アニメ【バビロン】11話「開幕」感想 各国首脳が挑む世界市民を納得させる善悪の基準とは?

バビロン 11話

こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『バビロン』第11話「開幕」を鑑賞しました。

とうとうG7参加国内の全てに、自殺法を導入する都市が現れた。

アメリカ合衆国大統領アレックスは自殺の是非についてずっと考えているが結論は出てない。

が、G7サミット開催が近づき、結論を出さなくてはいけない。
そこへ齋が「自殺サミット」開催を宣言。

アレックスはその会見を見て思いつく。
自殺法の是非は彼らに考えさせ、我々が考えることは別にあると・・・

前話ラストに齋が登場し、ようやく物語が大きく動き出しました。

では、TVアニメ『バビロン』11話の感想レビューをどうぞ。

今話の原作

小説 『バビロン3 -終-』

本レビューの方針

本レビューは、次話以降のネタバレはありません。

アニメ鑑賞後の感想

原作小説を読み
知り得た情報を加味して「解説・考察」

私は原作小説未読です。
アニメ鑑賞後、アニメ化済み時点までの部分を読み、レビューを作成しています。

よって・・・次話以降のネタバレはなしなのでご安心ください

作品レビュー 一覧

バビロン (全12話)各話リスト
話数サブタイトル原作巻数ページ数原作R
第1章 「一滴の毒」
第1話疑惑1巻136P1巻①
第2話標的93P1巻②
第3話革命83P1巻③
第2章 「選ばれた死」
第4話追跡2巻128P2巻①
第5話告白49P2巻②
第6話作戦72P2巻③
第7話最悪53P2巻④
第3章 「曲がる世界」
第8話希望3巻56P3巻①
第9話連鎖67P3巻②
第10話決意79P3巻③
第11話開幕93P3巻④
第12話50P3巻⑤

話数:リンクは各話レビューへ
原作R:リンクは各原作レビューへ

※:8話前半は先の部分が元ネタ。そのページ数(7P)を含む

バビロン 感想レビュー(全話総括)
話数レビュー
全体【ネタバレあり】感想レビュー
目次

今回のあらすじ

今話あらすじ

舞台はアメリカ合衆国
「自殺法」導入の是非で世の中が揺れている真っ只中、アメリカでG7サミットが開幕。

参加各国が「自殺法」に対するスタンスを表明する中、アメリカ合衆国大統領アレックスは別のことを議論しようと提案。

それは「善悪

齋が「自殺サミット」をG7サミットと同じ日程にぶつけ何かを仕掛ける気配。
アレックスは「自殺法」是非の議論よりも「善悪」を議論しようと言い出す。

ようやく物語が動き出し、面白い流れになってきました。

各国首脳同士の議論、それもG7での議論がアニメで描かれるなんて、なかなか見ないのではないでしょうか。
動きがなく、説明じみたセリフの応酬ばかりになってしまいますからね。

それに規模は違いますが6、7話でも公開討論があり、同じように見えてしまう可能性も。

ところが、作画と演出がかなり工夫され、凝ってましたね~~
特に後半の「善悪」議論では、舞台を宇宙にしたり、議論内容に沿った画が次から次へと切り替わり見ているだけでも楽しい。
トロッコ問題の箇所では画の色調まで変わって惹き付けられました。

固い議論を上手く、そして分かり安く見せてくれました。

では、順を追って見ていきましょう。

感想レビュー 第11話「開幕」

アバンタイトル

G7サミット 開幕

あらすじ

アメリカ・アッパーベイでG7サミットが開幕。
参加各国で「自殺法」導入について揺れる中、サミットの話題も自殺法になると思われた。

各国の自殺法へのスタンス

肯定保留否定
カナダ
イタリア
アメリカ
ドイツ
日本
イギリス
フランス

国としても、いつの間にか「自殺法」を肯定している国があったのですね。

10話でイタリア大統領がTVインタビューで答えてたのは、自殺法を肯定したから発言を求められていたのか。

いやね、冷静に考えてみなさいよ。

行政が許可したから、やるとか、そういうもんじゃないでしょ

自殺法ができたから、さっそく死のう、なんてのは、とても冷静な判断とは言いがたい。

普通の人間が普通に損得勘定をしたら、まず自殺は選ばないよ。

至極単純な計算だよ。

by イタリア大統領 ルチアーノ・カンナヴァーロ 『バビロン』TVアニメ10話

てっきり、自殺法反対が多いと思っていたのですが。

肯定と否定が2対2。

決して、反対多数ではないのです

大淫婦バビロン

聖書。

ヨハネの黙示録に記された7つの頭の獣。
この黙示録の獣は7人の王を表し、その背には一人の女が。

女は聖なる者達の血に酔いしれ、最後には神によって焼かれ裁かれる。

その女の名は「大淫婦バビロン

by オープニング ナレーション 『バビロン』TVアニメ11話

オープニングを使っての説明、ドキッとするような演出に身震いしました。

作品タイトル『バビロン』についてこれまで何も触れられていませんでした。

ここでようやくバビロンの意味が。

「大淫婦バビロン」は聖書では堕落の象徴として描かれてます。
性で相手を惑わし、殺人を犯す曲世は、正に「大淫婦バビロン」。

「大淫婦バビロン」の女は堕落した古代ローマ帝国の暗喩として描かれていると解釈するのが有力。

ここで言う7人の王は、ローマ帝国の7人の皇帝を表していると言われてますが、世界を総べると言う意味で言うと、今のG7首脳と確かに重なります。

まるで、曲世が、G7首脳を手玉に取っているように見えます。

だけど、もう一つ別の解釈もあるそうです。

「大淫婦バビロン」は異教徒、つまり違う宗教の暗喩だと言う説も。
別の宗教の考えを取り入れると、その宗教が滅びてしまうと言う警告だと言うのです。

前回(10話)を見て、私は「自殺法」は法ではなく「自殺教」だと感じました。

なので、「大淫婦バビロン」の異教徒説にも絡めているのではないのかな?
気になりますねーー
#こういう想像をするのが楽しいですね。この作品は。

Aパート

G7サミット 自殺法「肯定派」VS「否定派」

あらすじ

参加国は「自殺法」に対するスタンスを表明する。

どうやら議題は初っ端から「自殺法」のようだ。

なんと各国の表明の中、ドイツが積極的保留。
簡単に言うと、検討を続けるために”一時的に肯定”すると言い出した。

これで、肯定派が3つと否定派を上回りました。

各国の自殺法へのスタンス

肯定保留否定
カナダ
イタリア
ドイツ
アメリカ
日本
イギリス
フランス
(+1)(-1)

肯定派、否定派の意見をまとめてみました。

「自殺法 支持」の意見
  • 自殺を認めないのは、「生」に対する拘束。
    同性愛を認めるのと同様に、価値観の一つとして容認したい。(カナダ)
  • 自殺の是非は国が決めることではない、自由なものだ。
    良いことなら発展するし、悪いことなら消える。(イタリア)
  • 今「自殺法」を否定するのは、検討を放棄するということ。
    精査を続けるための肯定(“積極的”保留)。(ドイツ)
「自殺法 不支持」の意見
  • 自殺者が増えれば人口が減り、国が滅びる。
    社会に悪影響を与える可能性がある限り排除すべき。(フランス)
  • 国は国民に社会的規範となる義務を負う。
    人が忘れてはならない大切なこと「死は悼む(いたむ)もの」。
    だから、自殺を認めてはならない。(イギリス)

なるほど、各国に根ざしている考えが影響して様々な結論に。
興味深いですね。

日本が頼りないのが、なんとも情けない。
まあ、発信源である日本を、他国があまり責めないだけマシですか。

この展開だと、よくあるのは、日本の一地方自治体なのだから、日本がなんとかしろ。
でないと経済制裁加えるぞ、みたいな流れが多い(苦笑)。

日本政府が新域をコントロールできないことを責めないのは優しいというか、作品の本質がそこではなく、この次にある「善悪」を議論させたいのでしょう。

G7サミット アレックスの提案

バビロン 11話
TVアニメ『バビロン』公式HP「STORY第11話」より引用
あらすじ

アレックスは自殺法の是非の答えを出すには、「善悪」を議論することがよいのではと提案する。

もしかしたら、そう遠くはない将来、僕らの世界は一つの国家になるかもしれない。

その日までに、僕達は世界市民を説得できる普遍的な基準を見出さないといけない

そう、「善悪の基準」を。

by アメリカ合衆国大統領アレキサンダー・W・ウッド『バビロン』TVアニメ11話

「善悪」の線引きの方が難しい気がしますが、確かに「善悪」が判断できれば、自ずと自殺に対しても結論が出てくる。
#現実は、自殺を善悪で考えるものではないと思いますが

実際のG7サミットは、事務方が事前に調整をして、サミット当日は最終取りまとめ(決断)をする場である。

なので、議論をゼロからスタートすることはあり得ないと思うのですが、そこはフィクション。
こんな討議があったら面白いですね。

「大丈夫、僕らは国家の代表だ」というセリフ。
奥さんの言葉の受け売りで、根拠を何も説明してないが、なんだか心強い(笑)。

アレックスの提案に、各国首脳は呆然とするが、イギリス首相が口火を切る──

バビロン 11話
TVアニメ『バビロン』公式HP「STORY第11話」より引用

いいわ、話しましょう。

もしも今日、この場で善悪とは何かが分かるなら、現状を懸念することで一致するだけのいつものサミットより、遙かに有益と判断します

by イギリス首相 フローラ・ロウ『バビロン』TVアニメ11話

国という区分けを外し、議論を始める。

面白くなってきました!

Bパート

G7サミット 「善悪」とは?

あらすじ

G7サミット首脳陣は「善悪の基準」を見つける議論を始める。

今度は哲学ですか。
ここまで哲学的な議論をアニメで描くとは、これまた挑戦的ですね。

論理展開のポイントを取り上げていきます。

そう!それだよ、ルカ!

つまり、善悪というのは、人間が後から名付けただけってことさ。

by アメリカ合衆国大統領アレキサンダー・W・ウッド『バビロン』TVアニメ11話

動物に善悪という概念はない。
人間が後からその考えを作ったのだ。

人間が考えたことであればこそ、何か元となるもの、もしくは共通項を見つければ──

世界には異なる地域、人種、文化の数だけ、それこそ無数の善悪の基準が存在する

善を探すことはそれらに共通する項を探すことでもある。

by ドイツ首相 オットー・ヘリゲル『バビロン』TVアニメ11話

共通する項を探す前に、どうして無数も生まれてしまったのかの理由を知りたいとアレックスは言い出す。

この理由が興味深い。

無数の基準が生まれた理由
  1. 自然継承
    人類最初のコミュニティで生まれた道徳性が人類の広がりと共に継承された
    継承につれ道徳性は変化していくが共通項は残るはず
  2. 交流と洗練
    文化社会間の交流で、より良いものを選び取ってきた
    その過程で残るものが、ベストな選択として各地で採用され共通項に
  3. 最初から人類は普遍的な道徳性を持っている
    善悪の基準は人間に内在されていて、その部分が共通項

面白いですねー勉強になります!

しかし、アレックスは社会性や集団から善が生まれるのは、しっくりこないと言う。

善はもっと包括的なものというか、個人にも集団にも等しくかかってくるもので、個人の善と、集団の善がありつつ、どちらの利益にもなる。

そういう凄く便利な概念なんじゃないかな。

by アメリカ合衆国大統領アレキサンダー・W・ウッド『バビロン』TVアニメ11話

そんな便利なものがあれば、確かに知りたい(笑)。

G7サミット トロッコ問題

あらすじ

トロッコ問題で命の価値を計ることから善を導き出す。

ここでトロッコ問題が出てくるとは!

トロッコ問題とはアニメで説明された通り。
面白いのは、臓器クジと比較していること。

二つを比較することにより、一つの答えを導き出す。

どちらも一人を犠牲にして、5人を助けているのだが・・・

アクシデントへの対応では、一人の死  「止む得ない」

明瞭な意思を持って一人の犠牲  「罪深い」

「意思」と「手段」が、善悪の判断に影響している

アレックスは善悪の根っこを考えるには「生きるって何なのか?」と辿り着く

が、思考はそこで止められた・・・
何かトラブルが発生したのだ。

自殺サミット 齋がアレックスに呼びかける

バビロン 11話
TVアニメ『バビロン』公式HP「STORY第11話」より引用
あらすじ

新域で行われている「第一回自殺サミット」
会場である新域庁舎に自殺法を支持する市民が10万人以上集まっていた。

一人の少女が飛び降り自殺をしようとしているが、問題があると言う。

彼女は、まだ迷っている・・・

齋は、アメリカ大統領アレックスに少女と話をして欲しいと申し出る──

G7国の都市で自殺法導入を急がせ、G7サミットと同じ日程で自殺サミットを実施したのは、これが狙いか。

G7サミットと日程をぶつけるなどと茶番を仕掛け、メディアの注目を集める。
周到にも、G7参加国内の都市全てで自殺法を導入させ、その首長が参加させることでメディアが飛びつくようにした。

話題もあり、日本だけでなく、自分の国も関係あるのだと。

メディアが取り扱いが大きくなれば、自然と市民の注目も集まり、自殺法に賛同する人々が新域に集まってくる。
その中で、アメリカ大統領に自殺を迷っている少女と話して欲しいと要請する。

アメリカ大統領へ頼むロジックも明快だ。

新域を始めとする自殺法肯定派の意見は、自殺を勧めるのではないか懐疑的に思われてる。
だから、自殺法是非の結論を出してないアメリカ合衆国大統領の話なら聞くだろうという論法。

迷っている状態なのに屋上へ上げるのは非人道的。
#自殺をしやすくしています

それを”わざわざ”屋上まで上げてから、呼びかけているのは、時間がないこととメディアの注目を集めるには効果的。
芝居がかっているがなんとも小賢しい。

全てアメリカ合衆国大統領が逃げられないよう周到に準備されていたのだ

そして一番の懸念は、この少女はまさか・・・

バビロン 12話
TVアニメ『バビロン』公式HP「STORY第12話」より引用

おわりに (アニメ『バビロン』11話とは)

小説 『バビロン3 -終-』

とうとう話が哲学にまで及びました(笑)。

本作『バビロン』では序盤から主人公・正崎が考えていたのは「正義とは?」。
今回出てきてのは「善と悪」。

どうやら、本作は「正義とは何か」「善とは何か」を描こうとしているのが見えてきました。

「正義」「善」を考えさせるための、悪行や強烈な悪なのです。
平時で平穏だと、「正義」「善」についてなかなか真剣に考えられないですからね。

さあ次回はいよいよ最終回。
どう決着を付けるのか楽しみです!

以上、TVアニメ『バビロン』11話のレビューでした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。

12話のレビューも書いているので良かったご覧下さい。
ではでは。

きょうのひとこと

主役は正崎なんだよね?!(笑)

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