こんばんは。時文(@toki23_a)です。
小説『虚構推理』の感想レビュー(8/11)です。
原作小説『虚構推理』は、TVアニメ1話と3~12話でアニメ化。
本レビューでは、アニメ9話に相当する部分を対象とします。
次話以降のネタバレは「なし」なので、ご安心を。
アニメの感想レビューはこちらからどうぞ。

アニメと原作小説の対応は以下の通り。
リンク先は他話の感想レビューです。
虚構推理 (全12話) 各話リスト
話数 | サブタイトル | 原作巻数 (リンク先はレビューへ) |
第1話 | 一眼一足 | 1巻R① |
第2話 | ヌシの大蛇は聞いていた | 2巻R① |
第3話 | 鋼人の噂 | 2巻R② |
1巻R② | ||
第4話 | アイドルは鉄骨に死す | 1巻R③ |
第5話 | 想像力の怪物 | 1巻R④ |
第6話 | 合理的な虚構 | 1巻R⑤ |
第7話 | 鋼人攻略戦準備 | 1巻R⑥ |
第8話 | 虚構を紡ぐ者 | 1巻R⑦ |
第9話 | 鋼人七瀬攻略議会 | 1巻R⑧ (本レビュー) |
第10話 | 虚構争奪 | 1巻R⑨ |
第11話 | 最後の虚構 | 1巻R⑩ |
第12話 | 秩序を守る者 | 1巻R⑪ |
※1巻:『虚構推理』
※2巻:『虚構推理短編集 岩永琴子の出現』
目次
はじめに
本レビューは「アニメ」⇒「原作小説」の順で見た「原作の感想レビュー」です。
2020年冬、アニメ化された『虚構推理』。
原作は城平京先生による小説。
2011年から刊行され、現在、短編集も入れて3冊刊行。(2020年6月時点)
- 虚構推理
- 虚構推理短編集 岩永琴子の出現
- 虚構推理 スリーピング・マーダー
1巻、2巻、3巻とナンバリングされておらず、タイトルで区別。
本サイトでは便宜上、発刊順に1巻(虚構推理)、2巻(虚構推理短編集)と呼ばせて頂きます。
アニメ『虚構推理』は原作小説に忠実、再現度も高いです。
が、原作の全てがアニメ化されているわけではありません。
原作を読むことにより、作品をより理解することができました。
原作情報を全て伝えることはできませんが、魅力を少しでも伝えられれば。
もっと知りたいと思った方は、ぜひ原作をお読みください。
アニメ鑑賞後であればストーリーが分かっているのでスムーズに読めるし、アニメではカットされた琴子のセリフや、心情描写が楽しめます。
なお、原作読了後、コミカライズも読みました。
アニメはコミカライズされたシーンも採用しています。
マンガサイト「アル」の投稿画像も引用して紹介します。
では、アニメの内容順に紹介をしていきます。
- アニメでカットされた原作部分
- アニメオリジナルシーン
- 原作を読んで分かったこと
見出しの頭にアニメオリジナル、原作のみの記号を記載したのでご参考に。
- ア):アニメオリジナルシーンに関する記述
- 原):アニメではカットされたシーンに言及
TVアニメ 第9話「鋼人七瀬攻略議会」
小説内での投稿の表現
「鋼人七瀬の亡霊は存在しない」と信じ込ませるため、鋼人七瀬まとめサイトへ嘘を投稿し始める琴子。
アニメでは、PCの画面を描写することで直感的に投稿内容が判別できました。
分かりやすかったですね!
小説は文字のみの表現ですが、投稿部分は、「書体を変え太字」にして区別できるようになっています。
読んでいる箇所が、投稿部分かどうか一目で分かります。
その結果──
投稿部分、琴子の心情描写、紗季との会話と、会話の連続になってますが(苦笑)。
作者の論法が全文、作者の意図する順に読めるのが、小説の良さですね。
原) 寺田刑事の殺害方法はもっと入念
ガソリンスタンドの3mもの高い天井を利用し、ロープとブロックを使った仕掛けで、寺田刑事の殺害方法の謎を解明。
アニメ鑑賞時、3mの高さとは言え、自然落下の速度で、顔をあそこまで潰すことはできないのでは?と思ってました。
#実際に試したことがないので、分かりませんが(苦笑)。
鋼人七瀬の攻撃は、鉄骨を上から叩きつけたので、力が逃げず顔が潰れたのです。
ロープとブロックを振り子のようにぶつけても、無防備であればあるほど後ろへ倒れ力が逃げます。
ケガをさせ打ち所が悪ければ死ぬこともあるでしょうが、顔が潰れるほどの衝撃はないでしょう。
が、原作はぬかりがありませんでした。
『寺田刑事を殺害後、犯人は仕掛けを回収し、自分がいた痕跡を消し、現場を立ち去る。念のため寺田刑事の頭部を完全に叩き潰しておいたかもしれない。あとは鋼人七瀬のふりをするために使った衣装や道具、振り子の仕掛けを処分すればいいだけだ』
by 小説『虚構推理』より
振り子の仕掛けで意識さえ奪えば、後から顔を潰すのは簡単。
なるほど、一度で顔を潰す必要はないのです。
実際には、遺体を調べれば、一度の衝撃で潰れたのか、何度も受けたのかは、分かるらしいですけどね。
ロープやブロックの痕跡が検出されるでしょうし・・・
アニメはもちろん、原作でも描かれてませんが、そんなことは琴子も恐らく分かっていると思われます。
この、鋼人七瀬サイトの議場では、事実は関係ないのです。
原) 寺田刑事の殺害は人でも可能だと証明すれば良い
琴子がサイトへ投下した最初の議論。
ここでの目的は、真実を解明することでも、完璧な嘘をつくことでもありません。
アニメではカットされていますが、原作ではこんな描写があります。
現在ある材料も何も、岩永の推理には証拠らしい証拠はない。ただ被害者の不可解な死亡状況に筋の通った、いくらか劇的なパーツのある説明をしただけだ。
by 小説『虚構推理』より
寺田刑事の事件によって、鋼人七瀬の亡霊の存在が強く信じられるようになりました。
柔道の有段者で優秀な刑事である寺田刑事が、無抵抗で顔面を潰されたことが、亡霊の仕業としか思えないからです。
まず片付けなくてはならないのは、この事件について。
ただ、事件の真相を解明する必要も、ましてや亡霊が存在しないことを証明する必要もないのです。
寺田刑事の殺害は”亡霊でなくても可能”だと証明できれば良いのです。
そうすれば、霊を信じない普通の人は、”やはり”亡霊など存在しないと結論づけてくれるのです。
原) 犯人を警察関係者にしたのは物語性
犯人は女性警察官と断言した琴子。
鋼人七瀬事件をでっち上げた理由から逆算して犯人像を絞り込む。
寺田刑事の仕事と評判、身長を知っている、夜中に呼び出しても不審がられない──
家族でも知人でも、当てはまる気もしますが・・・
後ほど、アニメでも琴子が語っているように、無関係の人をでっち上げるわけにはいかず紗季をモデルにしているのです。
原作には、他の理由も書かれていました。
被害者が刑事であり、犯人も同じ警察関係者というのは、ちょっとした物語性があって信じられやすいというのもある。
by 小説『虚構推理』より
寺田刑事の同僚である、警察関係者の方が物語性がある。
事情をよく知っているのは警察関係者だというのは、シンプルで分かりやすく、納得感があります。
それに、内部犯や裏切りの方が、面白いというわけですね。
ミステリー物の鉄板ですしね(苦笑)。
ここでの目的は真相解明でありません。
「亡霊が実在することから目を逸らせるのが目的」だから、この作戦が「あり」なのです。
原) お互い信じているからできる手段
「鋼人七瀬の亡霊は存在する」と信じている人達の、考えを変えなくてはならない嘘。
そんな嘘は、面白みや意外性がある手段と理由でなくてはならない。
ロープとブロックを使った仕掛けは、普通のミステリー物であれば、苦笑もののトリック。
だけど『虚構推理』には、九郎の「未来決定能力」がある。
たとえ面白がってでも、少しでも乗っかってくれる(信じてくれる)人がいれば、「未来決定能力」で、それを流れにできるのです。
そのために、琴子が論を展開している間、九郎は黙々と鋼人七瀬と戦い、死んで未来を決定することを繰り返している──
九郎は車を出る時、頼むと言った。岩永はお願いしますと言った。互いが互いの力を信じ、怪物に立ち向かっている。でなくてどうしてあそこまで鉄骨に砕かれ、なお階段を上がれるだろう。どうして真実を知りながら、ひたすら空虚な虚構に実を見いださせようとするだろう。
by 小説『虚構推理』より
現場へ着いて車を降りたときの、九郎と琴子の会話にはそんな意味が込められていたのです。
アニメだけでは分かりにくいですが、この虚構対決は、九郎と琴子、二人の力がうまく噛み合って実現できる退治方法なのです。
原) 紗季は容疑者にされない?
寺田刑事の容疑者は、同じ署に勤める女性警察官!
琴子はサイトで、そう断言する。
この女性警察官は紗季そのものだった・・・
見ず知らずの人を容疑者にして、えん罪を作ってはいけないし、誹謗中傷があってもならない。
仕方なく、関係者の紗季を容疑者にするしかなかったのだ。
それでも、ネット上の噂として冗談で済めば良いですが、実際に警察が動き出したら・・・原作には、その辺も言及されています。
「第一、捜査本部がネットの書き込みを本気にはしないでしょう。調べればこれが嘘であるのはすぐわかります。現場の屋根にフックを取り付けた痕跡があるわけありませんし、振り子状の凶器で頭を砕かれていないことも、現場の血痕や司法解剖で明らかになっているはずです」
by 小説『虚構推理』より
警察が調べれば、すぐに振り子仕掛けは使ってないことは分かるということ。
だから、容疑者にされることはないでしょう。
が、あらぬ噂は立てられるような・・・
原作でも、この後、紗季は突っ込んでます。
琴子は堪えて下さい、というだけです・・・
ちょっと、琴子の意地悪さがないとは言い切れませんね(苦笑)。
ア) 大学生の出演はアニオリ
琴子が投下した「振り子解決」を指示する者はいたが、急激に不支持が増えていった。
九郎が未来決定能力で流れを引き寄せているのと並行して、六花も自分が望む未来をつかもうとしているのだ。
いいや、鋼人七瀬は本物の亡霊だ。俺は見たぞ。車の前に突然現れたんだ。つい5日前のことだ。
鋼人七瀬は煙みたいに現れたし、大暴れして鉄骨をぶん投げてきた。
あれはどう見たって怨霊だったぞ。俺だって、あの刑事みたいに殺されていたかもしれない。
by 『虚構推理』TVアニメ9話より
この声は、3話に登場した、鋼人七瀬の亡霊を見て、事故をした大学生ですね。
原作では、このような主張をする人は登場しません。
実際に鋼人七瀬の亡霊を目撃した人の考えを、どうやって説得していくのか興味を持って見ていたのですが、これ以降は出てきません。
出演はこのシーンのみ?
アニメ鑑賞時、一体この人はどこへ行ったのか、不思議でした。
原作を読んで、その理由が判明。
この男のコメントは、原作には登場しない、アニメオリジナル演出だったのです。
9話の引きを強くし、10話に繋げるための。
おわりに (小説『虚構推理』1巻とは)
原作の、今話(9話)相当分は、琴子と紗季の会話のみ。
サイトの反応は琴子と紗季の目線で語られます。
関係ない描写はカットされ、議論のみが粛々と進む。
小説形式だから読みやすいですが、そのままアニメにすると動きがなく退屈な流れに。
アニメは状況説明を再現映像風に見せるのがいいですね。
鋼人七瀬の説明時には、実際に人が鋼人七瀬に変装している様子を描き。
寺田刑事の殺害方法説明では、「黒い人」を出し、実際に演じて見せてくれる。
とても分かりやすいし、画面も変わり飽きません。
上手いアニメ化です!
以上、『虚構推理』原作小説1巻のレビューでした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
1巻続きのレビューも書いてます。
良かったらご覧ください。
ではでは。
関連レビュー

アニメ『虚構推理』の感想レビューには、全体通じて感じたことを書いてます。
良かったらご覧下さい。
