オススメ度 | B |
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原作 | アニメオリジナル |
ジャンル | 青春、学園 |
放送情報 | アニメーション映画(2015年夏)/119分 |
ストーリー | |
設定 | |
世界観 | |
感情移入 |
アニメオリジナル作品。
DVDにて鑑賞。
舞台は現代の埼玉県秩父。
主人公・成瀬順は子供の頃のトラウマで、メモか携帯でしか会話できない。
そんな成瀬が、クラスで「地域ふれあい交流会」の実行委員になったことから彼女は・・・
こんばんは。時文です。
アニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』鑑賞しました。
『あの花』スタッフが製作!とかなり宣伝されていた2015年公開作品。
原作はなく、『あの花』同様、岡田麿里さんのオリジナル脚本。
今回も岡田節が全開です♪
では、アニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』感想レビューをどうぞ。
- 「はじめに」は【ネタバレなし】
- 「感想レビュー」「おわりに」は【ネタバレあり】
目次
はじめに
私は『劇場版 あの花』では総集編なのに泣かされるという、大敗を喫しました(笑)。
敗因の一つとしては、TVアニメ版で積み上げられた感動が劇場版によって呼び起こされたのだと思ってます。
よって、本作は単品だから、負けないだろう!と。
つまり泣きはしない!!と。
結果は・・・
少し負けました・・・
大負けではないですが、惜敗という感じでしょうか・・・
『あの花』スタッフが贈る、青春群像劇。
子供の頃にかかえたトラウマが、高校生になっても人格に影響しているのは『あの花』と同じ。
同じような話はもういいよ、などと言うなかれ。
心の傷は人それぞれ、おのずと乗り越え方も千差万別。
岡田麻理さんの手にかかれば、これまた見事な切れ味に。
今回もグサグサ刺さること刺さること(笑)。
導入は主人公・成瀬順の子供時代。
主人公がトラウマを抱えても仕方がないと思う程、ひどい話。
正直、嫌悪感しかない導入でした。
暗い主人公に、最低の親、物事に無関心で冷めたクラスメイト。
最悪とは言わないが、温かいわけでもない環境で、歌を通じて主人公とクラスメイトの接点ができ、彼女の心が変わっていく。
全編通じてレベルの高い絵と、音楽が素晴らしく、画面に引き込まれ物語に集中させてくれます。
この作品、色んな見方ができ、万人受けする作品ではないように思えます。
私も鑑賞直後、感情の整理に戸惑いました。
ただ・・・
いや、だからこそ言えるのは、本作は心の奥底をえぐるような、過去のトラウマを呼び起こすような、少し反省をしてしまう感情に取り付かれます。
それを乗り越えていく登場人物を見て、勇気をもらえる作品にはなっています。
中盤の盛り上がりは、誰もが共感できオススメです。
鑑賞後、明日から大切な人は勿論、周囲には正直な気持ちで話そう、という気持ちになれる。
そんな作品です。
ああ、高校生、大学生時代に見たかったな・・・
まあ、実際その頃に見ていたとしても、今のように素直な理解はできなかったでしょうが・・・
いろんな解釈ができ、それぞれ考察をしたくなる。
自分に照らし合わせて考えることもできるでしょう。
少し心がザワザワするのでお覚悟を!
さて、あなたの心には「閉じ込めた思い」はありませんか?
ぜひニュートラルな状態で鑑賞して下さい。
アニプレックス
感想レビュー (以降、ネタバレありです)
言葉で人を傷つける
「この世界で最も重大な罪は、言葉で人を傷つけることだ」
by 玉子 『心が叫びたがってるんだ。』
これは作品で出てくるセリフですが、この言葉を地で行くかのように、本作の登場人物は言葉で攻撃をしています。
冒頭、成瀬は母親にうれしさ一杯で話した父親のことで、母親に真実を突き付けプライドを傷つけてしまいます。
離婚することになった父親は、去り際に感情にまかせて、成瀬を責める。
高校でも、クラスメイトは他人の身体的欠陥を責めたり、甲子園の夢を絶たれた部員は、ケガをしたエースを責める。
誰も本心では、本当の原因が、原因の全てが相手にあるわけではない、と理解していながらも、感情をぶつけずにはいられない。
よりどころを失っている様がとてもリアルで生々しい。
言葉にできない葛藤
一方で、自分の思いを言葉にできないことにより葛藤する人も。
同級生の坂上は優しい少年。
まず最初に相手に与える影響を考え、大抵自分が我慢する方法を選択する。
#委員を他人に押しつけない、おじいさんに自転車を貸す等、さりげない表現がうまい!
同じくクラスメイトの仁藤菜月は委員長タイプのしっかり者。
だけど中学時代から想い続けている坂上へ、前進も後退もできないでいる・・・
#坂上のメアドや自宅の場所など、反応で想いを現している。
#なにより、今「付き合っている人がいる」という本当の意味!!健気だ・・・
各キャラの考えがとてもリアルで、派手ではないが、現実的で説得力がある。
中盤は王道展開
実は坂上も成瀬と同様、中学生時代のトラウマを抱えていた。
自分がピアノを優先してしまったせいで、両親を離婚させてしまった、と考えている。
ある日、保険セールスレディをやっている成瀬の母親の話を聞く。
成瀬が自分と同じ片親という境遇に共感を持つ。
その共感と成り行きで、成瀬を手助けしているうちに、自ら遠ざかっていた、音楽、ピアノに再度向き合うことになる。
さらりと表現されていますが、坂上はここで自分のトラウマの一つを克服したのです。
坂上は自分のトラウマを乗り越えさせてくれた成瀬に対して、おそらく、お返しをするかのように、成瀬を手助け、後押しするようになる。
この手助けが成瀬にとっては新鮮で、坂上の優しさと音楽の才能に、惹かれていく。
鉄板展開にはしないのが岡田流!?
よくある単発作品であれば主人公にラストにハッピーエンド。
本作の流れだと、通常は成瀬と坂上はカップルになるのだが、そこは岡田麿里脚本!
#褒めているのですよ。念のため。
坂上には、ずっと想っている人がいた・・・
せめて三角関係とか少しは成瀬に惹かれる流れだと思うのだが一切なし(笑)。
坂上は「お返し」と「応援」の気持ちで、成瀬に協力しミュージカル準備を進めていく。
が、成瀬と仁藤は(実は田崎も)その行為が恋だと感じる。
よって、成瀬は舞い上がり、仁藤は落ち込み、田崎は自分の心を押し殺す・・・
まあ現実的と言えば現実的。
世の中、そんなに誰もが上手くいくわけではないと言っているようですね(苦笑)。
それでも、「地域ふれあい交流会」に向け一見うまくいっているようだが、本番前日にほころびだす・・・
そんな展開、交流会後にすればいいのに~~と思うのだが、これが岡田麿里脚本。
ということでしょう(笑)。
それと、坂上の本音を語らないことによる他人への影響を表現しているのでしょう。
「モテ男が無意識・無自覚に勘違いさせる」パターンですな。
感情は振り回されっぱなし
導入部分は嫌悪感が先に来ました。
成瀬に限らず、子供なんてこんなもの。
特に女の子なんて、これ位のおしゃべりが普通。
ましてや、不倫をした父親が悪いのに、子供のせいにするとは最低。
母親も子供を責めてどうするのだ・・・
もう最初の5分は、こんな感情で嫌悪感しかありませんでした。
#まあ実際には、成瀬のトラウマを作るため、「言葉が人を傷つける」ことを示す展開。
#分かってはいるけど、不快です。
きれいな絵で、ファンタジー世界、いや童話のような世界感を見せながら、内容はブラック。
開始15分位から心が洗われ出す。
それが”玉子の歌”。
この辺りから落ち着いた気持ちで見れるように。
中盤の盛り上がり、クラスの団結、少し都合良すぎる点もありましたが、尺の関係上仕方なしか。
クラスメイトが、実行委員に役目を押しつけるのはリアルだし共感できたのですが、ラストであんな神対応をするなんて・・・
もう少し成瀬の頑張りをクラスメイトが知る場面を見せて欲しかった、かな。
ただ、坂上がクラスメイトに頭を下げ頼むシーン、田崎が成瀬抜きでできるよう指示する。
この辺りは胸アツです。
そして、成瀬がラストに登場するシーンから、全員で舞台に上がるシーン・・・
ここも胸アツ。
途中、「なんだそれは?」というシーンもあったが、最後は温かく、感動させてくれる。
成瀬と一緒に涙が出そうになりました。
クーーッ!
また負けた・・・
おわりに (『心が叫びたがってるんだ。』とは)
それにしても、さすが『あの花』スタッフ。
子供の頃や中学時代のトラウマが高校生になっても影響する。
『あの花』と被るコンセプトだが、この手のテーマを描くのが上手い!!
本作は『あの花』とは違い、地に足ついたキャラ設定に、リアルな展開。
クラスがまとまり良すぎるとか、何気に芸術スキル高すぎだろうというフィクション的な面もありますが、普通のアニメ作品比べればとても現実的。
故に、見ていられない(フィクションとして楽しめない/現実逃避できない)側面もあるのですが(笑)。
TVアニメではなく映画にした理由がよく分かります。
TVアニメ1クール物なら、私は序盤で見るのを断念していたかもしれません。
お金払ったから、2時間弱の話だから、序盤も我慢して見れました。
それくらい序盤は、暗いというか、人の暗部を見ているようで居心地が悪かったのです。
ラストの成瀬と拓実との恋の結果には呆気にとられました。
加えて田崎の想いと行動にも・・・
これってハッピーエンドという解釈でいいのですよね?
恋が実らなくても(笑)。
だって、皆、変われたのだから、思っていたことを口に出せたのだから。
ではでは。