こんばんは。時文(@toki23_a)です。
小説『虚構推理』の感想レビュー(5/11)です。
原作小説『虚構推理』は、TVアニメ1話と3~12話でアニメ化。
本レビューでは、アニメ6話に相当する部分を対象とします。
次話以降のネタバレは「なし」なので、ご安心を。
アニメの感想レビューはこちらからどうぞ。

アニメと原作小説の対応は以下の通り。
リンク先は他話の感想レビューです。
虚構推理 (全12話) 各話リスト
話数 | サブタイトル | 原作巻数 (リンク先はレビューへ) |
第1話 | 一眼一足 | 1巻R① |
第2話 | ヌシの大蛇は聞いていた | 2巻R① |
第3話 | 鋼人の噂 | 2巻R② |
1巻R② | ||
第4話 | アイドルは鉄骨に死す | 1巻R③ |
第5話 | 想像力の怪物 | 1巻R④ |
第6話 | 合理的な虚構 | 1巻R⑤ (本レビュー) |
第7話 | 鋼人攻略戦準備 | 1巻R⑥ |
第8話 | 虚構を紡ぐ者 | 1巻R⑦ |
第9話 | 鋼人七瀬攻略議会 | 1巻R⑧ |
第10話 | 虚構争奪 | 1巻R⑨ |
第11話 | 最後の虚構 | 1巻R⑩ |
第12話 | 秩序を守る者 | 1巻R⑪ |
※1巻:『虚構推理』
※2巻:『虚構推理短編集 岩永琴子の出現』
目次
はじめに
本レビューは「アニメ」⇒「原作小説」の順で見た「原作の感想レビュー」です。
2020年冬、アニメ化された『虚構推理』。
原作は城平京先生による小説。
2011年から刊行され、現在、短編集も入れて3冊刊行。(2020年6月時点)
- 虚構推理
- 虚構推理短編集 岩永琴子の出現
- 虚構推理 スリーピング・マーダー
1巻、2巻、3巻とナンバリングされておらず、タイトルで区別。
本サイトでは便宜上、発刊順に1巻(虚構推理)、2巻(虚構推理短編集)と呼ばせて頂きます。
アニメ『虚構推理』は原作小説に忠実、再現度も高いです。
が、原作の全てがアニメ化されているわけではありません。
原作を読むことにより、作品をより理解することができました。
原作情報を全て伝えることはできませんが、魅力を少しでも伝えられれば。
もっと知りたいと思った方は、ぜひ原作をお読みください。
アニメ鑑賞後であればストーリーが分かっているのでスムーズに読めるし、アニメではカットされた琴子のセリフや、心情描写が楽しめます。
なお、原作読了後、コミカライズも読みました。
アニメはコミカライズされたシーンも採用しています。
マンガサイト「アル」の投稿画像も引用して紹介します。
では、アニメの内容順に紹介をしていきます。
- アニメでカットされた原作部分
- アニメオリジナルシーン
- 原作を読んで分かったこと
見出しの頭にアニメオリジナル、原作のみの記号を記載したのでご参考に。
- ア):アニメオリジナルシーンに関する記述
- 原):アニメではカットされたシーンに言及
TVアニメ 第6話「合理的な虚構」
原) 「かまいたち」も虚構で消えた!?
琴子は、鋼人七瀬は実際にいるが、それを上書きするような合理的な虚構を信じさせれば、鋼人七瀬は消えるという。
突拍子もない対策案。
その対策が有効なのか、判断できないでいる紗季──
アニメでは完全にカットされていますが、原作では、ここで現実に「合理的な虚構」で都市伝説を消した事例を紹介しています。
妖怪「かまいたち」
「見かけなくなったなあって、そもそもかまいたちって、とっくにその現象が真空による裂傷って科学的に説明されている、もともと存在しない妖怪でしょう?」
これも有名な説明だったと思う。旋風や強風といった急激な空気の流れによって気圧が変化し、局地的に発生した真空が人の体を裂く、いわゆるカマイタチ現象として広く知られているだろう。空気の刃のためにいつ斬られたかわからず、一瞬のことなので痛みも感じない。風とともに現れる、という伝承とも合致した過不足のない説明だ。
-中略-
そこで紗季は気づく。そうか、『かまいたち』も『想像力の怪物』の一種だったのだろう。それが科学的説明の方が有名になって、消え去ってしまった。ならば岩永の鋼人七瀬へのアプローチは、あながち無力と言い切れない。
by 小説『虚構推理』より
この後、琴子は「かまいたち」が、鋼人七瀬のように人間の想像力によって生み出されたかどうかは、起源が大昔なので確認は取れないと認めています。
が、最近「かまいたち」を見かけなくなっているのは事実だと言うのです。
そして、話はここで終わりません──
いえ、ここからが重要なのです。
妖怪「かまいたち」も虚構で消えた!?
「でも紗季さん、あの真空で肌が裂けるって説明、嘘ですよ。そんな現象、物理的には怒らないんです。現在では疑似科学とされてます」
-中略-
疑似科学。科学の雰囲気はするが実はまるで科学でないもの。それはつまり、岩永の言う合理的な虚構か。
-中略-
「真空仮説は明治の頃からあって広く知られていたみたいですが、昭和初期にはすでにその説には疑問が出されています。そんな簡単に自然界に真空は発生しない、発生しても人の肌を裂く力はない、人間の肌以外のものを傷つけた例がまったく知られていない。科学的にはありえない現象と結論づけられています。いわゆるカマイタチ現象の説明として、真空説はまともな場所で語られるものではありません」
「でも、事典なんかでそう書かれてたりも」
「虚構が真実とされていたんです。確たる証明もされていないのに皆がそうと信じて、その説明が一番になっていたのです。ひとえにそれが妖怪よりも魅力的であり、わかりやすかったから。ありえそうだったから。たとえ『真空』が嘘であっても、『かまいたち』という妖怪の物語よりも優れた物語であれば、嘘でありながら妖怪を消してしまえるんです」
by 小説『虚構推理』より
この「かまいたち」の例はとても分かりやすい。
琴子が「合理的な虚構」を作り上げ、どういうロジックで鋼人七瀬を消滅させようとしているのかイメージしやすくなります。
これはぜひアニメでも見たかった。
まあ、説明が長すぎてカットしたのでしょう・・・
#小説向きですね(笑)
とても興味深い理屈で、『虚構推理』のキモとなるロジック。
全文を読みたい方はぜひ原作小説をお読み下さい。
少し長いですが、会話がベースになっていて比較的読みやすいですよ。
それにしても、前回の「口裂け女」の例と言い、現実の都市伝説の経緯を織り交ぜるのが巧み!
ア) 捜査資料を見つけるのはアニオリ
鋼人七瀬を虚構で封じるために、七瀬かりんの事件に関する正確な情報が必要。
琴子は紗季に警察の捜査情報を教えてほしいと頼む。
アニメでは、ベッドにある七瀬かりんの捜査資料を見つけ取り合いになる場面が。
これは、原作にはありません、アニメオリジナルです。
原作では、琴子は紗季が考えをまとめるのを待ちます。
おとなしく待ってはいませんでしたが・・・
また、紗季は琴子に情報を提供しますが、資料は見せません。
そこは、紗季も抵抗があったようです。
アニメでも、琴子に直接見せるようなことはしてませんが、最初琴子が強引に奪いにいったので、中身を見ている感覚になりますね(笑)。
原作にははっきりと示されています──
岩永は資料を直接みせてもらいたいところだったが、事情が事情とはいえ、警察の資料を直接民間人に見せるのは紗季に抵抗があるらしい。資料を岩永から覗けない格好で開きつつ、紗季は始めた。
by 小説『虚構推理』より
捜査資料を漏洩するのではなく、「情報提供」という体を守ったのですね。
原) 待っている間、九郎といちゃつく琴子・・・
原作では、紗季が七瀬かりんの捜査情報を提供するかどうか悩んでいる間、琴子は急かすことなく待っています。
その間、九郎が話しかけ、次第にいちゃつく感じに・・・
「ともかく、一週間ぶりに会ったんですから手くらい握って下さい」
「ああ、お前にはかなわないよ」-中略-
「人の家の真ん中でむつみ合うな」
勘案を終えたらしい紗季が、手を握り合っている岩永と九郎にあまり穏当でない目を向けていた。岩永は手を握ったまま答える。「ご希望なら端っこでまぐわってもいいですが」
「九郎君、どうしてこの娘は良家のお嬢様みたいな外見でこう時々品のないことをさらっと言うのよ」
「僕も常々疑問です。岩永は本当に良家のお嬢様で、ご両親も立派な人なんだけど」
岩永はなるべく品のある表現を選んでいるつもりなのだが、きっと二人はお嬢様や女の子を過大に美化しているのだろう。
by 小説『虚構推理』より
後半の部分は、笑ってしまいました!
このシーンは、ぜひアニメでも見たかったです!
ア) 原作は事故現場へ行ってない!?
七瀬かりんの死の真相を確認するため、3人は事故現場へ。
琴子は霊を呼び出し、七瀬かりんが死ぬ瞬間の状況を教えてもらう。
七瀬かりん事件の真相が警察が導き出した結論通りかを確かめるため、事件現場へ行くシーン。
琴子が呼び出した霊は、ちょうど七瀬かりんが死ぬ瞬間を見ていた──
『虚構推理』が、”普通のミステリーものとは完全に違う“と分かった瞬間。
アニメでも衝撃的なシーン。
いや、衝撃的と言っても普段使う「衝撃」ではなく、むしろ逆。
「そんなのあり!?」的な衝撃です(笑)。
はい、紗季さんが、代弁してくれました(笑)。
が、この事件現場へ行くシーンは、全てアニメオリジナルです。
原作では、事件現場へは行きません。
既に琴子は現場で、霊からの聞き取りを済ませており、琴子の口からヒアリング状況が語られます。
アニメは、琴子が語った内容、そして紗季の反応を元に、場所だけ紗季のマンションから事件現場へ変更し、再現しています。
ずっと紗季のマンション内ので話が続き、場を変えるアクセントになっています。
霊に怯える紗季の反応もよかったし、口頭で説明されるより、実際にその場面を見せる再現映像の方が伝わりやすいシーンです。
とても印象深いシーンになり、よい改変です。
ちなみに、琴子の”巫女の舞”は、原作にはありません。
完全アニメオリジナルです。
上記で引用しているようにコミカライズには、これらのシーンが描かれてます。
結果、アニメでは、事件現場で紗季と別れます。
#原作では、紗季はずっとマンションで、琴子達が出ていきます。
紗季は、一人で自宅へ帰ることになりますが、これは実は矛盾してますね。
紗季は、この世のものではない怪異や現象をいくつも見て、一人で帰るのが怖くなり、琴子達と話すのをファミレスではなく自宅にしたのです。
さらに、事件現場の地縛霊を見せられ、余計に恐怖が増したはずなのに、一人で帰るのはさぞ勇気のいったことでしょう(苦笑)。
まあ、流れは自然なので目くじら立てるほどではありません。
原) あやしい所に霊はいる?
七瀬かりんの事件現場にいた霊。
偶然ではないようです──
岩永は真っ先に、そういう人外の目撃者がいないかを確かめておいた。これまでの経験だと大抵いるのである。死亡現場や殺人現場になる場所は、自然とそういったあやしいもの達を引き寄せる傾向にあるらしい。
by 小説『虚構推理』より
怪異も事件を起こす人も、人気がないところを選びがちということですね。
人型の霊がいたのは、運が良かったようですが(苦笑)。
原) 紗季は二人を羨ましがっていた・・・
紗季のマンションを、琴子と九郎が出たのは午前2時過ぎ。
原作では、一人部屋へ残った紗季の様子が描かれます。
時間も遅く、紗季もこの部屋にひとり残されてしまうのは肌が粟立つ思いがするので二人に泊まってもらってもよかったが、岩永を泊めるとろくなことになりそうになかったので、口に出さず二人が帰るに任せた。
by 小説『虚構推理』より
一人きりになったマンションで紗季は少し不安になっていたのです。
まあ、琴子が賑やかですから、確かにいなくなると急に静かになりそうですね!
そして、琴子を泊めると九郎との仲を見せつけたりしそうだから、帰して正解?
と同時に、紗季は二人の関係を羨ましくも思ってました。
紗季が九郎と付き合っていた時は要領の悪い弟と優秀な姉といった関係で、九郎が冗談でも紗季をないがしろにしてふざけたりはしなかった。言葉遣いも目上への気遣いを常に含ませていて、これはこれで風情があっていいか、と思っていたが、今になって他人行儀過ぎたのでは、とも感じてしまう。
by 小説『虚構推理』より
2年ぶりに再会した九郎。
琴子と九郎のやりとりは、5年間付き合っていた紗季が見たことがない九郎の一面だったのです。
だからと言って、よりを戻したいとは考えてません──
やはりもう一度彼をやり直すという選択には抵抗があった。人魚だけではない。鋼人七瀬攻略の切り札となる九郎の能力をもたらす予言獣くだんも思い枷だ。
未来を見、決定できる能力を持つ人を、どこまで信用できるというのだろう。
by 小説『虚構推理』より
万能ではないが、可能性があれば、その未来を決めることができる九郎の「未来決定能力」。
自分との付き合いや、周囲との付き合いに、その能力を使っているでは?と疑いだしたら、確かに信じられなくなりますね。
逆に、琴子が普通に付き合っているのが不思議になってきます(笑)。
ア) 寺田刑事と鋼人七瀬のシーンはアニオリ
寺田刑事が鋼人七瀬を見つけ、正体を探ろうと職質をする。
鋼人七瀬が鉄骨を振りかざし、寺田の方へ向かってきた。
仕方なく寺田は攻撃を加えるも、その手は──
アニメ6話Cパート。
このシーンは全てアニメオリジナルです。
原作では、このタイミングで何も書かれてません。
突如、寺田の死が紗季へ報告されたとだけ記されます──
原作には、後に、状況を知った紗季が、寺田の行動を推測した描写が書かれています。
アニメは、それを寺田視点で再現したのです。
映像で見せられるとインパクトありますよね。
そして、その後のHP掲示板の映像、女性の絵も印象的。
物語の転換期となる印象的なシーン。
アニメ製作陣、グッジョブです!
おわりに (小説『虚構推理』1巻とは)
今回は、『虚構推理』がなぜ虚構を題材にしているのか、そのキモとなる理屈が語られます。
正直、この部分だけでも読んで欲しい。
とても勉強になるロジックで読み応えあり!
このキモの部分を理解すると、琴子がこれからやろうとしていることがよく理解できます。
より作品が楽しみに。
また、アニメ6話に相当する原作部分は、ほぼ紗季のマンションでの会話劇。
アニメは、飽きないよう様々な工夫がされているのが、原作を読むと分かりました。
七瀬かりんの事件現場、寺田刑事の最後の再現映像はアニメらしい表現方法が似合います!
以上、『虚構推理』原作小説1巻のレビューでした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
1巻続きのレビューも書いてます。
良かったらご覧ください。
ではでは。
関連レビュー

アニメ『虚構推理』の感想レビューには、全体通じて感じたことを書いてます。
良かったらご覧下さい。
