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こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『小市民シリーズ』第2話「おいしいココアの作り方」を鑑賞しました。
本レビューではアニメ感想だけではなく、原作情報も加え、個人的な解釈による解説・考察をしています。
皆さんの理解の助けになり、作品をより楽しんで頂ければ幸いです。
今回アニメ化されたのは──
- 小市民シリーズ第1弾『春期限定いちごタルト事件』
-
「おいしいココアの作り方」
今話の主なトピック (クリックすると該当項目へ)
- 原) 変装とは?
- 原) 小佐内さんは、なぜ小鳩が近づいたのに気付いた?
- 原) 小佐内さんは、おねだり上手?
- 原) なぜ小佐内さんまで誘われた?
- 小佐内さんは、なぜ席を立った?
- 堂島は、なぜ小鳩を呼んだ?
- 小鳩は、なぜトイレの前で佇んでいた?
※「原)」は原作情報を根拠の中心にして考察しているトピック
今話で解決しなかった疑問
最下部「疑問点まとめ (Q&A一覧)」に記載
本レビューの方針
本レビューは、次話以降のネタバレなし
アニメ『小市民シリーズ』の原作は、米澤穂信先生の小市民シリーズ第1弾『春期限定いちごタルト事件』、第2弾『夏期限定トロピカルパフェ事件』。
私は、2作とも未読です。
アニメ鑑賞後、アニメ化済み時点までの部分を読み、レビューを作成しています。
よって、次話以降のネタバレはなしなので、ご安心ください。
アニメ鑑賞
+
原作小説を読み
知り得た情報を加味して「感想・解説・考察」
原作小説の情報は、「原作情報」として区別できるよう表記します。
こんな感じです
緑系の色を目印にしてね!
引用部分も次のように緑系をワンポイントに ──
これは、推理の連鎖で片がつく。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
ちなみに、考察や解説、疑問はオレンジ系 ──
それ以外は、補足や余談、参考情報はブルー系 ──
読む際の目安にして下さい。
全10話 各話リスト
※話数:リンクは各話レビューへ
※サブタイトル、原作小説:ネタバレを避けるため次話以降はマスク
※原作小説:S1(シリーズ第1弾)「春期限定いちごタルト事件」
はじめに
日曜日、堂島健吾の家に誘われた小鳩と小佐内は、おいしいココアを振る舞われる。
台所へ行くと、健吾の姉・知里が、弟がどうやってココアを入れたのか不思議に思っていた。
違いが分かる男・堂島健吾。
いや、全然違いました(笑)な2話。
えっ、自転車泥棒(+春期限定いちごタルト器物破損)は放置!?
警察に届けているのかも不明・・・。
堂島が小佐内さんまで家に呼んだのは、てっきり自転車盗まれたのは自分にも責任があると詫びる展開かと思っていたら、謎でも何でもない疑問に議論・・・。
なんじゃこれ・・・。
なんとも掴み所のない作品ですね。
うん
ココアは美味しそうだったけど、だから何?って感じ(苦笑)
そうだね
自転車泥棒の後にそんな事!?…というのとココア話少し引っ張り過ぎだね
ただ、原作を読むと、小鳩をなぜ家に呼んだのか、なぜ小佐内さんまで誘ったのか、ここでなぜココアの入れ方に拘ったのか、(メタ的な)理由も見えてきました。
でも、牛乳は使う分だけ温めましょうね。
ホント、それ!
では、今話を振り返っていきましょう!
感想&考察レビュー 第2話「おいしいココアの作り方」
休日
ある日曜日、小鳩は商店街で小佐内を見かける。
変装
変装。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
小鳩は、なぜ小佐内さんを見つけるなり「変装」と言ったのでしょうか。
原作によると、小鳩は休日に小佐内さんと出かけたことはないようです。
よって、小佐内さんの印象はセーラー服。
セーラー服をまとった小佐内さんは存在感を押し殺し、「陰鬱」「地味」「どんより」といった言葉がよく似合う。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
アニメだと全くそんな印象ありませんが、どうやら小佐内さんは「陰鬱」「地味」「どんより」というイメージだそうです(笑)。
え~そんなことないよー
休日姿の小佐内さんを見かけた小鳩は、ここまで言っています ──
「普段は元気な女子高生、でもきょうはちょっとアンニュイなの」といった風情だ。クラスメートに目撃されても、ちょっと見にはこれが小佐内ゆきだとはわかるまい。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
クラスメイトが見かけても小佐内さんだと分からない!?
アニメだとそこまで分かりませんが、実際にはそこまで印象が変わっていたのです。
だから「変装」と言ったのです。
小市民を目指している小佐内さんは、学校では目立たないよう「陰鬱」「地味」「どんより」なイメージに徹しているのではないでしょうか。
小佐内さんなりの小市民演出でしょう。
誰にも会わない時は、その演出を解いているのでしょう。
というのが原作を読んだ解釈です。
が、アニメはそうはいきません。
アニメ表現されると、女子は皆可愛くなりますよね(笑)。
ヒロイン的立場であれば、尚のこと。
ヒロイン的存在でもある小佐内さん。
陰鬱で地味なキャラクターデザインにはできなかったのではないでしょうか。
そうすると、原作通りのセリフと乖離が出てしまうのです。
だからと言って、小佐内さんの学校での雰囲気をもっと地味でどんよりさせるのはは・・・。
悩ましいですね(苦笑)。
逆に、堂島の家に行くのにわざわざ着替えたのは、学校での(小市民)イメージにするためですね。
どっちもカワイイ!
うん、全然陰鬱じゃないよね(笑)
気配に敏感な女?
偶然だね、小鳩くん。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
背後に小鳩が近づくと、声も掛けてないのに小佐内さんに気付かれてしまいます。
小鳩さんは、末は格闘家か暗殺者?(笑)
人の気配を察知できる能力の持ち主!?
これが小佐内さんが隠している才能?
このちょっとした振る舞いが何かの伏線!?
と考えましたが、原作読むとまったく違いました(汗)。
「これのモニタを見てたら、後ろが見えたの」
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
何のことはない、携帯画面を見てたら人影が映ったので気付いたのです。
アニメでは大幅カットされましたが、原作には1話「羊の着ぐるみ」と2話「おいしいココアの作り方」の間にはもう一つエピソードがあります。
その中で、小鳩は小佐内さんに知らぬ間に背後に立たれ何度か驚かされます。
今回は、小鳩がその仕返しをしようとした気がします(笑)。
春期限定いちごタルト事件
小佐内:買い物でもしてたら気持ちが楽になるかなって。
小鳩:そうだよね。自転車といちごタルトを同時に盗まれるなんて、滅多にあることじゃ・・・。
小佐内:そうじゃなくて。そのことはもう結構時間が経ったからいいんだけど。
by 『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
前話ラストの衝撃の事件。
それから「結構時間が経った」!?
先に書いたとおり、今は5月の日曜日。
前話ラスト、いちごタルト事件が起きたのは4月の半ば。
どうやら、2週間程度は経ってしまっているようです。
だから、(視聴者にとっては直後ですが)二人は事件の話題をしていないのです。
原作では、春期限定いちごタルト事件が起きたのは(アニメ1話の)「羊の着ぐるみ」ではなく「For your eyes only」の前半。
「For your eyes only」では、小鳩は心配して、小佐内さんに何度も連絡をしています。
が、小佐内さんから反応はなし。
時間が解決したのか、小佐内さんは一人で立ち直ります。
その状況をアニメでは先のセリフにまとめたのだと思われます。
盗まれた自転車
先週の日曜日に泥棒があって、そこで私の自転車が見られたの。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
泥棒現場で目撃された小佐内さんの自転車。
自転車を盗んだ不良集団は、盗みもしているのでしょうか?
サカガミと呼ばれていた男は下っ端っぽかったので、見張りでもさせられていたのでしょうか?
窃盗現場近くで、なぜ小佐内の自転車が目撃された?
おねだり上手?
私、心が傷ついたの。
サンマルク・・・おいしいお店がね近くにあるの。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
おねだり上手な小佐内さん。
ちょっと小悪魔的な感じですね(笑)。
小佐内さんの名誉のためにもフォローしておきます(笑)。
原作では、小鳩がどこかで一休みしない?と提案します。
小佐内さんは、それに便乗したのです。
さらに、その要望に対しても ──
けれど控えめな小佐内さんがなにかをねだってくることなど滅多にないし、それに傷ついたというか腹を立てたのは本当だろうし、ここは度量を見せるポイントだろう。それにつけてももう少し財布に入れてくればよかった。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
小佐内さんが、ねだることなど滅多にないそうです。
滅多にないことなので、小鳩も断れなかったのです。
それにしても腹立たしいのは生徒指導室。
誰も好き好んで自転車を盗まれる人はいません。
なのに「なんで盗まれたんだ」なんて言うとは!
忘れかけていた(忘れようとしていた?)事件を、思い出さされたと言うか古傷をえぐられた感じだったでしょう。
そりゃあ、落ち込むはずです。
ケーキをねだられても仕方ないのです。
ってか、最初からケーキ食べるつもりだったんだよね、きっと
その通り
原作では、小鳩くんも彼女がショッピングで気が晴れるわけがないと半分諦めています(笑)
お礼
つまり暇なんだな。
家に招いてやる。来い。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
突然の堂島からの誘い。
ん?もしかして堂島健吾は毎話絡む?
小鳩を誘った理由は、すぐに判明します。(後述)
でも、なぜ小佐内さんまで誘ったのでしょうか?
アニメ鑑賞時、よく分かりませんでした。
原作を読んで、その理由が分かりました。
先ほども書いたように、アニメではカットされたエピソード「For your eyes only」があります。
そこで小佐内さんはあることをします。
続きを読む (クリックして下さい)
「For your eyes only」でも、小鳩は堂島からある謎の依頼をされます。
ポシェット盗難事件とは違い、そこでは推理を披露します。
が、自分が推理するのではなく、小佐内さんが推理した体で推理します。
その件で、堂島は小佐内さんに恩を感じていました。
なので、小鳩が小佐内さんと一緒にいると分かると ──
『好都合だ。この前の絵の話の礼がある。一緒にどうだ』
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
ちょうど良い、とばかりに小佐内さんも誘ったのです。
ついでにもう一つ言っておくと ──
この事件の際、小鳩は自分ではこの謎は解けない、だから小佐内さんの知恵を借りた的な形にしています。
小鳩が自分では解けない謎があると認めた。
更に、他人に頼った!?
堂島には、そんな小鳩が納得できなかった。
だから、今回家に呼んで問い詰めたのです。
(原作未読状態での)アニメ鑑賞時、私はてっきり春期限定いちごタルト事件が起きたのは(ポシェット盗難事件で時間を取ってしまった)自分にも責任があると詫びるためだと思っていました。
単に堂島は小佐内さんに礼を言いたかったので、一緒に誘ったのです。
堂島家
堂島健吾の家に招かれた小鳩と小佐内は、堂島がこだわりの方法で作ったココアを振る舞われる。
原作によると──
小佐内さんが家に寄ったのは、商店街から堂島家の途中に小佐内さんのマンションがあったからです。
小鳩の解釈だと、変装を解いて「(いつもの)地味な格好」になる為。
だから「変装解除」と言ったのです。
堂島健吾
── これケーキ。手ぶらじゃあれだと思って。
── ま、発案者は小佐内さんなんだけどね。だろうと思った。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
今話も登場、堂島健吾。
この人、怖い…
まだなんか威圧感あるよね
前話のポシェット盗難事件。
今話の小鳩を誘うメッセージ。
どちらも威圧的で、ちょっと引いてしまうレベル(苦笑)。
でも、ケーキの話をしたときのフッと口元を緩めた表情は良き。
がさつだけど根は優しいということでしょう。
小鳩はそんな堂島の性格を分かっているので、今回の誘いに応じたのでしょう。
でも不思議なのは小佐内さん。
小佐内さんは、なぜ今回の誘いに乗ったのでしょうか?
小佐内は人見知りなのに、なぜ堂島健吾の家に行った?
ココア
健吾、ケーキそれでいい?
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
寒い時期は過ぎ、季節は5月。
何もこんな時に、熱々のココアをコップになみなみと出すのもどうかと思いますが(苦笑)。
製法通りに作った美味しいココア。
3つとも同じ方法で作られ。
カップ一杯に満たされ。
熱々の状態。
これら全て、小鳩をも悩ます謎を深める伏線だったのです。
そんな、大げさな・・・
そんなことはないですよ。
これら、どれかが欠けても謎は成立しなかったのです。
・・・確かに!
(後でパウダーを入れる)従来の方法なら、先に牛乳を温めれば簡単にできる。
美味しいココアが二つだけなら、一つを犠牲(従来方法)にすれば良い。
カップ一杯に満たされてなかったら、(小佐内案の)二つのコップで作る方法で。
熱々でなければ、(知里推理の)最後に冷えた牛乳を足せば良い。
これら全ての条件が揃わないと、不可能犯罪は成り立たなかったのです!
不可能犯罪って(苦笑)
もう一つ言うと、ココアを入れに行った時、引き戸を乱暴に閉めたのもズボラというサイン(伏線)ですね。
最初の何気ないシーンに全てが詰め込まれていたのです。
お見事。
気を利かせた?
あの・・・お手洗いを借りたいんですけど。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
堂島が小鳩に何か言いたそうな様子。
目端が利く小佐内さんは、自分がいては話しづらいだろうと席を外します。
さすが、小佐内さん!
と思っていましたが、原作を読むと全く違いました(苦笑)。
いや、解釈が違うとかではなく、原作は全く流れが違いました。
先ほども書いたように、1話は原作エピソードを大幅カットしています。
今回、堂島が小佐内さんも家に招いたのもお礼が言いたかったから。(前々々項)
原作では、堂島はここで小佐内さんに礼を言います。
礼を言うだけならまだしも、根掘り葉掘り聞き始めたのです。
気まずくなった小佐内さんはトイレに立ったのです。
アニメは堂島が感謝している出来事自体をカットしたので、小佐内さんがトイレに立った理由がなくなってしまった。
そこで、直前のセリフ ──
堂島が小鳩に何か言いたそうな素振りを見て、気を利かせてトイレに行く理由に変更したのです。
以前の常悟朗
はっきり聞くが、お前、中学で何かあったのか?
雰囲気が違い過ぎる。殺しても死にそうにない、小鳩常悟朗はどこに行った?
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
なるほど。
堂島は、小鳩があまりに変わっていたので心配して家に呼び出したのです。
分かってることは全部、口に出さないと気が済まなかった。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
自分の知らないことを他人が知ってれば、憎まれ口に負け惜しみ。
堂島が知る、小鳩常悟朗像。
知ったかぶりで負けず嫌い。
だから、ココアの作り方を聞いて ──
いや~面白い話を聞いたよ。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
ありがとう。
こんなことで礼を言う小鳩に対して、堂島は眉をひそめ苛立ったのです。
逆に ──
おいしいココアの作り方をレクチャーするために、散歩中の僕を呼んだと?
ありがたい・・・とはちょっと言えないね。まあ、これからおいしいココアを楽しめるのは嬉しいけど。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
嫌みたらしい言い方に対しては満足し ──
フン。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
まるで切れ味をなくしたわけでもなさそうだな。
常悟朗らしさが残っていることに少し安堵したのです。
なるほど、前話で小佐内さんを紹介された時に、堂島が言ったセリフの意味が分かりました。
どうも小佐内さん。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第1話
常悟朗の友だちなら、きっと我慢強いんだろう。
堂島が小鳩に会ったのは小学生以来。
堂島の中では、小鳩の性格は小学生のままだったのでしょう。
堂島の小鳩常悟朗像を再掲します。
分かってることは全部、口に出さないと気が済まなかった。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
自分の知らないことを他人が知ってれば、憎まれ口に負け惜しみ。
確かに。
「我慢強く」なければ、そんな奴と友だちとして居続けられないのです。
小鳩は中学生時代に何があった?
腹に一物ある
だがな、今のお前はもっとタチが悪い。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
口と性格の悪いガキが、顔は笑っても腹に一物ありそうな嫌な野郎になっちまった。
以前の小鳩でも十分イヤな奴ですが、堂島に言わすと、今はもっとタチが悪いようです(苦笑)。
顔は笑っても腹に一物ありそうな・・・。
つまり、心の中では何を考えているのか分からない。
思っていることがあるなら口に出せ!と言いたいのでしょう。
堂島のような性格ならそうでしょう。
でも、小鳩に限らず、思ったことを口にしていたら周囲と衝突します。
小さい頃なら言えてた事も、大きくなるにつれて相手を気遣って口にしなくなる。
それが気遣いでもあり、大人になるということではないでしょうか。
でも、それも程度の差。
小鳩は(小市民を目指すと言って)極端に制限。
その変わりようが堂島を苛立たせ、また心配させているのでしょう。
そういうことか
小鳩くんのこと心配してるんだ
うん、堂島いい奴だね
でも、小鳩には堂島の気持ちなど届かず・・・。
原作では、この時の小鳩の心情描写が描かれています ──
・・・参ったな。そんな風に見えるのか。ぼくは一生懸命、顔でも心でも愛想笑いを浮かべる小市民になろうとしているのに。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
小鳩の小市民演技は堂島に見抜かれていたのです。
お前の口から”そうだね”とか、”その通りだ”とか出てくるのを聞くと苛立つんだよ。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
本当にそうだなんて思ってもないくせに。
小鳩の方も段々エキサイトしていきます。
苛立つんなら、慣れてもらうしかないね。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
この辺は、堂島の言う昔の小鳩常悟朗の片鱗を伺わせます(苦笑)。
堂島を前に、本性が少し顔を出してきたのです。
戻って来ない小佐内さん
そんな話をするために呼んだのか?
それなら僕は・・・。ああ、トイレ借りるね。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
このセリフの流れはお分かりですよね?
腹が立った小鳩は、啖呵を切って帰ろうと腰を浮かせたら ──
小佐内さんがまだトイレから戻ってきてないことを思い出して、トイレに切り替えたのです(笑)。
なので、トイレに行きたかったのではありません。
だから、トイレに入らず、トイレの前で佇んでいたのです。
トイレのドアノブのカットは ──
トイレのドアに鍵がかかってない = 小佐内さんは入ってない
ことを現しています。
この辺は、原作にはっかり描かれています。
別に便意は感じていなかった。それでも一応、トイレの前まで来る。ノブに出ている「開」表示を見るにロックはかかっていないようだ。ということは、小佐内さんはどこに行った?
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
小佐内さんがどこへ行ったのか考えていると、女子二人の会話が聞こえてきたのです。
堂島知里
私達は、バカ健吾から挑戦を受けてるのよ。
by 堂島知里『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
健吾の姉・知里登場。
ココアの作り方の謎は触れなくてもいいですよね(笑)。
(推理するような)大した謎でも何でもなく興味も引かれず。
ましてや堂島からの謎かけでもない。
ただズボラなだけです(苦笑)。
言い方!
まあ、ポイントは、こんなことでも小鳩くんは論理立てて推論しているということでしょうか。
大事なのは、ここで姉が絡んできたことと、小鳩が堂々推理していることです。
高いテンションに引っ張られる
シンクが乾いてる。
しかもここに置いてあるのはスプーンだけ。── それが、どうかしましたか?
鈍い!
by 堂島知里『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
久しぶりにあった小鳩との挨拶もそこそこに、今日初めて出会った小佐内さんと二人を巻き込み、バカ弟が作ったココアの謎に取り組む。
原作では、ここで小鳩の心情変化が見られます。
「鈍いってば。シンクは乾いているんだってば!」
テンション高いなあ・・・。健吾との、まあ正直に言って心楽しいわけではなかった会話のため、ぼくは少し気分を損ねていた。ところが、そこにこの知里先輩のハイテンション。ぼくは、自分でも意外だったのだけれど、案外気が楽になっていた。苦笑いが浮かんで、それでぼくの憂鬱は随分収まった。笑うことはいいことだと聞いていたけれど、その種類は問われないらしい。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
堂島に言いたい放題言われ気分を損ねていた小鳩。
小佐内さんを見つけ、さっさと帰ろうと考えていたかもしれません。
ところが小佐内さんは、知里の謎解きに巻き込まれています。
知里のテンションだと、謎を解かないと解放してもらえない。
そもそも知里に付き合っていると少し気が楽になったようです。
知里:許せん。バカ健吾にできることができないって悔しくないの?
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
小鳩:悔しいですね、それは。
小佐内:小鳩くん・・・。
ここで小佐内さんが口を挟んだのは、いつもの小鳩ではないから。
「悔しいですね、それは」
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
反射的に言ってから、しまったと思う。本音が漏れた。小佐内さんが、低く鋭い声を上げた。
「こ、小鳩くん!」
本音を隠す小市民らしからぬ発言をしてしまったのです(笑)。
そんな小鳩の本音発言に、知里は満足げ。
なら一緒に健吾の行動をトレースしてみようじゃないの!
by 堂島知里『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
こうして、まんまと?知里のペースに乗せられ、謎解きに首を突っ込むのです。
ある意味、“人を巻き込む”という点に於いて知里と健吾は似ています。
さすが姉弟といったところでしょうか(笑)。
何せ、あの小佐内さんですら“場を持たせよう”として推理を披露させる程ですからね!
エピローグ
ココアの謎も解け、しばらく堂島と談笑した後、二人は帰る。
心配
小鳩くんだっけ?あの子。
なかなかやるよね。子どもの頃から頭は回ると思ってたけど。
by 堂島知里『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
さて、上記セリフ、これは原作とアニメは違います。
原作では、知里は小鳩に直接伝えています。
── やるね、君! 小学生のジャリだった頃から、頭はまわると思ってたけど。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
── 健吾がさ、君のこと心配してたのよ。言いたいことも言わずに、妙に遠慮してるって。
── でも、取り越し苦労だったみたいね。君、充分いけるよ。
── なかなかいいノリだったよ。充分、没頭できてたじゃない。
── ま、仲良くしてやってね。バカな弟だけどさ。
なんと弟が心配していたことまで小鳩に伝えていたのです。
「言いたいことも言わずに妙に遠慮している」と。
ところが今日の様子を見ると、全然問題なく乗りも良かった、と。
言いたいことを言ったのは、直前で堂島と言い争い気が立っていたから。
遠慮せずに推理したのは、知里のハイテンションにあてられたから。
今日は例外・・・。
あれ?
知里さん、もしかしてワザと小鳩を謎解きに巻き込んだ?
そんなことは・・・ないですよね(笑)。
知恵働き
ねえ、小佐内さん。
大丈夫だよ、こんなことはもうやらない。日曜日だから、ちょっと羽目を外しただけだよ。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
私には小鳩がハメを外したようには見えませんでした。
謎解きの終盤は、(小佐内さん同様)楽しげな小鳩に見えましたね。
では、小鳩は何を「やらない」と宣言したのでしょうか。
本来、小鳩は推理を封印しています。
特に人前では。
それなのに、堂島に負けたくないのか、姉・知里に引きずられたか ──
いつの間にか知里がいるにも関わらず思い切り推理をしていたのです。
どれだけしょうもないことでも、それを解明しなくては気が済まない。
思ったことを口にし、分からない事があれば解明しないと気が済まない。
特に誰かがやった(正解がある)事は解き明かしたい。
そんな姿が、小佐内さんには楽しそうに見えたのではないでしょうか。
今日の小鳩くん、初めて会ったときみたいだった。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
そっちの方が楽しいなら、そっちの小鳩くんになればいいじゃない。
私気にしないよ。
自分の心に正直で、負けず嫌いで、推理好き。
これが、小鳩常悟朗の本性か。
こういう時こそ、原作の心情描写。
小鳩はどのような感情で推理していたのでしょうか?
推理の終盤、真相に気付く一歩手前の心理描写です ──
ぼくは自分の足元を見つめ、考えに没頭する。知里先輩に付き合っているからではない。健吾への対抗心でも、もちろんない。考えるのが、楽しかった。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
「考えるのが楽しい」と小鳩は思っていたのです。
これが小鳩常悟朗の根源ではないでしょうか。
僕はもう知恵働きはやめたんだ。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
それでも、元には戻らないと言う小鳩。
さて、過去に一体何があったのでしょうか。
おわりに (『小市民シリーズ』2話とは)
今話も正直に書きますね。
アニメ鑑賞時、2話は全然面白くなかったです。
正直、ここで切ろうかと思ったほど。
ですが3話が面白かったので原作に興味が湧き、原作を読んでから2話を見ると・・・。
面白い!
いや、本当に面白いくらい違って面白い。
日本語が変だ…
前話レビューの最後 でも書いたように、(原作未読で)アニメ鑑賞後に原作を読むと、まるで解説されているような感覚です。
あの時のセリフはそういう意味か。
だからあんなことを言ったのか。
シーンの一つ一つに意味があると言っても過言ではありません。
商店街で、小佐内さんが背後に近寄った小鳩に気付いたのも。
堂島が小佐内さんまで誘ったのも。
小佐内さんが一度家に帰って着替えたのも。
小佐内さんがお手洗いに立ち上がったのも。(ここはアニメ制作スタッフ上手し)
(1話で)堂島が小山内さんに「我慢強い」と言ったのも。
小鳩が啖呵を切るが、帰らずにトイレに行ったのも。(これはアニメだけでも分かります)
小鳩が知里のノリで言葉を続けると、小佐内さんが何か言いたげなのも。
小鳩が自粛していた推理を知里の前で始めたのも。
全てちゃんとした理由があったのです。
その辺を理解した上でアニメを見ると、なんて面白い!
まあ、それでもココアの謎解きはちょっと引っ張り過ぎだと思うけど
そこは変わらないんだ(笑)
なんて言うんでしょう。
誤解を恐れずに言うなら・・・。
どこが良いか分からない作品の、見方が分かって視界が開けた。
という感覚と言えば伝わるでしょうか。
畏れ多い言い方になってしまいますが、『小市民シリーズ』の楽しみ方が分かった感じ?
ぜひ、(原作未読の方は)原作を読んで欲しいところですが、そのキッカケとして本レビューがお役に立てば幸いです。
さて、次話はアニメ鑑賞だけでも面白いと思った3話。
原作を読むと一体何が見えてくるでしょうか。
以上、TVアニメ『小市民シリーズ』第2話の感想&考察レビュー。
ココアの作り方という取るに足らない謎に嬉しそうに取り組む小鳩の如く、レビューを書き連ねた時文でした。
長文にもかかわらず、最後まで読んで頂きありがとうございます。
3話のレビューも書いています。
良かったらご覧ください。
ではでは。
疑問点 まとめ(Q&A一覧)
この章では、疑問点をまとめていきます。
- 今話で生まれ解決した疑問は、本文で解説して本章でまとめ
- 今話で解決しなかった疑問を、疑問XX-XX(話数-通し番号)として記録
⇒ 本章「疑問点まとめ(Q&A一覧)」でまとめ - 答えは、推測ではなくできるだけ(原作含む)作品内で明らかになった事実を記載
※推測が入る場合は、断りを入れる
⇒ 解決した疑問は、次話で削除
今話で解決した疑問 (クリックすると答えが表示されます)
今話で新たに発生し、解決しなかった疑問
- 疑問 02-01 窃盗現場近くで、なぜ小佐内の自転車が目撃された?
- 疑問 02-02 小佐内は人見知りなのに、なぜ堂島健吾の家に行った?
- 疑問 02-03 小鳩は中学生時代に何があった?
残っている疑問
- 疑問 01-02 小鳩は、なぜ小市民を目指している?
- 疑問 01-03 小佐内は、なぜ小市民を目指している?
今週の感想ツイート
#小市民シリーズ #小市民 2話
— 時文@ここアニ(小市民シリーズレビュー中) (@toki23_a) July 14, 2024
違いが分かる男・堂島健吾
えっ自転車泥棒は放置?堂島はてっきり自転車盗まれたのは自分の責任だと詫びる展開かと思ったら…謎でも何でもない疑問に拘る者達。掴み所ない作品ですね😓
パックそのままレンジで温めたら爆発して危険なので良い子はマネしないように😅
関連記事
アニメ『小市民シリーズ』第3話のレビューはこちら!