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こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『小市民シリーズ』第5話「伯林あげぱんの謎」を鑑賞しました。
本レビューではアニメ感想だけではなく、原作情報も加え、個人的な解釈による解説・考察をしています。
皆さんの理解の助けになり、作品をより楽しんで頂ければ幸いです。
今回アニメ化されたのは──
- 小市民シリーズ短編集『巴里マカロンの謎』
-
「伯林あげぱんの謎」
今話の主なトピック (クリックすると該当項目へ)
今話で解決しなかった疑問
最下部「疑問点まとめ (Q&A一覧)」に記載
本レビューの方針
本レビューは、次話以降のネタバレなし
アニメ『小市民シリーズ』の原作は、米澤穂信先生の小市民シリーズ第1弾『春期限定いちごタルト事件』、第2弾『夏期限定トロピカルパフェ事件』。
私は、2作とも未読です。
アニメ鑑賞後、アニメ化済み時点までの部分を読み、レビューを作成しています。
よって、次話以降のネタバレはなしなので、ご安心ください。
アニメ鑑賞
+
原作小説を読み
知り得た情報を加味して「感想・解説・考察」
原作小説の情報は、「原作情報」として区別できるよう表記します。
こんな感じです
緑系の色を目印にしてね!
引用部分も次のように緑系をワンポイントに ──
これは、推理の連鎖で片がつく。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
ちなみに、考察や解説、疑問はオレンジ系 ──
それ以外は、補足や余談、参考情報はブルー系 ──
読む際の目安にして下さい。
全10話 各話リスト
話数 | サブタイトル | 原作小説 |
第1話 | 羊の着ぐるみ | S1 |
第2話 | おいしいココアの作り方 | |
第3話 | ハンプティ・ダンプティ | |
第4話 | 狐狼の心 | |
第5話 | 伯林あげぱんの謎 | 短編集 |
第6話 | ||
第7話 | ||
第8話 | ||
第9話 | ||
第10話 |
※話数:リンクは各話レビューへ
※サブタイトル、原作小説:ネタバレを避けるため次話以降はマスク
※原作小説:S1(シリーズ第1弾)「春期限定いちごタルト事件」
短編集「巴里マカロンの謎」
はじめに
アンケート用紙を届けに小鳩が新聞部へ行くと、部員は何やら重い空気。
堂島曰く、マスタード入り揚げパンを食べた者が誰も名乗り出ないと言う。
オオカミ少女の好物は甘いもの。
特技は誰にも気付かれない存在感・・・じゃなくて忍び足?
誰が悪いのか誰も悪くないのか・・・。
ちょっとしたゲームで内に秘めてた感情が露呈、疑念が疑念を呼び険悪なムードに。
分かってみれば、ちょっとした勘違い。
これぞ日常ミステリ!
作品世界内では存在感薄い設定の小佐内さん。
登場シーンは僅かでも、最後に全部持っていく。
ちっちゃいけど、存在感ある小佐内さんでした。
では、今話を振り返っていきましょう。
感想&考察レビュー 第5話「伯林あげぱんの謎」
プロローグ
アンケートを届けようと新聞部に向かう小鳩は、廊下で窓の外を眺め佇む少女を見かける・・・。
あれから1年近く?
小鳩が2年と名乗っているのと、部室のカレンダーが5月なことから ──
現在は、高校2年生の5月。
前話から1年近く経ったのです。
1年も経ったのなら、小鳩くんも小佐内さんもさぞ小市民が板に付いていることでしょう(笑)。
涙のわけは…
小鳩くん・・・。
これって、私が悪いのかな・・・。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
一人廊下に佇み、春風注ぐ中外を眺める少女。
声を掛けると、その頬には一筋の涙が・・・。
原作の小鳩はヒドいです(笑)。
窓際にたたずむ女子生徒に気がついた。ボブカットをかすかに風になびかせ、窓の桟に腕を乗せて暮れていく外を見つめているのは、誰あろう小佐内さんだ。小佐内さんは放課後の廊下でポーズを決めるようなひとではないから、いったいどんな趣向かと思って声をかけた。
by 小説『巴里マカロンの謎』
小佐内さんは「放課後の廊下でポーズを決めるような人ではない」ので「どんな趣向かと思って声を掛けた」のです。
確かにヒドい
小鳩の小佐内さん像って一体…
原作では、小鳩は脳内で小佐内さんに対し散々な評価・・・。
いや、小佐内ゆきという少女を正確に把握しているのです。
小佐内さんは羊の着ぐるみを着たオオカミ。
たとえ誰かに何かをされたとしても、沸いてくるのは怒り。
決して弱々しい少女ではありません。
むしろ性格や思考が獰猛で勇猛果敢だから、オオカミに例えられているのです。
廊下で佇み、ポーズを取るような少女ではないのです。
原作での、小鳩の小佐内ゆき像。
確かにヒドいですが、前々話、前話鑑賞後は(いまだに信じられませんが)納得かも。
正解かどうかはともかく・・・。
そんな小佐内さんが一人廊下に佇み、隠れるようにして涙を流していたのです。
つまり、(小鳩にとっては)小佐内さんが涙することが尋常ではない。
これは、小佐内さんにただ事ではないことが起きたと解釈したのです。
それならさっさと用事済ませて、一緒に「ハンプティ・ダンプティ」行ってやれよ!とお思いの小佐内さん推しの声もあるでしょう。
実は、ハンプティ・ダンプティへ行くのはアニメオリジナルです。
原作では ──
「驚いたでしょう。ごめんね、わたし、みっともないね」
by 小説『巴里マカロンの謎』
「あの……なにかあったの?」
「なんでもないの。ごめん、今日はもう帰る」
何もないと言われ、小鳩はそれ以上追求しなかったのです。
それに、先にも書いたとおり小佐内さんは傷つきやすい人ではありません。
恋人でも何でもない小鳩が、慰める必要はないのです。
堂島は新聞部
なんだ常悟朗か、どうした?
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
新聞部にいたのは、堂島健吾。
てっきり、堂島は運動部に入っていると想像していましたが、新聞部だったのです。
前々話 、小鳩が堂島に支援要請した際 ──
さっさと要件を言え。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第3話
下らんことなら俺は部に戻る。
堂島が急いでいたのは、元々部活があったからです。
当たったのは誰?
新聞部にアンケートを届けた小鳩は、堂島から謎解きを頼まれる。ドイツパン店で揚げパンを調達し、マスタード入りを食べた部員が取材記事を書くことになっていた。だが部員は皆、自分が食べたものはマスタード入りではないと答えていた・・・。
推理は解禁?部員は何も言わない?
全員当たりじゃないと言ってる。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
これがどういうことだか分かるか、常悟朗?
皆が食べた揚げパンの中にマスタード入りがあるはずなのに、誰も食べてないと言う。
聞いた途端、笑みを浮かべる小鳩。
2年A組の小鳩です、よろしく。
揚げパンを食べたのは4人、お皿の上にあった揚げパンは4つ・・・。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
挨拶もそこそこに推理を始めます。
アニメ鑑賞時、些細な事ですが2つの違和感を感じました。
- 小鳩は推理を封印していたのでは?
- 部外者の介入に、なぜ部員は何も言わない?
両方とも、原作に説明がありました。
➊小鳩は推理を封印していたのでは?
小鳩は、小市民になるために推理を封印していたはず。
前話は、小佐内さんを助けるために仕方なく推理したはず。
だから前話ラスト ──
小佐内さん、僕たちは自分の短所を直そうっていうんだ。
多少は無理もあるさ。頑張ろう。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
諦めずにじっくりやっていこうよ。
じっくり直していこうと誓い合ったはず。
あれから1年近く経ち、2年生になったので、その決意もなくなったのでしょうか・・・。
短編集『巴里マカロンの謎』には、「伯林あげぱんの謎」前に、2つのエピソードが収録されています。
もしかすると、そこで何か心境の変化があったのかもしれませんが・・・。
小市民は作品の主軸とも言える、二人の目標です。
そう簡単には変わらないでしょう。
ましてや短編集で変わるなんて事は(笑)。
推理の封印は今も変わっていないとすると ──
原作には、一つヒントとなる心情描写がありました。
「そうか。実は少し困っている。よければなんだが、相談に乗ってくれないか」
by 小説『巴里マカロンの謎』
ぼくは小佐内さんと共に小市民の道を歩むことを誓っている。小市民たるもの、無関係の団体の困りごとに軽々しく首を突っ込んだりはしない。
けれど、ほかならぬ堂島健吾に助けを求められたとあらば、まことにやむを得ない。
前話、春期限定いちごタルト事件。
結果的に堂島の助けは必要なかったものの、小佐内さんを一緒に助けようと協力してくれました。
堂島に、その時の恩を返したかったのではないでしょうか。
だとしたら、そんなフォローがあれば分かりやすいのに・・・。
いや・・・「まことにやむを得ない」!?
なんだか含みのある言い方。
まるで小鳩のニヤけ顔が透けて見えるよう・・・。
そして、先の引用部分は次のように続きます。
苦渋の決断だけれど、少しでも健吾の力になれるのなら、どんな相談でもおやすいご用だ。
by 小説『巴里マカロンの謎』
「いいとも、なにがあったの」
「嬉しそうな顔しやがって・・・」
そんなことはないよ、苦渋の決断だよ。
この「嬉しそうな顔」がアニメでも描写されたのです。
さて、皆さんどのように感じたでしょうか?
私は、小鳩の小狡さが出た一面だと解釈しました。
「渡りに船」。
小鳩は謎に飢えてた、そろそろ謎を解きたいと思っていた。
いや、常に謎に飢えている?
小佐内さんが甘い物に手を出すように、小鳩は謎解きを我慢できない?
そこに堂島ら新聞部員が難しい顔。
借りのある堂島からの願い、これなら禁を破って良い言い訳になる。
小鳩は、謎を見ると我慢できないのです。
それにしても、興味深いのは堂島の気遣いです。
「そうか。実は少し困っている。よければなんだが、相談に乗ってくれないか」
by 小説『巴里マカロンの謎』
小鳩の予定を気にしているのか、新聞部の問題に部外者である小鳩を巻き込むのに気が引けたのか。
それとも、小鳩が推理を封印しているのを知っているので気遣ったのか・・・。
私は3つ目(最後)だと思っています。
前話、堂島は、小鳩が推理するのを拒んでいる様子を見ています。
そんな姿(決意)を見ていたら、おいそれ推理を頼めません。
それでも丁度良いタイミングで顔を見せたので、気遣いながら尋ねたのでしょう。
いい奴ですね、堂島は。
➋部外者の介入に、なぜ部員は何も言わない?
次の疑問。
新聞部の問題に小鳩が介入して、なぜ誰も文句を言わないのでしょうか?
これは、ドンズバ原作に描写がありました。
原作では、しっかり突っ込まれています。
部室にいるほかの三人は、健吾に非難がましい視線を送っている。どんなことがあったのか知らないけれど、独断で部外者に相談を持ちかけたのだから不快に思うのは当然だろう。ちょっとふっくらした体型の男子が、言葉にも苛立ちを滲ませた。
by 小説『巴里マカロンの謎』
「おい堂島、どういうことだ、話すのか」
部の問題なのに、部員に相談もせず部外者に頼る。
それも、どこの馬の骨か分からない小鳩に。
当然、部員は皆は反発していたのです。
この後、堂島と部員達で2、3会話が交わされ、不請不請ながら了承したのです。
動機
── 健吾、ちょっと。
正直言って、誰かに動機があるとは思えん。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
小鳩は、なぜ堂島一人部室から連れ出したのでしょうか?
アニメ鑑賞時、ちょっと意味が分かりませんでした。
その点は、原作を読んでスッキリ。
二つ理由がありました。
まず一つ目 ──
「健吾、少し相談したい。廊下で話そう」
「・・・わかった」三人の冷たい視線を感じながら廊下に出ると、健吾も後からついてきた。
- 中略 -
「それで?」
by 小説『巴里マカロンの謎』
健吾が短く訊いてくるので、ぼくも端的に答える。
「誰に動機がある?」
動機があってもなくてもそれで犯人だと決めつけられるわけじゃないけれど、やっぱり訊かないわけにはいかないし、もしかしたら有益な情報が転がり出てこないとも限らない。健吾は眉根を寄せた。
部員の中に、嘘を付いてまで揚げパンの記事を書きたくなかった人がいる?
そんな動機があるか、確認したかったのです。
だから、アニメでも ──
── 健吾、ちょっと。
正直言って、誰かに動機があるとは思えん。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
と、堂島が答えていたのです。
小鳩くん、気遣いできるようになったじゃん(笑)
確かに(苦笑)
堂島を呼び出した二つ目の理由が ──
もうひとつ、健吾だけに訊きたいことがあった。
by 小説『巴里マカロンの謎』
「それで、ぼくに話したのはどうしてなのかな」
当たり前のことを聞いています。
堂島は、自分達だけでは解けなかったからだと当然の返事。
ところが小鳩が質問した意図は別にありました。
解けないからと絶対に解かないといけない謎ではない。
記事を書く担当を決めるならジャンケン等で決めれば良い。
なぜ部外者の小鳩に話してまで、些細な謎を解きたいのか。
これが、堂島を一人廊下へ呼び出してまでして聞きたかったことだったのです。
「痛いところを突きやがる」
by 小説『巴里マカロンの謎』
と吐き捨てた。
「ここまで言うつもりはなかったんだがな……」
小鳩にここまで突かれ、仕方なく「門地と真木島が上手くいってない」件を話すことにしたのです。
真木島の企画
はあ。
実は今、門地と真木島が上手くいってない。真実を突き止めないと、お互いに嘘つきと罵り合って新聞部は空中分解しかねん。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
さて・・・。
言っていることは分からなくはないですが・・・。
犯人が分からないと、なぜ門地と真木島が言い争いになるのでしょうか?
仲が悪いからと言って、なぜ今回の事で相手を疑うのでしょうか?
その点も原作を読んでスッキリ。
「この企画は、真木島が提案したんだ。学校の近くにドイツパンの店がオープンしたのを見つけた
by 小説『巴里マカロンの謎』
なんと、今回の企画、女子部員の真木島提案だったのです。
だから積極的に発言してたのね
おーそういうことか
てっきり彼女が部長か何かだと思ってた(苦笑)
でも、なぜかアニメでは堂島の持ち込み企画に…
なんで!?
アニメは、なぜ堂島企画にしたのか理由は分かりませんが ──
以下は、真木島発の企画として動いていたから、堂島が心配した可能性です。
理由はわからんが冷戦状態で、それだけに真木島は、当たりを引いた門地が企画を潰すために黙っているぐらいのことは考えかねない。門地だって疑われていることを察したら面白くないだろうし
by 小説『巴里マカロンの謎』
上手くいってない門地と真木島。
真木島は、この企画を潰すために門地がマスタード入りを食べたにもかかわらず黙っていたと考える可能性がある、というのです。
いや、十分動機があるじゃん・・・。
ホントだ(苦笑)
アニメは動機をなくすために堂島発案にしたかもね
門地と真木島が本格的に仲違いしたら、もう一人の五日市は真木島に付くと予想する堂島。
となると、新聞部は分断。
新聞部の空中分解を避けるために、堂島は藁にもすがる思いで小鳩を頼ったのです。
本作の面白みは ──
事件は地味ですが(失礼)、事件外にある事情や思惑。
今回は、あの堂島が何としてでも解きたい、その理由に意味があったのです。
それにしても、原作を読んで分かったのは ──
堂島は(相手が小鳩だからと言って)部員のことをペラペラ喋ったりしていないし、逆に部がバラバラになるのを心配して小鳩を頼ったのです。
気遣いの男なのです。
お~~
ますます健吾のイメージがよくなっていく
家庭科部
── 新聞部の方から来ました。
by 家庭科部員『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
ああ、どうだった?
── どうって言うのは?
揚げパンのことで来たんじゃないのか?
怪しげな家庭科部員。
こいつは危ない奴?というのはミスリード。
原作によると ──
家庭科部員は、ハバネロを入れたことを洗馬先輩にも伝えていません。
洗馬先輩から辛いものを入れてくれと頼まれたので、マスタードではなくハバネロをこっそり入れたのです。
つまり、新聞部と聞いて包丁を研いでた手を止め(ちょっと危ない)笑みを浮かべたのは、イタズラの結果を知りたかったからです。
ついでにもう一つ加えておくと ──
アニメでは、皿に盛られた揚げパンを洗馬先輩と家庭科部員の二人が覗き込んでいますが・・・。
原作では、家庭科部員は揚げパンが盛られた皿を見ていません。
洗馬先輩が紙袋から揚げパンを一つ取り出し、家庭科部員に辛いものを入れてもらい紙袋に戻します。
その後、世良先輩は(皿に盛った方が良いと考えたのか)勝手に棚から皿を取り出し、揚げパンを盛り始めたのです。
家庭科部員は洗い物をしていて、世良先輩の方を見ていません。
これが何に繋がるのか・・・。
これは ──
家庭科部員も、揚げパンが幾つあったか知らないのです。
ん?
それがどうかしたの?
何が引っかかっているのか分かりませんか?
今回の謎の肝は、揚げパンが4個ではなく5個だったことです。
ならば、家庭科部員に「揚げパンは幾つありました?」と聞けば簡単に解決したのです。
あっ、確かに!
小鳩は、なぜ家庭科部員に数を聞かなかったのでしょうか?
それは、先に書いたとおり ──
(原作では)家庭科部員は皿に盛られた揚げパンを見ていないことが分かったので、それ以上聞かなかったのです。
アニメで、洗馬先輩と家庭科部員が皿に盛られた揚げパンを見ている描写は、小鳩の想像の描写か何かだったのです。
原作では、小鳩は他にも家庭科部員に確認しています。
そのやり取りの中で、洗馬先輩も当たりを知らなかったと分かり、洗馬先輩犯人説を除外します。
小鳩は ──
理由は分からないが、洗馬先輩が当たりの揚げパンを隠した可能性を考えていました。
ところが、洗馬先輩自身も当たりが分からないのであれば、そんなことは無理なのです。
私も途中まで洗馬先輩が犯人だと思ってました(笑)
家庭科部員とのやり取りや小鳩の思考は”らしさ”が出ていて実に楽しい(笑)。
ぜひ、原作をご覧下さい。
後輩は4人ではなく5人
実は、揚げパンはもう一つあった。
この可能性に気付くと、アプローチはまるで変わってきます。
洗馬さんは、ウリノくんが参加しないことは知ってたんだよね?
── 誰か連絡したか?
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
そこで企画に参加しなかったウリノが浮上します。
先輩がウリノの分も準備していた可能性です。
なんだよ、誰もしてないのかよ。
by 門地譲治『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
※門地の名前と漢字はEDのCASTから
ウリノが参加しないことを洗馬先輩に連絡していなかったのです。
5つあった可能性
これまで得られた情報を総合すれば、揚げパンは5つあったと考えられるよね。
── 5つ?ウリノくんの分だよ。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
誰も連絡してないなら、洗馬さんはウリノくんも試食に参加すると思ってたはずだ。
揚げパンが5つあれば、(何らかの理由で)1つなくなり、残った4つに当たりがなかったことも説明がつきます。
だけど、5つだったことは証明できません。
目撃者はいないし、証拠もないからです。
洗馬先輩が用意した揚げパンの数を知っている可能性があるのは ──
- 洗馬先輩本人
- 家庭科部員
実はこれ、洗馬先輩に聞けば簡単に確認できるのです。
案の定、原作では洗馬先輩に連絡を取ろうとします。
が、ライブ前なので無理だと判断します。
家庭科部員は、先に記載した通り、紙袋に入っていたので揚げパンそのものは(ハバネロを入れた)一つしか見ていません。
が、(原作によると)洗馬先輩とは連絡が取れず、家庭科部員は見てなかったのです。
実を言うと、洗馬先輩と家庭科部員以外に、もう一人揚げパンの数を知っている人がいるはずです。
揚げパンを調達したお店です。
お店に電話して、洗馬先輩に幾つの揚げパンを渡したか聞けば良いのです。
が、これも確実ではありません。
帰る途中、洗馬先輩が食べた可能性も否定できないですし、大体店に聞くのも失礼ですよね(笑)。
そこで、小鳩は逆の証明をしたのです。
── ハバネロが入れられたことを確認したのは、お前だろ? それなのに誰も当たりを食べなかったというのか?
確かに、おかしい。
だけど、試食の場で誰かが当たりを食べたと考える方が、もっとおかしいんだ。こんなに辛いソースを味わって、隠し通せるわけがない。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
こんな激辛だと知らずに(せいぜいマスタードだと思って)口にして、平気でいられるはずがない。
故に、皆が食べた4つの揚げパンには当たりはなかった。
マスタードではなくハバネロを入れたのは、洗馬先輩の辛い方が良い(面白い)というリクエストと、それならハバネロが良いと考えた家庭科部員の悪乗り。
そんなイタズラ心が、かえって部員は誰も食べていない証明に繋がったのです。
お見事!
揚げパンはお菓子?
誰もが、4つの揚げパンに当たりはなかったと信じます。
5つ目があったとしたら・・・。
推理対象が、5つ目の揚げパンをいつ誰が食べたのか?に移ります。
犯人は、門地くんと洗馬さんに声をかけることなく行動したと考えていいだろう。
揚げパンは、記事のために用意されたものだった。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
それを知っている部員は、一つ多いからってこっそり食べたというのは道理に合わない。
新聞部員は、今回の企画を知っているので揚げパンを勝手に食べたりはしません。
でも、部外者が食べるというのも考えづらい。
そこで、そもそも小鳩が新聞部へ来た理由に立ち戻ります。
アンケートはこの箱に入れてください。
by 『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
このお菓子はお礼ですから、ご自由にお取り下さい。
今話中盤でさりげなく紹介されていた、アンケート用紙を届けてくれた生徒へのお礼のお菓子。
このメモと隣にお菓子(+揚げパン)があれば、声も掛けずに揚げパンを持っていく、というのです。
果たして、そんなことが本当に起こりえるのでしょうか?
私も甘いもの好きですが・・・。
(私の頭の中では)揚げパンはパン、お菓子ではありません(笑)。
さすがにお菓子と揚げパンは違い過ぎるので、頂くにしても一言「こっちの揚げパンでもいいのですか?」と確認してから取りますね・・・。
小佐内さんは、甘い物に目がないから自分の都合の良いように解釈した?
それに、人見知りだから確認もしなかった?
どうやら、そんな私の疑問は、そもそも”揚げパン”と認識しているので起きたようです・・・。
どういうこと?
堂島は最初に紹介しています ──
世の中には、ベルリーナ・プファンクーヘンという菓子があるそうだ。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
ベルリーナ・プファンクーヘンは、お菓子なのです。
揚げパンと聞いて、私が勝手に”菓子ではなくパン”だと認識してしまったのです。
いや、それでも見た目はあんなだからパンでしょうですって?
同感です!
それにはもう一つ、絵だけでは判断が難しい特徴を見落としていました。
── 随分小さいね。
普通はもっと大きいらしい。
by 堂島健吾『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
取材した店で、子供向けの試作品を分けてもらったんだ。
小鳩が「随分小さいね」と言っていますが、私は勝手に ── とは言え揚げパンだろう、とそこそこの大きさがあると解釈していました。
原作では、もっと具体的に大きさを説明しています。
「ああ。ふつうは、もっと大きいらしい。取材をお願いした店で、子供向けの小さいサイズのものを試作していると言っていたから、それをわけてもらうことにしたんだ。ふつうのサイズのだと食べているうちにマスタードが見えてしまうからな、一口で食べられる小さいサイズの方が都合がよかった。・・・予算も節約できるしな」
by 小説『巴里マカロンの謎』
なんと、揚げパンは”一口サイズ”だったのです。
ああ、このサイズなら確かにお菓子です。
それが、他のお菓子と一緒に並べられていたら・・・。
その上、小佐内さんにとっては、巧妙な罠が仕掛けられていました。
── アンケートを届けてくれた生徒に、ささやかなお礼だ。
なかなか渋いチョイスだね。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
小鳩は、どうして「渋いチョイス」と言ったのでしょうか?
絵から判断するに、如何にも甘い!という物は少ない気がします。
少なくとも手前にあるのは「チーズおかき」に見えます。
大人向けのお菓子が中心だったので、小鳩は「なかなか渋いチョイスだね」と言ったのではないでしょうか。
さて、これがなぜ小佐内さんにはトラップになるのでしょうか。
『小市民シリーズ』をここまで見てこられた方ならお分かりですよね?
小佐内さんは、お盆にあったお菓子には今一つ食指が動かなかったのでしょう。
でも、その隣には美味しそうなベルリーナ・プファンクーヘンが!
甘いもの好きな小佐内さん。
甘いものの中でも好みがあると1話で説明されていました。
── 私の好みは・・・。
まず大前提として洋菓子派。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第1話
更に甘みが強めでバターやブランデーなんかの風味が割とはっきり分かる。
和菓子ではなく洋菓子。
洋菓子の中でも甘みが強めのもの。
迷うことなく、ベルリーナ・プファンクーヘンに手が伸びたのではないでしょうか。
なぜ声を掛けなかった?
お盆のお菓子ではなく、ベルリーナー・プファンクーヘンを選んだのは納得。
それでも、声をかけないのはどうかと・・・。
その点は、原作に小鳩の解釈がありました ──
メモにはこう書かれている──「アンケートはこの箱に入れてください。このお菓子はお礼ですからご自由にお取り下さい」。
by 小説『巴里マカロンの謎』
「門地くんと洗馬先輩が記事の話をしているさなか、誰かがアンケートを届けに来たけれど、二人が忙しそうなのを見ると声はかけにくい。ふと見れば、アンケートは箱に入れておけと書かれている。その誰かは、書かれている通りにしただろう」
なるほど!
門地は記事作成に悩み、洗馬先輩はアドバイスをしていた。
その様子は真剣そのものだったでしょう。
部室にいる二人がとても忙しそうで、声をかけられる雰囲気ではない。
よく見れば「アンケートはこの箱に入れてください」とある。
聞かなくても提出場所は分かった、いや忙しいから一々声をかけるなという意味かもしれません。
小佐内さんは人見知りです。(1話 )
声を掛けてと言われたとしても、声を掛けられないのが人見知り。
声を掛けなくてもいいですよと促されれば、喜んで声を掛けないのが人見知り。
声を掛けずに、アンケート用紙を提出し、お菓子を持って行く。
そんな行動をしたことに十分説得力があるのです。
本当に気付かない?
お盆のお菓子ではなく揚げパンを選ぶ、誰にも声をかけなかった理由。
両方とも納得できました。
何より、小佐内さんなら、そんな選択をするだろうという説得力もあります(笑)。
確かに…
では逆に ──
── 5分くらいか。
その間は、門地くんも洗馬さんも誰かが部室に入ってきても気付かなかったかもしれない。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
そのとき部室にいた門地と洗馬先輩が、部室に入ってきた小佐内さんに気付かないなんてことが本当にあるのでしょうか?
どんな子が来たか覚えてない程度ならあるかもしれません。
が、誰も来てないと言い切れるほど気配にも気付かないことがあり得るか、という意味です。
ん~~あるんじゃない…のかな?
まあ、現に門地はいきなり洗馬先輩に肩を叩かれたと言ってるけどね
この点については、これまで張られてきた伏線に皆さんお気付きでしょうか。
えっ、そうなの!?
3話、小鳩がハンプティ・ダンプティで小佐内さんと待ち合わせをした際 ──
── 一人で笑ってる。
えっ!?
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
いつからいたの?
小佐内さんが声を掛けるまで、小鳩は気付かなかったのです。
原作では ──
「ひとりで笑ってる・・・」
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
と声をかけられた。後ろからだ。自転車が停まる音も、足音も聞こえなかった。振り返りつつ、笑顔を作る。
と描写されています。
上記以外でも ──
アニメではカットされたエピソード「For your eyes only」では、本屋で小鳩の傍に何度も小佐内さんが現れます。
さらに前話、堂島に小佐内さんのことを説明する際 ──
健吾は知らないだろうけど、小佐内さんはすごいよ。体がちっちゃいから、で説明がつかないほど、綺麗に忍び寄る。器用だし、体のキレもいい。ひょっとすると手裏剣ぐらい投げられるんじゃないかと思うこともある。証拠写真を揃えるぐらい、苦もなくやるだろうさ。
by 小説『巴里マカロンの謎』
とまで、小佐内さんの忍び足を評価しているのです。
どうやら、小佐内さんは足音や気配を消すのが得意なようです。
小鳩を驚かすつもりはなさそうなので、普段からそのようにしているようです。
だから今回も門地と洗馬先輩に気付かれなかった、その下地となる前振りがあったのです。
小鳩はいつも驚かされているので ──
商店街で小佐内さんを見かけた時、こっそり後ろから近づいたのです。
すぐに気付かれてしまいましたけどね(笑)。(2話 )
エピローグ
部室に来るのは新聞部だけじゃない。
例えばボクが来たし、真木島さんが男子生徒に会った。
僕たちはアンケート用紙を届けに来たんだ。そして、そういう人間が二人だけだったと考える理由はない。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
このセリフの直後、「2年C組」のアンケート用紙があるのを見て、犯人(いやこの場合は被害者ですね(笑))に気付く小鳩。
お礼と言われりゃ遠慮なく。
甘い物に目が眩み、気が付きゃ参加してしまったロシアン・ルーレット。
15の確率で、見事当たりを引いてしまったのは、神が食いしん坊に与えた罰でしょうか。
それとも、単に小佐内さんが巻き込まれ体質なのでしょうか・・・。
原作では、この結末が堂島に衝撃を与えます。
「無関係な生徒に、タバスコ入りベルリーナーが渡ったっていうのか。不運すぎるだろう、五分の一だぞ」
by 小説『巴里マカロンの謎』
※原作ではハバネロではなくタバスコです
さすが堂島健吾。
新聞部からしてみれば、勝手に食べられたとも言える揚げパン。
でも、お礼のお菓子との配置に問題があったと分かるや、即座に自分達の非を認め、すぐさま無関係な生徒に”あの“ハバネロを食べさせてしまったことを心配する。
この後、新聞部員達は校内放送をする等の対処策を考えます。
新聞部が、これまでにない団結力を見せるのです。
堂島が心配していた新聞部の空中分解。
図らずも小佐内さんの行為が、救う切っ掛けを作ったのです。
当の本人は ──
ハンプティ・ダンプティに行ってるね。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ 第5話
一人ハンプティ・ダンプティでスイーツを食べまくる小佐内さん。
気持ちを抑えるためではなく、まさにお口直ししていたのです。
おわりに (『小市民シリーズ』5話とは)
今話は驚かされたね
うん、小佐内さんが絡んでくるとは思わなかった!
いや、じゃなくて…原作が第2弾じゃなかったこと…
えっ、そっち!?
そうなんです。
前話で原作小説、小市民シリーズ第一弾『春期限定いちごタルト事件』の最後までアニメ化されました。
なので、今話から第二弾『夏期限定トロピカルパフェ事件』が始まると思い、購入して準備していたのに・・・。
(画像キャプチャーするために)公式HPのあらすじを見ると、5話は「原作:『巴里マカロンの謎』収録」と・・・。
急いで『巴里マカロンの謎』を購入しました~(笑)。
あっ、そうだったんだ
こういうとき電子書籍は便利!
『巴里マカロンの謎』は、発行順でいうと4番目。
(『春期限定いちごタルト事件』から始まっているので)春、夏、秋と来て、その次に発行されています。
なぜそんな先をアニメ化したのかを思いきや・・・。
どうやら、『巴里マカロンの謎』は短編集。
描かれている時系列も第一弾『春期限定いちごタルト事件』と第二弾『夏期限定トロピカルパフェ事件』の間のようです。
『巴里マカロンの謎』には、今話の『伯林あげぱんの謎』含め4篇の短編集。
まだ3篇残っているので、次話も短編集からでしょうか?
となると、『夏期限定トロピカルパフェ事件』は・・・。
何を懸念しているのかと言うと ──
実は、アニメ『小市民シリーズ』は全10話です。(公式HPブルーレイ 情報より)
原作小説第一弾『春期限定いちごタルト事件』は原作の1エピソード(は言い過ぎか、1事件)がほぼカットされ、少し駆け足で描かれました。
それもこれも、『夏期限定トロピカルパフェ事件』を残り6話でじっくりと描いてくれるのかと期待をしていたのですが・・・。
いやいや、まだ次話から描かれれば5話ありますね(笑)。
楽しみにしていましょう。
というか、今話で既に折り返し地点だったんだ
えっ、早っ!
以上、TVアニメ『小市民シリーズ』第5話の感想&考察レビューでした。
長文にもかかわらず、最後まで読んで頂きありがとうございます。
6話のレビューも書いています。
良かったらご覧ください。
ではでは。
新聞部に復讐しないでね(笑)
疑問点 まとめ(Q&A一覧)
この章では、疑問点をまとめていきます。
- 今話で生まれ解決した疑問は、本文で解説して本章でまとめ
- 今話で解決しなかった疑問を、疑問XX-XX(話数-通し番号)として記録
⇒ 本章「疑問点まとめ(Q&A一覧)」でまとめ - 答えは、推測ではなくできるだけ(原作含む)作品内で明らかになった事実を記載
※推測が入る場合は、断りを入れる
⇒ 解決した疑問は、次話で削除
今話で解決した疑問 (クリックすると答えが表示されます)
今話で新たに発生し、解決しなかった疑問
特になし
残っている疑問
- 疑問 04-01 小佐内は、なぜ警察と関わりたくない?
今週の感想ツイート
#小市民シリーズ #小市民 5話
— 時文@ここアニ(小市民シリーズレビュー中) (@toki23_a) August 11, 2024
好物は甘い物、特技は薄い存在感…じゃなくて忍び足?
誰が悪いか誰も悪くないのか…
遊び心で始めたゲームで内に秘めてた感情露呈、疑念が疑念呼び険悪に。分かってみれば単純で、これぞ日常ミステリ👍
まず洗馬が持ってきてくれた時に(感謝込めて)パン確認しよう🤣
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