アニメ【不滅のあなたへ】3期8話感想＆考察 姿変え夢叶えてあげるも、それはただの自己満足？失った物は取り戻せない…

「ほったらかしにして」というのは、3期4話でフシと交わした ──

何も解決してないでしょ？
だから、毎日放課後ここ(神社)に集まって、いっぱいお話ししよ。

by ミズハ『不滅のあなたへ Season3』TVアニメ第4話

この約束のことを指しています。

ただ、ミズハのことです。話をすることだけでなく「私と友達になって」「私をかくまって」ということもフシは了承してくれた。だから、自分のあらゆることが解決するまで、フシを何かにつけて引きつけておきそうな勢いですね・・・。

(原作情報) 原作では「私を助けに来てくれたなら、最後まで見届けて」とまで言っています(苦笑)。

では、どれくらい「ほったらかし」にしていたかというと ── アニメでは構成が変わっていて時間の流れが分かりにくいですが ── 実は2日間だけです。

(原作情報) 原作には「っていうか、2日も私をほったらかしにして～」と書かれています。

実は、その間、フシは学校へも行っていません。

その2日間とは ── フシがみもりと接触し、そこに現れた少年(観察者)を捜し出して接触。その後、ウミガメになって海を彷徨っていた時のことです。

ただ、2日間学校へ来なかったら、「ほったらかし」たことではなく、学校へも神社へも姿を現さないフシのことを心配するのが筋だと思いますけどね・・・。

ココア

あっ、確かに

フシは、ここでユーキと話したことで、二人でノッカーを探しに行くと再確認します。さらに(アニメではカットされていますが)、ボンシェンから学校には行くよう諭されたので、フシは授業を受けていたのです。

前項は過去エピソードとして挿入していますが、このシーンは原作とは時間軸の位置が完全に入れ替えられています。

原作　　　　　　　　アニメ
偽にせみもりバトル前　⇒　偽にせみもりバトル後

その辻褄を合わせるかのように ──

ビックリしたじゃない。大丈夫、フシ、もういいの？

by ミズハ『不滅のあなたへ Season3』TVアニメ第8話

このセリフで ── まるで、ミズハが心配してユーキの家に来たような流れになっているのです。

原作にはありません。アニメオリジナルセリフです。

前項のシーンと続けて描くことで ── ミズハに「フシを心配している」という口実が生まれ、堂々とユーキの家に行ける構図が完成しています。上手い改変です！

というか、周囲に人がいる状態で ──

俺が心配じゃないのかよ！ 頭やられてたら死んでた！

by フシ『不滅のあなたへ Season3』TVアニメ第8話

自分の弱点を大声でさらすフシ・・・。フシは強く不死身ですが、こういうところが本当に抜けています・・・。

相手が子供だから問題ない？
いいえ、ノッカーが乗っ取っているみもりも観察者も外見は子供で、一見して違いは分かりません。

時文

それに、近くにいた少年、OPでも意味ありげに描かれていたような…

マズいことにならなければ良いのですが・・・。

私にできるのは、周辺の人間に干渉し、違和感を感知することだ。

by サトル(観察者)『不滅のあなたへ Season3』TVアニメ第8話

今の観察者にできるのは、この「周辺の人間に干渉し、違和感を感知すること」だけ。

違和感を感知して、偽にせみもりを見つけていたのです。

確かに、みもりの初登場シーンで、サトルは彼女をジッと見ていました ──

あんま、見たらあかんて。行こ、ご飯の時間やで。

by スミカ『不滅のあなたへ Season3』TVアニメ第4話

この時に、みもりに干渉して違和感を確かめていたということですね。

時文

フシには真似できないのかな？

言葉通り捉えると ──
この世界は、フシが望むような平和な世界(ノッカーがいない世界)ではないものの、最も良い、少なくとも最もマシな状況？

確かに、この世界は一見平和です。
物は溢あふれ、皆きれいな格好をして、思い思いに過ごしているようです。

だからフシは「おれが待ち望んだ世界が、ここにはある」と判断し、眠りから覚めたのでしょう。(3期1話 )

でも実は、ノッカーはまだ生き残っていた。それどころか、死んだ人の体を使って、人間として生きている・・・。

これのどこが「最善」なのでしょうか？

ココア

うん、怖すぎる！

いや・・・。
そうでしょうか？

ココア

えっ、違うの！？

具体的に、見てみましょう。

ミズハは、今話でも言いました ──

── どう？お母さん、変わりない？

うん、すっごく優しい。びっくりするくらい平和。

by ミズハ『不滅のあなたへ Season3』TVアニメ第8話

つまり、本物のママよりも、(ミズハは知りませんが)ノッカーが乗っ取ったママの方が良いと感じているのです。

ココア

いや、それはそうだけど…

はい。
何か釈然としないですよね。

ノッカーに乗っ取られた存在であり、明らかに本物じゃない。だけど周囲は満足している。

周囲の人にとっては「自分にとって都合の良い人」こそが「最善」？

前話レビュー で深く考察しましたが、つまり、今のこの状態こそがノッカーの狙いなのかもしれませんね・・・。

ココア

怖ッ！
ノッカー、やっぱ怖ッ！

もし私の仮説が正しいとしても、まだ腑に落ちない点がいくつかあります。

観察者は、これが本当に最善だと考えているのでしょうか。
それとも、ノッカー殲滅の難しさから妥協しているのでしょうか。

そして、ノッカーは、この状況を超えるさらなる野望を秘めているのではないでしょうか・・・。

時文

まだ何かありそうだな…

フシは、今までのノッカーからは痛みを感じませんでした。

これは、ノッカーがそもそも痛みを感じていないのか、それともフシがノッカーの痛みを感じ取れなかったのか、どちらでしょうか？

ヒントとなるセリフが2期にありました。

私達は感情でやりとりします。

常に痛いは悪、辛いは悪だと信じてきました。
そんな悪をもたらす身体というものをノッカー達は許せないのです。

by 左腕のノッカー『不滅のあなたへ Season2』TVアニメ第14話

ノッカーは「痛い」「辛い」は悪と考え、それをもたらすのは身体だ、と言っています。

ということは、身体を持たない(以前の)ノッカーは、痛みや辛さをそもそも感じていなかったわけですね。

つまり、今回ノッカーが痛みを感じているのは、人間の身体を乗っ取っているから、ということになります。

あれ？？
そう考えると、何か変ですね・・・。

ココア

ん？何が？

ノッカーが、それほどまでに嫌っている「痛み」。
なのに、なぜ「痛み」を感じてしまう人間の身体を使うのでしょうか。

ココア

あっ・・・確かに、何で！？

痛みを我慢してでもやり遂げたいことがある。あるいは、人間になっても痛みさえ感じなければ良いのだから、暴力や事故のない世界を作ろうとしている・・・。

時文

あれ？それってノッカーが人間になりたいってことなんじゃ…

となると、確かに観察者が解けないのは不思議ですね。人間になったことで、能力だけでなく知能も(年相応に)低くなってしまったのでしょうか・・・。

人間になってしまったから劣ってしまった。
いや、逆もあります。能力が劣化してきたから、人間になったのかもしれません。

ココア

あっ、そういう可能性もあるのか…

そもそも観察者はなぜフシを生み出したのでしょう？

2期でボンシェン達が聞き出した情報がヒントでしょうか。

「不滅のあなたへ/alu.jp」より引用

私は見届けるのみだ。フシが私のやっていることの全てを獲得するのを。

– 中略 –

フシは、いずれ私の代わりを果たす。そのとき、私はいなくなる。

by 観察者『不滅のあなたへ Season2』TVアニメ第14話

観察者は、フシを自分の後釜にしようとしているのです。
だから、一度渡したら取り戻せないと分かっていながら、フシに再接続の能力を渡したのです。

失ったのは、再接続の力だけではありません。

── ってか、ケガしてたの？あいつが！？

すっとぼける気か、てめー！ たんこぶとすり傷ができてんだよ！

by スミカ『不滅のあなたへ Season3』TVアニメ第8話

スミカが言っているのは、レストランでフシがサトルを突き飛ばした時のこと。

サトルがケガをしているのです。

人間だから当たり前ですか？
いいえ、サトルは腐っても観察者です。フシを作り出した観察者です。フシは不死身で、ケガをしても勝手に治ります。

どうやら、観察者は治癒能力も失ってしまったのです。

ココア

フシが少し驚いてたのはそういうことか～～

時文

まさか最初からなかった、なんてことはないよな…

もしかすると、神のような存在である観察者にも、寿命のような限界があるのかもしれませんね・・・。

その前にフシに能力を渡しておき、自分は人間となって余生を過ごそうとしている・・・。

いや、なんで！？

ココア

えっ、まとまったと思ったのに！？

いや、だとしたら、いっそ全ての能力を渡すべきです。
フシは観察者と違って、時間を止めることも、人間から姿を隠すこともできません。

ココア

あっ、確かに！

全てを与えるのはフシのためにならない、と観察者は考えているのかもしれません。

だとしたら、この後も何か策を用意しているはず。つまり、今非協力的なのは、試練の一環ということになります。

もしくは、渡せるものは全て既に渡し終えていて、あとはフシ自身の成長と創意工夫次第、ということでしょうか・・・。

ミズハの母イズミも、今のままで良いと言いました。(3期5話 )
決して、偽にせイズミの方がミズハにとって良いという意味ではありません。これは、霊体のままでいる方が自由に動け、娘を助けることができるからです。

でも、みもりの場合は違います。霊体でいる方が都合が良いのではなく、純粋に偽にせみもりのままの方がいいと考えているのです。

なぜでしょうか？

当たっているとネタバレになってしまうので隠しておきます。気にならない方だけご覧ください。

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みもりは学校でいじめられ、友達もいません。悩んではいるものの、自分の性格を簡単に直すことなどできず、解決の糸口も見えません。

ところが偽にせみもりは、環境は何も変わらないのに、友達を作り、(恐らく)いじめもなくなった。

父親が変わったことや転校で体操服が替わった等の環境の変化が、自分がいじめられる原因だと思っていたが、そんなの関係なく偽にせみもりは溶け込んでいったのです。

これは、当人にとって相当ショックなのではないでしょうか・・・。

ココア

確かに…

そして、ここからが重要です。

そんな偽にせみもりを見て、母親や義兄も、以前ほど心配しなくなったのではないでしょうか。

時文

実際は、兄ひろとしは心配してるんだけどね…

はい。
みもりは、家族にこれ以上迷惑かけたくないので、偽にせみもりを倒さなくていいと言っているのではないでしょうか。

ココア

そういうことか～～でも、それって…

はい、全然釈然としませんね。

肝心なのは ──
当のみもりが、どう思っているか。

先に書いたことは、あくまで周囲に迷惑をかけていないということであって、本人の幸せとは別問題なのです。

みもりは、それで幸せなのでしょうか。それで満足なのでしょうか。

そもそも、もし満足しているのなら、なぜこの世に留まっているのでしょうか。未練があるから、気になることがあるから、この世に残ったのではないのでしょうか。

潔いというか、何というか・・・。
バレてしまったあとも取り繕おうとはしない。義兄ひろとしには口止めはするものの、始末しようとまではしない。

つまり、攻撃対象はあくまでフシだけ。ただし、フシに対してもゲーム感覚で挑んでいるようにも見えるので、殺す気があったかは定かではありません。

この辺の行動原理は、まだまだ今一つ掴みきれませんね。

リガードは生前 ──

「不滅のあなたへ/alu.jp」より引用

リガード、あいつに付いていきな。向こうの世界は、ここよりずっと自由だ。

by トナリ『不滅のあなたへ』TVアニメ第19話

トナリは、いずれフシの所へ案内してもらうために、リガードにフシに付いていくよう命じました。

リガードはその命令を忠実に実行し、2期1話ではトナリを導きました。

そして死後もずっと ──

空を探してみて、大きな鳥が一羽飛んでる。

その下にフシがいる。

by トナリ『不滅のあなたへ Season2』TVアニメ第4話

フシの頭上を飛び続けて目印になっていたのです。

そのため、フシを見つけることなど、トナリとリガードにとっては容易たやすいことなのかもしれませんね(笑)。

トナリにとってミァとウーパとウーロイは、家族同然の仲間です。誰よりも大事に思っています。その仲間たちがノッカーに体を乗っ取られ、夢を叶えることなく殺されてしまったのです。

「不滅のあなたへ/alu.jp」より引用

フシが大切な仲間の体を使うなら、大事にして欲しいと思っているでしょう。

なのに ──

こいつ、あたしの友達を色恋に利用しやがった。

by トナリ『不滅のあなたへ Season3』TVアニメ第8話

フシが恋愛の道具みたいに使ったように見えてしまったのです。

トナリからしたら、これは仲間への最大の侮辱です。愛情が深いぶん激しく怒りがこみ上げてきたのでしょう。

一方、フシは決して理解していないわけではありません。これまでのエピソードで描かれていますが、むしろ内心では葛藤していたのです。

2期1話では ──

「不滅のあなたへ/alu.jp」より引用

急に罪悪感に襲われたりもした。
皆の死を使って生きている自分が嫌だったんだ。かといって・・・皆を失うのも嫌だった。

by フシ『不滅のあなたへ Season2』TVアニメ第1話

フシは皆の体を軽んじてなどいません。むしろ、仲間の体を使って生きていることに、深い罪悪感を感じていたのです。

ですが、フシはそれを乗り越えてきました。
いや、乗り越えさせられた、乗り越えるしかなかった、というのが正しいですね。

フシは長い間ノッカーと戦ってきました。皆の器はノッカーと戦うための手段です。皆に申し訳ないと思いながらも、これ以上の犠牲を出さないためには仕方なかったのです。

こうして、かつての仲間の体は、フシの武器であり防具、ちょっと嫌な言い方をすると・・・道具になってしまったのです。

加えて、フシの恋愛に対する理解の不足が、問題をさらに複雑にしているのです。

前々話ラスト ──

「愛を教えて」と言いながら、次話になったら偽にせみもりですっかり頭が一杯になるほど恋愛に無関心です(苦笑)。

だからトナリがどう思うか気にもせず、ミズハとデートしてきたと軽々しく口にして、ウーパやウーロイやミァのことを悪びれることなく話し出す。

外から見ると、それがデートであり色恋に見えることを全く自覚していないのです。

ココア

確かに…

まとめましょう。

フシは、トナリの友達をバカにしたわけでも、色恋に利用したわけでもありません。

しかし、トナリから見ると、体の持ち主への敬意が足りず、友達の人生や想いが軽んじられているように見えてしまったのです。

つまり、フシがやっちゃったのは ──

• トナリの気持ちを想像しきれなかったこと
• 体が誰のもので、どう扱われるべきか、ちゃんと考えきれなかったこと

トナリの左手にはミズハがあげた髪飾りがありました。まだ髪に付けるまでは心の整理が付いていないのでしょう。照れくささもあるのかもしれませんね(笑)。

トナリはトナリなりに、この世界に馴染もうとしています。フシに寄り添おうとしているのです。

それなのに、フシは ──
平和な世界にしてトナリ達を幸せにする、と考えてはいますが、フシ自身の行動がトナリを不愉快にさせているのです・・・。

今回トナリとフシがぶつかったのは、単なる誤解ではなく、二人が普段から抱いている価値観の違いが露呈したのです。

私は、この章の見出しを「手にした器は誰のもの？」としました。その答えで締めることにしましょう。

手にした器は誰のもの？

フシ：使命と戦いの為の”贈り物” (自分の物)
トナリ：大事な友達”そのもの” (借り物)

このギャップが、今回ぶつかってしまった根本原因ではないでしょうか。