こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『バビロン』第10話「決意」を鑑賞しました。
本レビューは小説『バビロン』3巻の感想レビュー(3/5)です。
今話の原作
原作3巻は、TVアニメ8~12話に相当。
本レビューではアニメ10話に相当する部分を対象とします。
作品レビュー 一覧
話数 | サブタイトル | 原作巻数 | ページ数 | 原作R |
第1章 「一滴の毒」 | ||||
第1話 | 疑惑 | 1巻 | 136P | 1巻① |
第2話 | 標的 | 93P | 1巻② | |
第3話 | 革命 | 83P | 1巻③ | |
第2章 「選ばれた死」 | ||||
第4話 | 追跡 | 2巻 | 128P | 2巻① |
第5話 | 告白 | 49P | 2巻② | |
第6話 | 作戦 | 72P | 2巻③ | |
第7話 | 最悪 | 53P | 2巻④ | |
第3章 「曲がる世界」 | ||||
第8話 | 希望 | 3巻 | 56P ※ | 3巻① |
第9話 | 連鎖 | 67P | 3巻② | |
第10話 | 決意 | 79P | 3巻③ | |
第11話 | 開幕 | 93P | 3巻④ | |
第12話 | 終 | 50P | 3巻⑤ |
話数:リンクは各話レビューへ
原作R:リンクは各原作レビューへ
※:8話前半は先の部分が元ネタ。そのページ数(7P)を含む
話数 | レビュー |
全体 | 【ネタバレあり】感想レビュー |
はじめに
本レビューは「アニメ」⇒「原作小説」の順で見た「原作の解説・感想レビュー」です。
アニメではカットされたシーンや、原作との違いを取り上げます。
アニメはアニメならではの良さがありますが、キャラクターが考えている事や感情の描写はどうしても情報が少なくなります。
原作小説は主に正崎一人称で描かれ、心情描写がとても丁寧に描かれています。
正崎の内面を知ると、より作品を理解できます。
原作の魅力を全て伝えることはできないと思いますが、少しでも作品理解の助けになれば幸いです。
原作小説の情報量は、想像していたより膨大でした。
私が取り上げたのはごく一部で、原作にはもっと楽しめる箇所があります。
アニメとは違う魅力があるので、アニメ鑑賞後でも楽しめます。
- アニメでカットされた原作部分
- アニメオリジナルシーン
- 原作を読んで分かったこと
見出しの頭にアニメオリジナル、原作のみの記号を記載したのでご参考に。
- ア):アニメオリジナルシーンに関する記述
- 原):アニメではカットされたシーンに言及
では、順番に紹介していきましょう。
原作感想レビュー (TVアニメ第10話 相当分)
原) アレックス評②:思考は遅いが必ず正しい解にたどり着く
前回のレビューでも取り上げましたが、原作ではアメリカ大統領アレックスをディスるような評価をチョイチョイ入れ込んでます(苦笑)。
#アレックス評①は前回レビュー、こちら からどうぞ
10話序盤に相当する箇所では、側近中の側近、テイラー国務長官の批評がありました。
テイラーは政治家としてのアレックスに多くの不満を持っていた。優柔不断に過ぎる所、無駄とも思える要素に延々と囚われる所、思考の筋道が恐ろしく非効率的な所、それらは政治家としては間違いなく瑕疵であったし、合衆国大統領ともなればその影響は計り知れない。テイラーがこの3年の間に行ってきた尻拭いは数え切れなかった。
だがそれでもテイラー・グリフィンは、アレキサンダー・W・ウッドという人間に敬意を持っていた。
by 『バビロン』小説3巻より
アレックスの大統領とは思えない性格は既に存分に感じてましたが、側近のテイラー国務長官から、ここまではっきり思われているとは!
あまりに正直でなんだか笑ってしまいました(笑)。
一体全体、なぜアメリカ大統領になれたのか?
不思議でならない。
では、テイラーはアレックスの何を評価し敬意を持っているのか。
本音を言えば判断を急いで、迅速に対処すべきだと思っている。だがそれよりもほんの僅かに、アレックスの”能力”への信頼が勝っただけだった。
アレックスの思考は遅い。
だが彼は《正しい方向を選び取るセンス》を持っている。アレックスの頭脳の回転速度はお世辞にも速いとは言えない。単純な処理装置として見ればその性能は並かそれ以下だろう。だがもし単純に遅いだけならば合衆国大統領は到底務まらない。そんな彼が3年も大統領職を全うできたのは、最終的にその遅れを取り戻せるだけの、別の能力があったからに他ならない。
時間がかかりこそすれ、彼は最後に必ず望ましい《解》にたどり着く。正しい道を選び取る能力、アルゴリズムが卓越しているのだとテイラーは考える。一見無駄と思える回り道も、回りさえすればゴールに通じている。正しい道が存在しない時は必ず立ち止まり、間違った筋に入り込んだことは一度もない。それがアレックスに備わった希有な資質だとテイラーは思っている。
彼のアルゴリズムがどのようにして培われたものなのかはテイラーにもわからない。言葉にしてしまえば独自のセンスと言う他ないだろう。だが説明できないものだからこそ、身につけるのは難しい。
by 『バビロン』小説3巻より
アレックスは、優秀と言われる人の能力は持ってないが、誰も持ってない能力に長けている。
前例のない出来事でも「正しい方向を選び取る」センスを持っているのです。
こうして聞くと、正にアメリカ大統領にふさわしい能力ですね。
原) 6都市目の自殺法導入 シンクタンクの分析
ドイツ・ハイデルベルグ、イタリア・ボローニャが自殺法導入を決定との情報が入る。
自殺法導入がG6、6ヵ国となり、シンクタンクの分析を参考にする。
アニメでは完全カットですが、興味深い分析をしているので紹介します。
「(前略) 自殺法都市の増加は減速傾向にあると」
「根拠は?」とテイラー。
「追随した都市がすべて主要先進国であること。単純な人口比を考えれば中国やインドから続々現れることになるが、現実はそうなっていない。つまり自殺法を取り入れようという人間が現れるのは、ある一定以上の生活水準の国、経済先進国に限られると、真面目に自殺なんぞを考えるのは暇人だけだということかな」
by 『バビロン』小説3巻より
なんと、曲世が裏で暗躍していることを知らないと、こういう分析結果になるのです。
確かに、日本での自殺法導入が、世界中に等しく報道され、センセーショナルに取り上げられているのなら。
人口に比例して、人口が多い国から影響を受けるはず、ということ。
ということか。
分析はさらに続きます。
「また計算によりますと、どういう計算か私はよく知りませんが、もう増加の勢いは衰えているとも。増加曲線には乗っていないとかなんとか。せいぜいあと2、3市で打ち止めだろうというのが分析結果ですな。ただし」エドムンドがアレックスを見た。「ここからもう何も起きなければ、との注釈付きですが。
by 『バビロン』小説3巻より
シンクタンクは勢いが落ちているので、終息していくだろうとの読み。
お約束ですね(笑)。
「もう何も起きなければ」というのが気になる文言。
これはフィクション、しかもジャンルはサスペンス。
この手の文言が出たら、”フラグ”にしか見えません(笑)。
さあ、一体何が起きるのか、誰が起こすのか?
テイラー国務長官は起きるとしたら何が起きるのかを推測。
だけど、情報が少なすぎて結論は出ません。
テイラーは、齋に関し、限られた情報で推測をしています。
興味あるかたは原作をどうぞ。
ア) 曲世の特殊能力が電話でも影響することが分かるのはアニメのみ
前回(9話)終盤 のエピソード同様、FBI捜査官ハーディと共に正崎がハートフォードへ曲世の痕跡捜査に行くエピソード自体がアニメオリジナル。
正崎とハーディは振り返る。
曲世の声を聞いたフローレス市長は影響を受けていると正崎は確信する。
が、ハーディは何も変化はなかった・・・
しかし、俺も声を聞いたがなんともないぞ。
by FBI捜査官 サミュエル・ハーディ『バビロン』TVアニメ10話
これらは全てアニメオリジナル。
このアニメオリジナルエピソードの内容をどこまで原作者の野崎まど先生と合わせたのかは分かりません。
曲世の特殊能力は、電話を通じてでも力を発揮できるのか、録音でも効力があるのか。
これにより対処が変わってきますからね。
アニメではこの時、フローレス市長が曲世の影響を受けていると確信し、曲世の特殊能力は電話を通じてでも影響することを断定しています。
原作では、そのような事実も推測もこの時点ではされてません。
原) 正崎がFBI捜査官になった目的は・・・
前項目で述べた通り、正崎がハートフォードへ捜査に行くエピソードは全てアニメオリジナル。
では、原作では正崎は何をしているのか。
FBI長官のブラッドハムは、長官室に正崎を呼びます──
自殺法関連の捜査は重要事項であり、連邦捜査局の中でも優先順位が高い。世界六ヵ国にまたがる規模の事件で、自殺とはいえ数千人規模の犠牲が発生している。現状でも多くの人員を割いているし、まだここから捜査規模を拡大していくことになるだろう。
反面、《曲世愛》に関する捜査は、適性に動けているとは言い難かった。そもそも特殊分析課の案件というだけで信憑性が低下する。
『異常な能力を持つ女が事件の背後にいる』
ブラッドハムは、FBI捜査員と正崎善からもたらされたこの情報を疑っているわけではない。だが全面的に信じ、そこに捜査局の多勢を回すには様々なものが不足しているのも確かだった。『異常な能力』の詳細すらわかっていないのだから、検討には限界がある。
正崎善を特別採用とし、特殊分析課に引き続き情報を集めさせる。それが現状可能な対処の限界だった。
by 『バビロン』小説3巻より
この時、正崎は、曲世愛が自殺法導入都市に絡んでないか情報を収集し分析していることしかできてないと思われます。
では、なぜ正崎はアメリカに留まっているのか?
そのヒントが次のセリフにありました。
「容姿もわからず、記録もなく世界を飛び回っているかもしれない女を、捕まえる”あて”があるか?」
素直に聞く。少なくともブラッドハムの中に案は無い。
正崎善はやはり感情を見せることなく答える。「齋開化です」
「新域域長?」「やつは齋開化と組んでいます。元々は齋が連れてきた女で、首長選挙・議会選挙と一貫して行動を共にしていました。関係は深い。一時的に国外に出ていたとしても、必ず齋の下に戻り、また仕事をするはず」
「つまり新域を固めて身柄を押さえると」
「私が行きます」言葉ににわかに強いものが混じった。
「どうか日本に」
by 『バビロン』小説3巻より
確かに、曲世も齋も、新域の次にアメリカを狙うなどと言ってません。
そんな素振りも根拠も見当たりません。
正崎がFBI捜査官になったからと言って、アメリカで捜査をしていては曲世や齋を追い詰めることはできない。
なのに、正崎はFBI捜査官を希望した。
もちろんこの期に及んで職を求めたわけはない。
日本では警視庁も検察も齋の捜査、曲世追跡に動くことはなかった。
正崎は自分の力ではどうしようもない、じくじたる思いでいました。
正崎は、FBI捜査官として日本で捜査することを狙っていたのです。
スッキリしましたーー
原) 正崎の日本捜査は許可されない
正崎の案、ブラッドハムFBI長官は有効な策だと判断します。
だけど、正崎をそこへ組み込むかは別の話・・・
一人に戻った室内でブラッドハムは考える。正崎の案はそのままマガセの捜査に活かしていける。齋開化の周辺に現れる可能性は高いだろう。だがそこに正崎を組み込めるかといえば、危険と判断するしかない。
正崎善は平静を装っているが正常ではない。マガセが引き起こした惨劇、その狂気が彼の精神を蝕んでいる。このまま日本に行かせれば、どんなきっかけで”暴走”するかわからない。
だが狂気というならば。世界の各都市で自殺が認められるようなこの状況そのものが、世界そのものが狂いかけているとも言えた。この先、正常な精神の人間だけではどうしようもない時が来るかもしれない。
その時には、あの男が必要になるのだろう。
by 『バビロン』小説3巻より
前回(9話) でも取り上げましたが、ブラッドハムFBI長官は正崎のことを”犯罪者になるかもしれない危険性がある”と睨んでます。
正崎のいうように、日本の新域に行けば、曲世を見つけられるかもしれない。
が、同時に何かのきっかけで正崎が暴走し犯罪者になってしまうかもしれないと考えているのです。
だから、現時点では正崎を日本捜査に加えるわけにはいかないとブラッドハムは判断。
ただ面白いのは彼の後半の心情描写。
この先、正常な精神の人間だけではどうしようもない時が来るかもしれない。
その時には、あの男が必要になるのだろう。
by 『バビロン』小説3巻より
なんとも、気になる表現ですね。
もちろん原作者・野崎まどさんが意図して書いた表現。
今後、どうしようもない世界が来るのか・・・
正崎のように思い詰めた人間でなかれば対抗できないような事態になるのか・・・
いや、これ以上、正崎を追い込んで欲しくないのですが(苦笑)。
ア) 少女が川に身を投げるエピソードが!?
母親を看取った少女が、正崎とハーディの目の前で川に身を投げる。
ママの側に行くの。
偉い人も「いい」って言ってたよ。
by 少女『バビロン』TVアニメ10話
母親が亡くなり、苦しみから逃れるための自死。
なんと、このシーンもアニメオリジナルです。
原作では、教会でのアレックスと牧師の会話に出てきた「隣人を愛するための自死」に重ね合わせられるのは、齋開化とその息子の場合を当てはめています。
アニメの少女の方がずっと印象的ですね。
この後のフローレス市長の感覚も、あまりにも印象的過ぎて──
私は「自殺法」は法律ではなく思想、宗教。
自殺の権利を認める「自殺法」ではなく、自殺を推奨する「自殺教」だと感じました。
#アニメレビューはこちら をどうぞ
原) FBIによる日本での曲世愛捜査は現状維持
正崎が提案した、日本の新域へFBI捜査官を派遣し、曲世愛を捕らえる案。
大統領首席補佐官のエドムンドに報告されます。
捜査に進展はなく、今以上の進行を望む場合は捜査規模の拡大が必要になるという。
-中略-
報告書には海外捜査の可能性についても言及されている。だが正直に言えば、合衆国が日本や他国で大々的に捜査を展開してその女を捕まえるというのは「やり過ぎ」だった。大規模テロ組織の指導者などが相手ならば妥当な選択だが、現時点で女をそこまでのものとは認定できないだろう。《超能力じみた力を持つ連続殺人鬼》では、ピンポイント爆撃の標的とするには不確実すぎる。詳細はわからず、そもそも合衆国と敵対しているのかすら定かでない。国を挙げて対処するだけの理由が明らかに不足していた。
だが看破するのも一抹の不安があった。それもまた女の情報不足、正体不明の闇からくるものだった。
-中略-
海外捜査は小規模・現状維持。日本政府へ圧力をかけつつ現地捜査機関を動かして対応する方針を示して返送する。
by 『バビロン』小説3巻より
エドムンドはこれまでの経験から、正崎の案を一蹴するのは躊躇。
だけど、日本に捜査員を送り込むような拡大する根拠も乏しい。
結果、小規模のまま、現状維持──
納得が行く判断ですね。
なにより決め手なのは、新域が合衆国と敵対しているのではないこと。
アメリカの敵と認定されたわけでもなく、アメリカ人相手に犯罪を犯したわけでもないので、FBIが曲世を捕まえるのは内政干渉。
日本に任せるしかないのです。
それでも、自殺法導入の都市が全国で発生し、アメリカ国内でも現れた。
目的もわからず、正崎の話もある程度信じていたので、撤退はしない。
結果、現状維持の小規模捜査とせざるを得なかったのです。
原) 正崎がようやく本心を話す
アレックスは正崎を自宅に招く。
自殺に関して正崎の意見を聞くためだ。
アニメ観賞時、アレックスと正崎の会話は、私は噛み合ってないと思いました。
善、多分ここ最近の君は、世界の誰よりも多くの死に触れている。
自殺法の世界を一番近くで見てきている。
だから、君に聞きたかった。自殺について、人の死について、君がどう感じているのかを。
「自殺法」の是非を判断するために。
by アメリカ合衆国大統領アレキサンダー・W・ウッド『バビロン』TVアニメ10話
アレックスが「自殺法の是非」を判断するために、自殺について、人の死について正崎の意見を求めたのに、正崎は嘘をついていたとか、部下のことを話し出す・・・
原作を読んで、少し理解できました。
アニメの正崎とは違い、原作での正崎は心の整理がまだできてません。
アメリカに来ても寡黙で、塞ぎ込んでます。
そこへ、アメリカ合衆国大統領からの質問です。
自分の答えがアメリカ合衆国の立場を変えるかもしれない。
取り繕うにも自分の中でも自殺が良いことかどうかなんて結論は出ていない。
だって、正崎の周りでは誰も”自殺をしてない”のだから。
原作では、正崎は答えるまでに数秒、数十秒無言でした。
自殺云々ではなく、大統領が聞きたがっている、正崎の周囲で起きた数多くの死について語り始めたのです。
正直な気持ちを、取り繕うことなく。
それは、正崎にとって、ここまで溜まりに溜まっていた思いを初めて他人に話したのではないでしょうか・・・
そう思ってしまうシーンでした。
原作を読んでわかったのは大きく2つ。
- なぜ、正崎は曲世を殺すことをアレックスに話したのか?
- なぜ、アレックスは矛盾するような指示を出したのか?
原) なぜ、正崎は曲世を殺すことをアレックスに話したのか?
正崎が目指していたのは正規のFBI捜査官。
FBI捜査官に正式になれば銃が支給され、それを使って曲世を殺そうとしていた。
しかしそんなことを許可をもらうアメリカ合衆国大統領に話せば、余計に認められなくなる。
なのに、なぜ正崎はアレックスに話したのか?
アレックスも疑問に思ってます。
口にしない方がよい話なのは明らかだった。人を殺すために銃が必要だから捜査官になりたいなど、聞いてしまえば承認するわけがない。ブラッドハムに伝えれば彼も認めないだろう。正崎の目的を達成するためには黙っているのが最善だ。
だが彼はそれを明かした。
その理由が、アレックスには解った気がした。「それは・・・正しいことなのかい?」
アレックスは聞いた。純粋な疑問でもあったし、それを聞くしかないとも思った。
正崎の顔がわずかに、しかし初めて、歪んだ。
逡巡の後、正崎は答える。「わかりません。今も考え続けています」
アレックスには明確に伝わっていた。それもまた彼の本心だった。
by 『バビロン』小説3巻より
正崎は、曲世を殺すことを「正しい」とは思ってないのです。
でも、それ(殺す)しか曲世の悪事を止める手段がないと考えている。
まずは、そのことを伝えたかった。
そして、その選択が正しいのかどうか、悩み続けているので、アレックスの意見を聞きたかったのではないでしょうか。
私はそう読み取りました。
そして、自分の手を汚してまで、正義を、復讐を成すのかと思ったら、それは違うようです。
原作を読んで分かりました。
家族を捨てて信じる正義を為すのかと一瞬思った。だがアレックスはすぐに思い直す。家族を捨てたのではない。彼は悪人を討って、”家族も”守ろうとしているのだ。誰かの家族を殺す殺人鬼から、自分の家族を殺すかもしれない殺人鬼から、人を守るために。
それが正しいのか。
それが善行なのか。わからない。正崎にベストな答えを示すことができない。アレックスはこの問題の解答に、まだ考えが及んでいない。
by 『バビロン』小説3巻より
正崎は、正義云々というより、大切な人を、家族を守るために、殺人鬼・曲世を始末しようとしているのです。
正崎は答えています。
「復讐かと言われれば、否定できない」と。
ということは、復讐が第一ではない。
曲世による被害をこれ以上出さないために、正崎は覚悟しているのです。
原) なぜ、アレックスは矛盾するような指示を出したのか?
では、なぜアレックスは、賛成も反対をせず、矛盾するような指示をしたのか。
それは原作にはっきり書いてあったので、理解できました。
わからない。正崎にベストな答えを示すことができない。アレックスはこの問題の解答に、まだ考えが及んでいない。
だが同時に、アレックスには自信を持って言えることがあった。それは彼がこれまでの人生で得た真理であり、どんなことにも適用できる普遍的な真実だった。
それがどんなに難しい問題だとしても。
“この先も考えが及ばないとは限らない“
by 『バビロン』小説3巻より
つまり、アレックスの生き方である。
人生の多くの問題は、ひたすら考えることで大抵はうまくいく
「君は、必ず家族の元に帰るんだ」
正崎が目を見開く。驚いている。そして考えている。
「どんなことをしても。どんな手を使ってもだ」アレックスは命令を追えた。抽象的な命令だった。どうすればいいのか考えなければならない命令だった。
正規捜査官に任命し、銃を与えた。人を殺すための銃だった。だがそれで人を殺せば家族の元には戻れない。アレックスの行動は一見矛盾しているように見えた。
けれどアレックスの中に矛盾はない。
彼は信じているだけだった。この問題にも必ず答えがあるのだと。アレックスも正崎もまだ考えの及んでいない答えが、必ずあるのだと。
by 『バビロン』小説3巻より
アレックスの中では矛盾してなかったのです。
正崎の正義を為すために、曲世を殺す以外の方法はある、と信じているのです。
ア) 「君に渡す銃は、正しいことに使って欲しい」
アレックスが正崎にした命令。
「君は必ず家族の元に帰るんだ」は先に引用した通り原作通り。
しかし・・・
そして、君に渡す銃は、どうか正しいことのために使って欲しい。
by アメリカ合衆国大統領アレキサンダー・W・ウッド『バビロン』TVアニメ10話
なんと、このセリフはアニメオリジナルでした。
重要なメッセージなので、原作にもあるものだと思ってました。
さて、このアニオリセリフが、どう影響するのか?
それは今後のお楽しみですね。
おわりに (原作小説『バビロン』3巻とは)
TVアニメ10話の、少女にまつわるエピソード、少女の自殺に対するフローレス市長のコメント。
胸くそ悪い話だと思いながらも、「自殺法」が思想によるテロ攻撃だと言う評価の真意、恐さがとても説得力あり。
私は自殺法は法律ではなく宗教だとアニメレビューでコメント。
それが、原作にはないアニメオリジナルエピソードとは!!
辛い展開ですが、自殺法の影響の本質を描く良い改変ですね。
原作はキャラクターの心情が描かれるので、深く理解できます。
が、アニメで心情描写まで表現するとセリフだらけて絵的に盛り上がらない。
アニメオリジナルエピソードを追加して考えさせる良いアニメ化でした。
正崎の心情の落差は、少し違和感ありましたけどね(苦笑)。
以上、『バビロン』原作小説3巻のレビューでした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
原作3巻の続きのレビューも書いているので良かったらご覧ください。
ではでは。
原作3巻では正崎の存在感がここまで殆どない。
主役チェンジとは原作も大胆。
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小説『バビロン』3巻④(アニメ11話相当分)のレビューはこちら。
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