バビロン

小説【バビロン】2巻感想(2/4) 正崎が曲世捜査を保留したのは過信と費用対効果

バビロン 5話

こんばんは。時文です。
バビロン』2巻の感想レビュー(2/4)です。

原作2巻は、TVアニメ4~7話に相当。

本レビューではアニメ5話に相当する部分を対象とします。
次話以降のネタバレは「なし」なので、ご安心を。

アニメ化された部分の感想はアニメ各話レビューをご覧下さい。
※以下、表内のリンクから各レビューへ行けます。

バビロン (全12話)

話数 サブタイトル レビュー 原作巻数 ページ数 レビュー
第1章 「一滴の毒」
第1話 疑惑 1話R 1巻 136P 1巻R①
第2話 標的 2話R 93P 1巻R②
第3話 革命 3話R 83P 1巻R③
第2章 「選ばれた死」
第4話 追跡 4話R 2巻 128P 2巻R①
第5話 告白 5話R 49P 本レビュー
第6話 作戦 6話R 72P 2巻R③
第7話 最悪 7話R 53P 2巻R④
第3章 「曲がる世界」
第8話 希望 8話R 3巻 56P 3巻R①
第9話 連鎖 9話R 67P 3巻R②
第10話 決意 10話R 79P 3巻R③
第11話 開幕 11話R 93P 3巻R④
第12話 12話R 50P 3巻R⑤

はじめに

本レビューは「アニメ」⇒「原作小説」の順で見た「原作の感想レビュー」です。

アニメではカットされたシーンや、原作との違いを取り上げます。

アニメはアニメならではの良さがありますが、キャラクターが考えている事や感情の描写はどうしても情報が少なくなります。

原作小説は主に正崎一人称で描かれ、心情描写がとても丁寧に描かれています。
正崎の内面を知ると、より作品を理解できます。

原作の魅力を全て伝えることはできないと思いますが、少しでも作品理解の助けになれば幸いです。

原作小説の情報量は、想像していたより膨大でした。
私が取り上げたのはごく一部で、原作にはもっと楽しめる箇所があります。
アニメとは違う魅力があるので、アニメ鑑賞後でも楽しめます。
オススメです!

本レビューの内容
  • アニメでカットされた原作部分
  • アニメオリジナルシーン
  • 原作を読んで分かったこと

見出しの頭にアニメオリジナル、原作のみの記号を記載したのでご参考に。

  • ア):アニメオリジナルシーンに関する記述
  • 原):アニメではカットされたシーンに言及

では、小説の内容順(時系列順)に紹介していきましょう。

原作感想レビュー (TVアニメ第5話 相当分)

原) 曲世愛の母親の死因

バビロン 5話

前回の筒井警部補からの報告で、曲世の実家で同居していた家族は全員他界。
この事実自体も気になるのですが、深掘りされませんでした。

が、原作では、叔父の坂部蔵主に確認をしています。

「母親の方のお仕事は」
「弓弦さんは多分専業主婦だったと思うが・・・確言はできない。何しろ15年も前のことで」
「亡くなられたのですか」
「愛が来てすぐに」
「差し支えなければ、原因を」
事故だった。山で足を滑らせたんだ。茶臼は風が強い・・・」

by 『バビロン』小説2巻より

曲世の母親が亡くなったのは、曲世が養子として来てすぐ。
原因は滑落だと言う。

杞憂だったか。
つい、曲世の周りの死は、曲世が絡んでいると思ってしまう。

父親が亡くなった原因のことは触れられてない。

原) 曲世の小さい頃の印象

アニメでも一瞬だけ触れた、曲世の小学生時代の話。
原作ではもう少しだけ触れられてました。

(「小さかった頃の愛さんの印象を教えていただけますか」
「笑わない子だった」
「暗い、内気な子?」
「いいや、笑わないだけだ。怯えているわけでなく、陰気なわけでもなく、普通に話していたし、普通に遊んでいた。ただ本当に笑わなかった。それでも顔立ちは恐ろしいほど整っていて)、あの頃から片鱗は確かに見せていた
「片鱗?なんのです?」

「(才能、素質・・・少し話を飛ばそう。)今から7、8年ほど前、・・・

※()内がアニメではカット

by 『バビロン』小説2巻より

アニメで、坂部が見せた、幼少の頃の曲世の写真。
曲世は笑ってました。

笑わないことは、曲世の性格や、今後ことに影響がない、との判断でカットされたのか。

あの頃から見せていた”片鱗”は小説を読んでもよく分からなかったです。
小学1年生の子が、この後、坂部が語る妖艶な魅力の片鱗を見せていたのか・・・

少しだけ引っかかったのは、母親が亡くなった後の次のセリフ。

「それからはお兄さんがお一人で育てられたのですか」

「当時は両親もご存命だったから、実家に戻って助けてもらいながら育てていた。兄は残された愛に心血注いでいたよ。あの頃私は東京の病院勤務で、栃木に帰るのは暮れ正月くらいだったが、それでも兄の溺愛ぶりは見て取れた

by 『バビロン』小説2巻より

実の子ではないにしても養子ですから溺愛するのは当然です。

が、相手が曲世愛となると、「溺愛ぶり」と聞くと”何か引っかかり”ますね・・・

原) なんと生徒の中には女の子もいた・・・

バビロン 5話

坂部は曲世愛が中学生の時に起こした事件について語り出す。

兄と中学の教師から、曲世と数人の男子生徒の精神診断を依頼された。

中学三年生の男子生徒7人は一様に全般性不安障害を患っていた。
「愛が怖い」「愛に酷いことをされた」「愛に犯された」と言うのだ。

しかし、そんな事実はなかった。
曲世は男子生徒に触れた事実さえなかった。

生徒7人は全員「愛と話をした」ただそれだけだった・・・

アニメでは、このような感じでした。

原作では、女子生徒もいました。

精神診断を受けに来たのは愛を含めて8人だった。全員15歳の中学3年生。男子生徒6人女子生徒1人、そして愛だ。

by 『バビロン』小説2巻より

なんと、曲世に惑わされていたのは、男子生徒だけでなく、女子生徒もいたのです。
それ以外は、アニメで描かれたことと同じです。

曲世の女性の魅力、色香に男子生徒があてられたのは、なんとなく理解できます。
が、女子にまで影響してしまうとは。

曲世の能力は性別は関係ないのか?
それとも、その女子が同性に魅力を感じる子だったのか。

デリケートな話になるので、アニメではカットしたのかもしれないですね。

原) 曲世を追わないのは過信と費用対効果

アニメ観賞時、最も違和感があったのは、曲世が人を惑わす力を持っていることが確実になってきているのに、追うのを止めてしまったこと。

原作を読んで、正崎も悩んだ末の決断だと分かりました。

この女を男と一つの部屋にでも入れてやれば、どんな歳の男でも、どんな思想の男でも、一人残らず女の虜になってしまう

それもあながち大げさな話ではないということなのだろう。曲世愛という女が、女の魅力という天性の資質をもって暗躍しているのは揺るぎない事実だ。

だがその事実は、この先の正崎の捜査に大きな影響を与えるわけではなかった

曲世の才能や武器がどうであろうと、結局捕まえなければならない事実に変わりはない。選挙違反の嫌疑が明確である点を見れば、起訴されにくいよう振る舞っている齋よりもよほど捕まえやすいかもしれない。

そうして実際に捕まえる段になってしまえば、もはや曲世はただ一人の女でしかない。文緒や奥田のように、不用意に二人きりになったりしなければ大きな問題もなく逮捕できることだろう。

-中略-

重要人物には違いないが、これ以上情報を集めても費用対効果が高まるとも思えない最重要案件はやはり齋開化の追求だ。

-中略-

なのに。
正崎の心の奥で、もう一人の正崎が執拗に曲世を追えと叫んでいる。その要求は全く論理的でない。いわゆる勘としか言えないものだった。正崎自身、自分があの女を生理的に受け付けないからか、あの女が嫌いという個人的な要求なのではという認識が拭えない。これではとてもではないが、論理的思考の塊のような瀬黒事務官を説得できる論拠にはならないだろう。

曲世の件は今日で一旦保留だ。
齋を捕まえれば必ず曲世も引っ張れる。順番は重要ではない。

by 『バビロン』小説2巻より

勘が曲世を追えと言うが、倫理的ではないので従えなかったのです。

言いたくはありませんし、彼女が悪いわけではありません。
が、瀬黒の存在が曲世を追うのにブレーキをかけてしまった感もありそうです。

曲世の能力は勿論、正崎が曲世一人に執着し、違法な行為で個人情報を集めるのを、瀬黒は訝しんでました・・・

それを感じ、正崎の考えに影響を与えたのではないか。

原作を読んでそう感じました。

だからと言って、瀬黒が悪いのではありません。
正崎が自分の勘を信じなかったのが悪いのです。

勘は当てずっぽうではありません。
その人がこれまで経験してきたことが元となり、実際に見たことに反応しているのですから。

原) 寅尾よりも瀬黒の方が強い!?

バビロン 5話

正崎と寅尾は、無心で竹刀を交わす。
そこへ瀬黒も加わる。

アニメでも、正崎が初段で、瀬黒が四段と圧倒的な差があるのは語られてました。
寅尾も正崎のことを二段でも遜色ないと言ってましたが、寅尾の段は語られてませんでした。

「こっちが驚きましたよ。いやしっかりしている。初段とおっしゃいましたが、二段でも遜色ない」

正崎は謙遜して首を振る。剣道は中学生の時にやっていてそこで初段を取ったが、以降は段位審査を受けていない。ただ趣味としてはずっと続けていて、今でもごくたまにだが近所の小学校でやっている剣友会の稽古に参加して汗を流すことがあった。三段の寅尾の打ち込みをぎりぎりで凌ぐことができたのもそのお陰だった。

by 『バビロン』小説2巻より

私はてっきり、警察同様、検察も剣道や柔道を普段からやっているから、このような流れになったのだと思ってました(笑)。

正崎はたまたま中学生の時にやっていて、今も趣味でやっていたのですね。
それにも関わらず、しっかりしていたから寅尾管理官が驚いたのです。

そして、もっと驚いたのは、寅尾管理官は三段?!

ということは瀬黒の方が強いのですね。

ああ、だから、寅尾管理官はなんとかしのげたが、瀬黒にはまるで歯が立たなかったということなのか・・・

十分後、向かい合って礼をした正崎は尻から情けなく崩れ落ちた。とてもではないが寅尾相手の時のような体裁は保っていられなかった。力任せに面を取り、めいっぱい息を吸いこむ。瀬黒は悠然と座って面を外した。道場の隅で寅尾が気の毒半分の顔で笑っていた。

「き、みは、何、段だ」
「四段です」

正崎は必死の思いでやっと苦笑いを作った。剣道の段位は前段を取得してから一定の修行期間を経過しないと受審資格が得られない四段を取得するには初段取得から最低でも6年を必要とする。23の瀬黒が持っているということは、人生のかなりの期間を剣道に費やした証明だった。趣味半分の正崎が太刀打ちできる相手ではない。

by 『バビロン』小説2巻より

原) 瀬黒が微笑んだ!?

貴方にとって、正義とはなんですか?

瀬黒は正崎に問う。

「裏の新域構想」を知りながら、関係者を捕らえず、齋を追う。
確かに齋は法を犯してないが、人間社会に悪影響を与えている。
でも、だからと言って齋を捕まえるために、法を犯して良いのか?

正義とはなんなのか。
俺にはそれがまだ分からない。

これが善で、これが悪だと言えるだけの根拠にたどり着けていない。

だが、分かっていないはずなのに、それでも正しいと信じていることがある。

「正しいとは何か」を考え続けることだ。

たとえいつか答えにたどり着いたとしても、そこで考えるのを止めないことだ。
正義とは何かを掴んだと思った後も、正義とは何かをずっと、永遠に問い続けることだ。

正義というのは、きっとそういうものなんだ。

by 特捜部検事 正崎善『バビロン』TVアニメ5話

ここまでは原作通りです。
原作ではさらに正崎の心情描写が入ります。

そこでは、瀬黒が微笑んだ!?

「正義というのは、きっとそういうものなんだ」

正崎は汗ばんだ手の平を見つめてつぶやいた。何か掴んだような気がしていたし、気のせいかもしれなかった。

顔を上げると、瀬黒が一瞬微笑んでいたように見えた。だが瞬きをした後にはもういつもの、人を寄せつけない瀬黒に戻っていた。それこそ気のせいだろうと思った。

by 『バビロン』小説2巻より

正崎の言葉を聞いて、瀬黒も何かを掴んだのかもしれないですね。
それが今後の瀬黒の行動に影響を与えていくのかも。

この後の二人の会話が笑えます。

瀬黒は面を着けた。

お願いします
嫌だ

正崎は全力で断った。朝のリフレッシュはもう十分にできた。これ以上打ちのめされてもマイナスしかないのは明白だった。代わってもらわなければ死ぬ、と思った矢先に寅尾が戻る。寅尾管理官は道場の入口から叫んだ。

「齋の動きがありました!」

by 『バビロン』小説2巻より

剣道の有段者に話を聞いたことがあります。

剣道で竹刀を交わすと、相手の性格が分かる、と。

瀬黒は、正崎と一緒に行動し、彼のしている事を間近で見てきた。
さらに、竹刀を交わし、彼の真っ直ぐな性分を、正義に対する姿勢を感じ取ったのかも。

ここで瀬黒はようやく正崎に全幅の信頼を置くようになったのではないでしょうか。

おわりに (原作小説『バビロン』2巻とは)

今回は、アニメ化されたペースが、1巻から通してもこれまでで一番ゆっくり。
曲世にまつわる話はじっくり見せてくれる方針なのでしょうか(苦笑)。

まあ、曲世の過去、捜査の進捗の曲がり角、剣道を通じての瀬黒と正崎の心の交流。
外せないシーンばかりでしたからね。

さて、次は、公開討論。
2巻終盤に向け進んでいきます!

以上、『バビロン』原作小説2巻のレビューでした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。

原作2巻の続き部分のレビューも書いているので良かったらご覧ください。
ではでは。

きょうのひとこと

にしても坂部医師は随分簡単に話をしてくれたな。罪悪感?

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