【文字数(本文):約1万1千文字(目安18分)】
こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『薬屋のひとりごと』第33話「先帝」を鑑賞しました。
本レビューではアニメ感想だけではなく、原作・コミカライズ情報も加え、個人的な解釈による解説・考察をしています。
皆さんの理解の助けになり、作品をより楽しんで頂ければ幸いです。
今回アニメ化されたのは──
- 原作
-
3巻 14話「先帝」中盤 ~ 最後まで
- コミック
-
11巻 45話「先帝」中盤 ~ 12巻 47話「黄衣の女」まで
今話の主なトピック (クリックすると該当項目へ)
今話で解決しなかった疑問
最下部「疑問点まとめ (Q&A一覧)」に記載
本レビューの方針
本レビューは、次話以降のネタバレなし
『薬屋のひとりごと』は、小説投稿サイト「小説家になろう」連載。
ライトノベルと、月刊誌2誌で別の漫画家によるコミカライズ2作品があります。
私は、ライトノベル、コミカライズ共に未読です。
アニメ鑑賞後、アニメ化済み時点までの部分を読み、レビューを作成します。
アニメ鑑賞
+
コミカライズ、ライトノベルを読み
知り得た情報を加味して「感想・解説・考察」
よって、次話以降のネタバレはなしなのでご安心ください。
なお、原作ライトノベル、コミカライズの情報は、「原作情報」として区別できるよう記載します。
- 「ヒーロー文庫」のライトノベルを ── 原作
- 「月刊サンデーGX」連載のコミカライズを ── コミック

こんな感じです
緑系の色を目印にしてね!
引用部分も次のように緑系をワンポイントに ──
宦官が驚いた表情で猫猫を見るが、そんなの関係なかった。
引出しの見出しを眺め、珍しい薬を見つけるなり踊るような奇妙な動きをしてしまう。喜びがあふれ出て、頭の中に納まりきれなかった。
「なんかの呪いか、なにかか?」四半時、そんなことを繰り返したところだった。
by 『薬屋のひとりごと』原作1巻
いつのまにか現れた壬氏が奇異の目で踊る猫猫を見ていた。
コミカライズは、別の漫画家による2作品が刊行されています。
- 「月刊ビッグガンガン」連載の「薬屋のひとりごと」
- 「月刊サンデーGX」連載の「薬屋のひとりごと〜猫猫の後宮謎解き手帳〜」
両方読んでいますが、本サイトでは、アニメの補完となると情報の多い➋を選択しました。
「コミック」として紹介する情報は基本➋です。
が、今後も両方読んでいくので、➊にしかない情報があれば、その時は注釈を付けて紹介します。

同じ内容なのに、2つも読むんだ・・・

その方が、理解が深まるんだよ
ちなみに、考察や疑問はオレンジ系。
補足や余談、参考情報はブルー系に色分けしているので、読む際に目安にして下さい。
2期 全24話 各話リスト
話数 | サブタイトル | コミック | 原作 |
第25話 | 猫猫と毛毛 | 8巻 | 3巻 |
第26話 | 隊商 | ||
第27話 | 冬人夏草 | 9巻 | |
第28話 | 鏡 | ||
第29話 | 月精 | ||
10巻 | |||
第30話 | みたび、水晶宮 | ||
第31話 | 選択の廟 | 11巻 | |
第32話 | 皇太后 | ||
第33話 | 先帝 | ||
12巻 | |||
第34話 | |||
第35話 | |||
第36話 |
※話数:リンクは各話レビューへ
※サブタイトル:ネタバレを避けるため次話以降はマスク
はじめに
皇太后から呪いの調査を依頼された猫猫は、壬氏の屋敷で手がかりを見つける。
翌日、先帝の部屋に入り調査を始めると、猫猫はある物を見つける・・・。
1枚剥がせば別の顔、過去を覗けば裏の顔。
幼き頃は純真でも、欲望渦巻く後宮という環境が人の心を押し込め狂わせる。
何が被害で犯罪か、誰が悪人で善人か。
これがこの後宮での常識で、それだけに純粋無垢なものが眩しく見えるのでしょうか・・・。
それにしても・・・。
皇太后様、矢継ぎ早に重要な事をサラッと言ってたような・・・。
では、今話を振り返っていきましょう。
感想&考察レビュー 第33話「先帝」
壬氏邸
皇太后から依頼された呪いの調査に向け、猫猫は久しぶりに壬氏の屋敷に泊まることになった。
壬氏邸
先帝が住まわれていたという先ほどの部屋に入ることはできますか?
── お許しを頂きます。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
前話ラスト、猫猫のお願いとは、先帝が籠もった部屋に入ること。
猫猫は、このとき既に、呪いの原因を掴んでいたのでしょう。
あとは、現場で証拠を見つけるだけだったのです。
帝の許しを得て、という話だが、皇太后様が間に入れば問題ないはず。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
あの部屋に入るには、帝の許可が必要。
その許可を得るのに時間が必要となり、猫猫はいったん出直しとなったのでしょう。
では、なぜ後宮に戻らず壬氏邸なのでしょうか?
原作には ──
その夜、猫猫は翡翠宮に帰らず、久しぶりに壬氏の棟に行くことになった。翌日、もう一度あの埃だらけの部屋に行くためだ。
by 『薬屋のひとりごと』原作3巻
とあるだけ。
あの部屋がある主上の住まいは、後宮の外です。
後宮と内廷の関係は次の通りです。
- 宮廷
-
内廷+外廷
- 内廷
-
皇族の住まい、後宮
- 外廷
-
役所
壬氏の屋敷があるのは外廷です。
後宮の外だから、前話、桜花は緊張していたのです。
桜花:皇太后様、どういうおつもりかしら。後宮の外でお茶会なんて。
愛藍:後宮の外といっても内廷よ。主上様の住まいじゃない。
桜花:だから余計緊張するの! 普段入らないようなとこよ。
by 『薬屋のひとりごと』TVアニメ第32話
想像するに、あの部屋に行くには、後宮よりも壬氏邸の方が近かったのでしょう。
だから、後宮に戻らず壬氏邸に泊まらせてもらったのではないでしょうか。

もしかすると皇太后が、久しぶりに水蓮が猫猫に会えるよう取り計らったかも

ああ、それいいかも!
結果的に都合が良いと考える猫猫。
その理由は ──
どこの宮付きかはっきりせず、よその宮にも顔を出す女官なんて、侍女頭からすれば好ましいはずがない。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
さて、侍女頭・紅娘は、猫猫がいうように彼女を好ましく思っていないのでしょうか?
私は、そうは思いません。
1期1話では、毒おしろいを知らせ赤子の鈴麗公主を救い。
1期6話の園遊会では、毒殺を未然に防ぎました。(狙われたのは里樹妃です)

命を救っただけでなく、寒空での園遊会では暖まる道具をこしらえ、妊娠後はアルコールを使って清潔に保ったり、隊商での買い物に注意するよう助言をしています。
猫猫は確かに問題ごとを持ち込みますが、それ以上に貢献しています。
他の誰もマネできない事で。
それを分かっていながらも、侍女頭として立場上、紅娘は全ての可能性を考えておかなければならないのです。
ただそれだけです。
相変わらず、猫猫さんは自分の事に関しては過小評価していますね。
水蓮の部屋
猫猫、寝台用意できたわよ。
by 水蓮『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
猫猫は現在翡翠宮に派遣されていますが、壬氏部屋付きの侍女です。
翡翠宮へは期間限定なので、壬氏邸に部屋は残っていると思っていましたが・・・。
なぜ水蓮の部屋で寝るのでしょうか?
その答えは原作にありました。
猫猫が以前使っていた部屋はもう違う者が使っているので、今日は水蓮の部屋を借りることになった。ちょっと、あの初老の侍女は怖いが、別に害はないと言い聞かせる。
by 『薬屋のひとりごと』原作3巻
なんと、猫猫の部屋は、もう他の人が使っていたのです。

それにしても、まだ水蓮を怖がっているとは…
案外、かわいらしい趣味だよな。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
水蓮様、結構若いな。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
水蓮の好みは恋愛小説?
自分もいい年してアニメを観ているので、人の趣味をとやかく言えませんが(苦笑)。
水蓮は結婚して娘もいます。
なのに、青春恋愛小説が好きだなんて、確かに若いですね(笑)。
1期17話、変装するために猫猫に着せた服は、水蓮の娘が着ていた服です。

その理由については、原作者である日向夏先生がポストしていました。
水蓮の趣味は、十代の女の子が好む小説を読むこと。
— 日向夏🐗 (@NaMelanza) March 7, 2025
理由は、そんな十代なかったから。#薬屋のひとりごと #薬屋2期
自身が10代の頃、そんな青春を味わえなかったから、水蓮は小説で疑似体験していたのです。

なるほど!
行李
一つのものに執着すると、そればかり見てしまう。
by 水蓮『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
それが許される立場に生まれた人ではないからよ。
この行李は1期でも登場しましたね。(17話 )
行李には触らないでね。
by 水蓮『薬屋のひとりごと』TVアニメ第17話
柿渋を塗ったばかりだから。
というか、(1期アニメ)当時の原作にはこのようなシーンはなく、アニメオリジナル。
今話このシーンのために、1期17話でアニオリとして挿入したのでしょう。
壬氏が一つのものに執着すると取り上げていた水蓮。
でも、壬氏が不在の時に、こうして取り出して大事に保管していたのです。
今話ラスト、恐らく猫猫が謎を解くからでしょう、水蓮は壬氏に雄黄を返しました。
石以外も返す時が来るのでしょうか・・・。
幼さ
抑圧された環境で育つと心に影響を受けると聞く。
だんだん見せるようになった子供っぽい部分。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
あれも壬氏様の本質の一つなんだろう。
面白いことを言いますね。
壬氏様が時折猫猫に見せる子供っぽい部分。
あれは壬氏の本質の一つだと言うのです。
私はてっきり、実年齢より上に見せているので、時折素が出るのだと解釈していました(笑)。
現在の年齢である19歳にしても子供っぽい部分があるということでしょう。
この子供っぽい部分というのは、壬氏以外にも見られますね。
記憶も新しい前々話、現帝には茶目っ気な部分がありました。
そして、今話で明らかになった先帝の幼さ・・・。
子供っぽさは血筋なのかもしれませんね・・・。
毒

すぐに取り上げたのですか?
── ええ、拾った石なんて清潔じゃないでしょ?
正解です。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
毒ですから。
呪いの原因となった、雄黄石がなぜこんなところに・・・。
視聴者はご存じの通り、前々話冒頭、壬氏の夢の中で先帝が彼に渡そうとしていた石ですね。
壬氏はその石を拾い、大切にしていたのです。
そして、水蓮は、早々に取り上げていたのです。
でも、もし石を取り上げていなかったら・・・。
壬氏様も、先帝同様毒に蝕まれて亡くなっていたでしょう。
皇太后の、一つのものに執着させない方針が、偶然にも壬氏の命を救っていたのです。
では、先帝は壬氏を毒殺するために、雄黄石を渡したのでしょうか?
そんなことはありませんね。
何せ、その毒で自分の命も落としたのですから・・・。
後に猫猫が推理したように、先帝はもちろん、女帝も部屋の世話をしていた下男もこの石が毒だと知らなかったのでしょう。
となると先帝は、壬氏にキレイな石を息子である壬氏に与えたかっただけではないでしょうか。
母親が好んでいた(と思っていた)黄色の石を・・・。
黄衣の女
猫猫は、呪いの正体を明らかにするため、先帝が籠もっていた部屋を調査する。
動揺
── 先帝は絵を描く趣味があったのでしょうか?
一度だけ、描いて頂いたことがあります。
by 皇太后『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
ここだけの秘密だと仰っていました。
皆に知られたら取り上げられてしまうから、と。
壬氏様は平静を装っていますが、猫猫に言わせると動揺していたようです。
一体なぜ動揺していたのでしょうか?
考えられるのは2つ。
一つ目は、先帝が絵を描いていたと知り、少女の絵を思い出したこと。
今まで気付かなかったが、先帝が絵を描いていたと聞き、あの絵は皇太后を描いたのではないかと気付いて動揺した。
二つ目は、一つのものに執着すると取り上げられてしまうことを思い出した。
水蓮が言っていたように、壬氏は、皇太后の指示で一つのものに執着すると取り上げられていました。
その事を思い出して動揺したのかもしれませんね。
さて、流れから察するに前者でしょうか。
絵を描いていたと聞き記憶の彼方にある絵を思い出し、ラストの ──
一度、私はあの絵を見たことがある気がします。
年若い娘の絵で、淡く色づけされていました。この石を拾ったのは、その絵を覚えていたからでしょう。
by 『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
上記セリフに繋がったのではないでしょうか。
呪いの真相
この女性が着ている衣の色。
これは雄黄という石を砕いて作った絵の具だと思います。
雄黄は、砒毒と同じ毒性を持っています。そして砒毒には、物を腐りにくくする作用があります。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
先帝がこの部屋に籠もっていたのは絵を描くため。
絵を描く道具である、絵の具に砒毒が含まれていたのです。
「雄黄」
硫化ヒ素を主成分とする鉱物。(広辞苑より)
中世頃まで黄色の顔料として使われていた。毒性が強く固まりでも粉末でも人体に害を及ぼす。
黄色の絵の具を作るのに使われていた雄黄。
部屋にも一つ雄黄が落ちていましたし、壬氏に渡していたことから、先帝も原材料から絵の具を作っていたのでしょう。
絵の具にするには雄黄を砕いて細かくせねばならず、先帝はその粉を少しずつ体に取り込んだのではないでしょうか。
同じ部屋にいた女帝や、下男には影響がなかったのは不幸中の幸いでしょうか・・・。
亡くなられる頃には、全身に回っていたはずです。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
なんと、猫猫が言うには、先帝の死因は寿命ではなく毒だというのです。
では、なぜ誰も気付かなかったのでしょうか?
その理由は原作で言及されていました ──
亡くなられた頃には全身に砒毒が回っていただろう。医官たちもその可能性はわかっていたと思う。しかし、どこで摂取したかまではわからない。彼らに帝の行動を制限することはできない。ただ、食事にそれらが混じっていないか確認するだけだ。
by 『薬屋のひとりごと』原作3巻
医官達も砒毒の可能性を把握していた、というのです。
それでもどこで摂取しているかが分からない。
先帝が絵を描いていることを秘密にしていたので、顔料が原因だとは気付かなかったのです・・・。
公にすると取り上げられる、あるいはバカにされるので秘密裏にやっていた絵描きが、命を縮めることになってしまったのです。
まだ弾力がある。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
この下に一体何枚あるんだ?
壁紙が何枚もあるということは ──
絵を描いては、その上に白い壁紙を貼り、また新たに絵を描いていたのでしょう。
これだけ大きな絵を、一体何枚描いていたのでしょうか。
黄色の絵の具を使えば使うほど、絵を描けば描くほど毒に犯されていた先帝。
絵を描く場所と道具を与えたのは女帝。
可愛さあまりに与えていたものが、子供の命を奪ってしまったのです・・・。
これまた「無知は罪」ですね。
真実
帝の性癖のことは、あらかじめ知っていた。
父は文官で母は側室。
by 皇太后『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
そして幼い顔の割には初潮が来るのが早かった私を、父は都合のいい道具として利用したのだ。
皇太后が現帝を生んだのは10歳、それも数え年。
数えで10歳は、我々が普段使う満年齢で言うと8~9歳。
日本では小学2、3年生です。
そんな子供に手を出すなんて酷い奴だと思っていましたが、安氏は分かっていたのです。
いや、幼い少女・安氏は狙っていたのです。
後宮には中級妃の侍女として入った。
妃は腹違いの姉。蝶よ花よと育てられた姉は、父の思惑など知る由もなかった。
by 皇太后『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
原作によると ──
親類に宦官がおり、先帝の行動は大体調べられていた。数日に一度、後宮を訪れ、上級妃のもとを回る。時折、中級妃のもとにも来るが、そのまま泊まっていくことはなく、ふらふらと庭園を散歩するか、後宮を出ていくかだ。
by 『薬屋のひとりごと』原作3巻
先帝の行動も事前に掴んでおり、時折中級妃の元に来ることも知っていたのです。
そして、妃の所に泊まることがないことも・・・。
要は姉は後宮に入るための切っ掛けに過ぎず、侍女として入った安氏が帝に取り入る本命。
お嬢様育ちの姉は、そんな思惑など想定すらできなかったのです。
それどころか ──
ついに今夜、帝がいらっしゃるのね。
by 『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
この前、遠目にお見かけしたけど、とても美しい方だったの。
頬を赤らめる姉。
完全に浮かれていますね。
だから、帝を見て不機嫌だと気付くこともできず、不用意に触れてしまったのです。
一方、冷静に状況を把握し分析する安氏。
この肝の座り方は、天性のものか、それとも事前に父に知らされ、入念に練っていたのでしょうか・・・。
安氏は、まんまと帝に取り入ることができたのです。
皇太后・安氏を悪女のように評していますが、決して犯罪者ではありません。
現に ──
後宮はどんどん大きくなり、私と同じ使命を帯びた幼い娘達が次々にやってきた。
by 皇太后『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
二匹目のドジョウを狙って、後を追うように送り込まれているのですから。
今の帝が幼女趣味なら幼子を送り込む。
これが『薬屋のひとりごと』作品内の、後宮での成功例で出世術なのです・・・。

野心なき者来るべからず!?

後宮サバイバル怖すぎる…
原) その後の異母姉

帝の目は、確かにこちらを捉えた。
by 皇太后『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
野心に満ちた少女の目を・・・。
安氏が取った手段はハマり狙いは成功、見事目的を達成したのです。
中級妃である姉を差し置いて、帝に気に入られた侍女・安氏。
では、その後、姉はどうなったのでしょうか?
それは原作に記載がありました。
異母姉は、安氏への嫉妬で狂ってしまった。結局、下賜という形で後宮を出たのだが、その後のことはわからない。数年前、病に倒れたと聞いたが、すでに皇太后となっていた安氏は先帝の喪中のため、葬儀に出席することはなかった。
by 『薬屋のひとりごと』原作3巻
姉は、安氏への嫉妬で狂い、帝に相手されることもなく、どこかに下賜され後宮を出て、病に倒れたそうです。
何とも壮絶ですね。
今の皇太后・安氏には、こんな過去があったのです。
いや、女帝や無能と言われた先帝に取り入るには、ここまでしないといけないのでしょう。
安氏だけが悪いのではありません。
国や後宮そのものが歪んでいるのです。
医官と女児
以前、女児を産んだ娘がいた。
娘は、先帝の子だと言い張ったが、先帝に知らぬと否定され、その父親とされた医官が女児とともに追放された。当時、医官だけは後宮内で去勢を免れていたから。
by 皇太后『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
それ以来、医官も去勢を義務づけられた。
皇太后様、サラッと重要な事言い出しました(笑)。
母親は先帝の子だと主張するのに、先帝に否定され、(父親と思われる)医官と共に追放された女児!?
さぞや、先帝と(実権を握っていた)女帝を恨んでいるでしょう。
女帝と先帝は亡くなったとは言え、不遇な目に遭った恨みはなくなったとは思えません。
医官だったら、毒にも詳しいかも・・・。
毒の知識を使って暗殺を企てているのは、この親子でしょうか。
年齢は、現帝よりも少し下。
今はどこで何をしているのでしょうか?
女児を産んだという娘は、1人後宮に残された。
by 皇太后『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
彼女が後宮を出ることは一生ないだろう。
そして、後宮に1人残された娘は・・・。
後宮を追放された医官と女児は誰? 今どこに?
刻み込む

女帝の傀儡としてのみ存在し、幼い娘にしかまともに話しかけられない。
情けない男・・・。そんな者に忘れられるのは許せなかった。
by 皇太后『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
情けないと見下していた男に忘れられるのが許せなかった安氏。
自分を通り過ぎ、幼い娘の元へ行くのを見て爆発してしまいます。
閨の中、許しを請うて怯える男をいたぶった。
男に手をかけられた幼い娘達。
by 皇太后『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
偉大な母である女帝よりも、深く思い出に繋ぎ止めるために。
怯える先帝に無理矢理迫ったのです。
つまり、皇太后安氏が身籠もった帝弟は先帝の子。
だから、壬氏に先帝の面影を見たのでしょう。
その後、先帝は心を壊してあの棟に引きこもった。
by 皇太后『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
先のシーンを見る限り ──
帝弟を孕んだ時は、まだ若々しい先帝。
でも、壬氏の夢での先帝は、完全に老人でした。
この時、雄黄を持っていたので、既に毒に犯されていたと見るべきでしょう。
原作では、以下のように触れられています。
白髪の交じった髪は乱れ、目はくぼんでいた。しかし、手はそれほどしわがれておらず、 面 に現れた老いよりも本来の年齢が若いことを示していた。
by 『薬屋のひとりごと』原作3巻
雄黄の毒の影響で老人のように見えましたが、実際はもっと若かったのです。
黄衣
昔、あなたは好んでこの色を着ていらっしゃいましたね。
by 壬氏『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
壬氏の言葉にハッとさせられる皇太后。
誰もが、絵に描かれた中心にいる女性は女帝だと思っているようです。
が、壬氏が言うように黄衣を着ている女性は安氏ではないでしょうか。
皇太后・安氏にその気はなくても、以前は黄衣を好んで着ていた。(皇太后は、分かっていて否定した可能性も)
実際、皇太后・安氏が黄色を好んでいたか否かは関係ありません。
重要なのは、先帝がどう思っていたか、です。
壬氏が当時の安氏にそういうイメージを持っていたなら、先帝も同じイメージを持っていた可能性があります。
となると、その黄色の絵の具の原料である雄黄を幼い壬氏に渡そうとしたのは ──
母君が好きである色の石を渡そうとしたのではないでしょうか。
先帝は、息子のことは何も知りません。
でも、母君のことは良い意味でも悪い意味でも知っています。
安氏の印象に残っていた色を渡したのではないでしょうか。

じゃあ、先帝は皇太后に好意的だったんだ…
では、なぜ先帝は皇太后を恐れていたのか、ですって?

うん、そこが腑に落ちない
先帝は、基本、成人女性恐怖症です。
たとえ、それが妃である安氏であっても。
もっと言うと、母親である女帝ですら恐れていたのではないでしょうか。
だから、壬氏の夢の中で、女帝に対しても恐れていた・・・。
私の結論(解釈)は、こうです。
(夢で描かれた)時期には、既に先帝の心は壊れていました。
先帝は、物事の把握・判断は全くできなかったのではないでしょうか。
それでも本能レベルで残っている成人女性恐怖症は健在であり、幼い子にだけ普通に接することができる。
もしかすると、安氏はもちろん女帝ですら先帝は誰だか分かっていなかったのかもしれません。
だから、基本成人女性は皆怖くなっていた。
そんな中、あの絵を描き、黄色の絵の具の原料である雄黄を渡した。
心が壊れ、全てを忘れてしまった状態でも、先帝の中に黄衣を着た女性(安氏)と幼子だけは残っていたのではないでしょうか。
どんな感情かは分かりません。
でも、安氏が望んだ通り、誰よりも先帝の心に自身の存在を刻むことができたのです。
そして、描かれたあの絵を見る限り・・・。
決して恐ろしい女性像ではありません。
ましてや恨むなんて要素は見当たりません。
先帝の中では、黄衣を着た女性が幼子に優しく微笑んでいる。
そんな安氏の姿が最期まで先帝に残っていたと考えるのは感傷的になりすぎでしょうか。

正解かどうか分からないけど、筋通ってる!
その解釈好きかも!
壬氏
そして、壬氏のその優しい眼差しから、先帝の面影が重なります。
皇太后・安氏が少女の頃、自分に向けてくれた眼差しを・・・。
そういえば、安氏の姉が先帝について語る時、既視感を感じませんでしたか?

既視感?
ついに今夜、帝がいらっしゃるのね。
by 異母姉『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
この前、遠目にお見かけしたけど、とても美しい方だったの。
幼女趣味のことを知らないのか、知っても尚魅了されていたのか・・・。
姉は、先帝にのぼせています。
だから、妙齢の女性に怯えている帝の様子に気付くことなく、近づき触れてしまったのでしょう。
この女性を夢中にさせ、魅了する美貌 ── 壬氏様に似ていると思いませんか?

あっ!
壬氏様は、間違いなく先帝の血を受け継いでいるのです。
不義の子と言われようと、取り違えられた子であろうと、大切な子に違いないのに。
by 皇太后『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話

「取り違えられた子」って言った!
ついに、関係者本人の口から語られました!
「取り違えられた子」とは ──
同時期に産まれた阿多妃の子との事。(11話 )

猫猫の予想は当たっていたのです。
阿多妃と壬氏は、その事実を知っているのでしょう。
だから、阿多妃が後宮を出る前日、壬氏と飲んでいたのです。
その後、猫猫と会話して ──

戻ってきたと思ったら、スッキリしたから帰れと追い出された。
by 壬氏『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
追い出されたのでしょう。
ただ、現帝や皇太后が認識しているか疑問でした。
何せ、皇太后にとっては、自分の子を亡くしたわけですからね。
実子は取り違えられ亡くなったとはいえ、兄である帝の実子、つまり皇太后の孫にあたるので自分の血を受け継いでいるのは確かなのです。
安氏は、壬氏を大切に思っていたのです。
お気に入りは人目の付かないところに
それよりもあなた、随分面白い女官に目をかけているようですね。
- 中略 -
お気に入りは隠しておかないと、誰かに隠されてしまうわよ。
by 皇太后『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
ある意味、壬氏と猫猫の仲を公認するような言葉ですね。
皇太后は、猫猫を認めたと取って良いのでしょうか・・・。
壬氏は、ひとかたならぬ方。
ならば相手も慎重に見定めなければならないはず。
にもかかわらず、前々話 で、兄or父親である帝の了承に続き、皇太后まで猫猫に合格を出したのです。

まあ、帝になれば何人も妃を持つので気にしてないのか?
先の皇太后の心情描写により、壬氏は取り違えられた子。
今は宦官壬氏として過ごしていますが、実は帝の弟、隠された真相は帝の実子。

ややこしい…
帝弟であれば、帝に男児がいない今、壬氏が第一継承権を持っています。(6話 )
今の妃から男児が産まれた時は ──
その子が東宮となり、第一継承権を持つことになります。
でも実は、帝には既に阿多妃の実子・壬氏がおり、彼が第一継承権。
なのに、その事実を、実母、本人、そして皇太后が知ってて隠しているのです。
なぜ隠しているのでしょうか?
てっきり私は、皇太后がその事実を知らないのだと思っていました。
実は自分の子ではなく、阿多妃の子だと知られたら何をされるか分からない・・・。
だから隠していたのだと。
でも、今話で判明したように、皇太后も壬氏を大切に思っているのです。
だとしたら、なぜ隠すのでしょうか?
壬氏が阿多妃の子だと知ったのは、もっと後のことなのでしょうか。
でも、だとしたら、宦官壬氏として隠す必要もないとないと思われます。(別の理由かもしれませんが…)
もしかすると ──
お気に入りは隠しておかないと、誰かに隠されてしまうわよ。
by 皇太后『薬屋のひとりごと』TVアニメ第33話
これは、壬氏に向けて言った言葉ですが、皇太后自身もお気に入りである壬氏を世間から隠しているのかもしれませんね・・・。
帝の実子と分かれば、命を狙われる危険性が弟よりも格段上がってしまうので・・・。

お~~、そういうことか~~!
さて、過去を振り返らない女・安氏は、どこまで見据えているのでしょうか・・・。
おわりに (『薬屋のひとりごと』33話とは)
呪いの謎は単純なれど、明かされた真実は複雑・・・。
踏み込んではならぬ領域と、当人にしか分からぬ男女の問題。
欲望、嫉妬、愛憎渦巻く後宮ならではの男女関係。
猫猫は、またこの国の暗部を垣間見たのです。
それは私たち視聴者に対しても・・・。
でもまだ視聴者には、マシな部分しか見せられていない気がします(苦笑)。
後宮を含む内廷には、一体どれだけの闇が秘められ、どれ程の火種を抱え込んでいるのでしょうか・・・。
次話のサブタイトルは「怪談」。
怖い話に違いないのに、ちょっとホッとしてしまうのは、私だけでしょうか(苦笑)。
以上、TVアニメ『薬屋のひとりごと』第33話の感想&考察レビューでした。
長文にもかかわらず、最後まで読んで頂きありがとうございます。
次話のレビューも書く予定です。
良かったらまたお越し下さい。
最新情報はX(@toki23_a)にて!
ではでは。
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疑問点 まとめ(Q&A一覧)
この章では、疑問点をまとめていきます。
- 今話で発生し解決した疑問は、本文で解説して本章(ここ)でまとめ
- 今話で解決しなかった疑問を、疑問XX-XX(話数-通し番号)として記録
⇒ 本章(ここ)でまとめ - 答えは、推測ではなくできるだけ(原作含む)作品内で明らかになった事実を記載
※推測が入る場合は、断りを入れる
⇒ 解決した疑問は、次話で削除
今話で解決した疑問 (クリックすると答えが表示されます)
今話で新たに発生し、解決しなかった疑問
- 疑問 33-01 後宮を追放された医官と女児は誰? 今どこに?
残っている疑問 (クリックすると表示されます)
- 疑問 02-01 壬氏は、後宮管理者なのに、なぜ後宮の外まで判断を求められている?
- 疑問 02-02 水差しの弁償、仕送りから引いたのは期間限定?
- 疑問 02-03 結局、秘薬は何の為だったの?
- 疑問 03-01 西都の玉葉妃が、異国の姫とは?
- 疑問 05-01 粉を染み込ませた木簡は、誰が何に使っているのか?
- 疑問 05-01 簪(かんざし)を渡す意味は?
- 疑問 06-01 園遊会で、なぜ壬氏は違うカンザシを挿し、襟が乱れていたのか?
- 疑問 09-01 壬氏と亡くなった武人・浩然との関係は?
- 疑問 10-01 後宮内の事件に最終判断を下しているのは誰?
- 疑問 10-03 現帝の東宮時代、妃はなぜ一人しかいなかったのか?
- 疑問 11-01 阿多妃を南の離宮に住ませるのは、帝の愛着か、それとも・・・
- 疑問 11-02 阿多妃の子は生きているのか?
- 疑問 12-01 やり手婆は、なぜ猫猫を妓女にしたい?
- 疑問 13-01 壬氏は、帝に何を頼まれたのか?
- 疑問 14-02 爆発現場にあった上等なキセルは、倉庫番のもの?
- 疑問 15-01 馬閃は、なぜ猫猫を嫌っている?
- 疑問 17-01 壬氏は、なぜ変装しなくてはならない?
- 疑問 17-02 壬氏は宦官なのに、なぜ武官のような野営を知っている?
- 疑問 18-02 使い物にならない妓女を、やり手婆はなぜ離れに住まわせている?
- 疑問 19-03 「何か起こったあとでは遅い」猫猫は、過去にどんな経験をしたのか?
- 疑問 19-04 羅漢は、猫猫を抱きかかえる壬氏を見て、なぜあれほど驚いた?
- 疑問 20-01 なぜ翠苓のことを秘密裏に終わらせた?
- 疑問 20-02 壬氏は、なぜ身分を隠し、後宮管理者として生活している?
- 疑問 20-03 楼蘭妃は、なぜ訪れる度に雰囲気が変わる?
- 疑問 21-01 やぶ医者より先に後宮へ来た姉は、今どこにいる?
- 疑問 21-02 先の皇太后は、なぜ木の伐採に制限をかけた?
- 疑問 22-01 猫猫は、なぜ爪紅を流行らせた?
- 疑問 23-01 賭け対象にした「妓女の身請け」の狙いは?
- 疑問 23-02 羅漢に届いた文と巾着、誰が開いたのか?
- 疑問 25-01 楼蘭妃は、なぜそこまで侍女を増やす?
- 疑問 25-02 子猫はどこから来た?
- 疑問 26-02 キャラバンは、なぜ妊婦に影響のある香油と香辛料ばかり売っていた?
- 疑問 27-01 結局、玉葉妃に毒を盛ったのは誰?
- 疑問 28-01 異国の特使は、なぜ上級妃4人に鏡を献上した?
- 疑問 28-02 高順が相談した姉妹とは誰のこと?
- 疑問 29-01 異国の特使は何を企んでいる?
- 疑問 30-01 杏に香油から堕胎剤の作り方を、誰が教えた?
- 疑問 31-02 先帝が壬氏に渡そうとした石は何?
- 疑問 31-03 国母が来たのはいつ頃?
- 疑問 31-04 帝は、なぜ”選択の廟”を解いておきたかった?
- 疑問 31-05 壬氏は、なぜ”選択の廟”で真剣な顔をしていた?
- 疑問 32-01 皇太后は、なぜ診療所に?

1期の残が多いので、時間あるときに整理します
今週のX感想ポスト
#薬屋のひとりごと 33話
— 時文@ここアニ(『チ。』『薬屋』レビュー中) (@toki23_a) March 8, 2025
1枚剥がせば別の顔 過去を覗けば裏の顔
幼き頃は純真でも欲望渦巻く後宮が心を押し込め狂わせる。何が被害で加害か、誰が悪人善人か。それがここの常識で、それだけに純粋無垢なものが眩しく見えるのでしょうか..
にしても…皇太后様矢継ぎ早に重要な事サラッと言ってたぞ🤣
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アニメ『薬屋のひとりごと』次話のレビューはこちら!
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