SF/ファンタジー

アニメ【虫籠のカガステル】1~12話(最終回) 感想レビュー どうしようもない終末世界で生きる価値とは

虫籠のカガステル
オススメ度 B+
原作 コミック
ジャンル 終末SF、アクション
放送情報 Netflix配信アニメ(2020年冬)/全12話
ストーリー
設定
世界観
感情移入

原作コミック未読。
Netflixにて鑑賞。一気見。

あらすじ

舞台は約100年後の近未来の地球。

人が巨大な虫になる奇病”カガステル“が発生。
カガステルになった人は理性を失い、人を襲い繁殖し続ける。

世界は砂漠化し、生き延びた人々は身を寄せ合って生きていく。

カガステルを狩る駆除屋の少年・キドウと父親を亡くした少女・イリとの終末世界の物語。

こんばんは。時文です。
Netflix制作・配信のアニメ『虫籠のカガステル』を最終話まで観賞しました。

原作は漫画コミック。
元々は原作者のWebサイトにて公開。
後に商業出版。

原作コミックは全7巻で既に完結済み。
アニメは最後まで描かれています。

フランスの漫画賞Prix Mangawaで2015年少年漫画賞を受賞

作品設定上、グロいシーンがあります。
ですが、アクション一辺倒ではなく、重厚な物語となっています。

現時点では、Netflixでしか見ることができません。(2020年3月時点)
Netflixを契約されている方は、事前情報を入れずに、まずは”4話”まで見ることをオススメします。

もう少し知りたい方は「はじめに」をご覧下さい。

  • 「はじめに」は【ネタバレなし】
  • 「感想レビュー」「おわりに」は【ネタバレあり】

ではTVアニメ『虫籠のカガステル』感想レビューをどうぞ。

はじめに

30年前、人が巨大な虫になる奇病「カガステル」が発生。
カガステルを発症すると、その人は僅か20分で虫”カガステル”となり、理性や感情を失い、人を襲うようになる。

この30年の間に、人類は、全人口の2/3を失ってしまった──

このような設定を聞いて私はてっきり、伝染病系のゾンビ物かと思ってました。

カガステルから身を守りながら、自分がカガステルに感染しないよう戦うゾンビ作品のような展開を。

全然違いました(笑)。

カガステルは遺伝性の病気として描かれます。

謎の奇病で原因も不明。
治療法もなく、発症したら駆除するしかない。

駆除するにしても、カガステルになってしまうと皮膚が硬化しナイフどころか銃弾すら跳ね返す。
対処は軍か、駆除を生業とする駆除屋しかできない。

人々は、カガステルに注意しながら、高い外壁に囲まれた町で身を寄せ合い生きていくしかないのです。

『虫籠のカガステル』はカガステルと戦うことがメインではありません

治療法のない奇病カガステルと、巨大な虫があちこちにいる世界で、人々はどのようにして生きているのかということがメインの世紀末(ポストアポカリプス)物語

物語の舞台は「E-05」と呼ばれる交易都市。

カガステルに怯え希望のない未来だけど、「E-05」の住民は力強くたくましく生きている。

泣き言を言う人があまりいないのがうれしい。
この世界で、それぞれ、思うがままに生きている。

明日をも知れない世界なのに、とにかく明るくたくましく、なんだか温かく、そして切ない。

ゾンビ系ではなく、アクション一辺倒でもない。
意外と言っては失礼か(←褒めてます)。

「この世界をなんとかしよう」ではありません。

「こんな世界でも楽しく生きていけるのだ」と力をもらえる作品です。

『虫籠のカガステル』 PV – Netflix
Netflix Japan

感想レビュー (以降、ネタバレ全開です)

ここからはネタバレ全開で、ストーリー面を中心にレビューしていきます。

ボーイミーツガール&群像劇

ストーリーはキドウとイリの二人が主軸の、いわゆる「ボーイミーツガール」系。
だけど、サブキャラもしっかり描かれているのが本作の特徴。

私は最初「少女を助ける青年」パターンかと思ってました。
が、鑑賞後wiki等読むと、キドウは17歳設定!?

17歳のキドウと14歳のイリとの正真正銘の「ボーイミーツガール」だったのです(笑)。

鑑賞中は、20を超えた大人が女子中学生(相当)に恋愛感情を持つロリ系だとずっと思ってた(苦笑)。

大変失礼致しました、キドウ様。

主人公のキドウは、駆除屋を生業とする17歳の少年。
奇病カガステルが発症した人をためらいなく駆除できるよう、人との交流は距離を取っていた。

ヒロインのイリは、母親の元へ移動中に育ての親を失った14歳の少女。
そのショックと見ず知らずの町で、心を閉ざしていた。

物語前半

物語の前半は、キドウとイリの信頼関係の構築と、E-05の住人との交流が描かれる。
荒廃し未来も希望もない世界で人々はたくましく、そして明るく生きている。

素っ気ないと思っていた人が思いやりがあり、自分勝手に見えた人が実は仲間思い。
様々な人物と触れ合うことにより、キドウとイリは次第に心を開いていく。

特に4話は素晴らしい。
イリと子ども達がまたやらかすのかと思ったら・・・

子ども達しか知らない地下道で、祭りのための羊をキッカケに奥(外)へと進ませ、軍の作戦のために情報を提供したりと絡ませ方がお見事。

街を守り切った安心感、祭りが始まった高揚感の中、カシムとリジーの間にあった5年間のわだかまりが解けていく。

そこで起こった悲劇。
カガステルの症状についてここまで一切説明がなかったのは、4話ラストを印象的にするためだったのかと思う程。

キドウはこれまで数え切れないほどのカガステルを駆除してきた。
今更1体増えた所で大差はない。

だけど今回は違う、対象は心を通わせた人。
いくら駆除規約で翼部分が認められた時点で人ではないとされても、相手は人なのです。
紛うことなくカガステルは元々人間なのです。

そして、目の前で起きた現実は告げているのです。

この世界は誰がいつカガステルになってしまうのか分からない、恐怖の上になりたっているのだと。

物語後半

後半は、イリの出自や隠された能力が明らかになり、虫籠の女王として狙われることに。
連れされられたイリを追いかけ、キドウが単身敵陣に乗り込む流れは正に「ボーイミーツガール」鉄板展開!

『虫籠のカガステル』が秀逸なのは、前半キドウやイリの交流相手として描かれた人々が、それぞれ信念を持って自分達の道を進むこと

決して、主人公達や上の人間に頼ったり寄りかかったりはしない。
キドウとイリの無事を祈り、信頼しつつ、自分達が為すべき事をするのだ。

一方の敵側(アドハム/キーリオ)も同様。
カガステルを人間の進化だと捉える研究者。
その息子・キーリオはカガステルの真実を求め続ける。
アドハムはカガステルの因子を持ってない人だけの社会を目指す。

半身カガステルのアハトも幼い頃から人でもカガステルでもないモルモットとして扱われ苦悩してきた。
が、自ら言う、生まれてきたからには生きる価値を探せと。

誰もが満足のいく道を生きるわけじゃない

お前に用意された選択肢の中に望むものはないだろう
そのどれもが、分かりきった終わりしか与えてくれないとしても──

お前は自分で決めるんだ

胸を張って、その結末に真っ直ぐに挑め

小さなボーピープ。
もう羊飼いの夢は終わりだ。

目を開けて、最後まで生きろ

命の価値は自分で探すんだ

by アハト『虫籠のカガステル』アニメ8話

これがこの作品のメインテーマか。

カガステルに怯え、恐れ、平和な生活が許されない過酷な世界でも、生を受けたからには生きる権利があり、選択の自由はある。

作品内のキャラクターは、自分が信じる道を進み、強い力にも真っ向抗う。

それらエピソードが、違和感も中だるみもなく、ましてやサブストーリーに見えないほどしっかりと描かれています。

ちょっとした群像劇。

そう考えると、最終話ラスト、キドウとイリがE-05へ戻らないのもうなずける。
お互いがそれぞれ自立して自分達の道を進むのだ。

前向きで強い人たちです!

『虫籠のカガステル』が描きたかったこととは

『虫籠のカガステル』は終末世界でたくましく生きている人々の物語。

ゾンビ物のようなホラーを期待すると肩すかしを食らう。

それはしばらくすると分かるのだけど、どうしても作品設定やストーリー紹介を読むと、奇病カガステルそのものに興味がいってしまう。

奇病カガステルへの疑問

  • 発症のきっかけは?原因は?感染しないのか?
  • カガステルの因子を持つ人に共通点はないのか?発症条件は?
  • 治療方法はないのか?人には戻れないのか?延命できないのか?
  • 因子を持っているといつかは必ず発症するのか?
  • カガステルになった虫は何を目的とするのか?

通常の作品なら当然触れただろう奇病カガステル関連。

だけど、本作では、これらのことに全くと言っていいほど触れない。

奇病カガステルの原因不明を前提として、解決不能の如何ともしがたい世界の設定の一つに組み込んでいるのです。

つまり──

奇病カガステルを世界設定(舞台)の一つに

  • 奇病カガステルは一度発症すると理性を失い、治療法はない
  • カガステルになると人を襲う
     人を襲う前に駆除するしかない
  • カガステルは既に蔓延している
     外壁の外では自由に行動できない
  • カガステルの皮膚はナイフや銃を通さない
     訓練を積んだ軍と駆除屋の力が強くなる
  • 奇病がいつ発症するのかは不明
     人々は不安と恐怖に苛まされる
  • 因子を持たない人は発症しない

ならばいっそのこと──

因子を持った人を発症させ、
カガステルにならない人だけで過ごせば安心

カガステルが初めて発症したのが30年前。
発症直後ではなく、30年後を描いている。

対処法や治療法など研究しつくされて、このような状況になった時期を舞台に選んだ。
つまり、発症直後のパニックや、人類救済の一発逆転を描きたいわけではない。

この作品での奇病カガステルはもはや撲滅すべき目的ではない。

『虫籠のカガステル』が描きたいことは──
この過酷な終末世界でどのようにして生きていくのか。
そして、因子を持たない人だけの世界を作ろうと暴走する独裁者。

カガステルは、これらを描くための舞台装置の一つなのです。

結果、物語は因子を持たない人だけの世界を作ることを許さなかった。

それは、先に作品のメインテーマだと上げた「生を受けたからには生きる価値を探して最後まで生きろ」。

たとえ将来、カガステルになってしまうかもしれないが、それまでは生を全うしろという強いメッセージ

作品を見ていると、そのように感じてしまうのです。

希望を持たせて欲しかった

だけど、カガステル自体がとても興味を引く設定。
理系の私に取っては、その設定自体に興味を持ってしまう。

舞台装置とするのは、なんとも贅沢で大胆な案ですが、設定自体が気になります。

それだけ奇病カガステルの設定が興味を引くということ。
全面にださず舞台装置にした目的は理解できますが、諸刃の剣ですね。

特に触れて欲しかったのが、奇病カガステルを撲滅できなくても希望を見せる事。

アハトは、半分カガステルが発症しているが、すぐに完全虫化するわけではない。
また、頭まで発症しかかっているが、人としての理性を保っている。

アハトを良い目的で研究すれば、発症しても虫化を抑えられる、または理性を保っておける方法が見つかるのではないか。

イリは、カガステルが発症するタイミングも見通せるようなセリフがあった。

ならば、発症する前に教えてあげ、家族と最後の一時を過ごし、発症時には隔離するなどの方法が取れないのか。

こんな世界でも強く生きている姿が感動的だっただけに、少しでも希望が見える、少しでも悲しみが和らぐ何かを見せてあげて欲しかった。

もう少し心情描写を丁寧に・・・

殺伐とした壁の外とは違い、意外と明るい住民達、子供達にホッとする。
作品が暗くならないのは、彼ら彼女らのおかげ。

反面、物足りない点もいくつか──

イリ

サブキャラを描くあまり、肝心のキドウとイリの描写が物足りない。
イリがいつ何がキッカケでどのようにしてキドウのことを好きになったのかが、よく分からない。

これじゃあ、マリオが言うように、キドウの外見を気に入ったと思われても仕方なし。

また、1話で、イリが虫に襲われなかった理由は、女王だからということで了解。

では、グリフィスが銃をイリに向けた結果はどうなったのかがよく分からない。
このままイリを残してしまうと危険だと判断したグリフィスがなぜ止めたのか?
なぜキドウに母親の元へと依頼したのか。

違うと思うが、イリを殺そうとしたから、グリフィスが虫に襲われたのではないかと勘ぐってしまう。

#どちらかと言うと、イリはグリフィス共々、虫から守ったのでしょう。
#そして、娘のように慕っていたイリを殺すことなどできなかった・・・と言った所か。

街の人々

E-05の街の人々のことがしっかり描かれるのは良い。

が、いつ自分が、家族が、知り合いがカガステルになってしまうかもしれないという、不安に怯えている描写があっても良かったのでは?

どちらかと言うと、平和そのものでお気楽な連中に見えてしまいました。
開き直っている、気にしたって仕方がないならないで良いので。

3DCG

好みの問題かもしれませんが・・・

3DCGで描かれる人物は、表情が今一つ分かりにくい。

キャラクターの感情を、セリフや周りの説明がないと分からない時がいくつか。

表情以外はとても良かったです。
アクションシーンはよく動いていたし、3DCGの欠点である軽さを感じることもありませんでした。

人物以外の描写はキレイでしたしね。

Netflix制作・配信の利点

『虫籠のカガステル』はNetflix制作でNetflixのみで配信(2020年3月時点)。

TV放送できないほど過激な描写があるのかと思ったら、そうでもない。
#今どき、この程度の描写はTV放送でもあります

私の推測ですが、
TV放送できないからNetflixが制作したのではなく、単に先にアニメ化権を取得したのでしょう。

Netflixは日本だけではなく世界中の視聴者をターゲットにしているので、海外受けするアニメ化候補を探した結果か。

実際、『虫籠のカガステル』は、日本以外の対応もしている。
音声は英語、ポルトガル語。
字幕は英語、韓国語、中国語、ポルトガル語。

各話の尺を気にせず作っているのはうれしい。
1話は33分(OP/ED含む、以下同様)、4話は28分など、通常アニメの23分を超える話数は多々。
ネット配信なのだから枠にこだわる必要性はないのだ。

また、1週間ずつ公開されるのではなく全話一斉配信されるのも一気見派の私にとってありがたい。
この手の先が気になる作品であれば特に。

こういう点を見ると、動画配信制作も「あり」ですね。

おわりに (『虫籠のカガステル』とは)

いつ誰がカガステルになるのか分からない。
明るい未来が見えない世界でも、怯えずに懸命に生きている人たちの物語。

カガステルが発症すれば誰であろうと容赦なく駆除される。
残酷で暗くなりそうな設定だが、明るく程よい前向きさのキャラクター勢で救われる。

キドウとイリのボーイミーツガールはきれいな着地。
E-05の住民も自分達の居場所を守った。

サブキャラまで含めた各人のドラマをきっちり決着つけた脚本はお見事!

原作は既に完結し、最後までをアニメ化してくれました。

だけど、それでも続きを見たい!
カガステルのことは謎だらけだし、軍の中枢に、極東のその後だって気になります。

まだまだネタはあり、同じ世界観で物語が作れそう。

ぜひ、続編を期待したいですね。

以上、アニメ『虫籠のカガステル』の感想レビューでした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。

ではでは。

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