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こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『小市民シリーズ』第3話「ハンプティ・ダンプティ」を鑑賞しました。
本レビューではアニメ感想だけではなく、原作情報も加え、個人的な解釈による解説・考察をしています。
皆さんの理解の助けになり、作品をより楽しんで頂ければ幸いです。
今回アニメ化されたのは──
- 小市民シリーズ第1弾『春期限定いちごタルト事件』
-
「はらふくるるわざ」と「狐狼の心」の前半
今話の主なトピック (クリックすると該当項目へ)
今話で解決しなかった疑問
最下部「疑問点まとめ (Q&A一覧)」に記載
本レビューの方針
本レビューは、次話以降のネタバレなし
アニメ『小市民シリーズ』の原作は、米澤穂信先生の小市民シリーズ第1弾『春期限定いちごタルト事件』、第2弾『夏期限定トロピカルパフェ事件』。
私は、2作とも未読です。
アニメ鑑賞後、アニメ化済み時点までの部分を読み、レビューを作成しています。
よって、次話以降のネタバレはなしなので、ご安心ください。
アニメ鑑賞
+
原作小説を読み
知り得た情報を加味して「感想・解説・考察」
原作小説の情報は、「原作情報」として区別できるよう表記します。
こんな感じです
緑系の色を目印にしてね!
引用部分も次のように緑系をワンポイントに ──
これは、推理の連鎖で片がつく。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
ちなみに、考察や解説、疑問はオレンジ系 ──
それ以外は、補足や余談、参考情報はブルー系 ──
読む際の目安にして下さい。
全10話 各話リスト
※話数:リンクは各話レビューへ
※サブタイトル、原作小説:ネタバレを避けるため次話以降はマスク
※原作小説:S1(シリーズ第1弾)「春期限定いちごタルト事件」
はじめに
テスト中に花瓶が割れ思い出しかけていた答えを忘れてしまった小佐内は、気を紛らわせるために、小鳩を誘い、封印していた洋菓子店「ハンプティ・ダンプティ」を訪れる。
やけ食いをして満足した帰り道、小佐内は自転車を盗んだサカガミを目撃する。
たとえ約束あろうとも、この激しい怒りは抑えられない。
目指すは平穏小市民。
が、許せないことが立て続き、押し殺していた感情が牙を剥く。
自分に都合良く、やっても良い解釈もできると屁理屈こね出したらもう末期!?
羊の着ぐるみから漏れ出す狼の眼力。
始まるのは正義の鉄槌か復讐か?
ちっちゃい割に、そこまで食べるか底なし胃袋。
小動物のような愛らしさに秘めた、底が見えない怒り。
もしかして羊の着ぐるみを着た狼は、彼女の方!?
面白くなってきました!
では、今話を振り返っていきましょう!
感想&考察レビュー 第3話「ハンプティ・ダンプティ」
封印された店
中間テストがあった日の放課後、小鳩は小佐内に呼び出され、ケーキバイキングがある洋菓子店ハンプティ・ダンプティを訪れる。
中間テスト
ふー(ため息)
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
これまでの(1話 、2話 )レビューでも紹介した通り、原作小説は小鳩常悟朗の一人称視点。
なので、冒頭の小佐内ゆき視点描写を見て、原作を読むのが楽しみでした。
残念ながら? 冒頭シーンはアニメオリジナル。
原作は、これまで通り小鳩常悟朗視点でした。
原作小説では、小鳩視点で中間考査の状況が描かれています。
それによると、中間考査はこの日で全科目終了。
どうやら最終日は午前中で終了。
小鳩は昨夜少し遅くまで勉強をしていたので、さっさと帰って昼寝をします。
家に戻り、軽い昼食。軽装に着替えて、ベッドに寝転がる。うつらうつらとしつつ、眠れないかなと思っていたが、電話の音で目を醒ますと三十分近くが経っていた。深い眠りだったらしく、頭が理想的にはっきりしている。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
だから小佐内から電話がかかってきた時、小鳩は自宅でラフな格好だったのです。
呼び出し
── 小鳩くん? 私、小佐内。
あれ、珍しいね。どうしたの?
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
仲の良い二人。
電話がかかってきて一言目が「珍しいね」とは、これ如何に。
てっきり、小佐内さんが固定電話に掛けてきたことを言っているのだと思っていました。
個人スマホの番号を知っているのに、わざわざ家の固定電話に掛ける必要はありませんからね。
ところが、原作を読むと「珍しいね」の意味がまったく違いました(苦笑)。
そもそも、小鳩はこのタイミングで「珍しい」と言っていません。
原作で、小鳩が珍しいと思ったのは・・・。
「あの、ちょっと付き合ってくれる?」
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
珍しいこともあるものだ。一旦帰宅した小佐内さんが、同じく帰宅したぼくを引っ張り出すとは。
小鳩が「珍しい」と思ったのは ── 帰宅後に呼び出されること。
これまで二人は何度も一緒に帰り、寄り道することはありました。
が、一度帰宅した後に呼び出されることはなかったのです。
それだけ小佐内さんは切羽詰まっていたのか…
あっ、そういうことか…
帰宅後に呼び出されること自体が珍しいのに、行くお店の名を聞き、小鳩はもっと驚かされるのです。
ハンプティ・ダンプティ
ハンプティ・ダンプティって、あそこは封印したはずじゃ・・・。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
「ハンプティ・ダンプティ」って、一体何の暗号かと思ったら・・・。
ケーキ屋の名前でした(笑)。
原作では、もっと詳しく説明されています。
黄色のポップな字体で〈ハンプティ・ダンプティ〉とあるのを見ると、つい笑ってしまう。〈ケーキショップ ハンプティ・ダンプティ〉。日本語で言うなら、〈洋菓子店 覆水盆に返らず〉といったところか。もう一口、を躊躇わせるに充分なインパクトのある店名だ。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
もう一口を躊躇わせるネーミングは、ケーキバイキングで客にあまり食べさせないようにするためでしょうか(笑)。
実際、小佐内さんも ──
小佐内さんの大のお気に入りの店だ。お気に入りすぎて、つい食べ過ぎるので、小佐内さんはこの店には二度と行かないと固く決心していたはずだけれど。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
「ハンプティ・ダンプティ」のネーミング(アドバイス?)など関係なく食べ過ぎてしまうので、封印していたのです(笑)。
ちなみに、上記原作情報はアニメではカットされましたが、今話のWEB予告のネタになっています。
これです!
ハンプティ・ダンプティは、モデルとなったお店があるようです。
◆Princess Branche Patisserie Kura (岐阜市)
残念ながら、食べ放題はないようです(笑)
なんだ、ないんだ…
割れた花瓶
テスト中、花瓶が割れたことが原因で思い出しかけていた答えを忘れてしまった。やけ食いする小佐内からその話を聞いた小鳩は、学校に忘れたスマホを取りに行ったついでに、教室内を調べる。
食べ放題と単品
僕はとりあえずコーヒー・・・とモンブラン単品で。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
1,500円で食べ放題は安い!
単品の価格は出てきませんが、3つ4つ食べれば元は取れるでしょう(笑)。
つまり、小佐内さんは楽々クリア。
小鳩くんは、1個で十分なので単品で良いのです。
実際には、単品で頼んだそのモンブランですら小佐内に食べられたようです(笑)。
小佐内さんが食べたかのような描写はアニメオリジナル。
原作では、小鳩自身が頼んだモンブランは食べています。
案の定、小鳩はモンブラン1個でお腹いっぱい。
注文したケーキを食べ終えたから学校へスマホを取りに行ったのです。
ケーキバイキングは90分ですからね(笑)。
一方、小佐内さんのケーキを食べる手は止まる気配がありません。
聞くと、テストが終わってからずっと小鳩を探していたと言います。
もしかすると小佐内さんは昼食を食べてないかもしれない。
だとしたら、そもそも空腹なところにやけ食いをしているので、どれだけ食べるか興味がある・・・いや、これだけ食べられるのも納得していたのです。
つうかあ
── 何かあったの?
何も。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
アニメではサラッと進みましたが・・・。
原作では、「何も」と答える小佐内さんに、小鳩は額面通り受け取っていません。
「なにかあったの?」
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
「なにも」
即答。ミルフィーユの破片をざくりと突き刺す小佐内さん。もちろん、小佐内さんは聞いて欲しい話があるのだ。だからぼくを呼んだ。一人じゃケーキ屋にも入れない、というほど小佐内さんは可愛いひとではない。
ちゃんと小佐内さんの性格を見抜いています。
二人は恋人でも、片思いでもありません。
本性を隠す為に互いを利用する互恵関係。
一人でケーキ屋にも入れなければ、食べ放題を選択できないなんて事は、彼女にとってはあり得ません。
ならば、聞いて欲しい話があるはず。
でも、小佐内さんは話してくれません・・・。
そこで小鳩の解釈は ──
しかしなるほど、すんなり話す気はないということか。これはぼくの配慮が足りなかった。コーヒーを啜る。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
「・・・テスト、どうだった?」
小佐内さんの怒りは、そこそこ頂点に達していて、一筋縄ではいかなかったのです。
それを怒ることなく、自分の配慮が足りなかったと反省する小鳩。
なかなかできないよ、そんな考え
うん、凄い!
まずはとっかかりとして、「テストどうだった?」と今日の出来事から入ったら、それがズバリ本題に繋がってしまったのです。
う~~ん。
冒頭シーンでテスト中に小佐内さんに何があったか知っているので、脇目も振らず本題に触れたのだと思っていました。
が、確かに考えてみれば小鳩は何も知らないので、季節の話題から解きほぐしていこうと思い、終わったばかりのテストに触れたのです。
悲しい?
花瓶がガシャンって割れて、それで全部忘れちゃったの。
水もこぼれて後始末が大変だった。── そりゃあ、災難だったね。
ハァッ。
それで私、なんだか悲しくなって。── 悲しく?
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
サラッと流してしまいそうな上記セリフ。
アニメ鑑賞時、小鳩同様違和感を感じました。
いや、正確に言うと、小鳩くんが違和感を感じたので気付いたという感じでしょうか(笑)。
花瓶が割れ水もこぼれて後始末も大変で、テストは思い出しかけていた答えを忘れてしまった。
なのに「悲しい」って、これ如何に。
あっ、確かに!
原作は小鳩常悟朗一人称なので、その辺は心情描写として描かれています。
小佐内さんは「悲しくなって」ぼくを捜したのではないだろう。賭けてもいいけど、彼女の本心は「腹が立って」だ。絶対にそうは言わないだろうけど。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
小鳩は、小佐内さんは「悲しく」なったのではなく「腹が立って」だと考えています。
腹が立ったから封印を解いてまでして「ハンプティ・ダンプティ」でやけ食いしているのです。
ここからは、私の解釈になりますが・・・。
小佐内さんは、やけ食いをしに来ただけでなく、なぜ花瓶が割れたか真相を知りたかったのではないでしょうか。
でもそれは、小鳩に推理をさせてしまうことになります。
小市民になる二人の約束と真逆の行為。
小鳩がやらないと決めたのは推理。
今話後半部分を見ると、小佐内さんが隠そうとしているのは「怒り」?
ならば、怒って小鳩に推理させるなんて選択はできません。
二重の意味で約束を破ることになってしまいます。
だから、悲しいなどと表現し、小鳩がケーキに手も付けてないのに「すぐにスマホを取りに行った方が良い」と、学校へ花瓶の謎を解くために現場調査させたのです。
だとすると ──
なかなか小狡いですね、小佐内さん(苦笑)。
そして、そんな小佐内さんの意図を理解した上で、小鳩は行動を選択しているのです。
スマホではなく携帯
あっ、スマホ学校だ。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
テストの前に電源切ってロッカーに入れてたんだった。
テスト中はロッカーに入れるのはあり得るとして、今どきの高校生がスマホを忘れてきたのに、これほど長い時間気付かないのか?と不思議に思われるかもしれません。
が、それは時代背景の違いです。
原作小説『春期限定いちごタルト事件』が発行されたのは今から20年前の2004年。
スマホが知れ渡るようになったのは2008~2009年。
2010年のスマホの普及率は4%、その翌年あたりから一気に普及していきます。
つまり、小鳩が持っているのはスマホではなく携帯です。
通話とメールしかできないので、なくても気付かない可能性は十分あるのです。
目的はスマホではなく…
── 取りに行く?
うん。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
ちょっと行ってこようかな。
取りに行くと返事をするのに、少し間がありました。
普通に考えると、ケーキを食べている途中に抜けるなんてどうしたものか?悩んでいるように見えますが・・・。
普通のカップルなら、言語道断。
「私とスマホどっちが大事なの!?」とケンカの切っ掛けになってしまうかも(笑)。
さて、何度も書いてきたように、二人は単なる互恵関係。
小佐内さんが小鳩を誘ったのは、二人でケーキバイキングを楽しむためではありません。
テスト中に起きた腹立たしい・・・失礼、悲しい出来事を聞いて欲しかった。
なんて、か弱い女子の発想ではなく(苦笑)。
なぜテスト中に花瓶が割れたのか、真相を知りたかったから。
それには小鳩に現場を見てもらうのが一番。
だから ──
── うん。ちょっと行ってこようかな。
それがいいと思う。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
なんの迷いも躊躇もなく、小佐内さんは小鳩が学校へ行くことに賛同したのです。
なかなかに、なかなかな子ですね小佐内嬢は(笑)。
上記推測が正しいとすると、皆さんの中には疑問を持った方もいらっしゃるかもしれません・・・。
小佐内さんは、なぜ花瓶が割れた程度の事にそんなに拘るのでしょうか?
花瓶が割れた理由が分かっても、テストの結果は変わりません。
解答を思い出せなかった悔しさを、やけ食いで気を紛らわせようとしているのではないのか・・・。
原作では、その辺にも触れています。
そう、犯人がいる。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
小佐内さんはそれに気づいていた。
小佐内さんは、花瓶はテスト中に意図的に落とされたのだと気付いていたのです。
つまり、思い出しかけていた解答を、(タイミングは偶然ですが)誰かのせいで邪魔され思い出せなかったのです。
その怒りも含め、気を静めようとハンプティ・ダンプティの封印を解いたのです。
ただ、小佐内さんは誰がなんのためにそんなことをしたのかまでは、わからなかった。だからぼくを呼んだのだ。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
花瓶を落とした犯人も目的も分からなかったので、名探偵を呼んだのです。
だとしたら・・・。
小佐内さん、もっとストレートに言えば良いのに、なんだこのまどろっこしいのは(苦笑)。
それ思った!
その答えは原作にありました。
ネタバレになってしまうかもしれないので隠しておきます。
続きを読む (クリックして下さい)
ただ、小佐内さんは誰がなんのためにそんなことをしたのかまでは、わからなかった。だからぼくを呼んだのだ。かといって、自分がどんなに腹を立てたかを、ぼくを呼び出して聞かせるというようなことはしない約束だ。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
今話後半で明らかになったのは、小佐内さんが隠しているのは怒りや復讐心?
小市民になるため、その怒りの理由を話さない約束をしていたのです。
なるほど。
だから、小佐内さんは、怒っていても「悲しい」と言い、犯人を探して欲しいのに口にしないのです。
となると ──
花瓶を割る仕掛けをした犯人の名(座席)を小鳩が言わなかったのは、小鳩が厄介事に巻き込まれない為だと思っていましたが・・・。
小佐内さんに復讐させないため!?
えっ、そういうことなの!?
いや、さすがに拡大解釈しすぎかも…
そ、そうだよね…
でも、可能性がゼロとも言えないな…
都合良い解釈
さて、おつかいを済ませなきゃ。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
先の私の推測が正しいとするなら・・・。
小鳩は推理を封印しているはずなのに ──
小佐内さんは、小鳩に花瓶が落ちた真相を明かすよう促し。
小鳩はそれを受け、あれほど避けていた推理をしに現場検証し始めたのです。
1話 、小鳩は推理を拒み、堂島の言うとおり手を貸す(校内を探す)ことだけに専念。
2話 、堂島に苛立たされ、姉に煽られ、ついココアの作り方を真剣に推理。
吹っ切ったのかと思ったら ──
2話ラストで推理しないと小佐内さんに宣言し、今話終盤も堂島に推理はしないと断言していました。
この矛盾は、何なのでしょうか?
その答えは原作にありました。
「・・・誰に迷惑をかけるわけでもないし、いいよね」
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
誰も見ていないとこうして自分の考えの証明に走るあたり、ぼくは本当に精進が足りない。
迷惑をかけなければ推理しても良い?
小鳩が推理したくない理由は、今話終盤明らかになりました。
気付いたんだ。
誰かが一生懸命考えてる問題を、端から口を挟んで説いてしまう。
それを歓迎してくれる人は結構少ない。
感謝してくれる人なんてもっと少ない。それよりも敬遠されること、嫌われることのほうがずっと多いってね!
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
推理をしないのは、嫌われるから。
逆に言えば、嫌われなければ推理してもよい?
誰にも迷惑をかけなければ推理してもよい、と考えているのです。
なるほど。
だから、花瓶が割れた謎を解明しても犯人を告げたり明かしたりはしなかったのです。
1話ポシェット盗難事件、皆の前で推理しなかったのは他人に知られたくなかったから。
だから小佐内さんとこっそり推理したのです。
2話ココアの作り方は、堂島の姉・知里の前で推理を披露してしまった。
だから、もう二度とこんなことはやらないと言ったのです。(2話 )
今話終盤 ──
── そういうのはむしろお前の好きなシチュエーションだろ?
“好きだった”だよ。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
もう好きじゃないんだ、そういうのは。
小鳩は好きじゃないと言っていますが、目の前に謎を提示されると解かずにはいられないのでしょう。
だから、ポシェットはこっそり探し、ココアの作り方は(知里に乗せられた面もあったが)解いてしまった。
後半、小佐内さんが怒りを抑えきれず、本性の片鱗を見せました。
何のことはない。
小鳩も小佐内さんも、自分の感情を抑制できない。
結果 ──
誰かに迷惑かけるわけじゃないから、花瓶が割れた謎は解いても良い。
一番大事なのは「私有財産の保全」ってことにしたら復讐もOK。
二人とも抑えが効かなくなったら、それをしても良い解釈に頭を巡らせる。
小市民を目指す両名は、まだまだ未熟者なのです。
実際、中学上がったばかりの高校1年生だしね
そりゃあ、まだまだ自分の感情なんて抑えられないよね
割れた花瓶の謎
テスト中に掃除道具入れの中で花瓶が割れた。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
誰かがそうなるように仕掛けた。
花瓶が割れた仕掛けは、お分かりですよね。
ミステリー界ではとてもオーソドックスな、氷を使った時限装置です。
恐らく ──
花瓶に水を入れ、そこにヒモを垂らして凍らせる。
ヒモが短かったので、フタをして逆さにして凍らせたかも
テスト中に落ちるよう、時間を逆算して掃除道具入れに仕掛ける。
そんなに上手くいく?
きっと何度も実験したでしょう。
とは言え、それほど正確な時間に落とす必要はありません。
テストの後半に落ちれば良い、的な感じだったのではないでしょうか。
掃除道具入れで花瓶が落ちるのは、アニメオリジナルです。
驚いたことに、原作では落ちたのは花瓶ではなく、落ちた場所も掃除道具入れではありませんでした。
落ちたのは栄養ドリンク(中身は空)。
ビンが置いてったのはロッカーの上。
落とした仕掛けは・・・アニメとは関係ないのでここでは控えます。
気になる方は、ぜひ原作をお読み下さい。
聞くと、「な~んだ」という簡単な方法です(笑)。
問題は、仕掛けそのものではなく、なぜそんなことをしたのか?です。
よそ見して良い状況
大きな音が鳴れば、そこにいる全員が出所を振り返る。
生き物としての自然な行動だよ。たとえそれが、よそ見厳禁のテスト中だったとしても。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
本作の見所が分かってきました。
見せ場は、事件それ自体ではなく、なぜ事件が起きたのか、なぜ事件を起こしたか、ではないでしょうか。
1話、ポシェット盗難事件は、ラブレターを入れようとして事件になってしまった。
あるいは、堂島との関係、小鳩と小佐内さんが付き合っていると外から見られていることを伝えたかったのかもしれません。
2話、ココアの作り方は、堂島のズボラな性格を現すのに使った。
あるいは姉弟の関係、小鳩が推理に面白さを思い出すのに使ったのかもしれません。
そして、今話。
テスト中に花瓶を割ったのは、堂々よそ見をする為だったのです。
確かに大きな音がすれば、振り返るのは自然な反応。
大手を振って振り返れるのを利用して、カンニングペーパーを仕込んでいたのです。
って、そんな凝ったこと考え準備する時間あるなら、暗記した方が良かったような・・・。
それなー
確かにカンニングした割には情報少なかった(苦笑)
ちなみに、原作では小鳩は推理結果を小佐内さんに話しません。
なぜなら、小鳩は推理しない約束をしています。
(それに、前話ラスト再宣言したばかり(2話 ))
小佐内さんも分かっているので、ストレートに頼まなかったのは先に書いた通り。
頼んでないので、結果を聞くこともできないのです(苦笑)。
ついでに書くと、本エピソードの原作サブタイトルは「はらふくるるわざ」。
「おぼしきこと言はぬは・・・」
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
うん。なるほど、ここで引用するには適切なフレーズだ。ぼくは笑って、後を引き取った。
「はらふくるるわざ、だね」
「おぼしき事言はぬは腹ふくるゝわざ」とは徒然草の一節。
思っていることを言わないのは、お腹に物が詰まっているようで気持ちが落ち着かない、という意味です。
アニメでは、小佐内さんに推理結果を話してしまったので使えず、「ハンプティ・ダンプティ」にしたのでしょう。
原作では、推理を話していません。
でも、互いが何を考えているのかはお見通し。
だから、上記会話が成り立っているのです。
二人は、相手が何を考えどう行動したか、分かって会話しているのです。
難しい…
結構複雑だね
この恨み晴らさでおくべきか
今日はいい日だったな。
テストは終わったし、ケーキも食べたし。あっ・・・サカガミ!
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
なぜ、自転車泥棒の名前を知っている!?
これは、1話で小鳩が不良達の会話を聞いていたからですね。
オザキさん、サカガミ、チャリパクられたっつってますけど。
by 男子学生『小市民シリーズ』TVアニメ 第1話
それよりも、前回は制服、今回は私服。
自分の自転車とは言え、あの一瞬で見つけ、名前がすぐに口に出てきたことです。
相当、腹に据えかねていた証拠ではないでしょうか。
あっ、確かに・・・
それにしても…
高校も名前も知っていて、更に(終盤で)自動車学校に通ってるのが分かったなら、警察に任せればいいのに
あっ、そうじゃん…
抑えきれない怒り
小佐内は再び生徒指導室に呼び出される。盗まれた自転車が見つかったのだ。
二度目の生徒指導室
入って行くのが見えたから。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
このセリフはアニメオリジナル。
原作では、小佐内さんは校内放送で呼び出されます。
だから、小鳩はすぐに気付いたのです。
呼び出された内容を聞けば、小佐内さんに非はなく、むしろ被害者だと分かります。
ですが、事情を知らない人はどう思うでしょうか?
高校へ入学してまだ日も浅いのに、2度も生徒指導室へ呼び出される女子にどんな印象を持つでしょうか?
平穏な高校生活を目指していた小佐内さんは、1年の1学期早々にケチを付けられたのです。
小鳩は心配して、生徒指導室の前で小佐内さんを待っていたのです。
── どうしてそんなに詳しいの?
悲しくなって、色々調べたの。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
前回生徒指導室に呼び出された際に聞いた、1度目の自転車目撃情報。
被害に遭った学生の名前や盗まれた物を調べていた小佐内さん。
悲しくなって・・・調べた?
これも、前半のテスト中に花瓶が割れた時と同様、「悲しい」ではなく怒っていたのです。
腹が立ったから、調べたのです。
その方が納得できる!
でも、小市民たるもの、そんなことで怒ってはならない・・・。
だから、小佐内さんは、悲しいと表現したのです。
小市民の定義が間違っているような…
それっ!
現場検証
── 小鳩くん、昨日何があったんだと思う?
それは・・・ええっと・・・。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
小鳩は、もう知恵働きはしないと宣言。
小佐内さんは、もちろんそのことを認識しています。
花瓶が割れたことだって小鳩に聞いていません。
にもかかわらず、ここでは堂々と問います。
何があったんだと思う?(小鳩くん、推理してよ)と。
少し迷いはあったものの、約束を破ったことを咎めることなく、素直に推理する小鳩。
この時、小鳩にどんな感情が湧いたのでしょう。
その辺は、原作にばっちり書かれています。
こういう時、心情描写がある原作小説はいいね!
どう答えたものか、ぼくは戸惑った。そうする必要もないのに、あまり小賢しいことは言わないことにしている。それは小佐内さんだって、いや小佐内さんが一番よく知っているはずだ。それでも訊いてきたのだから、きっと、推測でもいいから経緯を納得できないと、気分が落ち着かないのだろう。それなら、とぼくは壊れた自転車を見、振り返って丘を見、そしてきのうの「サカガミ」の姿を思い出そうとした。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
小鳩は、誤魔化すことだって、逃げる事だってできたのです。
そんなことは小佐内さんだってよく分かっているはず。
いや、分かっているのに質問したのは、それほど知りたい証し。
正解じゃなくてもいい。
間違っていてもいい。
可能性の話でいいから聞かないと落ち着かない。
そこまで小佐内さんは追い込まれていると、小鳩は判断したのです。
だから、禁を解き推理を始めた。
小鳩は、とても優しい男なのです。
復活した笑顔
償ってもらわないと。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
不穏なBGMと映像に彩られた小佐内さんの笑み。
原作では、言葉よりもその表情に小鳩は狼狽えています。
いや、これは、見たことのある笑顔だ。だからこそ、ぞっとする。
- 中略 -
「償ってもらわないと」
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
戻ってる戻ってる。二度とそうはならないと決めた小佐内さんに、戻っている。ぼくは慌てて、小佐内さんの視線の先にまわり込んだ。
これが、小佐内さんが隠していた本性。
ちっちゃい子は、甘いものなら幾らでも入る底なしの胃袋・・・じゃなくて。
見た目からは想像も付かない、底が知れない本性を隠していたのです。
正義か、怒りか、復讐心か。
そういや、1話、小鳩がポシェットの中を探っているのを犯人が文句を言ったら、小佐内さんは毅然と反論しました。
それラブレターでしょ?
- 中略 -
そんな人にポシェットの中を見たって、小鳩くんを責めることはできないと思います。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第1話
小佐内さんは、間違ったことを許せない性格なのかもしれないですね。
それが、自分(達)に対してだけなのか、他人に対しても含まれるのかはまだ分かりませんが。
成る程と思ったのがもう一つ ──
1話、序盤での喫茶店でのシーン。
アニメではカットされていますが、原作では ──
小佐内さんがこうして微笑むのは、いまとなってはもう、甘いものの話をするときぐらいだ。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
なんてことを小鳩は思っていました。(1話 )
小佐内さんが微笑むのは、甘い物を食べるときと、復讐を考える時のみ!?
だから、復讐、あるいは怒るのを止めた小佐内さんは、笑顔を見せなくなったのです。
それって、何だか悲しい…
だよね、微笑むのがそんな時だけなんて…
小市民にとって大切なこと
私達小市民にとって、一番大切なものって何だと思う?
── 現状に満足すること小市民にとって一番大切なのは・・・私有財産の保全ってことにしたら?
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
自転車は戻ってきても、本性は戻してはいけない。
小鳩の必死の呼びかけも虚しく、小佐内さんは都合良い解釈で、自分の欲望を満たそうとする・・・。
小鳩は散々約束破って推理したから説得力ないけどね
それっ!
自分は推理して昔の小鳩をチラホラ見せたのに、小佐内さんはダメ?
いや、どうやら小佐内さんはレベルが違う!?
一度戻ってしまったら取り返しがつかない!?
今回の相手は不良グループ。
小佐内さんに何かあってからでは遅いのです。
平穏な小市民になれないだけではない。
小佐内さんの身に危険が及ぶ可能性があるのです。
サカガミは、水上高校の制服を着てたよね。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
名前と所属高校も分かっています。
その上、通っている自動車学校が分かったのなら、特定できたも当然です。
ならば、警察にその情報を渡せば、すぐに捕まえてくれるはず。
でも、そうしようとしないのは・・・。
もしかすると警察には一切の情報を話してないのかもしれません。
小市民足るもの、逆恨みされるような事を言ってもいけない云々とか言って(笑)。
逆に、個人を特定できる情報を入手しても ──。
警察に任せるのでなく、自分の手で復讐したい、と考えているのであれば・・・。
えっ、それってかなりヤバくない?
うん
実は小佐内さん、かなりヤバい子な気がしてきた…
小鳩は、小佐内さんが(元々)ヤバい子だと知っているので無茶をしかねないと懸念。
だから、堂島に助っ人を頼んだのかもしれないですね。
支援要請
自転車を盗んだサカガミに復讐を企てる小佐内を助けたい小鳩は、堂島に助けを求める。
救援要請
機動防御に予備兵力増強の要あると認むにつき支援を要請す
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
なんだ、この文章は(笑)。
というのは、さておき。
まるで、自力で小佐内さんを止めるのを早々に諦め、直後に堂島に助けを求めたかのように見えますが・・・。
そんなことはありませんでした。
原作では、小鳩は小佐内さんを止める努力をして、止められないと分かると手助けするとまで言ったが、それも拒否されたのです。
小鳩には、関係ないと。
春期限定いちごタルトを買いに行くのが遅くなったのは、小鳩のせいです。
自転車を盗まれた責任は、あのタイミングで行くことになった小鳩にもあると思うのですが・・・。
実はこれはアニメ版のみ。
原作では、ポシェット盗難事件と自転車泥棒は別の日です。
いちごタルトを買いに行くとき、待たせたりはしていません。
まあ、自転車を盗まれたことではなく、復讐をすることに小鳩は関係ないということでしょう。
確かにそれはそうかも
実は、自転車を見つけたのは金曜日。
土日は小佐内さんにメールで連絡したが返事なし。
その間、小鳩は情報収集していたようです。(推理用?)
月曜になり、あらゆることに対応できるよう堂島に支援を要請したのです。
苛立ち
さっさと要件を言え。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
下らんことなら俺は部に戻る。
それは小佐内からの頼みなのか?
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
── いや・・・。
なら俺の出る幕じゃない。
小佐内さんの身に危険が迫っていると聞けば、てっきり堂島は一も二もなく手伝ってくれると思っていました。
意外と冷たい?
というより、ただのお人好しではなさそうです。
原作では、堂島にここまで言わせてません。
口を開きかけた時、小鳩は間髪入れずに次の言葉を続けています。
「いや、ぼくの独断だ」
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
健吾の口が開きかける。大方、なら出る幕じゃない、とでも言おうとしたのだろう。ぼくは口を挟ませず、素早く言を継ぐ。
「でも、理由がある」
その後、危険が迫っているかもしれないと伝え、堂島は小鳩の言葉を促すのです。
堂島は、決して冷たい訳ではありません。
冷たい態度を取っていますが、小佐内さんを心配しているのです。
ツン?
何があったか知らないが、今のお前みたいに、こそこそこぢんまりとした奴と俺は付き合いたいとは思わん。
昔のお前は嫌な奴だったが、俺は嫌いじゃなかった。
小市民とやらになりたいなら勝手になればいい。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
この直後、小鳩は笑い出します。
なぜ笑ったのでしょうか?
アニメ鑑賞時、正直分かりませんでした。
原作は、さすが小鳩常悟朗一人称。
感情がしっかり描かれています。
ぼくはしばらく健吾を見続け、そして健吾に恥ずかしげがなかったわけではなく、そのわざとらしい仏頂面は照れ隠しなのだと気づいて、思わず笑い出した。健吾はむすりとしていたが、やがてにやけ出すと、笑いを堪えるのに随分苦労しているようだった。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
堂島の仏頂面は照れ隠し!?
直前の会話を振り返りましょう。
小鳩は中学時代に何があったのか打ち明けました。
二度と推理しない理由を述べました。
常悟朗が本音で話したので、健吾も本音で答えたのです。
何があったか知らないが、今のお前みたいに、こそこそこぢんまりとした奴と俺は付き合いたいとは思わん。
昔のお前は嫌な奴だったが、俺は嫌いじゃなかった。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
つまり、(お前が嫌っている)昔のお前が好きだったと。
健吾が真顔でそんなことを言うものだから。
仏頂面が照れ隠しだと気付き、常悟朗は笑い出したのです。
だから ──
小鳩:いやあ、厳しいね健吾。
by 『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
堂島:悪いな常悟朗。正直で売ってるんだ。
と言葉を続けたのです。
原作では、健吾も笑いを堪えています。
これはアニメでも見たかった。
お~~見たかったかも!
賭け
今から賭けをするよ。
小佐内さんに電話して、この件から手を引かせられれば良し。できなかったら、ささやかな知恵を絞って小佐内さんが危険だと思う理由を言葉にまとめる。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
なぜ、賭けをしたのでしょうか?
その答えも原作にありました。
・・・基本的には、ことは小佐内さんの問題だ。なら、選ぶにも、小佐内さんを絡ませよう。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
なるほど。
小佐内さんの問題だから、彼女を絡ませたのです。
確かに小佐内さんに問い詰められたとき、言い訳にもできますね(笑)。
と言いながら、かけた電話は5回ほどのコールで切ります。
じゃあ始めよう。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
僕が思うに、これは推理の連鎖で片が付く。
ついに、小鳩常悟朗が本気を出すのでしょうか。
共に小市民になると誓った相棒、小佐内さんが約束を破って本性を出しつつある。
小佐内さんの本性を隠す為に、小鳩が本性を発揮する。
一見、矛盾しているような気もしますが、何気に王道展開。
『春期限定いちごタルト事件』が、クライマックスを迎えようとしているのです。
おわりに (『小市民シリーズ』3話とは)
いや~~面白かった。
えっ?そんなこと言うのお前だけだろう、ですって??
かもしれないですね(苦笑)。
認めるんだ!?
作品の捉え方は人それぞれだよ!
何て言えばいいんでしょう。
誤解を恐れずに言うと、本作はとても捻くれています(笑)。
ミステリと見せかけ、事件そのものは至極単純。
小市民を目指していると言いながら、その小市民像に共感できない。
約束に縛られているようで好きな解釈で破ったり、そもそも約束がよく分からないから何を気にしているのか分からない。
そんな分からない事だらけの中で見せられる、ちょっとした心理戦や攻防。
失礼な表現になり恐縮ですが ──
本作は、面倒くさい性格をした二人が本心を語らず、それでいて心の内を描こうとする、ややこしい構造になっているのです。
パッと見、面白みは分からず。
でも、隠れているものが見えてくると面白い。
そんな印象を持った3話。
私は最初、本作をミステリ作品として捉えていました。
だから、ポシェット盗難事件は1話目であり我慢するにしても、2話のココアの作り方には肩透かしを感じました。
ミステリ作品としては、事件そのものに謎も不可思議さも弱いからです。
起きる事件に引き込まれるような魅力を感じませんでした。
ところが、アニメ3話を見て印象が変わりました。
注目すべき対象を変えたのです。
注視すべきは事件ではなく、なぜ事件が起きたのか起こしたのか。
それともう一つ、小鳩と小佐内の二人。
この二人の存在、考えが、視聴者に投げかけられた問いであり、解き明かすべき不可思議な謎だと私は解釈しました。
キャラクターに注目するのは当然?
確かにその通りです。
でも、事件よりもキャラクターの謎がメインのミステリ作品って珍しくないですか?
いや、ミステリ作品というより、主人公二人をミステリで描く成長物語。
(腹の探り合い、駆け引きをするという面で捉えると堂島を加えて三人)
本作は、学園ミステリではなく、学園ミステリ青春モノ。
主軸は、青春、成長(葛藤?)ではないでしょうか。
そう捉えると、とても面白くなり、興味が湧き原作を購入。
(主に小鳩側ですが)二人の心情を意識しながら読み、再度アニメを見ると、最初に見た時より本作のイメージがガラリと変わりました。
ミステリではなく、ミステリー。 ←広義のミステリという意
学園青春ミステリではなく、学園ミステリ青春もの。 ←そんな言葉あるか知らんけど
ポイントは事件ではなく、小鳩常悟朗と小佐内ゆき。
事件は添え物、小鳩と小佐内自身がミステリーなのです。
念のために言っておきますが。
「事件は添え物」と書きましたが、事件をおろそかにしているという意味ではありません。
本作の事件は、事件そのものの謎やトリックが奇をてらったものではありません。(すみません)
むしろ、”なぜ事件を起こしたのか”に重点が置かれています。
以上、TVアニメ『小市民シリーズ』第3話の感想&考察レビューでした。
長文にもかかわらず、最後まで読んで頂きありがとうございます。
4話のレビューも書いています。
良かったらご覧ください。
ではでは。
疑問点 まとめ(Q&A一覧)
この章では、疑問点をまとめていきます。
- 今話で生まれ解決した疑問は、本文で解説して本章でまとめ
- 今話で解決しなかった疑問を、疑問XX-XX(話数-通し番号)として記録
⇒ 本章「疑問点まとめ(Q&A一覧)」でまとめ - 答えは、推測ではなくできるだけ(原作含む)作品内で明らかになった事実を記載
※推測が入る場合は、断りを入れる
⇒ 解決した疑問は、次話で削除
今話で解決した疑問 (クリックすると答えが表示されます)
今話で新たに発生し、解決しなかった疑問
- 疑問 03-01 サカガミが通っている自動車学校まで分かったのに、なぜ警察に伝えない?
残っている疑問
- 疑問 01-03 小佐内は、なぜ小市民を目指している?
- 疑問 02-01 窃盗現場近くでなぜ小佐内の自転車が目撃された?
- 疑問 02-02 小佐内は人見知りなのに、なぜ堂島健吾の家に行った?
今週の感想ツイート
間違えて「2話」と書いてしまいました。正しくは「3話」です。
#小市民シリーズ #小市民 2話
— 時文@ここアニ(小市民シリーズレビュー中) (@toki23_a) July 23, 2024
例え約束あろうともこの心火は抑えられない
目指すは平穏小市民。が、許せない事が立て続き、押し殺してた感情が牙を剥く。(やっても良い)屁理屈捏ねだしたらもう末期、羊の着ぐるみから漏れ出す狼の眼力。始まるのは正義の味方か復讐か?
なんだか面白くなってきた😆
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アニメ『小市民シリーズ』第4話のレビューはこちら!