バビロン

アニメ【バビロン】1~12話(最終回) 感想レビュー 未完の衝撃作は壮大な実験場!?だから曲世が生み出された?!

バビロン
オススメ度 B
原作 小説
ジャンル サスペンス
放送情報 TVアニメ(2019年秋)/全12話
ストーリー
設定
世界観
感情移入

原作小説既読。
TV放送録画にて鑑賞。

あらすじ

時代は現代、舞台は東京都西部。
第2の東京と位置付ける「新域」構想がある世界。

「薬機法」違反の疑いのある日本スピリ製薬会社を捜査中の東京地検特捜部の検事・正崎 善(せいざき ぜん)と検察事務官の文緒 厚彦(ふみお あつひこ)は、押収書類の中から奇妙な書類を見つける。

その書類を作成した医師を訪ねると、不可解な死を遂げていた──

こんばんは。時文です。
TVアニメ『バビロン』最終話まで鑑賞しました。

原作は、野﨑まど先生の小説

小説は現在3巻まで刊行。(2020年2月時点)
アニメは、3巻までをアニメ化。

野﨑まど作品の中でも一番危険との呼び声高い『バビロン』。
よくぞアニメ化できたものだと褒めるべきか!?

危ない思想、ショッキングなシーンはあれど、それよりなにより結末が気になって仕方がない!

覚悟してご覧下さい。

  • 「はじめに」は【ネタバレなし】
  • 「感想レビュー」「おわりに」は【ネタバレあり】

ではTVアニメ『バビロン』感想レビューをどうぞ。

はじめに

誤解を恐れずに言うと『バビロン』は・・・

  1. 「ストーリー」より「インパクト」
    「カタルシス」より「詰め将棋のような頭脳戦」を楽しむ
  2. 「謎解き」より「判明する事実の衝撃」
  3. 「主人公」より「敵」

これらを重要視したと思われる作品。
#あくまで個人的感想

この手法を面白いと思うかどうかは人それぞれ。
私はエンターテイメントとしては「あり」だと思うし、何よりも引き込まれます。

物語はどこへ行くのか、敵との決着は着くのか、主人公は最後まで生き残るのか。
などなど、結末が気になって仕方がない。

さらに『バビロン』は善悪に関わる選択を迫ってきます。
これがとても考えさせられます。

だから私は各話レビューまで書いてしまいました(苦笑)

原作は鬼才・野﨑まど先生の小説『バビロン』。
小説は3巻まで刊行、まだ完結していません

3巻最後までをアニメ化してますが、アニメの結末は、原作とは少し違います

アニメは主人公に「究極の選択」を突き付けました。
これはこれで『バビロン』”らしい”結末

原作小説には多少の”癒やし”はあるのですが、アニメはあまり癒やしがないのが残念。
いや、癒やしがあると、余計に辛くなる!?

衝撃を味わいたい方、正義について死についての考えを覗いてみたい方には向いているかも

くれぐれも覚悟してご覧下さい

丸々1本、【ネタバレなし】で紹介レビューも書いているので、良かったら参考にして下さい。

バビロン
アニメ【バビロン】【ネタバレなし】紹介レビュー 強烈な展開は検察モノの皮を被ったサスペンス・ホラーか2019年秋TVアニメ『バビロン』紹介レビュー。野﨑まど原作の今期最大の問題作。作品を見るかどうか迷っている方へ、核心に触れる【ネタバレはなし】で、作品のあらすじ、魅力を紹介します。良かったら参考にしてください。...

アニメ【バビロン】第一弾PV
ツインエンジン

感想レビュー (以降、ネタバレ全開です)

ここからはネタバレ全開で、レビューしていきます。

事件は様相を変え、展開は想像を超える

原作の野﨑まど作品の特徴の一つ。
序盤に想像していた方向性と結末が、どんどん変わり、最後は予想だにしない物語になっていること。
その荒波を楽しむのが、野﨑まど作品♪

『バビロン』もその通りで、最初のイメージから違う方向へと展開していきます。

主人公は東京地検特捜部検事・正崎善。
特捜とは、独自に捜査権限を持ち、政治家汚職、経済事件を担当する。

作品冒頭、主人公のターゲットは製薬会社の不正事件──

そこで見つけた怪しい書類を追いかけていくうちに新域の闇に触れていく。

殺人事件の裏に政治家がいると思っていたら、もっと大きな「裏の新域構想」が。
さらには、新域域長の失踪。

序盤は、目まぐるしく、事件そのものが変わっていく。

検察が舞台のいわゆる刑事モノかと思っていたら別のジャンルになっていくのです。

物語の本筋は第2章から

どうやら第2章(4話~)から始まるのが『バビロン』の本題。

「正義」とは「善」とは
「犯罪」とは「悪」とは
「自殺」とは「死」とは

第1章(1~3話)で、正崎が言う「検事とは『正義と人を守ること』」。

実際に検事が何をするのかと言うと法律に照らし合わせて違法性があるものを法の支配の元取り締まっていく。
と言うことは法律を破るのが悪、法律を守らせるのが正義。

物語はここからスタート。
通常の枠組みで物語は進むも、正崎の信念は脆くも崩れ去り、仲間を死なせ、大量の自殺者を出し続け、社会に混乱を招き、張本人の齋開化を法で裁くこともできない。

描かれるのはミステリーではなく、社会派サスペンス。
1章は本題開始の2章のために、舞台を整える序章に過ぎなかったのです。

だから、最初の不気味な書類の謎、医師の因幡准教授はなぜ始末されたのか、文緒はなぜ曲世の部屋へ行ったのか、なぜ文緒まで始末されてしまったのか、について詳しく踏み込まない。

ミステリー好きの私としては、理由付けされなかったのは不満です。
(特に原作では)検察や法律など、他のことに関しては詳細かつ論理的に描かれているだけに、事件の動機に触れなかったり、非科学な能力を出してきたのは残念。
#曲世を出した理由は理解(後ほど詳細を)

が、社会派サスペンスに持っていく展開には脱帽。

怪しげな文書が、殺人事件、選挙汚職、裏の特区構想と変化し、いつの間にか「自殺」とは?と考えさせられる物語に変化しているのです

物語としての盛り上がりや起承転結といったセオリーは置いといて(苦笑)。

流れ事態はとてもスムーズで論理的。
次々とより大きな問題が提示され、最初の事件の真相など些末に思えてしまう。

その展開と勢いが素晴らしい。

だから、先が気になるし「謎も不可解な現象も、いつか論理的に説明されるのではないか」と期待をして最後まで見てしまうのです。

正崎は悪人になっていくのか

主人公・正崎は、物語を通じて、強くなるわけではありません。
一見成長してないようにみえます。

しかし、正崎は変化しています

最初、正崎は法律を破ることなどもっての外。
違法行為だらけの「裏の新域構想」を聞いた正崎は、憤慨ものでした。

正に、名前「正崎善」が示す、正しいことを行う検事にふさわしい性格。

実は、正崎、決して堅いだけの人間ではなく、ちょっとした違法行為は最初からやっています。
新聞記者との接触、不正な経路からの情報入手、因幡准教授宅への踏み込み等。
#原作では、GPS捜査までやってます
#詳しくはリンク先の原作レビューをどうぞ

最初から、正義を為すためには、小さな違法行為は許容。
正崎には、正義のためには法律違反も辞さない下地があったのです。

その後、現状の法律の枠組みではどうしようもない齋開化を前にし、自ら明らかな犯罪である”拉致”という選択を。
終いには、近づくだけで洗脳されてしまう曲世愛に対抗するために、殺害しようと考えていくのです。

この物語は、正崎善VS曲世愛の対決が軸の一つになっています。

曲世は人の人生が《終わる》ことが好きな、根っからの悪人。

正崎は正義を為すために、自ら殺人を犯す悪人になっていくのか。

犯罪を犯す、同じ”悪人”でも全く意味合いが違う。

正真正銘の”悪人”と、正義を為すために犯罪を犯す”悪人”の対決を描こうとしているのではないでしょうか

ただ、ここまでの正崎は負けっ放しで、憎たらしい曲世に一矢も報いてないのが悔しい・・・

異常なまでのリアリティとのアンバランス

アニメだけでは感じないかもしれません。
原作を読むと、仕事内容や事象、考え方について、細かい所までリアルに描かれています。

これが、とても詳細に書かれていて、仕事や法律、物事については勉強に。
正崎やアレックスの心情描写では、試行錯誤や結論を出す根拠の捉え方などをなぞることにより、論理的思考を体感できるのです。

とても勉強になりました!

参考までに、主だった箇所をピックアップします。

リンクは各原作レビューの該当項目へ

これら、背景にあることがしっかりと書かれていて、その上で推理や次の行動の判断をしているので、とても説得力があるのです。

ただ、ここまできちんと理屈や根拠を描いておきながら、齋開化の目的を描くことはない。
中でも異質なのは、”非現実的な”力を持った曲世。

ここまでこだわった作品世界観にしているのに、どうして説明不可能な異質物を入れるのか。
逆に興味が湧いてきました。

描こうとしているのは「究極の悪」

『バビロン』で描かれているのは正義とは何か、善と悪の区別。
そこで作者は正義を突き詰めるために「究極の悪」を作り出したと想像できます。

究極の悪とは?

単に残虐の限りを尽くす分かり安い犯罪者やテロ集団ではない。

「法律では裁けない悪」を生み出したのです。

「法律では裁けない悪」のタイプは2つ。

  1. 人の思想に訴えかける悪  齋開化
  2. 非科学的な力で人を死に追いやる悪  曲世愛

どちらも現行法では立件できず裁けない。
だが、人の死に関わっているのは明らか。

正崎は、対抗するために、少しずつ法の枠を踏み越え、悪に対抗していく。

法を犯し、これまでの経歴、家族を犠牲にしてでも悪人を始末しようと考えていく。

果たしてそれは”正義”なのか?

主人公に苦渋の選択をさせることで、「正義とは?」「善とは」を問うているのです。

「究極の悪」曲世愛の存在意義は?

悪役の目的も示されず、曲世は息を吐くように人を自殺に追いやる。
齋開化は自殺法の先に世界の破滅を狙っているのか、未だ謎が多い。

悪役側の思考や目的はあまり描かれません。

正義を守る側の苦悩が描かれます。
主人公・正崎に投げかけられるのは「思考実験」のような選択。

思考実験

頭の中だけで想像するだけの実験。
極度に単純、理想化された条件で、考えを深め追求することが目的。

「トロッコ問題」「マリーの部屋」「囚人のジレンマ」などが有名。

最初は(今思えば)小さな選択。

因幡と文緒の事件を追いかけるために「裏の新域構想」の違法はとりあえず目をつむる。
曲世愛の過去を追う為に、非合法でデータを入手。
齋を捕らえるために、拉致を計画。

最後には、曲世を止めるために殺人を犯すことまで計画。

曲世を殺そうとする正崎を、皆さんはどう思いますか?

私は、最終話まで見たら、曲世は確かに殺すしかないと感じました。
#殺す手段の選択肢は別にあるにしても

多くの皆さんは、私と同じように、大勢を守るために、仕方がないと思ったのではないでしょうか。

では、質問を変えましょう。

現実の世界で、ある人が普通の(特殊能力ではないという意味)殺人を犯したとします。
あなたの親しい仲間を殺されたとしましょうか。
#思考実験ですよ!

では、その人を、あなたが殺すのは正義ですか?仕方ないですか?

今度は逆の答えになる人も多いのではないでしょうか。
たとえ、近しい人を殺されたとしても、復讐をしては駄目だと。

捕まえて法の裁きを受けさせよう」と思うのではないでしょうか。

そうです。

正義の塊のような男である正崎に”殺す”しかないと選ばせるには、法律では裁くことができず、放っておくこともできず、彼しかその重要性が分かってない状況を作る必要があったのです。

だから曲世愛という女が作られたのです。

非現実的な力の犯罪を立証することができない。
逮捕するにも近づけない。
放っておいたら、被害は拡大する。

そして、正崎の理解者は全て犠牲になっていく・・・

このような敵を出し、正崎に”法を破る”決断をさせる対象にしたのです。

つまり『バビロン』は「正義とは」「善とは」を考えさせるために、凝りに凝った思考実験をさせるための舞台と言えるのです。

「思考実験」の繰り返し

『バビロン』は思考実験の舞台。
そう考えると色々合点がいきます。

正崎の前に現れる、法律違反を犯さないと対処できない事件。

衝撃的なシーンと展開で、見落としがちですが、正崎は少しずつ”正義”のために道を踏み外していく。
自分の正義を貫くために、ギリギリの所で踏みとどまり、選択をしていく。

それは全て、「思考実験」のような選択をさせられ、明確な解などない、より良い選択肢。
被害を最小限にするには、どうすれば良いのかを考え続けているのです。

「裏の新域構想」を知りながら黙認して、因幡准教授と文緒の自殺偽装の犯人を追う。
齋を止めるために拉致を計画する。
武器を得る為にFBI捜査官になる。

そして、「自殺が善」だと広まらないよう、大統領を射殺する。

どれもこれも、他の手段を取れないよう、時間をかけ丁寧にストーリーを積み上げ「思考実験」の場を創り出す。

正崎が選んだ選択肢は致し方ないのだと納得させる。

それを自然なストーリーの中で描いているのです。

よくぞまあ破綻せずにストーリーを繋いでいくものだと、その才能に脱帽です。

作品自体が実験場?

曲世の行動が派手なので、忘れがちですが、この作品のもう一つのベース。

テロなど起こさなくても、”法律でここまでできる“ということ。

日本を含め、法治国家は、法律に基づきます。
法律に沿って、いわゆる”善”と”悪”が決められている。

『バビロン』では「法律を変えることができると、ここまでできる」というのを示しているのが興味深い。

野丸は日本の未来のために、新域を「国家の実験場」とした。
規制緩和や新しい法を試す実験場とし、経済発展や豊かな生活を目指そうとしたのだ。
そのために域長が新たな域法を作れる仕組みにした。

齋がその域法を悪用し、「自殺法」を施行、世間を混乱させる。

法を変えることは良いことにも悪いことにも繋がる。
諸刃の剣。

新域は”国の実験場”。

そして、先ほどから書いているように、この作品そのものが「思考実験」の舞台。

つまり、作品自体が”思考の実験場”。

なんとも示唆に富んだ、考えさせられる作品を生み出したものです。

おわりに (『バビロン』とは)

さて私はこれまで、バビロンのアニメ各話レビュー、原作レビューと計25本のレビューを書いてきました。
#本レビューは26本目

こうして見てくると、主役は正崎というより、正義か価値観か。

問われているのは、価値観、常識、自分で判断する力。
何が正しいのか、自分で考えられるようになりたいと思う読後感。

願わくは、原作の結末を早く読みたい。

通常、この手の展開だと、アニメ放送終了前後に新刊の発売が告知されるのですが、今の所その気配はなし。
#このタイミングを逃すのは実に勿体ない気が・・・

アニメでは、あの終わり方(アレックスのこと)をさせてしまったら、原作が出てもまるで違う内容になってしまいます。

はっきり言います。
原作4巻が出ても、アニメの続編は作れません。
アニメのラストは原作とは違う重大な変更をしているのです。
#詳しくは原作レビューをどうぞ。
#まあ、アニメの最終話だけ作り直すと言う力技はありますが

ということは、逆に言うと、原作4巻は当分発刊される予定がないのでしょう。
なので、アニメの最終話で先に完結をさせたのです。

もしかして、原作は未完のまま終わるの?
と心配になるのですが・・・

担当編集さんのコメントでは、書く予定はあるらしいとのこと・・・

期待して待ちましょう!
4巻出たらレビュー書くぞ!

ではでは。

きょうのひとこと

兎にも角にも4巻早く出してください!

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良かったらご覧下さい。

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