こんばんは。時文(@toki23_a)です。
小説『虚構推理』の感想レビュー(10/11)です。
原作小説『虚構推理』は、TVアニメ1話と3~12話でアニメ化。
本レビューでは、アニメ11話に相当する部分を対象とします。
次話以降のネタバレは「なし」なので、ご安心を。
アニメの感想レビューはこちらからどうぞ。

アニメと原作小説の対応は以下の通り。
リンク先は他話の感想レビューです。
虚構推理 (全12話) 各話リスト
話数 | サブタイトル | 原作巻数 (リンク先はレビューへ) |
第1話 | 一眼一足 | 1巻R① |
第2話 | ヌシの大蛇は聞いていた | 2巻R① |
第3話 | 鋼人の噂 | 2巻R② |
1巻R② | ||
第4話 | アイドルは鉄骨に死す | 1巻R③ |
第5話 | 想像力の怪物 | 1巻R④ |
第6話 | 合理的な虚構 | 1巻R⑤ |
第7話 | 鋼人攻略戦準備 | 1巻R⑥ |
第8話 | 虚構を紡ぐ者 | 1巻R⑦ |
第9話 | 鋼人七瀬攻略議会 | 1巻R⑧ |
第10話 | 虚構争奪 | 1巻R⑨ |
第11話 | 最後の虚構 | 1巻R⑩ (本レビュー) |
第12話 | 秩序を守る者 | 1巻R⑪ |
※1巻:『虚構推理』
※2巻:『虚構推理短編集 岩永琴子の出現』
目次
はじめに
本レビューは「アニメ」⇒「原作小説」の順で見た「原作の感想レビュー」です。
2020年冬、アニメ化された『虚構推理』。
原作は城平京先生による小説。
2011年から刊行され、現在、短編集も入れて3冊刊行。(2020年6月時点)
- 虚構推理
- 虚構推理短編集 岩永琴子の出現
- 虚構推理 スリーピング・マーダー
1巻、2巻、3巻とナンバリングされておらず、タイトルで区別。
本サイトでは便宜上、発刊順に1巻(虚構推理)、2巻(虚構推理短編集)と呼ばせて頂きます。
アニメ『虚構推理』は原作小説に忠実、再現度も高いです。
が、原作の全てがアニメ化されているわけではありません。
原作を読むことにより、作品をより理解することができました。
原作情報を全て伝えることはできませんが、魅力を少しでも伝えられれば。
もっと知りたいと思った方は、ぜひ原作をお読みください。
アニメ鑑賞後であればストーリーが分かっているのでスムーズに読めるし、アニメではカットされた琴子のセリフや、心情描写が楽しめます。
なお、原作読了後、コミカライズも読みました。
アニメはコミカライズされたシーンも採用しています。
マンガサイト「アル」の投稿画像も引用して紹介します。
では、アニメの内容順に紹介をしていきます。
- アニメでカットされた原作部分
- アニメオリジナルシーン
- 原作を読んで分かったこと
見出しの頭にアニメオリジナル、原作のみの記号を記載したのでご参考に。
- ア):アニメオリジナルシーンに関する記述
- 原):アニメではカットされたシーンに言及
TVアニメ 第11話「最後の虚構」
ア) 九郎真っ二つはアニメオリジナル
解決第三
──妹の自殺を疑っていた姉を落ち着かせるために、第三者が七瀬かりんの亡霊騒ぎを起こし、本当に死んだと信じさせる──
この推理に対して、面白がっている層も含め、支持する人が多く現れた。
が、鋼人七瀬の亡霊が弱っている様子はなかった・・・
鋼人七瀬は鉄骨を振り回し、九郎を真っ二つにする。
アニメ10話終盤、九郎が鋼人七瀬に鉄骨で真っ二つにされるシーンはアニメオリジナル。
原作にはありません。
鋼人七瀬が弱ってないのを描写するのに適切ですね。
原作はというと・・・
原) 鋼人七瀬は風船か!?
紗季がダッシュボードに手を置き、振り返った車の外では、九郎が鋼人七瀬を担ぐようにして頭から階段に落としていた。首が胴体にめり込み、頭もリボンも内側にぐしゃりと沈んでいるのに、それはすぐさま立ち上がる。
どういう仕組みになっているのか、首は伸び戻り、頭も、リボンさえも、触れないままで膨らみを復活させる。
「怪物って言っても、限度があるでしょうっ」
by 小説『虚構推理』より
原作では、九郎が鋼人七瀬にダメージを与えるも、すぐに復活することで、弱ってないことを表現しています。
際限なく復活する鋼人七瀬。
#九郎もこの時点で30回以上、生き返っていますが(笑)
アニメで表現を変更したのは、亡霊とは言え、女性、それもアイドルの衝撃的な絵を描けなかったのかもしれないですね。
男(九郎)なら衝撃的な姿を描いてもいいのか?
というわけではありませんが・・・。
原) Aさんもタバコを?
琴子が放った解決第四。
原作では、アニメよりも詳細に説明がされています。
一つが、タバコについて。
Aさんがタバコを吸わないなら、司法解剖したときに喫煙の形跡がありバレてしまう。
警察の見立てでは七瀬かりんに喫煙の習慣があったと結論づけられています。
ここでは、琴子は逆に利用しています。
逆とは、七瀬かりんはタバコを吸っていないと論を張っています。
アイドルの喫煙が問題になっているときに、頭の良い七瀬かりんがタバコを吸うだろうか?と問うています。
七瀬かりんは、父親殺しでマスコミから追いかけられていました。
そんな時に喫煙まで見つかるとマスコミの餌食になるではないか?というのです。
では、なぜ事故現場からタバコが出てきたかというと、Aさんが吸っていたのでタバコを置いたとの推理を展開。
隠れて喫煙するために、夜中に人気のない工事現場へ行ったのだと、ミスリードにも繋がることを狙って。
Aさんは実在しないのだから、単純にAさんも七瀬かりんも喫煙習慣があったとすれば良いのに、喫煙習慣がない推測する。
わざわざ示す必要はないと思うのですが、あらゆる可能性が考えられると言いたいのでしょう。
なんとも、念の入れよう。
原作では、琴子の心情描写が描かれ、様々な場合を想定しているのが伺えます。
よくもまあここまで考え出す物だと感心させられます(笑)。
ちなみに、このタバコ論は、原作では約3ページを割いて展開しています。
原) 琴子は規制などされてない
七瀬かりん、あなたがこのサイトを開き、管理しているのはわかっている。
今も私の書き込みを読んでいることだろう。-中略-
だから、執拗に反駁し、私の書き込みを規制しようとさえした。
by 岩永琴子『虚構推理』TVアニメ11話より
七瀬かりんは生きていて、まとめサイトの管理人が七瀬かりん!
六花に対する、琴子の”最後の一撃”!
アニメで、ドヤ顔で言ってますが、これら、全て嘘ですね(笑)。
唯一事実だと思われるのは「執拗に反駁(はんばく=反論する)」だけ。
それも身分を明かしてないので、証拠はありません。
ここまで堂々と言われると「書き込みを規制」しようとしたのも事実?と信じてしまいそうになるのが上手い!
原作では、読者に対し、すぐに補足(否定)しています。
『-中略- だから、執拗に反駁し、私の書き込みを規制しようとさえした』
六花は規制しようとはしていない。これも嘘だ。岩永のこの解決に説得力を積み増すための虚構。
by 小説『虚構推理』より
この手の強い発言は、威力はありますが、一つひっくり返されると全てを信じてもらえなくなります。
「書き込みを規制」というのは、具体的に何があったのか?と突っ込まれると、琴子は証拠を示せません。
が、きっと琴子はここでも作り話をするでしょう。
作り話に対して、六花はそのような事実はないことを証明するのは難しい、というか不可能。
そこまで計算して上で、説得力を積み増すために”いかにもありそうな嘘”を、ついたのです。
お見事!
原) 六花が流れを取り戻すには、より魅力的な物語が必要
解決第四「七瀬かりんは生きていて、鋼人七瀬の亡霊は存在しない」ことを多数に支持させた琴子。
それでも、まだ亡霊の存在を信じる人もいるでしょう。
だけど、それらは琴子達にとって関係ないのです。
琴子の目的は、鋼人七瀬の亡霊を消滅させること。
鋼人七瀬は、大勢の共通する想像力が生み出した産物。
その結集力を無力化すれば、亡霊は生まれないのです。
原作では琴子はこんなことを言ってます──
「たとえサイト管理者が七瀬かりんでないと証明されたとしても、鋼人七瀬について今後皆が何を語ることができるでしょう。私が刻んだ物語以上の物語が生まれうるでしょうか。これほどサイトに集まる者が熱を帯びる物語が、死んだアイドルが鉄骨を振り回すという設定から生まれるでしょうか」
鋼人七瀬の都市伝説は、インパクトがあるキャラクターではあるので、まだこれからもひそひそと語られるかもしれない。だが同時にこのサイトを閲覧した者は別の都市伝説も語るのではないか。
七瀬かりんは実は生きている、死んだのは別人だった、と。
by 小説『虚構推理』より
想像の産物を生み出すには、人々の興味を集めなくてはならない。
鋼人七瀬は一度実体化するほど興味が集まったのだから、再び何かのきっかけで想像されるかもしれない。
が、「七瀬かりんは生きている」という都市伝説を知り、そちらの方がセンセーショナルでで面白い!
結果、「鋼人七瀬七瀬の亡霊」の想像力は結集せず、実体化には至らない。
琴子が作り出した物語以上に、人々の好奇心を刺激する物語でも作り出されなければ。
これが、これまでも時々語られた「虚構を信じさせると同時に、毒を注入する」の”毒”の部分なのです。
おわりに (小説『虚構推理』1巻とは)
今回の解決第四も、原作では琴子視点で、琴子が全てを説明をしています。
アニメはAさんも登場した再現映像があり、分かりやすいですね。
鋼人七瀬攻略戦が始まってから長い話数が経過。
ようやくここで、この小説の狙いが見えてきました。
紗季にも見えてきた。岩永がいくつもの解決を連続で投下した本当の意味が。サイトに集まる者に自分でも謎を解いてみようという欲求を芽生えさせたのだ。論理と想像と妄想を駆使して都市伝説を合理的に説明する面白さを教えたのだ。
by 小説『虚構推理』より
私達がいる現実世界にも存在する都市伝説。
都市伝説を怪異やオカルトとして片付けるのではなく、合理的に説明ができる現象として考える楽しみ。
作品内で、琴子がサイトの参加者へ教えるように、作者である城平京先生は、読者にその面白みを伝えているのです。
推理小説は、作品内で起きた事件を探偵役が解決する。
小説内で起きるような面白い事件なんて、現実にはそうそうないから、推理小説にそれを求める。
ところが、世の中には、都市伝説という興味深い題材があるではないか、と。
そんなメッセージを感じました。
以上、『虚構推理』原作小説1巻のレビューでした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
いよいよ、次回は最終話。
1巻続きのレビューも書いてます。
良かったらご覧ください。
ではでは。
関連レビュー

アニメ『虚構推理』の感想レビューには、全体通じて感じたことを書いてます。
良かったらご覧下さい。
