけ長くあの殺伐とした世界で生きていたら、いつ死んでも良いと言い切れる割り切りの考えになってもおかしくないと言えます。

そして、それだけの長い間、姉妹以外の人を見てこなかったのだから、わかばへの反応も当然。

それでも、前向きに楽しく”今”を生きている。
と考えると、とても元気にさせてくれる作品。

とまあ、多様な考察ができるのがこの作品の魅力。

ぜひ、続編と言わないまでも、同じ世界設定で、別の物語を見たいものですね♪

ではでは。

きょうのひとこと

そもそも、一体全体、地球に何が起こったのだ?!
めっさ気になる~

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