【文字数(本文):約1万文字(目安16分)】
こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『薬屋のひとりごと』第44話「砦」を鑑賞しました。
本レビューではアニメ感想だけではなく、原作・コミカライズ情報も加え、個人的な解釈による解説・考察をしています。
皆さんの理解の助けになり、作品をより楽しんで頂ければ幸いです。
今回アニメ化されたのは──
- 原作
-
4巻 14話「取引現場」終盤 ~ 17話「蟇盆」序盤まで
- コミック
-
17巻 68話「神美」 ~ 70話「砦の女達」中盤まで
今話の主なトピック (クリックすると該当項目へ)
- 翠苓の傷跡って・・・
- 子翠の正体知って、猫猫悔しがったのって・・・
- 神美って、猫猫のこと把握してなかった?
- 大宝と翠苓の関係
- 楼蘭は、なぜ子翠と名乗った?
(原作) 子翠という名を好きだけで使ったわけではない - なぜ羅漢は、壬氏のもとへもっと早く来なかった?
- なぜ羅門は、タイミング良く現れた?
- (考察) 翠苓が、猫猫を拉致した目的
※「(原作)」は、原作情報を根拠の中心にして考察しているトピック
今話で解決しなかった疑問
最下部「疑問点まとめ (Q&A一覧)」に記載
本レビューの方針
本レビューは、次話以降のネタバレなし
『薬屋のひとりごと』は、小説投稿サイト「小説家になろう」連載。
ライトノベルと、月刊誌2誌で別の漫画家によるコミカライズ2作品があります。
私は、ライトノベル、コミカライズ共に未読です。
アニメ鑑賞後、アニメ化済み時点までの部分を読み、レビューを作成します。
アニメ鑑賞
+
コミカライズ、ライトノベルを読み
知り得た情報を加味して「感想・解説・考察」
よって、次話以降のネタバレはなしなのでご安心ください。
なお、原作ライトノベル、コミカライズの情報は、「原作情報」として区別できるよう記載します。
- 「ヒーロー文庫」のライトノベルを ── 原作
- 「月刊サンデーGX」連載のコミカライズを ── コミック

こんな感じです
緑系の色を目印にしてね!
引用部分も次のように緑系をワンポイントに ──
宦官が驚いた表情で猫猫を見るが、そんなの関係なかった。
引出しの見出しを眺め、珍しい薬を見つけるなり踊るような奇妙な動きをしてしまう。喜びがあふれ出て、頭の中に納まりきれなかった。
「なんかの呪いか、なにかか?」四半時、そんなことを繰り返したところだった。
by 『薬屋のひとりごと』原作1巻
いつのまにか現れた壬氏が奇異の目で踊る猫猫を見ていた。
コミカライズは、別の漫画家による2作品が刊行されています。
- 「月刊ビッグガンガン」連載の「薬屋のひとりごと」
- 「月刊サンデーGX」連載の「薬屋のひとりごと〜猫猫の後宮謎解き手帳〜」
両方読んでいますが、本サイトでは、アニメの補完となると情報の多い➋を選択しました。
「コミック」として紹介する情報は基本➋です。
が、今後も両方読んでいくので、➊にしかない情報があれば、その時は注釈を付けて紹介します。

同じ内容なのに、2つも読むんだ・・・

その方が、理解が深まるんだよ
ちなみに、考察や疑問はオレンジ系。
補足や余談、参考情報はブルー系に色分けしているので、読む際に目安にして下さい。
2期 全24話 各話リスト
話数 | サブタイトル | コミック | 原作 |
第37話 | 湯殿 | 14巻 | 4巻 |
第38話 | 踊る幽霊 | ||
第39話 | 氷菓 | ||
15巻 | |||
第40話 | 巣食う悪意 | ||
第41話 | 狐の里 | ||
16巻 | |||
第42話 | 鬼灯 | ||
第43話 | 祭り | ||
17巻 | |||
第44話 | 砦 | ||
第45話 | |||
第46話 | |||
第47話 | |||
第48話 |
※話数:リンクは各話レビューへ
※サブタイトル:ネタバレを避けるため次話以降はマスク
はじめに
秘薬の実験が行われていると思われる倉庫に忍び込んだ猫猫は、飛発の工房を見つけてしまい、更に里長・神美に見つかってしまう。
楼蘭の機転で鞭打ちは免れたが、堅牢な砦へと連れて行かれることに・・・。
昨日の敵は、明日の部下!?
子昌の謀反、楼蘭の行方追うのは建前に過ぎず。
一人の娘の為に国を動かす。
大切な人を救うためなら、頭を下げることも、軍を動かすことも厭わず。(と言いながら実は一石三鳥(笑))
理由を固め、外堀を埋め、微動だにしなかった大山刺激する。
海老で鯛を釣る・・・いや、猫で華瑞月を目覚めさせる!?
もしかして、子翠と翠苓が猫猫をさらったのもこのため?

えっ、どういうこと?

追い追い説明するね!
では、今話を振り返っていきましょう。
感想&考察レビュー 第44話「砦」
神美と翠苓と楼蘭
秘薬の実験が行われていると思われる倉庫に忍び込んだ猫猫は、飛発の工房を見てしまい、更に里長・神美に見つかってしまう。
折檻の跡
ネズミくらい、ちゃんと管理しなさい。
by 神美『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
理由も聞かず、いきなり翠苓を叩く神美。
原作によると、神美は手にしていた団扇で翠苓を叩いたようです。
あの翠苓が大人しくなるどころか、震える!?
つまり、普段から神美は、こうして暴力を振るっているのでしょう。
そういえば・・・。
酷い折檻を受けたようで、体の左側が痺れているとのことです。
体中に傷があって、肌を見せたがらないとか。
by 高順『薬屋のひとりごと』TVアニメ第38話
翠苓の体には折檻の跡があると語られていました。
てっきり、任務中に受けた傷か、肌を見せたくないための偽装かと思っていましたが・・・。
神美に折檻された跡の可能性が高いですね。
本当に折檻を受けていたのです。

あっ、そういうことか…
ひどいね…
神美

じゃあ、その娘を鞭打ちにしましょう。
by 神美『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
100回も叩けば十分かしら?
今日は天気が良いので外でお茶会でもしましょうか、というくらいの軽さで猫猫を鞭打ちにすると言う里長・神美。
これはいかん、この女は危ない。
勝手に忍び込み、飛発を見てしまった。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
折檻と称して始末されるのがオチだ。
「この女は危ない」とは ──
人の命、特に下賎の命など何とも思っていないタイプということでしょう。
猫猫は、飛発の工房を見てしまったのです。
その上、里親・神美が特使の姶良と一緒にいるところまで・・・。
二人がごまかし、猫猫がどれだけとぼけても、特使の姶良が猫猫を見たことがあるのでバレるだろうと心配しましたが・・・。

ですが、あの時の猫猫はソバカスを消し化粧をしていたので同一人物とは気づいていないのでしょう。
猫猫は、折檻と称して口封じされてしまう(殺されてしまう)と感じたのでしょう。
翠苓が止めようとするが、神美は全く聞く耳を持たず。
後の流れから、神美は翠苓を奴隷ぐらいにしか思っていないのでしょう・・・。
そこへ助け船を出したのが ──
子翠の正体
お母様、以前仰っていたでしょう。
新しい薬師が欲しいと。この娘がそうです。
by 楼蘭『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
普段とはまるで違う装いの子翠 ──
いや、これが本来の姿なのでしょう。
子翠の正体は、楼蘭妃だった。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
とんだ役者、いや、まるでタヌキのようだ。
子翠は、楼蘭妃だったのです。

そうか、子翠は楼蘭妃だったのかーー(棒)

棒読み・・・
猫猫は、子翠の言動から育ちの良さを感じ取っていました。
猫猫が(楼蘭妃ではなく)子翠と初めて出会ったのは、毛毛を見つけたとき。
次に会ったのはキャラバン。
同じジャスミン茶を買おうとして、結局猫猫が買い、医局で小蘭と子翠と一緒に飲みました。
この時、子翠は一介の下女が手に入れられないような紙に虫の絵を何枚も描き、猫猫から譲ってもらったジャスミン茶を返していました。
要するに ──
子翠は登場当初から、下女らしからぬ高貴な振る舞いを見せていたのです。
後宮の北側で会った時も、図鑑を読んだことがあると言い、立派な虫かごまで持っていました。
奴隷制や皇太后のことにも詳しく、仕事はいつしているのかと思う程の風来坊で神出鬼没(笑)。
極めつけは、子翠という名前。
そして横顔に見覚えを感じたこと。(34話 )

うすうす感じてはいたが・・・。
虫好きで、ちょっと変わっていて、噂話に花を咲かせる普通の子。
見事、子翠に化かされていたというわけか。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
猫猫も、うすうす気づいていたのです。
でも、ここで一番私が注目したいのは ──
猫猫が子翠に騙されていたことにショックを受けている点です。

えっ、それって普通の反応じゃない?
そうでしょうか?
猫猫は、物事を損得で考える傾向があります。
立場上、上級妃が自由に動き回るのは難しい。
だから子翠が身分を隠して後宮を歩き回っていたのは、猫猫なら想像できるはず。
普段の猫猫なら、事実を淡々と受け入れて終わりだったのではないでしょうか。

(たとえば)上級妃の気まぐれに付き合わされたとか

あっ、確かに・・・そうかも?
そんな思考をする猫猫なのに、今回は少し悔しそう、残念そうに見えるのは気のせいではないですよね。
はい。
猫猫自身は気づいていませんが、子翠に特別な感情を持っていたのです。
猫猫は、愛情を知りません。
と自分では思っています。(18話 )
でも、友情や愛情といった感情を、実はもう持っている。
そんなことを示すシーンだと私は捉えました。



子翠(楼蘭)視点

四夫人に特別授業をした時、派手な装いで無表情なまま授業を聞いていた。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
猫猫が楼蘭妃を初めて見たのは猫猫教室、いや後宮教室の時。
逆に楼蘭妃の視点で考えると、この時に猫猫の存在を知った(記憶した)のでしょう。
そういえば、講義が終わった後、楼蘭妃は猫猫(と壬氏)をじっと見つめていましたね・・・。(14話 )
下記ショート動画の最後
今思い返すと、この後宮教室の時点で、楼蘭は猫猫に興味を持ったのかものかもしれません。
面白い女がいる、と(笑)。
もっと言うと ──
当たっているとネタバレになってしまうので隠しておきます。気にならない方だけご覧下さい。
続きを読む (クリックして下さい)
楼蘭は、壬氏と親しげに話す猫猫に興味を持ったのではないでしょうか。(後述)

えっ、じゃあ子翠(楼蘭)は、わざと猫猫に近づいたってこと!?

そこまでは断言できないけど…
子猫の毛毛がきっかけで猫猫に出会ったのは偶然でしょう。

ただ、このとき猫猫は楼蘭妃の正体に気づいていませんでした。
それなら、猫猫と直接話せると考えたのではないでしょうか。
でも、さすがに(楼蘭妃を何度も見ている)玉葉妃や紅娘には近づけない。
そこで、(何らかの情報を得て)猫猫と仲の良い小蘭 ── つまり洗濯係に成りすまして、猫猫に接触したのではないでしょうか。

おお~~~
でも、なんで猫猫に近づいたの?

それは後ほど!
翠苓と子翠
ここまでお前を連れてくるつもりはなかった。
by 翠苓『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
「ここまで」とは、砦のことを指しているのでしょう。
このセリフから分かるのは、翠苓の計画は猫猫を隠れ里まで連れてくることだったということ。
子翠(楼蘭)は、猫猫を鞭打ちから守るために「新しい薬師」だと(ウソの)紹介をしたのでしょう。
猫猫が神美に見つかったのは、完全に(運の悪い)偶然。
好奇心に負けて倉庫に入った猫猫が見つかり、そのまま砦へ連れて行かれる展開になりました。
神美が猫猫を砦へ連れて行く判断をしたのは、猫猫が不老薬を開発するために連れてこられた薬師と説明されたからです。
ここまでの流れを整理すると ──
- 神美は猫猫のことを知らない
- つまり、猫猫拉致は神美の指示ではない
- では、拉致は子昌の指示だった?
- もし子昌の指示なら、神美に伝えるはず?
- よって、猫猫拉致は翠苓か子翠(楼蘭) or 二人の考え?
と、猫猫を拉致したのは、翠苓か子翠(楼蘭)、あるいは二人の判断だったと考えられます。
また、翠苓が猫猫を砦まで連れてくるつもりがなかったのなら、「不老薬」を作らせる予定もなかったのでしょう。
だから ──
楼蘭様がああ言った手前、調薬の真似事はしておいてくれ。
by 翠苓『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
という言葉に繋がったのでしょう
ただ、そうなると「なぜ猫猫を拉致したのか」という根本的な理由が、まだはっきりしないまま・・・。

猫猫が拉致された目的については、後ほど考察します!
異母姉妹
子翠とは、異母姉妹ですか。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
また一つ謎が明らかになりました。
翠苓と子翠は異母姉妹。
壬氏の推測を聞いていると、翠苓は消息不明の大宝の娘だという流れだと思っていました。(42話 )
ですが ──
時を経て、下賜という形で戻ってきた時には、父のそばに私の母と私がいた。
神美様は、母と私を屋敷から追い出し、使用人としてこき使った。
by 翠苓『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
大宝は先帝のお手つきとなったため、後宮から出ることができませんでした。
つまり、子昌のそばにいた翠苓の母は大宝ではありません。
大宝と翠苓の母は別人です。

まあ、翠苓が帝と同世代には見えなかったので当然か(苦笑)
その後、子昌と神美が結婚し、二人の間に生まれたのが楼蘭。
翠苓と楼蘭は父(子昌)が同じ異母姉妹ということになります。
ただ、そうなると ──
翠苓が大宝のお墓参りをしていた理由は何だったのでしょう?

まだ何か足りない・・・
そして、後宮を追放された医官と大宝の娘は今どこにいるのでしょうか?
後宮を追放された医官と女児は誰? 今どこに?
翠苓が大宝の娘でないなら、なぜ大宝の墓参りをした?
翠苓の本当の名
もしかして子翠というのは・・・。
── ああ、元は私の名前だ。楼蘭は、その名前を気に入っているようですね。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
下女として偽名を使うなら、もっと違う名を選べばよかったのに。
原作によると ──
神美は、幼い翠苓を母とともに屋敷から追い出し、使用人のようにこき使った。そしてその名前すら奪い取り、生まれた自分の子の幼名として扱った。まるで、あてつけのように。
by 『薬屋のひとりごと』原作4巻
なんと、「子翠」という名前は楼蘭の幼名として使われていたのです。
自分の娘にその名を与えることで、翠苓から本当の意味で名前を奪ったわけです。
だから、翠苓にとって「元は私の名前」だったのです。
楼蘭は偽名として「子翠」を使ったのではなく、気に入っていた幼名をそのまま使ったのです。
それにしても、翠苓母子を屋敷から追い出すだけでなく、名前まで奪うなんて・・・本当にひどい話です。
子一族の名前を名乗らせたくない気持ちは分かります。
女性であっても、長子の座を自分が産んだ子以外に奪われるのは許せなかったのでしょう。
でも、それなら追い出すだけで十分なはず。
なぜ、わざわざ自分の手元に置いていびり続けているのでしょうか・・・。
婚約者である子昌を取られたから?
いいえ、自分の方が先に後宮に入ったのだし、そんなことを気にするタイプには見えません(苦笑)。
汚らわしい。
お前も、あの女も!産まれるべきではなかったのよ!
by 神美『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
どちらかと言えば、翠苓よりもその母親に向けた言葉ですね。
「汚らわしい」とは、血筋のことを指しているのでしょうか・・・。
そして、この関係を子昌自身はどう思っているのでしょうか・・・。
神美は、翠苓とその母をなぜここまで憎む?
壬氏の正体
後宮に出入り自由な男子は、帝かその縁者のみ。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
帝に近しい男子は、皇弟しかいない。
そこまで分かっていて、なぜ壬氏様=帝弟だと気づかないのでしょう(苦笑)。
いや、その可能性も考えたが、年齢が違う。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
なるほど。
年齢が違うから、別人だと思っていたわけですね。
帝弟の年齢は数えで19歳。
壬氏の年齢は現在、数えで25歳。
6歳も差があるから、違うと判断したのです・・・。
って、そんなことあるか~~い!
猫猫さん程の聡い方が、壬氏が年齢を偽っているとは考えず、なぜ偽宦官として後宮に入り込むという不可能な方向への推理に走る!?
実際、宦官・壬氏が年齢を偽っているのは、帝弟と同一人物だと気づかせないための策でしょう。
その策略にまんまと引っかかっている?
いや違うでしょう。
単純に、信じたくない。
これ以上、自分の立場を複雑、いや危なくしたくない。
そんな心理状態から、思考停止していると見ています(笑)。
もしかすると ──
壬氏が手の届かない存在であってほしくない、なんて思っているなら、それはそれで猫猫さんの見方が変わるんですけどねぇ~。

それいい!

まあ、今の猫猫さんにはまだ早いかな…
羅漢と羅門と羅半
その頃、後宮では羅半がここ数年にわたる金銭の流れと、その行き先を突き止めていた。
機は熟した
子昌が治める北方の砦が拡張されている。
── 元は放棄された砦でした。拡張工事についての届けは出されていません。
つまり、謀反、だな。
by 壬氏『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
ちょうど同じ頃、金の流れを追っていた羅半は、子昌が北方の砦を拡張している事実を突き止めます。
その直後、羅漢が乱入 ──
軍師殿の娘かわいさを思えば、来るのが遅かったくらいだ。
by 壬氏『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
その通りです。
羅漢は、猫猫が行方不明と知ると、後宮に殴り込もうとしました。(42話 )
結果、後宮には入れなかったのでしょう(苦笑)。
ただ、壬氏の執務室は後宮内ではなく外廷にあります。
羅漢は、いつでも壬氏のもとに来れたはず。
それでも、実際に来たのは義理の息子である羅半だけでした。
理由は、もうお分かりですよね。
あの時点で壬氏のところに乗り込んでも、文句を言うことしかできず、具体的な対策は取れませんでした。
では、なぜ今になって乗り込んできたのか。
子昌が謀反を企てていると分かり、何をしようとしているかも明らかになったからですね。
おそらく、猫猫もそこに連れて行かれたと考えたのでしょう。
機は熟した ──
だからこそ、羅漢は動いたのです。
このあたりは原作でも描かれています。
嫌味ならいくらでも聞こう。それが壬氏の責任だ。ただ、相手がそれだけの理由でここまで来るとは思えない。
by 『薬屋のひとりごと』原作4巻
壬氏も、軍師である羅漢がここまで来た本当の目的を探っていたのです。
羅門と羅漢
── 半端な宦官野郎のままで、何ができるというんです!
悪かったねえ。
by 羅門『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
お前がそんな風に思っているとは、思わなかったよ。
ここで叔父貴、羅門が登場!
義理父が壬氏に食ってかかると予想し、羅半が高順に頼んで早馬で羅門を呼びに行かせたのでしょう。

だとしても早っ!

だね(苦笑)
一方、羅門は到着してすぐに状況を把握します。
羅漢が文句を言うだけのために壬氏のもとへ来たのではない、と。
だからこそ、促したのでしょう ──
喧嘩になる前に、ちゃんと礼をもって伝えるべきことがあるんじゃないかね?
by 羅門『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
挙兵
お願いに参りました。
逆賊、子昌を討つべく、軍を動かして頂きたいと。
by 羅漢『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
羅漢は、壬氏の正体を知っています。
正確に言うと、気づいている、という感じでしょうか。

── “あなた様”に逆らえる者など、片手の指ほども存在しない。
やはり、俺の正体に気づいている。
by 壬氏『薬屋のひとりごと』TVアニメ第18話
「片手の指ほども存在しない」とは5人もいないという意味ですね。
壬氏の正体は帝弟。
実際、帝弟に逆らえるのは現帝と皇太后くらいでしょう。
羅漢は壬氏の正体が分かっているのです。
子一族は国の建国にも貢献した名門。
その一族を討つには、普通の兵では筋が通りません。
帝直轄の禁軍を動かす必要があります。
それに、子昌の軍は強力。
西方の新型兵器・飛発も用意しています。
羅漢が動かせる軍では到底太刀打ちできず、少なくとも時間がかかるはず。
それでは猫猫を救うのに間に合わない。
一日でも早く娘を助け出したい。(恐らくこれが一番の目的(笑))
飛発を使った帝弟暗殺未遂。
上級妃・楼蘭の逃亡。
加えて、謀反の証拠も揃っています。
挙兵する理由も証拠も十分。
まさに、機は熟したのです。
月の君
いつまで、仮初めの姿で欺き続けるつもりですか?
壬氏様、いえ、月の君。
by 羅漢『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
あの羅漢が礼を尽くし、両膝をついて頭を下げ、口にしたのは「挙兵」と「月の君」という言葉。
誰も驚いていない様子から、皆が「子昌を討つべき」と考えていることがうかがえます。
高順などは、帝弟として壬氏が立ち上がってくれることに内心小躍りしているかもしれません(笑)。
また、「月の君」と聞いても羅門も羅半も驚いていません。
彼らも壬氏の正体に気づいていたのでしょう。

おお、そういうことか~!
盛り上がってきた~~!
しかし、少し冷静に考えてみると、面白いことに気づきます。
この男たち、特に壬氏と羅漢は、子昌のことはあまり重要視していません。
二人の頭にあるのは猫猫のことだけです(笑)。
言い換えれば、猫猫を助け出すために、帝直属の禁軍を動かそうとしているのです。

えっ、あっ、そういうこと!?
でも、子昌が謀反を起こすんだよね・・・
その通り!
子昌は謀反を企てており、その前には帝弟暗殺計画もありました。
娘の楼蘭は上級妃でありながら、許可なく後宮を出ています。
これだけでも、帝に対する反抗は十分です。
ですが、何かおかしくありませんか?
誰も「子昌がなぜ謀反を起こそうとしているのか」という理由を探ろうとしていません。
子昌は子一族で、今でも茘国で絶大な地位を持っています。
後宮が少しずつ変わってきているとはいえ、上級妃を送り込んで安泰なはずです。
本来、子昌が謀反を起こす理由は見当たりません。
謀反を企てているのは子昌ではなく、妻の神美や特使を送った西方なのかもしれません。
だとすれば、これは子一族の問題であり、子昌にも交渉の余地があるはずです。
話が逸れました。
戦争を避けるために子昌と一度話すべきだ、と言いたいのではありません。。
私が言いたいのは ──
ここにいる者たちは、子昌がなぜ謀反を起こそうとしているのかには興味がなく、子昌を討つための理由付けばかり気にしている、ということです。
そして、その中心にいるのが、一介の女官・猫猫なのです。
はい、先ほども述べた通り──
壬氏と羅漢にとって、子昌のことは二の次で、猫猫を助けることが最優先なのです。
国を動かし、最大勢力である子一族を討つ。
とても大きな話になっていますが、実は「一人の女性を救出するため」の話なのです。
こう考えていくと、さらに面白いことに気づきました。
当たっているとネタバレになってしまうので隠しておきます。気にならない方だけご覧下さい。
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翠苓と子翠(楼蘭)の目的も、同じなのではないかと。
子翠(楼蘭)はこう言いました ──
人形のままでいても、お母様を止めることはできない。
by 楼蘭『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
つまり、何か行動を起こさなければ母を止めることはできない、と。
しかし、普通の戦力では子一族に勝てません。
国を挙げての兵を動かす必要があります。
そのために、上級妃が勝手に後宮を抜け出すという重罪を犯し、子一族に注目を集めたのでしょう。
それでも足りない、あるいは時間がかかると感じて、さらに策を講じたのだと思います。
それが、猫猫です。
猫猫は軍師・羅漢の娘であり、羅漢は娘を溺愛しています。
猫猫を連れ去れば、羅漢は必ず追ってくる、と。
猫猫自身もこう考えています ──
この二人はなぜ私を後宮から連れ出したんだろう。
もしかして、あの男の牽制に使うつもりか?だとすれば、碌なことにならない気がする・・・。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第41話
もし羅漢を抑えるために猫猫を拉致したのだとしたら、逆効果になると猫猫は想像しています。
実際、羅漢は暴走し、羅半が子昌の謀反を暴きました。
むしろ、翠苓と子翠(楼蘭)をそれを狙っていたのかもしれません。
それだけではありません。
帝弟である壬氏も猫猫を大切に思っています。
理由までは分かってないかもしれませんが、1期で壬氏の命が狙われた際、壬氏は人目もはばからず猫猫を抱えるのは見ています。
楼蘭妃と翠苓の情報網を使えば、壬氏が猫猫を大切にしていることに気づいたのではないでしょうか。
そういえば・・・。
そういえば、猫猫って、壬氏様とよく一緒に・・・。
by 子翠『薬屋のひとりごと』TVアニメ第37話
このセリフは、子翠が、猫猫に壬氏のことを探っていたようにも見えますね。
そう考えると、猫猫を拉致すれば羅漢だけでなく、帝弟である壬氏も動く可能性があるのです。
一石二鳥、いや、一猫で二大物を動かす!(笑)
この推測が正しければ、猫猫を傷つける必要はありません。
攻めてきてほしい、あるいは子昌の企みに注目させて攻め込んでくるまで猫猫を囲っておけばいいのです。
だとしたら ──
ここまでお前を連れてくるつもりはなかった。
by 翠苓『薬屋のひとりごと』TVアニメ第44話
砦まで連れてくる必要はなく、かといって猫猫に何かさせるわけでもない、ゆるい対応にも納得がいきます。
(壬氏が挙兵すれば)翠苓たちにとっての猫猫の役割は、すでに果たされているのです。
ここまで考えていくと、子翠(楼蘭)の考えも少し見えてきます。
私はてっきり、子翠(楼蘭)は戦が起きる前に後宮を抜け出したのだと思っていました。
自分の身を守るために・・・。
残された侍女たちは、楼蘭を逃がしたことで大罪に問われるでしょう。
子翠(桜蘭)は仲間に対してなんて酷いことをするのだろう、と。
しかし、今話ここまで考察を進めると、別の思いが見えてきます。
楼蘭は自ら囮役になったのではないでしょうか。
(自分自身がエサ=子昌を追求する罪となって注目を集めた)
上級妃が無断で後宮を抜け出せば大罪です。
抜け出した元上級妃を追いかけてくるでしょう。
今話でもありましたが、砦にいる子一族は主犯として女子供も処刑される可能性があります。
しかし、後宮に残った侍女は処罰は受けるでしょうが、命までは取られないかもしれません。
むしろ、後宮に残った方が救われるのです。
そんな優しさを感じてしまうのは、私が子翠に情を持っているからでしょうか・・・。
さて、長々と私の妄想にお付き合いいただき、ありがとうございます。

えっ、妄想だったの!?
いや~、だって根本的なことがまだ分からないんですよね・・・。
猫猫が拉致されたのは、偶然診療所に行ったからです。
翠苓と子翠が、最初から猫猫を拉致しようとしていたとは考えにくいのです。

あっ、そうじゃん!

そこがクリアできれば、あとは繋がるんだけどね…
それに、子昌が謀反を起こす理由が今一つ分かりません。
百歩譲って帝弟暗殺を企てるのは理解できます。
自分の娘が産む男児を帝にする可能性を高められますからね。
でも、謀反を起こして現在の帝を仮に倒したとして、その後どうするつもりなのでしょうか?
まあ、国母の血を引く自分たちが国のトップに立つべきだ、という考えなのかもしれませんが・・・。
だとしたら、これまでご先祖様が何十年、何百年とかけてきた静かな侵略を台無しにしてしまうことになります。
そんな手を、本気で考えているのでしょうか?
おわりに (『薬屋のひとりごと』44話とは)
いや~~壬氏が「月の君」として立ち上がる展開、どこかで来るだろうとは思っていました。
が、その背中を押すのが羅漢だなんて予想外でした!
羅漢と壬氏はこれまでずっと対立してきました。
壬氏も羅漢のことを敬遠していましたよね。
羅漢はこれまで壬氏といがみ合ってきて、壬氏も羅漢を煙たがっていました。
そんな羅漢が、娘のためとはいえ壬氏──いや、帝弟に助けを求める。
胸が熱くなる展開です!

すっごい良かった、このシーン!
ここまで来たら、さすがに壬氏様も立ち上がるしかないですよね(笑)。
ついに猫猫の悠々自適ライフは崩れる・・・、いや違います(苦笑)。
冷酷非道な女・神美の王国と野望は打ち砕かれるか~~。
以上、TVアニメ『薬屋のひとりごと』第44話の感想&考察レビューでした。
長文にもかかわらず、最後まで読んで頂きありがとうございます。
次話のレビューも書く予定です。
良かったらまたお越し下さい。
最新情報はX(@toki23_a)にて!
ではでは。
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疑問点 まとめ(Q&A一覧)
この章では、疑問点をまとめていきます。
- 今話で発生し解決した疑問は、本文で解説して本章(ここ)でまとめ
- 今話で解決しなかった疑問を、疑問XX-XX(話数-通し番号)として記録
⇒ 本章(ここ)でまとめ - 答えは、推測ではなくできるだけ(原作含む)作品内で明らかになった事実を記載
※推測が入る場合は、断りを入れる
⇒ 解決した疑問は、次話で削除
今話で解決した疑問 (クリックすると答えが表示されます)
今話で新たに発生し、解決しなかった疑問
- 疑問 44-01 翠苓が大宝の娘でないなら、なぜ大宝の墓参りをした?
- 疑問 44-02 神美は、翠苓とその母をなぜここまで憎む?
残っている疑問 (クリックすると表示されます)
- 疑問 02-01 壬氏は、後宮管理者なのに、なぜ後宮の外まで判断を求められている?
- 疑問 02-02 水差しの弁償、仕送りから引いたのは期間限定?
- 疑問 02-03 結局、秘薬は何の為だったの?
- 疑問 03-01 西都の玉葉妃が、異国の姫とは?
- 疑問 05-01 粉を染み込ませた木簡は、誰が何に使っているのか?
- 疑問 05-01 簪(かんざし)を渡す意味は?
- 疑問 06-01 園遊会で、なぜ壬氏は違うカンザシを挿し、襟が乱れていたのか?
- 疑問 09-01 壬氏と亡くなった武人・浩然との関係は?
- 疑問 10-01 後宮内の事件に最終判断を下しているのは誰?
- 疑問 10-03 現帝の東宮時代、妃はなぜ一人しかいなかったのか?
- 疑問 11-01 阿多妃を南の離宮に住ませるのは、帝の愛着か、それとも・・・
- 疑問 11-02 阿多妃の子は生きているのか?
- 疑問 12-01 やり手婆は、なぜ猫猫を妓女にしたい?
- 疑問 13-01 壬氏は、帝に何を頼まれたのか?
- 疑問 14-02 爆発現場にあった上等なキセルは、倉庫番のもの?
- 疑問 15-01 馬閃は、なぜ猫猫を嫌っている?
- 疑問 17-01 壬氏は、なぜ変装しなくてはならない?
- 疑問 17-02 壬氏は宦官なのに、なぜ武官のような野営を知っている?
- 疑問 18-02 使い物にならない妓女を、やり手婆はなぜ離れに住まわせている?
- 疑問 19-03 「何か起こったあとでは遅い」猫猫は、過去にどんな経験をしたのか?
- 疑問 19-04 羅漢は、猫猫を抱きかかえる壬氏を見て、なぜあれほど驚いた?
- 疑問 20-01 なぜ翠苓のことを秘密裏に終わらせた?
- 疑問 20-02 壬氏は、なぜ身分を隠し、後宮管理者として生活している?
- 疑問 21-01 やぶ医者より先に後宮へ来た姉は、今どこにいる?
- 疑問 21-02 先の皇太后は、なぜ木の伐採に制限をかけた?
- 疑問 22-01 猫猫は、なぜ爪紅を流行らせた?
- 疑問 23-01 賭け対象にした「妓女の身請け」の狙いは?
- 疑問 23-02 羅漢に届いた文と巾着、誰が開いたのか?
- 疑問 26-02 キャラバンは、なぜ妊婦に影響のある香油と香辛料ばかり売っていた?
- 疑問 27-01 結局、玉葉妃に毒を盛ったのは誰?
- 疑問 28-01 異国の特使は、なぜ上級妃4人に鏡を献上した?
- 疑問 29-01 異国の特使は何を企んでいる?
- 疑問 30-01 杏に香油から堕胎剤の作り方を、誰が教えた?
- 疑問 31-02 先帝が壬氏に渡そうとした石は何?
- 疑問 31-03 国母が来たのはいつ頃?
- 疑問 31-04 帝は、なぜ”選択の廟”を解いておきたかった?
- 疑問 31-05 壬氏は、なぜ”選択の廟”で真剣な顔をしていた?
- 疑問 32-01 皇太后は、なぜ診療所に?
- 疑問 33-01 後宮を追放された医官と女児は誰? 今どこに?
- 疑問 39-01 氷の代わりにアイスを献上して、楼蘭妃は問題なかったか?
- 疑問 40-01 帝の子を産み育てる、という点に於いての後宮の問題点とは?
- 疑問 40-02 深緑たちが恨む一番の対象は皇太后では?
- 疑問 41-01 壬氏は、子翠の名を聞いて何に気付いた?
- 疑問 41-02 翠苓は、なぜ後宮の外に繋がる抜け道を知っていた?
- 疑問 41-03 翠苓がここまでヘビを怖がるのはなぜ?
- 疑問 41-04 抜け道があるのに、なぜ翠苓は宦官のフリをして後宮に入ってきた?
- 疑問 42-01 翠苓は他の宦官と馴染まずにいたのに、なぜ子翠は猫猫、小蘭と親しくした?
- 疑問 42-02 子昌は、なぜ娘を後宮に入内させた?楼蘭は納得していた?
- 疑問 43-01 子翠は、なぜ鬼灯を食べる?
- 疑問 43-02 子翠の面は、なぜ緑?
- 疑問 43-03 「虫は冬を越せない、ただ子を残すのみ」とは?

1期の残が多いので、時間あるときに整理します
今週のX感想ポスト
#薬屋のひとりごと 44話
— 時文@ここアニ(『薬屋』『小市民』レビュー中) (@toki23_a) May 31, 2025
昨日の敵は明日の部下
子昌楼蘭は建前に過ぎず
一人の娘の為に国を動かす😭
愛娘救う為なら、頭下げるも軍動かすのも厭わず(実は一石三鳥)。理由固め外堀埋め、微動だにしなかった大山刺激する
海老で鯛を…いや猫で華瑞月を起こす!?
子翠&翠苓が猫猫攫った理由もこれか!?🤔
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アニメ『薬屋のひとりごと』次話のレビューはこちら!
