バビロン

小説【バビロン】1巻感想(1/3) 原作の守永部長は温かく、文緒との関係は微笑ましい、半田とはお笑いコンビのようで、九字院は・・・

バビロン 1話

こんばんは。時文です。
バビロン』1巻の感想レビュー(1/3)です。

原作1巻は、TVアニメ1~3話に相当。

本レビューではアニメ1話に相当する部分を対象とします。
次話以降のネタバレは「なし」なので、ご安心を。

アニメ化された部分の感想はアニメ各話レビューをご覧下さい。
※以下、表内のリンクから各レビューへ行けます。

バビロン (全12話)

話数 サブタイトル レビュー 原作巻数 ページ数 レビュー
第1章 「一滴の毒」
第1話 疑惑 1話R 1巻 136P 本レビュー
第2話 標的 2話R 93P 1巻R②
第3話 革命 3話R 83P 1巻R③
第2章 「選ばれた死」
第4話 追跡 4話R 2巻 128P 2巻R①
第5話 告白 5話R 49P 2巻R②
第6話 作戦 6話R 72P 2巻R③
第7話 最悪 7話R 53P 2巻R④
第3章 「曲がる世界」
第8話 希望 8話R 3巻 56P 3巻R①
第9話 連鎖 9話R 67P 3巻R②
第10話 決意 10話R 79P 3巻R③
第11話 開幕 11話R 93P 3巻R④
第12話 12話R 50P 3巻R⑤

はじめに

本レビューは「アニメ」⇒「原作小説」の順で見た「原作の感想レビュー」です。

『バビロン』原作1巻はアニメ1~3話でアニメ化。

小説1冊を3話でアニメ化と言うのはかなり早いペースだと思っていたら、1話がかなり駆け足でした。
1話だけで原作の半分(約140ページ)進みました。

1話に関しては、かなりの部分がカットされています。

原作では、キャラクターの関係や心情描写がしっかり描かれてます。

正崎と文緒の関係、半田との腐れ縁。
二人とも正崎に惹かれているのがよく分かる。

原作では、正崎の上司、守永部長が温かい。
ちゃんと存在感があり頼りになる感じです。

九字院とは実は・・・

事件の捜査に関しても、原作はじっくりと推測を重ねてます。
原作を読んでより理解が深まりました。

本レビューでは、アニメでは描かれなかった部分を紹介します。
ストーリーの大筋は同じですが、シーンやセリフ単位で比べるとかなり違います。

全てを取り上げるのは難しく、原作を読んでイメージが変わったことや新情報を得られた箇所を中心に紹介します。

原作の魅力を全て伝えることはできないとは思いますが、少しでも作品理解の助けになれば幸いです。

本レビューの内容
  • アニメでカットされた原作部分
  • アニメオリジナルシーン
  • 原作を読んで分かったこと

見出しの頭にアニメオリジナル、原作のみの記号を記載したのでご参考に。

  • ア):アニメオリジナルシーンに関する記述
  • 原):アニメではカットされたシーンに言及

では、TVアニメの内容順に紹介していきましょう。

原作感想レビュー (TVアニメ第1話 相当分)

構成はほぼ同じ

先ほど、アニメは原作をかなりカットしていると書きました。
が、ストーリー物ですから構成はほぼ同じです。

原作も冒頭は、日本スピリ製薬会社への強制捜査からです。

終盤の少女を尾行する辺りはアニメではかなり端折られてます。
ただ、このシーンにおいてはアニメの方がテンポ良く描かれ見やすいですね。

原) セキュリティはあった

東京地検特捜部は日本スピリ製薬へ「薬機法」違反の疑いで強制捜査を執行する。

アニメでは、東京地検特捜部が颯爽と日本スピリ製薬へ強制捜査を執行する。
捜査権限を使ったのかもしれないが、日本スピリの人たちに気付かれることなく易々と入っていく。

アニメ初見時は、この会社、セキュリティ大丈夫なのか?
などと思ってました。

原作では、その辺りもキチンと描かれます。

特捜部は、受付嬢に案内され、オフィスの入口まで
入口のセキュリティも、受付嬢に開けてもらい、一気に踏み込むのです。

もちろん、受付嬢は困惑した状態。
恐らく、特捜部であることを告げ、オフィスに伝えることなく、案内するよう指示したのでしょう。

違和感が解消されスッキリしました。

さらに、正崎たちが強制捜査したのは本社ではなく、東京営業所。
#本社は他担当が強制捜査してます。

あのビルはいわゆる雑居ビル。
その一部を日本スピリ製薬が間借りしていたと言うことです。

原) 文緒 検察事務官の役割

文緒の肩書きである検察事務官。
アニメでは検察事務官の説明はなかったですが、原作では説明されてました。

文緒厚彦は正崎の立会事務官である。

検事という仕事には必ず一人以上の検察事務官が随行し、副官として検事の事務作業や捜査の補佐をすることになっている。2年前から正崎とコンビを組んでいる文緒は高校を卒業してすぐに事務官となった男で、まだ24と言う若手だった。

by 『バビロン』小説1巻より

検事には必ず一人以上の検察事務官がつく決まりなのです。

文緒は若干24歳。
まだまだ若手だが正崎とのコンビは2年となり、関係は良好のようだ。

原) 「物読み」

強制捜査の現場で一々吟味していては何日掛かって終わらないので、職員は細かな区別をつけずに、分け隔てなく、目についた一切合切をすべて箱に入れて持ち帰ってしまう。そういったやり方のため、特捜部の押収する証拠品の量は常に膨大となり、今回の事件でも踏み込んだ二ヵ所合わせて段ボール箱700個という大変な物量になってしまっていた。だがこれら押収品の大半は事件と無関係なガラクタばかりで、そのままでは犯罪行為の証拠となり得ない。

そんな大量のジャンクの中から真に有用な証拠を見つけ出す作業を《物読み》という。

by 『バビロン』小説1巻より

この物読みについて、原作ではアニメ以上に、文緒が愚痴を言い、正崎がたしなめています。
そのやり取りがとても「らしく」て、微笑ましいので、興味ある方はぜひ原作をお読み下さい。

正崎が、文緒を認めている所もあるので、そこも見所です!

文緒は経験不足でまだ手際の悪いところがあるが、頭の出来自体は悪い方ではないと思っている。正崎としては仕事の中で文緒に助けられている部分も多い。だが本人にそんなことを言うと調子に乗るので絶対に言わないことにしていた

by 『バビロン』小説1巻より

認めながらも、言うと付け上がるので、絶対に言わない。
正崎が文緒に対する思いが溢れていていいですね!

ここ以外でも、文緒は正崎に褒めて欲しい思いが分かる箇所がいくつかあり、そのたびに正崎にたしなめられている、というかいじられてる感じですね(笑)。

ア) 「正義のメモリ」

逆にこのシーンではアニメは、文緒と正崎のやりとりをザクッとカットし、事件概要の説明と、物読みの必要性を説いてます。

文緒に事件の概要を説明させ、なんだかんだと物読みを続ける文緒を見て、少し感心する正崎の表情で、文緒を評価していることを表現しています。

いいか、文緒。

物読みとは、地道に真相に一歩ずつ近づいていく、いわば「正義のメモリ」のような仕事・・・

by 正崎善『バビロン』TVアニメ1話より

原) アグラス事件の概要

社会的に影響の大きい不正事件だが、メディアの扱いが小さい。
正崎も扱いの小ささに、論理立てて同意をしています。

この事件は製薬会社と大学による利益相反事件だ。(-中略-)研究不正は医薬品の信頼前提を根底から揺るがしかねない違法行為であり、社会的な影響は大きい。

ただ同時に、薬剤「アグラス」については、現時点まで薬品としての致命的な問題が報告されているわけではない

不正データによって薬効が水増しされたとされるアグラスだが、実際には公表された数値以下ではあるものの、ある程度までの効果が確認されている。またアグラスは副作用の少ない薬であり、薬害を被ったとする被害者も存在しない。今回の事件はあくまで「研究不正と虚偽誇大広告による詐欺事件」であり、厚労省からの起訴内容もそれ以上のものではない。

それに加えて「製薬会社と大学研究という専門的な業界内の事件であること」「糖尿病治療薬の、さらに限定的な一製品の問題であること」でもあり、多くの一般市民からは「自分とは関係ない」と思われがちな事件であることは確かだった。

by 『バビロン』小説1巻より

会社は巨額の利益を得ているが、被害を被った人も少ない。
だからメディアの扱いが小さいわけですね。

原作ではこの手の説明が随所にあり、物語の説得力を増しています。
アニメでは、説明的で冗長になってしまうのでカットしたのでしょう。

さらに、正崎は面白い解釈しているので紹介しましょう。

正崎は黙々と食事を続けながら、報道の状況を冷静に鑑みた。マスコミ報道が過熱するような事件の場合は関係者の焦りが煽られてしまうため、捜査を可能な限り迅速に行う必要が出てくる。対して今回のように報道が大人しい場合は、特捜部としてはむしろやりやすい。集中して物読みができるのは非常に好ましいと正崎は思う。

by 『バビロン』小説1巻より

なるほど!
世間から注目されない方が、捜査はやりやすい訳ですね。
よく分かります(笑)。

対して、文緒は注目度の低さからやる気を失いつつあると、続きます。
そこで、アニメにもあるような「政治事件とか扱ってみたいな」と言う流れになるのです。

原) 守永部長は温かい

アニメとは違い、原作では守永部長が登場すると、文緒は早々に退散します。
その後、守永部長と正崎二人の会話になります。

守永は、文緒が「巨悪を倒す(=バッジを挙げる)」ことについて憧れるのは、上の世代のせいだと言う。

アグラスの事件については、アニメでもあるように、すぐに決着が着くだろうとの見込み。
そこで言う守永部長のセリフが気持ちいい!

「儂としてはこのヤマ、もうほぼほぼ固まっていて早い段階で片付くと踏んでおる。何を言いたいか解るか、正崎」

正崎は素直に首を振った。わからない。

物読みも程々にして、たまには早く帰れと言っておる

正崎が目を丸くする。守永はやれやれといった調子で茶をすすった。今年で32になる正崎も、守永の年からすれば文緒と同じく息子のようなものであった。

by 『バビロン』小説1巻より

(このシーンだけでなく)正崎の心情描写から、上司の守永部長は、尊敬でき信頼できる部長であることが、端々から感じ取れます。

このシーンは、温かい部分なので紹介。
私は、ここだけで、守永部長の印象が変わりました。

ま、結局は、忠告虚しく、この食事の後も終電間際まで物読みを続けていたようですが・・・
文緒は全身から疲労困憊をにじませていたという・・・

ちなみに、この日片付けたのは14箱。
正崎12箱、文緒2箱でした(苦笑)。

原) 「正義の目盛り」とは

アニメでは、正崎と文緒の会話で「正義の目盛り」が出てきますが、原作ではそのような会話はありません。

原作では、正崎の心情描写の中で「正義の目盛り」が出てきます。

正崎はどうやら物読みが好きなようです。
だから、クタクタで「物読みは心にくる」と言う文緒の感覚にピンとこない。

正義の最前線で戦っている正崎も、「正義とは何か」という問いに明確な答えを持っているわけではなかった。

-中略-

暗中模索の毎日の中で、雲を掴むような気分になることもある。

そんな日々にあって、物読みという作業は明確な進捗が見える仕事だった。

押収品の箱を一つずつ吟味して減らしていく。手がかりや証拠を見つけるたびに犯罪の真相が明らかになっていく。正崎にとって物読みとは、巨悪にどれだけ近づけたのかをはっきり見せてくれる、いわば《正義の目盛り》のような作業であった。だから深夜に及ぶ仕事も苦ではない。やればやるほどに正義を推し進められたことを感じられる物読みは、人生の楽しみの一つですらあった。

by 『バビロン』小説1巻より

正崎は、犯罪に向き合う中で、正義を貫こうとするが、何が正義か答えが出ない時がある。
また、答えがあるものなのかも分からない。

そんな中、物読みは悪を立証する証拠に近づいていく明確な進捗が解る。

だから、《正義の目盛り》と捉えているわけですね。

面白い考え方です!

文緒に限らず誰もが面白くもない地味な作業、物読み。
単純作業、単調な作業を前向きに捉えることができる考え方ですね。

見倣いたい!

原) コーヒーマニアではなかった

バビロン 1話

アニメでも正崎がコーヒーの味にうるさいと出てきましたが、決してマニアということでもないようです。

一日の大半を部屋にこもって過ごす検事と事務官のために、執務室には冷蔵庫やコーヒーメーカーなどの備品が備えられている。中にはそこに缶ビールを貯めこんでいる検事もいたが、酒を飲むときぐらいは外に行きたいと正崎は思う。

コーヒーの良い香りが漂ってくる。給湯場にある妙に可愛らしい棚には文緒が買い揃えた各種コーヒー豆がずらりと並んでいた。ただ文緒がコーヒーマニアかというと特にそういうわけでもなく、単に物読み作業からの必死の逃避の結果として豆が充実してしまったというだけだった。執務室の中で仕事から逃げられそうなものはコーヒーか紅茶くらいしかない。

by 『バビロン』小説1巻より

つまり、コーヒーが充実しているのは、正崎の好みでも要求でもありません。
文緒が唯一の息抜き手段を追求した結果というわけですね(笑)。

このように検事の仕事風景が見える描写が原作には随所にあり、これまたうれしいですね。

ちなみに正崎は、文緒が炒れてくれた上等な香りのコーヒーを見て「これなら事務官を退職しても喫茶店の店員くらいはできるだろう」と失礼なことを考えてます(笑)。

ア) 閉じた書類はアニオリ

バビロン 1話

気味の悪い書類。
アニメでは圧着ハガキのように、閉じられた内側に書かれていた。

原作では、普通のコピー用紙、しかも書き損じのコピー用紙の裏側に書かれてました。

アニメオリジナルで描かれた、くっついた紙は、圧着されていたのか、血でくっついたのか・・・
その説明はなかったですが・・・

正崎がビーッと開くシーンはとても印象的
アニメらしい表現として採用したのかもしれません。

原作では、文緒が正崎に物読みのコツを教えてもらい、実践しているときに、書き損じを暗号だと言い出し始める。
正崎も念のためと、やりとりしている内に、裏側にチラッと黒い面が見えて、二人は気付く、という流れ。

このシーンはアニメの演出が映えてますね!

原) 不気味な書類を見て、正崎は既に推測

原作では因幡准教授を訪ねる前に、正崎は不気味な紙の状況からどのようにして書かれたのかを既に推測しています。

手触りの正体を確認した。

一つは、何本かの毛だった。
一つは、爪の端のようなものだった。
一つは、フケのような、皮膚のかけらのようなものだった。

-中略-

ところどころに付着した僅かな量の血が固まり、それに毛や爪のようなものが混ざりこんで、人が触り慣れない、おぞましい感触を生み出していた。

-中略-

「不気味には違いないが。ただこれは暴力の跡じゃあない」正崎は紙に顔を近づけて分析する。「付着している血液はわずかで、大きな出血ではないだろう。それに髪の毛と皮か・・・。そうだな、たとえばこれを書いた人間が狂ったように頭をかきむしったとしたら、出血も混じってこういう痕跡になるかもしれない

by 『バビロン』小説1巻より

不気味で、精神状態はまともではないことは明白だが、暴力事件やましてや殺人事件に繋がるわけではないと推測しているのだ。

確かに、筋は通ってますね。

なぜ、そんな書類が大学の研究資料に紛れたかは不可思議ですが・・・

後のシーンになりますが、不気味な書類絡みでまとめておくと。
検証結果を九字院から聞く場面。

正崎さんからお預かりした例の。あの紙です。検査の結果、付着していた血痕やら皮膚は因幡信の物でした。(遺体の頭にも掻きむしった痕跡があるので間違いないかと)

※()部分がアニメではカット

by 『バビロン』小説1巻より

原作では、あの異様な紙は、因幡が髪の毛が抜け血が出るほど頭を掻きむしって、紙が黒くなるほど「F」を書き殴った末にできたのが明らかになっているのです。

残った謎は「どうしてそのような精神状態になったのか」ということです。

原) 事件とは全く関係ないが心がざわつく

さらに原作では、正崎は、既にこの書類はアグラス事件にも全く関係がないだろうと踏んでます。

正直に言ってしまえば、正崎はこの気味の悪い紙がアグラスの事件と関わってくるとはあまり思っていなかった。

現在特捜部が総出で追っているアグラス事件の起訴内容は、あくまで糖尿病治療薬アグラスを巡る日本スピリ社と四大学の不正を対象とするものだ。だが今向かっているのは別の大学で、その手がかりも別の製薬会社の、別の薬の試験書類ときている。はっきり言ってアグラス事件とは全く無関係と考えていいだろう

by 『バビロン』小説1巻より

では、なぜ病院へ向かうのか・・・

だがそれでも、正崎は聖ラファエラ医科大に行くべきだと考えている。あまり論理的ではないが、正崎自身の感覚とでも言うべきもの、検事になって十年間磨き続けてきたアンテナが、一度調べてみろと言っている

なにより文緒が見つけた紙には、それをさせるのに十分な異様があった。

by 『バビロン』小説1巻より

検事としての勘が、行動させたのです。

正崎はさらに冷静に、ここで一日無駄にしても、アグラス事件の捜査に大きく影響することはないとみてます。
物読みの進捗は、他のどの検事よりも早く、時間を割いても文句を言ってくる人間はいないと読んでいるのです。

さすがです!

ちなみに、この後、正崎は文緒に「聞き込みから戻ったら、今日は早めに上がってもいいぞ」と伝えると、文緒は奇跡を目の当たりにしたような顔をして・・・

感動のあまり泣き出します・・・

どんだけブラックなのだ(笑)。

原) 身分証明書は立会事務官しか持ってない

因幡准教授が務めている聖ラファエラ医科大へ訪ねたとき、文緒が東京地方検察を名乗り身分証を見せるシーン。

アニメを見た時、正崎は見せないので不思議だったのですが、どうやらこれがスタイル。

検事である正崎は検察官の証明である記章《秋霜烈日(しゅうそうれつじつ)のバッジ》を襟につけているが、検事は刑事等と違い、手帳のような身分証明書は携帯していない。そのため身分を証明する必要がある場合は、常に同行している立会事務官が自身の検察事務官証票を掲示するという段取りになっている。

by 『バビロン』小説1巻より

なんと検事である正崎は身分証を持ってないのです。
全く知りませんでした。

物騒な世の中。
現実世界で持ってないと言われると疑ってしまいそうです(笑)。
#検察とは縁がないのでそんな心配無用ですが

つまり、検事の証は「秋霜烈日のバッジ」。
身分証としては、常に同行している立会事務官が保証するという形なのです。

勉強になりました!

原) 医大の教授や生徒へ聞き込み

アニメでは医大を訪ね、因幡准教授が不在だと分かると自宅へ行きます。
ばっさりカットされてますが、原作では、医大で麻酔科の他の教授や生徒に聞き込みをしています。

検察の聞き込みということで、不安がる教授に安心させながら因幡教授のことを探る。
正崎の心情描写とともに描かれ、検察の立場と仕事内容、目的がよく分かり面白い!

生徒の会話で、いくつか情報を得ます。

  • 因幡准教授は全然寝てない感じで疲れ切っていた
  • 医大の仕事は2本だけで忙しいはずはない
  • 忙しいとしたら、因幡が個人で受けている仕事のせいか
  • 因幡准教授の所へ、お爺さんと女の二人が頻繁に訪ねてきている
  • その二人はMR(製薬会社の営業)ではない

アニメではここを一気にカットして、訪ねてきた二人の情報は、調査結果として文緒から語られます。
「疲れ切っていた」と言う情報は、文緒のメモが写った場面で文字として出てきたのみですね。

普通の警察ものなら「疲れ切っていた」というのは自殺の重要な情報。
『バビロン』のポイントがそこではないことを示してます。

原) 部屋に踏み込む段取りあり

因幡のマンション宅へ踏み込むとき、令状がなく、文緒に一言「頼んだ」で入ってます。
原作では、キチンと抑えてます。

マンションのオートロックを開けさせて廊下に入るのも厳密に言うと令状が必要のようです。

が、正崎は「不気味な紙」のことが気になり、上まで上がる。
廊下までなら、取り沙汰さえなければ問題にならないだろうと判断の上で。

扉を開けてもらうのはさすがに簡単にはいきません。

ところが、部屋から漏れ聞こえる音楽を聞き不在ではないと考え、ドアを強めにドンドンと叩いていると、隣室の住人が出てくる。

お隣のその音楽、昨日からずっと流れてるんですよお。そろそろ管理の人か警察に言おうかなと思ってて

by 『バビロン』小説1巻より

正崎はこれを「名目」。
つまり「騒音の苦情という名目」で、管理人から管理会社へ連絡させて鍵を開けさせたのです。

上手い!
おかげでスッキリしました!

ア) 九字院が知り合いなのはアニオリ!

バビロン 1話

これも原作のボリュームを1話で収めるためか、はたまた別の目的か・・・

原作ではなんと、正崎と九字院は初対面でした!!

線が細く、綺麗な顔で、刑事には似つかわしくない第一印象。
だが、奇怪な現場で死体を前にした落ち着きは流石にプロだと感じ、正崎は九字院をすぐに認めるのです。

最初、ほんの少し腹の探り合いがありましたが、無駄な交渉をせず、頭の切れる男だと正崎は感じる。

こうして、全面的に信頼していくことになるのです。

原) やはり自殺しかない?

アニメでは、30時間もかけて自殺をするのかと疑問が上がりました。

原作ではさらに詳細な情報が。

大体30時間くらいになりますか。その分量だと途中まで意識もあるそうなんで、止めようとしたら自分でマスクを取りゃいいわけです。

by 『バビロン』小説1巻より

なんと、30時間をかけてゆっくり増やすとなると、逆算すると途中まで意識もあったと言うのです。

抵抗した跡もないのであれば、やはり自殺ではないかと九字院は踏んだわけです。

さらに・・・

あと麻酔の精密なコントロールなんて専門家じゃないと無理だって教授先生も言ってましたから。そしたら麻酔科医である因幡本人が機械を設定したと考えるのが妥当じゃないですか。

by 『バビロン』小説1巻より

まあ、専門家ではない人が設定したから誤って30時間もかかったのでは?とも思うのですが、それなら逃げてしまえば良いだけなので、やはり他殺の線は厳しいのか・・・

正崎はその夜、帰宅してからも因幡の自殺について考えます。

自殺は精神的にも肉体的にも多大なエネルギーを必要とする作業。
だから、高い所から飛び降りるなど、一度踏み越えたら後戻りできない方法を取るものだと。

ところが、因幡の取った方法は真逆。
いつでも止めることができる、不確かな方法。

異様な紙と合わせ、異様な自殺、二つの異様が、この事件を単純に自殺と片付けられないのです。

原) 異様な自殺がありえない

さらに、正崎の推測は半田と会っている時も続きます。

正崎がいる特捜部という性格上、取り扱う事件で自殺者が出るのは珍しいことではない。
犯罪が明るみに出ることに堪えきれなくなったり、巨大組織での責任追及を恐れて、自殺に逃げ込んでしまう場合もあると言う。

今回は選挙絡みなので、秘書等関係者が全てを被って自殺、真相は闇の中、というパターンも考えられる。

ただ、その場合は、「確実に」自殺だと認定されなくてはならないのだ。
もし疑念を挟む余地があれば、捜査の手が止まらない。

そういう点から考えても、今回の因幡准教授の自殺方法は不可解。
自殺にしか見えないが、自殺にしては不自然

捜査の目を逸らすどころか、かえって疑惑を深めてしまうことにもなりかねないのです。
だから、正崎は、因幡准教授の死には何かあると睨んでいるのです。

原) 半田との会話が楽しすぎ

正崎の学生時代からの親友。
原作では「ほぼ唯一と言っていいだろう同年代の友人」とまで書かれてます(笑)。

アニメで描かれた会話の流れと結論は、原作と同様。
ただ、原作ではもっと細かく、バカバカしいやりとりも描かれ、二人の関係がよく分かります。

ほんの一部ですが、紹介しましょう。

半田:今日は親友の俺に用があるんだろう?
正崎:ない
半田:わかったよ・・・言い直すよ・・・お前は本当に頑ななやつだよ・・・どうせ今日も記者の俺に用があるんだろう?

by 『バビロン』小説1巻より

正崎:そもそもヒラ検事は記者と接触禁止だ
半田:あー接触してるー。悪いんだー
正崎:お前今俺に向かって悪いっつったか
半田:言ってません
正崎:ならいい

by 『バビロン』小説1巻より

半田:想像はいくらでも広がるが、何かを確定するには情報不足ってところか
正崎:お前の言う通りだ、半田
半田:うん。うん?
正崎:今は全く情報が足りてないんだ。一つでも多くの情報が欲しい時期だ。そうだな半田。

半田:うん、そうだな・・・そうかな・・・
正崎:いやあ情報が欲しい。ああ本当に情報が欲しい。情報が。情報が欲しいなぁ半田
半田:~~~~・・・つまり俺に、野丸の周りを嗅ぎまわってこいと
正崎:得意だろ
半田:でも記事にはするなと
正崎:親友だろ

-中略-

半田:お前俺にどんだけ無茶なこと言ってるのか解ってんのか!
正崎:でもやるんだろ
半田:やるよ!!

by 『バビロン』小説1巻より

どんだけ、SとMなんだと言う感じのやりとり・・・

半田が正崎の頼みを断ったことは一度もないようです。
だから確信犯で、無茶なお願いをしている様子。

でも、奴隷だとかそういう意味ではなく、半田の能力を買って当てにしているようです。

正崎は百人の味方を得たような気持ちになったが、そんなことを言えば調子に乗るのが目に見えているので絶対に言わないと決めていた。

by 『バビロン』小説1巻より

文緒と言い、半田と言い、正崎を好いて尽くしているようですが、正崎は甘やかさず絶対に褒めないと言う、可哀想な関係になっているようです(苦笑)。

それにしてもいいコンビだなーこの二人。

原) 九字院との関係

九字院との関係も面白いです。
先ほど言ったように、原作では九字院と正崎たちはこの事件で初めて知り合う。

因幡の事件を追う許可をもらい、改めて多摩警察署へ向かう正崎と文緒。
九字院は警部補で正崎と同じ32歳。

32歳で警部補は、ノンキャリアでは比較的早い出世のようだ。

正崎:本日はご協力感謝します
九字院:いやいや、固っ苦しいのはやめましょうよ正崎さん。同い年でしょ?面倒ですし、砕けて行きましょう
正崎:わかった。九字院でいいか

正崎が一秒で順応したので、自分で砕けろと言った九字院の方が目を丸くしていた。九字院は「変わった検事さんだ」と笑った

by 『バビロン』小説1巻より

正崎の少し常識外れな性格が面白いですね。

この二人の関係もいいですね。

原作には、こういう事件の場合、検察と警察の関係も説明があり分かり安い。

検察官である正崎と司法警察職員である九字院は共に捜査権を有する役職にあり、刑事訴訟法上では相互に協力しあう対等な関係である。だが実際の現場においては、検察官は警察職員に対する一般的指示権を有しており、警察官を指揮して捜査の補助をさせることができる。この場の3人で言えば、正崎は文緒と九字院に指示を出せる立場となる。

by 『バビロン』小説1巻より

九字院は正崎の部下として使えるようになったのです。

原) 安納が古株だからこそ怪しい

野丸の秘書・安納を追う辺りから、原作に比べアニメはかなり駆け足になります。

原作では、安納を張っていてもすぐには動きがありませんでした。
文緒は、安納は重要な秘書ではないのでは?と言うくらいに・・・

どうやら、安納は公設秘書ではなく、私設秘書。
自明党幹事長ともなると数十人の秘書を雇い、その内の一人。

文緒が言うには、公設に選ばれない、私設秘書の安納は下っ端だと思ったわけです。

が、正崎は逆の見方をします。

(安納は)秘書の中では一番の古株だ。野丸とのコンビは若手議員時代から30年にもなる。腹心の部下のはずだ。

-中略-

公設秘書は議員会館に出入りして仕事をする。常に議員の周辺で動き、国会の動向に合わせて働く。つまり公の場に顔を出す秘書なわけだ。対して私設の仕事は議員の胸三寸だ。雑用をあてがってもいいし、運転手をやらせてもいい。

何をやらせてもいいんだ

by 『バビロン』小説1巻より

文緒も理解します。
野丸は信頼できる安納を私設秘書とし、おおっぴらにできない「裏の仕事」を頼んでいる、と言う構図。

域長選挙中、本来なら暇な秘書などいない。
にも関わらず、腹心の秘書が、違う動きをしている。
そこに何かあると睨んだのです。

原) 少女を見過ごした時、正崎の良心は痛んでた

安納が連れてきた少女が、料亭を出て建設業協会の会長と車に乗った時。

正崎はこれまでの捜査の中で、表情を読み取るクセがついてしまっていた。

車に乗るときに見た少女は・・・

「怯え」と「嫌悪」・・・

だから、その少女を素人と見て、そこが突破口になるかもしれないと、文緒に追わせたのです。

確かに、改めてアニメを見ると、少女は怯えたような表情をしています。

アニメでは、文緒はそのままいなくなってしまいますが、原作では一旦執務室へ戻ります。

正義感溢れる若い検察事務官は、少女を助けたかったと憤る。
正崎は別の検事からもらってきた缶ビールを文緒と二人で開ける・・・

正崎は目の前で行われた犯罪を絶対に許さないと誓う。

文緒は将来の夢を語り出す
「特任検事」を目指すと言うのだ。
特任検事は、狭き門で、検察事務官にとっては出世コースの一つの到達点。

この辺のやりとりが胸アツなので、ぜひ原作をお読み下さい。
最後はちゃんと「らしい」オチもありますよ(笑)。

原) 少女のマンションを張っている内に・・・

バビロン 1話

原作では、改めて、少女が突破口であると睨み、少女のマンションを張る。
少女の身元を明らかにした上で、接触し証言を取る計画。

少女がようやくマンションに戻り、部屋番号まで分かった文緒たち。
次に出てきた時に、尾行し、少女の身元を明らかにするのだ。

ところが、それ以降全く動きがなく、徹夜で張り付いている最中、突如遺書のようなメールが来たのです・・・

原作では、張り込みの途中で何かが起き、文緒は正崎へ連絡もせず自宅へ帰ったのです・・・

おわりに (原作小説『バビロン』1巻とは)

原作は正崎の一人称で描かれます。
口に出さない心情描写が原作ではたっぷりと描かれ、正崎の人間らしい部分が見えます。

それぞれのキャラクターも丁寧に描かれてます。

文緒が正崎に憧れていること、正崎とコンビを組んでようやく検察事務官の仕事にやりがいを見つけたこと。

半田は、正崎に都合良く使われているように見えますが、正崎のことを学生のころから気に入っており、何かと気に懸けている内に今の関係になった様子。

九字院は初対面だったが、有能で、すぐに打ち解け、正崎の良いパートナーになっていく。

レビューでは取り上げなかったですが、自宅に帰り正崎の奥さんとのやりとりや、彼女の料理の腕前についても原作では描かれてます。

『バビロン』はとても丁寧で硬い検察ものだと。
アニメ鑑賞時も思いましたが、原作ではより強く感じました。

それがこの後、変化していく。
では、硬い検察ものは必要なかったのでしょうか?

いいえ、殺伐とした検察の仕事の中で、思いを同じくする仲間との熱く微笑ましい絆が描かれることにより、今後の展開を楽しめるのではないでしょうか。

アニメでも、文緒の姿をもっと見たかったですね。

以上、『バビロン』原作小説1巻のレビューでした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。

アニメ2話、アニメ2話相当分の原作レビューも書いているので良かったご覧下さい。
ではでは。

きょうのひとこと

「検察」の知識、めちゃ増えました

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