【文字数(本文):約1万3千文字(目安21分)】
こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『小市民シリーズ』第4話「狐狼の心」を鑑賞しました。
本レビューではアニメ感想だけではなく、原作情報も加え、個人的な解釈による解説・考察をしています。
皆さんの理解の助けになり、作品をより楽しんで頂ければ幸いです。
今回アニメ化されたのは──
- 小市民シリーズ第1弾『春期限定いちごタルト事件』
-
「狐狼の心」の後半と「エピローグ」
今話の主なトピック (クリックすると該当項目へ)
- そもそも、なぜ小鳩は推理を始めた?
- 小鳩は、なぜ自分の推理を人ごとのように話す?
- 信じている確度の証明は正しい?
- 原) なぜ姉がサカガミの年齢を知っている?
- 原) 小鳩は、なぜ自動車学校のバスに乗れた?
- 小佐内さん、なぜホットケーキに手をつけない?
- 原) 小佐内さんが本当に好きなのは…
※「原)」は原作情報を根拠の中心にして考察しているトピック
今話で解決しなかった疑問
最下部「疑問点まとめ (Q&A一覧)」に記載
本レビューの方針
本レビューは、次話以降のネタバレなし
アニメ『小市民シリーズ』の原作は、米澤穂信先生の小市民シリーズ第1弾『春期限定いちごタルト事件』、第2弾『夏期限定トロピカルパフェ事件』。
私は、2作とも未読です。
アニメ鑑賞後、アニメ化済み時点までの部分を読み、レビューを作成しています。
よって、次話以降のネタバレはなしなので、ご安心ください。
アニメ鑑賞
+
原作小説を読み
知り得た情報を加味して「感想・解説・考察」
原作小説の情報は、「原作情報」として区別できるよう表記します。
こんな感じです
緑系の色を目印にしてね!
引用部分も次のように緑系をワンポイントに ──
これは、推理の連鎖で片がつく。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
ちなみに、考察や解説、疑問はオレンジ系 ──
それ以外は、補足や余談、参考情報はブルー系 ──
読む際の目安にして下さい。
全10話 各話リスト
※話数:リンクは各話レビューへ
※サブタイトル、原作小説:ネタバレを避けるため次話以降はマスク
※原作小説:S1(シリーズ第1弾)「春期限定いちごタルト事件」
はじめに
小佐内が復讐を企てていると確信した小鳩は、堂島に助けを求めるも信じてもらえない。
そこで小鳩は一連の事件を推理する。
ちっちゃい子が人を使い悪事を暴き、自らの手で喉笛を食いちぎる!?
狼が遂に羊の着ぐるみを脱ぎ本性露わに。
小狡い狐も本領発揮。
憧れ?の小市民、平穏な日々を目指していた二人。
小鳩は推理するのに逡巡するも・・・ひとたび枷を外せば水を得た魚の如く、活き活きとする。
小佐内も目的果たしスッキリ。
目指していたものとは違うが、双方晴れやかな表情なり。
これぞ青春カタルシス!?
春期限定いちごタルト事件、ついに決着!
では、今話を振り返っていきましょう。
感想&考察レビュー 第4話「狐狼の心」
推理の連鎖
小佐内が犯人に復讐を企んでいると確信した小鳩は、堂島に用心棒を頼むことに。しかし、事情をよく知らぬ堂島はどうにも納得ができない。そこで小鳩は一連の出来事についての推理を話す。
推理で説得
じゃあ始めよう。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
僕が思うに、これは推理の連鎖で片が付く。
前話ラスト、小鳩はこう宣言し当然のように始まった小鳩の推理。
「当然何とかだ」と言う時、それは大抵当然ではない…じゃなくて(笑)。
冷静になって考えてみても、なぜ今ここで推理するのでしょうか?
小佐内さんは今にも危険な目に遭うかもしれないのです。
まずは思い当たるところにでも行って、そこで推理すれば良い。
なんなら道すがら推理すれば良い。
小佐内さんが絶対いないだろう教室で、そんなに呑気なことをしていて大丈夫なのでしょうか?
あっ、確かに…
よって、視聴者(or読者)が自分で解釈するしかありません
まず前提条件として ──
小佐内さんが復讐を決意したあの日から、既に土日を挟み3日経過しています。
土日も含めたこの3日間、小鳩は小佐内さんに連絡をしましたが返事はなし。
つまり、小佐内さんの状況が分からないので、今更1分1秒を争う状況ではないのです。
ってか、小佐内さんが危険な行為をしようとしているのか、違うのか。
サカガミは凶悪犯か無害か(ってことはないでしょうが)の判断もついていない。
何の証拠も根拠も、ましてや小佐内さんから手伝ってとも言われていない状況で、小鳩が一人で勝手に騒いでいる可能性もあるのです。
ましてや、堂島は小佐内さんの本性を知りません。
引っ込み思案が服を着て歩いているような小佐内さんが、危険な事をしようとしているとは思えない。
そんな、堂島の協力を得るには、説得力ある説明が必要だったのです。
今、小佐内さんが復讐しようとしているのは、ただの小物か極悪人か。
そもそも、小佐内さんはどこまで把握し、どこで何をしようとしているのか。
推理しなけりゃ、ただの自転車泥棒としか見れず。
相手が分からなければ、小佐内さんの行方も行動も予想不可能。
ただ、小佐内さんは、今ある情報だけで動いたのです。
ならば、推理の連鎖で片が付くはず。
結果、小鳩常悟朗の推理ショーが始まったのです。
推理進行中
つまりぼくは、運転免許証の身分証明書としての側面のことを言いたいようだね。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
自分の推理を、まるで人ごとのように話す小鳩。
推理を進める上で、気になる部分をそのように表現しているのです。
これは、まさに今考えている証拠。
つまり、今初めて推理していることを描写しているのです。
本来、推理ショーは結論が出てから開始します。
が、本作はどうやら違うようです。(今エピソードだけかもしれませんが)
推理している過程を生々描いているのです。
物語の途中ならともかく、クライマックスに持ってくるのは珍しいですね。
原作では、次のように説明されています。
一足飛びではない代わり、推理の道筋そのものが説明になるはず。推理を連鎖させていって、その結果袋小路にはまり込んだり堂々巡りを始めたりするかもしれないけれど、そこは自分のおつむを信じるしかない。うまくいったらお慰み、だ。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
よくある名探偵ものなら、事件を解明してから推理パートに移ります。
ですが、ここでは推理の過程を描く。
そういや、1話のポシェット盗難事件も、2話のココアの作り方もそうでしたね。
これが『小市民シリーズ』の特徴でしょうか。
少々まどろっこしいところあるけどね(笑)
あー、ねっ
思考途中であるゆえ根拠が弱い結果 ──
送迎バスに乗ったからと言って、目的地は自動車学校とは限らない。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
堂島にチャチャを入れられてしまうのです。
原作では、もっとチャチャを入れられています。
「その道をバスが通るのを確認した?」「その時刻の前後に、バスはそれしかない?」等々。
でも、小鳩はそれを邪魔だと思っていません。
ぼくは少し笑った。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
「いや。そういう検証が入った方が、いろいろやりやすいよ。ことは小佐内さんの安否だからね。間違いを犯さないように、厳密になってくれた方がぼくも助かる」
堂島の横やりを検証と捉え、むしろ推理の補強になると考えているのです。
事は小佐内さんの安否。
のんびりしているように見えますが、あくまで彼女の身を案じての推理なのです。
察するに、小鳩は超が付く名探偵ではない。
少なくとも小鳩自身は名探偵だと思っていない。
だから自分一人で解こうとはしない。
そんな謙虚さが見て取れますね。
決して、自分が全て正しいと思っているようなタイプではなさそうです。
周囲にこの辺を理解してもらえれば、決して嫌われることはない気がしますが・・・。
言い方?
話の持っていき方はイラッと来るものがあるね
身分証明書
サカガミは、なんのために免許を取ろうとしてるのか。
その一、車を運転する許可を得るため。
その二、身分証明書を入手するため。
付け加えるその三その四、ある?── その二つなら、当然前者だ。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
堂島は、なぜ免許を取る理由は、当然車を運転するため、と断言したのでしょうか。
まあ普通に考えても、免許証なのだから乗り物を運転したいから取得するのですよね(笑)。
わざわざ身分証を取るために免許証を取る人は少ないと思います。
が、実はそうも言い切れない側面もあります。
今でこそマイナンバーカードがありますが、以前は免許証が身分証明証の代わりになっていました。
免許証がなければレンタカーや、DVDやCDレンタル、図書カードだって作るのが面倒。
一々住民票を準備するのも面倒ですし、大体住民票を取るのにも身分証明書が必要なんて事も(笑)。
では、なぜ堂島は免許を取るのは当然「車を運転する」為だと言い切ったのでしょうか?
それは、サカガミが学生だからです。
学生なら、学生証を持っています。
学生証は、身分証明に使えます。
同じ高校生である堂島なら、学生が身分証明欲しさに免許を取る必要はないと即座に判断できたのです。
信じている確率
サカガミがごく当たり前に運転免許を取ろうとしてることを、健吾自身がどれくらいの確度で信じてると思う?
0.077、約8%だ。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
健吾の考えでも92%でサカガミが怪しいってこと、納得してもらえるね。
堂島は、サカガミのことを92%の確度で怪しいと思っている?
小鳩のこの証明は正しいでしょうか?
残念ながら間違っています。
いや、正確に言いましょう。
正確に言うと ── 確率の計算は正しいですが、堂島を説得するために悪用しています。
距離については65%の信頼。
年齢については17%。
態度については70%。
これらを掛け合わせるのは独立事象の求め方で正しいです。
まあ、そもそも距離、年齢、態度が独立しているかどうかは微妙なところですが(苦笑)。
距離、年齢、態度は一見すると独立しているように見えます。
現に、というか、だからそれぞれ別々に検討したのだと思います。
が、(ラストまで見ると)サカガミ達が犯罪を犯そうとしているのが根源にあり、それが元になっているので純然たる独立事象とは言えない気が・・・。
まあ、そこは置いといたとししても ──
小鳩が求めたのは、距離、年齢、態度の3つ全て起きる(信頼できる)確率です。
そりゃあ8%と小さくなるのは当たり前です。
サカガミが、わざわざ遠い自動車学校を選んだ。(距離)
不良なのに?必死になって時間を守ろうとした。(態度)
全然怪しくない。
距離と態度、どちらも100%問題ないと判断しない限り、信頼している確度は低くなるのです。
距離100%、年齢17%、態度100%でも信じている確度は17%。
83%の確率で怪しいと言えます。
100%でなくても90%としましょう。
0.9×0.17×0.9=0.1377、約14%
86%の確度で怪しいと思っていることになる。
90%信頼しているなんて、普通はほぼ信じていると言っているに等しいと思いませんか?
それでも、3つを掛け合わせると86%怪しいと思っていることになるのです。
要は、17%の確率でしか信用できない年齢問題。
この低い確率を、他の疑問で更に下げる補強をしていたのです。
なんか、ズルい…
こういうやり方をするから「小賢しいキツネ」なんだろうね
年齢問題
よほどの事情がなければ、彼は1年生ということになる。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
今回の推理の肝、サカガミの免許取得の裏に何かあると思った一番の根拠は年齢です。
サカガミは、グループのメンバーの一人を”先輩”と呼んでたんだ。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
そしてその先輩は別のメンバーを”さん付け”で呼んでた。
おお!
1話ラストのセリフから、サカガミを1年生と特定するとは!
全然気付かなかった!
まあ下っ端感はあったけどね
って、気付かないのも当然で、1話の会話でサカガミは”先輩”なんて言ってません(苦笑)。
すんません、俺ちょっとダメなんす。
by サカガミ『小市民シリーズ』TVアニメ 第1話
あっ、ホントだ言ってない!
肝心要の推理で言っていない言葉を根拠にするなんて・・・。
これは良くないですね
まるで小鳩が嘘言ってるように見えます
まあ、きっと態度から判断したのでしょう(苦笑)。
実際、”さん付け”で呼んでるからと言って先輩とは限らないですね。
ボス格であれば、同学年でも”さん付け”で呼ぶこともあるでしょう。
どちらも態度。
あるいは、サカガミについては入学間もないですから制服の真新しさから判断できたのかもしれません。
根拠はともかくとして(苦笑)。
サカガミが1年生だとすると15歳の可能性が高いのです。
今は6月。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
おおよそ6人に5人がまだ15歳。
季節はまだ6月。
4月5月生まれしか誕生日を迎えていません。
つまり、高校1年生であれば、2ヶ月/12ヶ月=0.166、17%しか16歳になっていないのです。
運転免許が取れる年齢は一番早くても16歳から。
しかし、6月時点で高校1年生が16歳である可能性は17%。
これが、サカガミがごく普通に運転免許を取ろうとしてることへの疑問だったのです。
年齢の疑問が一番客観的で、かつ説得力がある。
距離や態度は想像という主観が入ります。
繰り返します。
小鳩は、年齢問題を補強するため、あるいは説得力を高めるために距離や態度の疑問を投げかけたのです。
原作では、次のように描かれています。
サカガミはごく当たり前に運転免許を取ろうとしているんだってことを、健吾自身がどれくらいの確度で信じていると思う?」
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
四角い顔がくしゃりと歪んだ。嵌められたことに気づいたのだ。即興でちょっとした罠をかけるぐらい、お手のものだ。ぼくは自分のケータイのモニタを見せた。
小鳩は堂島を説得するために引っかけたのです。
だから、(アニメで)堂島はあんな表情をして ──
お前は、まったく昔からそうだ。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
本当に嫌な奴だよ、お前は。
原作では ──
「くそっ。・・・これだ、お前はまったく、昔からそうだ。やればできるじゃないか、なにがダウンだ。本当に嫌なやつだよ、お前は」
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
「やればできるじゃないか」とまで言っているのです。
だから、小鳩は褒め言葉だと受け取ったわけですね。
級友の復活を(こんな表情でも?)喜ぶと共に、兜を脱いだのです。
この辺が”小賢しい”んだろうね
そういうとこだね…
それにしても、なぜこんなまどろっこしい説明をしたのでしょうか。
年齢の疑問だけで十分なはずです。
その理由は、それだけ堂島健吾の助けを得たかったのでしょう。
確実に承認を得るために、考えたのです。
オオカミ
僕がキツネだったと例えるなら、あれは昔オオカミだったんだ。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
遂に小鳩の口から明かされる小佐内さんの過去。
第1話のサブタイトルは「羊の着ぐるみ」。
羊の着ぐるみとくれば、被っているのはオオカミが相場。
オオカミとは小鳩のことを言っているのかと思っていましたが、小佐内さんの方だと言うのです。
今でこそ小佐内さんが嬉しそうな顔をするのは、せいぜい甘い物を前にしたときぐらいだよ。
でも、前は違った。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
小佐内さんは、自分に危害を加える相手を完膚なきまでにたたき伏せるとき、一番楽しそうだったんだ。
小佐内さんが一番楽しいのは、相手に復讐をするとき!?
えっ!?
あの小佐内さんが!? 信じられない!
だよねー
1話序盤から小佐内さんは笑顔を見せていました。
が、原作では ──
小佐内さんがこうして微笑むのは、いまとなってはもう、甘いものの話をするときぐらいだ。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
とまで、書かれていました。(1話 )
それで、気になっていましたが、小佐内さんの気質の問題だったのです。
姉の交際範囲
ちょっといいか?
今、水上高に通ってる1年のサカガミって男の誕生日を知りたい。- 中略 -
何日かは忘れたそうだが、12月生まれだそうだ。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
まず間違いなくサカガミは15歳だ。
堂島もなかなか頭が回ります。
客観的証拠となり、犯罪をしていると最も判断しやすい年齢を確認することにしたのです。
いや、そんなことより・・・。
なぜ姉がサカガミの年齢を知っている!?
そう、それっ!
その答えは原作にありました。
水上高校の近くに家があるなら、まず間違いなくサカガミが通ったのは木戸中学だ。そこがわかれば、誕生日も調べられる。ぼくは考えもしなかったけれど、顔が広い人間なら、木戸中を去年卒業したひとに渡りをつけることもできるだろう。そうなればあとは簡単だ。卒業アルバムに誕生日が載っている可能性は高い。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
卒業アルバムに誕生日が掲載されているとは知りませんでしたが・・・。
卒業した中学が分かれば、卒業アルバムから誕生日が分かるようです。
であれば、サカガミと同じ中学を(卒業アルバムを持っているのだから同学年?)卒業した人を探せば良い。
それをなぜ姉に頼むのか?
「姉貴だよ。友達百人が自慢だからな、コネクション関係はあれに任せれば間違いない。で、サカガミじゃない。小佐内が、先まわりしてるんだよ」
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
言葉を交わせば友達、家に来たら親友扱い。
そんな姉は友達100人が自慢(笑)。
サカガミと同じ中学を卒業した同級生を探すのは簡単?だったのです。
お見事。
ちなみに原作では、知里は、小佐内さんが小鳩からサカガミに乗りかえたのだと勘違いして気の毒がっています(笑)。
堂島の姉・知里に聞けばサカガミの年齢も分かるなんて・・・。
知里の交友関係も凄いが、気付いた小佐内さんが凄いな・・・。
── 小佐内さんが知里さんとそんなに仲がいいとは知らなかったな。
いや、姉貴の基準じゃ、言葉を交わせば友達だ。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第8話
家に来たお前らは親友扱いだろうさ。
家に来た人は親友扱いになる姉・知里。
健吾の挑戦(おいしいココアの作り方)を、悩みながら解いた二人は文句なしの親友扱いなのでしょう(笑)。
それにしても、小佐内さんは知里といつの間に連絡先を交換したのでしょう・・・。
吉良北自動車学校
サカガミ達が善良ではないことを堂島と共に証明。直後、小佐内さんからメッセージが来たが、その内容はすぐに取り消されていた。
目印ではない!?
健吾、今何時?
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
急いで吉良北自動車学校へ行くために、送迎バスを使う二人。
今話冒頭、送迎バスについて推測していました。
── カバンだ。いや、書類入れかな、あれは。
なるほど、言われてみれば見たことがあるな。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
白い書類入れを持った人間が、それを掲げてバスに乗るところを。
でも、小鳩は吉良北自動車学校に入学していません。
なぜ自動車学校の目印を持っていたのでしょうか?
これも、原作に答えがありました。
あるはずだ、普段から使っている。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
「これだ」
なんの変哲もない、白いルーズリーフ。
小鳩は、自動車学校の書類入れなど持っていなかったのです。
普段から使っている白いルーズリーフで誤魔化したのです。
だから、堂島は ──
常悟朗、お前って奴は・・・。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
と、あきれたのです(笑)。
取り消された写真
小佐内?これが?
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
誰がどう見ても小佐内さんにしか見えませんが・・・。
どうやら堂島には分からない様子(苦笑)。
原作によると、小鳩でも一瞬分からないほど雰囲気を変えていたようです。
どこかでお会いしましたっけ、と訊きたくなるようなボーイッシュな装いの娘が立っていた。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
アニメだと明らかに小佐内さんですけどね。
アニメは区別しやすくキャラクターデザインされているので、衣装だけで別人にするのは難しいですね(苦笑)。
急いで、それも堂島を連れてやってきた小鳩に驚く小佐内さん。
それもこれも、小佐内さんからのメッセージが取り消されたからなのですが・・・。
── 誰かに無理矢理取り消されたんじゃないかって。
間違えて違う写真送っちゃって、送り直したんだけど・・・送られてなかった。
電波悪いみたいこの辺。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
小佐内さんが送ったメッセージを誰かに取り消されたのではなく・・・。
間違えた写真を送ったので削除。
送り直したけど、電波状況が悪く送られていなかった。
その直後に、電源を切っていたので送られず、かつ小鳩からの連絡にも気付かず・・・。
なんて人騒がせな・・・。
ちと苦しいのは、原作発行時と時代が違うからです。
原作が発行された2004年は、スマホ普及以前のガラケー時代。
その上、小鳩の携帯は画像を見られない古い機種だったのです。
ぼくのケータイは旧型。メールの送受信ぐらいはできるけど、画像は開けない。小佐内さんが送ったメールは、一旦どこかのサーバにアップロードされるんだろう。だからぼくのケータイにはURLしか届かず、その先のページも白紙になった。要するに小佐内さんのケータイが新しいのがいけないのだ。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
小佐内さんはサカガミが受験した証拠写真を送りましたが、小鳩の携帯は古くて画像の表示ができず空メールに見えたのです。
エピローグ
サカガミ達はチケット高額転売で逮捕。小佐内と小鳩は自分達がしてしまったことを後悔する。
顛末
不正免許でチケット高額転売 吉良署高校生ら5人逮捕
by 『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
記事本文によると「主導的だった17歳の高校3年生が逮捕」されています。
(小鳩の推理が正しければ)「主導的だった17歳の高校3年生」とは、1話ラストに出てきた”オザキ”と呼ばれていた男子生徒でしょう。
結局、証拠写真撮影後、小佐内さんは何をしたのでしょうか?
自動車学校へ届けた?
それとも警察に届けた?
市内のネットカフェに匿名で警告しただけ。
“五百旗頭という名前の人間が何か悪事を働くかもしれない”。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
念のため証拠写真も添えてね。
ネットカフェを不正利用すると踏んで、警告していたのです。
まあ、高校生ならそんなものかと思うものの、免許を不正取得までしてやる犯罪ではないですね・・・。
リスクに対して、リターンが少ないのです。
案の定、原作ではもっと大きな犯罪を想定していました。
実のところを言えば、ぼくたちが直接サカガミのグループを告発したわけではない。小佐内さんは仕返しを望んだけれど、警察に関わることは嫌った。そこで、市内の消費者金融全部に、公衆電話から匿名で、「五百旗頭」の名前で金を借りに来る者がいたら気をつけろと警告した。その次の日あたりには、証拠写真も届けられたはずだ。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
なんと、警察ではなく消費者金融に垂れ込みしたのです。
ある意味、警察よりもえげつない・・・。
えっ、そうなの!?
闇金ウシ○○くんの世界なら、酷い仕打ちされるパターンだね
小鳩たちは、サカガミが他人の名で免許証を取った目的を、消費者金融で金を借りることだと目星を付けたのです。
でも、消費者金融は金貸しのプロ。
高校生の小細工なんて見抜くに違いない。
だから、警告などしなくても、サカガミ達の犯罪は見つかるだろうと、自分にとって気休めになる解釈をしていました。
が、こうして記事になると、自分達の行為が影響したのか分からないが、何だかどんよりした気持ちになる。
そこで、記事が出たのは土曜でしたが、小佐内さんに連絡して喫茶店で待ち合わせたのです。
ハァ、やっちゃった。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
復讐を考えている時、あるいは復讐直後は晴れ晴れしたかもしれませんが、全てが終わり事の顛末を知ると反省してしまう二人(笑)。
その証拠に ──
小佐内さんが、珍しくホットケーキに手を付けていません!
えっ、そういうこと!?
これまで出てきたスイーツには即座に手をつけていました。
が、今回に限って手を付けていないのは、流石の小佐内さんもノドを通らなかったのではないでしょうか。
反省しているのでしょう。
警察との関わり
それと、先の引用部分である事実が判明。
実のところを言えば、ぼくたちが直接サカガミのグループを告発したわけではない。小佐内さんは仕返しを望んだけれど、警察に関わることは嫌った。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
前話、サカガミが通っている自動車学校が特定できたのならさっさと警察に伝えれば良いのにと思っていましたが、通報しない理由が分かりました。
小佐内さんは、警察に関わる事を嫌っていたのです。
むしろ、何故でしょうか?
小佐内さんは、警察と何かあったのでしょうか?
小佐内は、なぜ警察と関わりたくない?
狐狼の心
もうやめる?
執念深いのが私、口を出したがるのが小鳩くん。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
それはもうどうしようもないって諦めない?
オオカミとキツネの気持ち。
いや、オオカミとキツネに比喩される二人の気持ち。
執念深く、復讐を果たすまで気が治まらない小佐内さん。
気になると推理し、口を出したがる小鳩。
弱気になるのは分かるけど・・・。
小佐内さん、僕たちは自分の短所を直そうっていうんだ。
多少は無理もあるさ。頑張ろう。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第4話
諦めずにじっくりやっていこうよ。
なるほど。
性格なんて簡単に変えられるものではない。
短所を直すのは時間がかかるのです。
一度の失敗くらいで諦めてはダメ。
じっくり取り組もうと、再度決意するのです。
そんな矢先に・・・。
小佐内さんが直すべきは、巻き込まれ体質ではないでしょうか(笑)。
春期限定いちごタルト事件
さて、これで原作小説『春期限定いちごタルト事件』の最後まで描かれました。
つまり、春期限定いちごタルト事件は、これで一区切りついたのです。
あれ、いちごタルトはどうなったの?
弁償してもらわないの?
そうだよね…
はい、その通りです。
春期限定いちごタルトを放り投げてまで自転車を盗みあちこちで自転車が目撃された理由も、必死になって自動車学校へ通っていた理由も解き明かし、結果的にはその裏にある犯罪も見つかり逮捕されました。
が、小佐内さんのいちごタルトは戻って来ないし、弁償もされません。
(小佐内さんにとっては春期限定いちごタルトの方がショックでしょうが)自転車も1台壊され、2度も生徒指導室に呼ばれた過去は消せません。
復讐したとは言え、何の見返りも保証もなし。
一体、何を目的に復讐したのでしょうか?
少なくとも春期限定いちごタルトの為だと思っていましたが・・・。
それは原作に(小鳩が考えた)ヒントがありました。
自転車を盗まれたこともそれを破壊されたことも、ひょっとしたら春期限定いちごタルトを台無しにされたことさえ、小佐内さんにとって本当は重要なことではなかったのかもしれない。あの一件の真に重要な側面は、小佐内さんに復讐を企む大義名分を与えたというところにある。小佐内さんは、久しぶりに企む仕返しに胸を躍らせていたかもしれない。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
えっ、春期限定いちごタルトを台無しにされたのは重要ではない!?
なんと、全て逆!?
小鳩の推測が正しいとすると ──
小佐内さんにとっては、甘い物よりも仕返しの方が胸躍る、というのです。
てっきり、食べ物の恨みは忘れない、甘いモノ好きの女子が拗らせたのかと思っていましたが・・・。
復讐行為が何よりの好物なのです。
そう考えていくと、残っていた疑問も解消。
小佐内は人見知りなのに、なぜ堂島健吾の家に行った?
小佐内さんは被害者で、何も悪くないのに二度も生徒指導室に呼ばれ詰問されました。(2話 )
買い物でもしてたら気持ちが楽になるかなって。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第2話
その後小鳩とスイーツに食べに行きかけた時に、堂島から家に来いと誘われました。
人見知りの小佐内さんが、なぜ堂島の家に行ったのか不思議でした。
気を紛らわせる何かをしていないと、復讐のことを考えてしまうからではないでしょうか。
現に、原作では、タルトを台無しにされ自転車を盗まれた直後、珍しく小鳩の代理人をして推理に協力します。(アニメではカット)
自転車が盗まれた翌日、小佐内さんは「いま、わたし、考えることがあったほうが楽なの」と言って、らしくない協力をしてくれた。あれは、事件の衝撃を忘れるために他のことを考えたかったのでは、ない。小佐内さんはそれほど可愛くはない。
by 小説『夏期限定トロピカルパフェ事件』
あの日、小佐内さんが忘れようとつとめていたのは、仕返しを企みそれを喜ぶ彼女自身の性向だったと、ぼくにはわかっていた。
それって、ヤバくない?
そうです。
だから、何が何でも直さなくてはならないのです。
おわりに (『小市民シリーズ』4話とは)
申し訳ございませんでした!
なになに?
一体どうしたの!?
私は前話レビュー で本作のことを「事件は添え物、小鳩と小佐内自身がミステリー」と書きました。
「小鳩と小佐内自身がミステリー」は今でもそうだと思っていますが、「事件は添え物」は間違っていました。
失礼致しました!
たかが自転車泥棒が。
いや、たかが(と言ったら小佐内さんに叱られますが)いちごタルト破損の軽犯罪が。
有印公文書偽造と転売ヤー事件へと発展。
本作は日常系ミステリー。
日常に起きる些細な謎とも呼べない謎を解明していく。
そんな些細な謎や事件の裏に潜むモノがミソ。
ラストの事件の尻尾は、自転車が捨てられた場所と時間から、サカガミは自動車学校へ通っていたこと。
が、それがどうした?
そこから始まる推理の連鎖、グループの悪行を暴いていく。
大山鳴動して鼠一匹の逆。
小さな事件が、大きな犯罪の芽を摘む。
本人達はやっちまったと肩を落とすが、大きな犯罪を未然に防いだことは大手柄。
不良グループ達は、なぜバレたのかこの先ずっと腑に落ちないだろう。
サカガミの免許証不正取得に気付いたのは、年齢が明らかになったから。
メタ的に言うと ──
これは、サカガミが高校1年生の15歳の間だけ使える仕掛け。
春期限定は「いちごタルト」だけでなく、謎を解く切っ掛けも”春期限定“だったのです。
米澤先生、お見事です。
少し捻くれてはいるが、痛快な復讐劇。
これぞカタルシス。
二人は後悔しているが、推理がピタリとハマった狐は得意げ。
復讐を成し遂げた狼は満足げ。
これぞ青春ミステリ。
ミステリの謎を解くカタルシス。
自身の才能をフル回転させ、仕返しを実行する爽快感。
名付けて青春カタルシス!?
本性隠した二人は、念願の小市民になれるのか?
いや、この巻き込まれ体質なら、逆の方向へ力が働き、今話のような活躍を見せてくれるでしょう。
さて、次はどんな事件が、二人の平穏を脅かすのでしょうか。
以上、TVアニメ『小市民シリーズ』第4話の感想&考察レビューでした。
長文にもかかわらず、最後まで読んで頂きありがとうございます。
5話のレビューも書いています。
良かったらご覧ください。
ではでは。
疑問点 まとめ(Q&A一覧)
この章では、疑問点をまとめていきます。
- 今話で生まれ解決した疑問は、本文で解説して本章でまとめ
- 今話で解決しなかった疑問を、疑問XX-XX(話数-通し番号)として記録
⇒ 本章「疑問点まとめ(Q&A一覧)」でまとめ - 答えは、推測ではなくできるだけ(原作含む)作品内で明らかになった事実を記載
※推測が入る場合は、断りを入れる
⇒ 解決した疑問は、次話で削除
今話で解決した疑問 (クリックすると答えが表示されます)
今話で新たに発生し、解決しなかった疑問
- 疑問 04-01 小佐内は、なぜ警察と関わりたくない?
残っている疑問
なし
今週の感想ツイート
#小市民シリーズ #小市民 4話
— 時文@ここアニ(小市民シリーズレビュー中) (@toki23_a) August 4, 2024
ちっちゃい子が悪事暴き喉笛食い千切る!?
狼の本性遂に露わに狐も本領発揮
憧れ?の平穏生活目指し推理するのに逡巡するも…ひとたび枷を外せば水を得た魚の如く活き活き👍理想と違うが双方晴れやかな顔 これぞ青春カタルシス!?
で、姉何者!?それとホットケーキの束!🤣
関連記事
アニメ『小市民シリーズ』第4話のレビューはこちら!