こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『慎重勇者〜この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる〜』最終話まで鑑賞しました。
原作はWeb小説サイト「カクヨム」にて連載中のライトノベル小説。
書籍化もされ現在7巻まで刊行。(2019年12月時点)
アニメ化されたのは1、2巻の「ゲアブランデ編」。
タイトル通りの物語。
少し下品で、グロいシーンもありますが、基本的にはコメディ要素多め。
気楽に見て良いかと。
では、TVアニメ『慎重勇者〜この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる〜』感想レビューをどうぞ。
- 「はじめに」は【ネタバレなし】
- 「感想レビュー」「おわりに」は【ネタバレあり】
はじめに
舞台は神がいる「統一神界」と異世界「ゲアブランデ」。
この世界には無数の人間世界があり、魔王や邪心の危機があるときのみ神が「ある手段」で介入することができる。
その手段は、別の人間世界から人間を召喚し、勇者として派遣すること。
主人公・竜宮院 聖哉(りゅうぐういん せいや)は、難易度S級レベルの世界を救済するために新米女神のリスタルテに召喚される。
『慎重勇者〜この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる〜 (以降「慎重勇者」)』。
タイトルを聞いただけで、なんとなく内容が分かる作品。
確かにその通り、ステータスが高いのに、慎重すぎてなかなか魔物退治に出かけない。
そんな勇者に振り回されっぱなしの新米女神と仲間達の物語。
だけど、ただ単に、強い勇者が慎重に物事を進めていくだけの話ではありません。
実によく考えられてます。
バカバカしいと思いながら見ていると「なるほどそう来たか」と思わせる展開あり。
その辺が面白く、他の異世界物とは違う、独特の魅力を見せてくれます。
特に終盤は見ごたえあり!
少しグロいシーン、下品なシーンは多々ありますが、基本は笑って見られます。
お気軽にどうぞ。
そうきたか、と言う「意外性」もあるので、ぜひ事前情報なしでご覧ください。
感想レビュー (以降、ネタバレ全開です)
「俺TUEEE」ではない
『慎重勇者』は地上世界「ゲアブランデ」の魔王を倒す物語。
勇者と女神に与えられた目的は、いわばRPGもの。
死ねば元の世界へ戻る、リアルRPGというわけだ。
新米女神のリスタも、主人公・聖哉に、治癒の女神である自分がいるのだからゲーム感覚でモンスター退治するよう促す。
ところが”ありえないくらい慎重な”聖哉は、すぐには地上世界へは行かず、統一神界でトレーニングを積むと言う。
充分すぎる位のレベル上げと、スキルを修得してようやく地上世界へ降りる。
結果、初バトルにも関わらず、モンスターを一瞬で倒す。
#相手は最弱モンスター「スライム」ですが
なるほど。
『慎重勇者』は、どんなフィールドでも、ありえない程レベル上げをして圧倒的強さで倒すパターンかと思った矢先・・・
最初の町にも関わらず、魔王軍四天王が現れる。
そう。
『慎重勇者』は圧倒的に強い主人公が敵を軽くぶちのめす展開ではありません。
女神リスタの常識目線で言うと”充分すぎる程の準備を整える”が、”想定以上の敵が出現”。
ところが(リスタも知らない)”それ以上の対策を練っていた”聖哉が敵を倒す展開なのです。
普通の作品でも、この手の展開はあるが、頻度が少ない。
『慎重勇者』は、毎度この戦いなのです。
毎回、中ボス戦をやっているような重い戦闘が見所。
#戦闘以外はユルいですけどね。
#あ、戦闘シーンでも会話は口が悪いか、ユルいか(笑)
勇者も敵もセオリー無視!これが魅力!
ゲームには「ゲームバランス」と言う要素があります。
「ゲームバランス」
ゲームの難易度や快適さ、操作性のバランス。
ゲームは簡単過ぎると面白みがない。かと言って難しすぎると楽しめない。
他にも無駄にレベルアップの手間や時間がかかったり、変化が少ないと飽きてしまう。
これらを総称して、ゲームバランスが良い、悪いなどと言う。
RPGゲームは、出会う敵が強すぎるとやる気がなくなり、敵が弱すぎると倒しても達成感がない。
非常にバランスが難しい。
『慎重勇者』をRPGゲームに例えると、せっかくバランス良く、敵を作ったのに・・・
#正確に言うと、大女神イシスターの調整で弱いモンスターしかいない町へ降り立った
聖哉は町へ行く前に、上げられるだけのレベルアップ、スキル修得をしてきた。
だから、周辺のモンスターなんて楽勝と思われた。
ところが、魔王軍四天王がいきなり現れる。
さらに、四天王は最初の見た目だけでなく、奥の手まで持っている慎重さ。
そうです、元々基礎ステータスが高い聖哉が、さらに訓練し慎重に挑めば楽勝かと思っていたら、まるでゲームバランスを整えるかのように、敵も強くずる賢い。
展開上は、魔王が勇者召喚の兆しを事前に感知して、弱いモンスターが生息する地域に当たりをつけ四天王を派遣したという。
これが難易度「S」ランク!
実によく考えられた、ゲームバランスの良い展開なのです。
勇者が「ありえないくらい慎重」なだけでは面白くない。
敵も「ありえないくらい」の何かをしてくるから面白いのです!
勇者だけでなく敵もセオリーを無視してくるのが『慎重勇者』の秀逸なところです!
これは慎重になるでしょう
聖哉が「ありえないくらい慎重」な訳は終盤で明かされます。
でも実は、この設定なら聖哉でなくても慎重でなくてはなりません。
- 勇者が死んだら勇者自身は元の世界へ戻り、同じ世界へ行くことはできない(1話)
- (勇者の派遣は一つの危機に1度しかできない)
- 勇者が(一度でも)死ぬと、その世界の救済は「失敗」
要は、召喚した勇者が死んでしまうと、救済は失敗。
その世界は魔王に支配され、人間は滅びるのです。
つまり、その世界の人の命を賭けた、一度もゲームオーバーになってはいけない、RPGゲームなのです。
一度も死ねないなんて、私だって慎重になってしまいます。
疑い深い聖哉が慎重になるのは当たり前!
にもかかわらず、ゲームをするかのように勇者を派遣し、気軽に地上世界を冒険させる女神リスタ。
新米女神の彼女は、世界を救うことを、楽しい冒険のように捉えています。
真面目に考えると、救世難度Sレベルを、こんな新米女神に任すのは間違ってます。
リスタが選ばれたのは、クジなのか、順番なのか?
説明はないが、リスタを意図的に選んでいる様子。
神は、地上世界の命を軽く考えているのか、それとも絶対救うと言う考えではなく、救える救えないのも運次第なのか。
好意的に考えると、リスタに試練を与えるため、難度Sレベルを与えているように思います。
この辺のロジックをもっと知りたいですね!
慎重になる理由があった
11話で明かされる、聖哉の過去の勇者時代。
統一世界で100年前。(現実世界では時間の流れが遅く1年前)
当時の聖哉は、とても向こう見ず。
レベル上げも情報収集も嫌い、とにかく前へ進んでいた。
結果、その世界の救済に失敗。
恋仲だったティアナのお腹に子供まで宿しながら、目の前で惨殺されてしまったのだ。
聖哉は、その時の経験がトラウマとして魂に刻み込まれ「ありえないくらい慎重」な性格になったのです。
伏線はいくつも散りばめられてました。
封印の女神アリアドアが聖哉を初めて見たとき驚いたり、急に親しげに話しかけたりは分かり安い。
6話「竜の洞」編最後、本物の「聖剣イグザシオン」を手に入れられなかった時、聖哉らしくないセリフ「ガナビー・オーケー、なんとかなるさ」と言う。
4話、聖哉との訓練で性格が変わってしまった男神セルセウスのことを聞いた大女神イシスター様のセリフで、魂に深く刻まれると、転生して記憶がなくなっても残っていることが明示。
無論、転生時に人間の時の記憶は失われました。
しかし、魂深くに刻まれた思いはなかなか無くなりはしません。過酷な稽古を強要され、彼の弱い部分が魂からあふれたのでしょう。
by イシスター『慎重勇者』TVアニメ3話
続いて、7話のロズガルド帝国の姫で守備隊長のロザリー=ロズガルドを聖哉がビンタしたシーン。
聖哉が正論を言ってるのも分かったし、ロザリーが無謀なのも分かります。
が、それでも最初見た時、私はリスタ同様、あまりにこれは酷い・・・と思ってました(苦笑)
これも聖哉の前回の勇者の記憶がそうさせていたのです。
お前こそ、人の命を語る資格などない。
兵士達は殺されたのではない。
お前が殺したのだ。お前の無策さこそが、このような死体の山を築いているのだ。
-中略-
気付いたら殴っていた・・・
あの女を見ていると無性にイライラしてしまうのだ。
あの考え方に腹が立った。
勝算もないくせに前へ前へ進もうとする。それがどんな犠牲を伴うかも考えずにだ。
by 竜宮院聖哉『慎重勇者』TVアニメ7話
聖哉は彼女に「以前の自分」を見たのです。
見通しも立てず、とにかく早く魔王を倒したいと、力技とセンスで進んでいく。
結果、取り返しの付かない結果となってしまった。
聖哉の魂の深くに刻まれた、向こう見ずな性格への”後悔”が蘇り、ロザリーを見て無性に腹がたったのです。
このシーンは誤解されそうなので、回想でも良いので、フォローして欲しかったですね・・・
ラストの展開がお見事
聖哉がリスタ、マッシュ、エルルを置いて、一人で魔王の元へ向かった理由。
聖哉と新米女神リスタの過去。
聖哉が「ありえないくらい慎重」な理由。
畳み掛けるように新事実が出てきたシーンから、逆に彼女達が聖哉を助けに行くくだりは胸アツ展開でした。
上手いのは、そのシーンまでどうして聖哉がこれだけ慎重なのかを考えさせないようにしたこと。
病的なまでの慎重さを笑いの要素とし、有無を言わさない聖哉の個性とした。
慎重さを聖哉の潔癖な性格とし、深く問わない。
なにせ、そのありえないくらい慎重な性格のおかげで、これまたありえないくらい入念に準備した敵をなんなく倒していく。
そんな成果を見せられると、女神リスタも仲間も、聖哉の慎重さを否定できない。
聖哉の病的なまでの「ありえないくらい慎重」な性格は、救済難度S級を救済するには必要だと認められ、彼のアイデンティティとして確立させたのです。
視聴者へそこまでしっかり落とし込みをした上で、聖哉は既に勇者経験があった、リスタの前世と関係があった、記憶はないが慎重な性格になるような経験があったことが明かされる。
統一神界で鍛錬し、目一杯能力を上げて、敵に挑む。
このパターンの繰り返しだと思い込まされていた。
#繰り返しでも良いと思うほど、次から次へと出てくる神様が楽しい
そこへ、魂が元の世界へ戻らない「チェイン・ディストラクション」攻撃に良い対策も見つからないまま、単身乗り込む聖哉。
慎重な聖哉らしくない行動で緊迫感を高めた所での暴露!
お見事でした!
新米女神リスタの成長物語
私は、先ほど難易度Sは新米女神のリスタには荷が重すぎ、神界の判断ミスではないかと書きました。
が、ここまで見てくると──
神界はリスタにワザと困難な難易度の世界を任せたのではないでしょうかとの解釈もできそうです。
一度失敗させ、命の重さと、女神に課せられた責任の重さを認識させるために・・・
優秀なアリアですら失敗をしている。
ただ1度だけ・・・
いえ、1度の失敗を、ずっと悔やんでいる様子。
だからマリアは慎重になり、それ以降は失敗していないのでは?
最初は、世界の救済をRPGゲームや冒険のように捉え、楽しんでいたリスタ。
聖哉を急かし、まるで失敗しても問題ないかのような言動のリスタ。
最後は、リスタは自分の命も女神の規則も気にせず、聖哉を助けに行く。
たとえ、自分の女神の地位が危うくなろうとも・・・
聖哉のことが好きで起こした行動かもしれません。
が、聖哉を通して勇者の重要さを、十二分に実感したリスタ。
聖哉が命を賭してまで守った世界。
平和となった世界、成長したマッシュ、エルルを見ているリスタは、まるで”本当の女神”。
本作の主人公は聖哉かもしれませんが、一番成長したのは女神リスタではないでしょうか。
きっと彼女なら今後は良い女神となるのでしょう・・・
でも、下品・・・失礼、女神の威厳を捨てた言動と変顔は、作品の見所でもあるので、続けて欲しいですね(笑)。
おわりに (『慎重勇者〜この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる〜』とは)
いや~~気軽に見始めたら、最初はなかなか進まないし、イラッと来るところありました(苦笑)。
異世界物の楽しい部分を見せてないですからね。
見たことがない景色や人種や文化を楽しむ様子。
モンスターを倒す爽快感。
レベルアップしたときのうれしさ。
#本作では、気がついたら既にステータスは高い
などなど、あらゆる面から異世界物のセオリーを破ることに狙いを付けている。
それが分かると逆に、次に何をしてくれるのか楽しみに♪
終盤のシリアス展開へ行くまでに、バカバカしい展開の中で、丁寧に情報と事実を積み重ね説得力を持たせていく。
とにかく上手い!
原作者・土日月先生に俄然興味湧きました!
原作はまだまだ続いているとのこと。
ぜひ、続編を見たい!
ただ今回は、勇者の召喚と女神の転生の仕組みを上手く使い、主人公の根幹を成す「ありえないくらい慎重」の理由をラストに重ねて持ってくると言う、一度限りのワザ。
続編は、ある程度種明かしされている段階からのスタートだ。
今回のように「そう来たか」と言う驚きを作るのは難しい??
でもこれだけの「慎重」な勇者を生み出した作者だ。
きっと作者も「慎重」に違いない。
「レディ・パーフェクトリー(準備は完全に整った)」だから、原作も続きがあるのだろう。
TVアニメ2期期待したい!
以上、TVアニメ『慎重勇者』の感想レビューでした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
ではでは。
統一神界の時間経過は1/100。
いいなぁ・・・