【文字数(本文):約1万文字(目安16分)】
こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『小市民シリーズ』第22(最終)話「報い」を鑑賞しました。
本レビューではアニメ感想だけではなく、原作情報も加え、個人的な解釈による解説・考察をしています。
皆さんの理解の助けになり、作品をより楽しんで頂ければ幸いです。
今回アニメ化されたのは──
- 小市民シリーズ第4弾『冬期限定ボンボンショコラ事件』
-
第十一章「報い」中盤から終章「小市民は空を飛ばない」まで
今話の主なトピック (クリックすると該当項目へ)
今話で解決しなかった疑問
最下部「疑問点まとめ (Q&A一覧)」に記載
本レビューの方針
本レビューは、次話以降のネタバレなし
アニメ『小市民シリーズ』の原作は、米澤穂信先生の小市民シリーズ第1弾『春期限定いちごタルト事件』、第2弾『夏期限定トロピカルパフェ事件』。
私は、2作とも未読です。
アニメ鑑賞後、アニメ化済み時点までの部分を読み、レビューを作成しています。
よって、次話以降のネタバレはなしなので、ご安心ください。
アニメ鑑賞
+
原作小説を読み
知り得た情報を加味して「感想・解説・考察」
原作小説の情報は、「原作情報」として区別できるよう表記します。

こんな感じです
緑系の色を目印にしてね!
引用部分も次のように緑系をワンポイントに ──
これは、推理の連鎖で片がつく。
by 小説『春期限定いちごタルト事件』
ちなみに、考察や解説、疑問はオレンジ系 ──
それ以外は、補足や余談、参考情報はブルー系 ──
読む際の目安にして下さい。
全10話 各話リスト
話数 | サブタイトル | 原作小説 |
第11話 | あたたかな冬(前編) | S3 (上) |
第12話 | あたたかな冬(後編) | |
第13話 | とまどう春 | |
第14話 | うたがわしい夏(前編) | S3 (下) |
第15話 | うたがわしい夏(後編) | |
第16話 | 真夏の夜 | |
第17話 | ふたたびの秋 | |
第18話 | わたしたち本当に出会うべきだったのかな | S4 |
第19話 | 小鳩くんと小佐内さん | |
第20話 | 乾いた花に、どうぞお水を | |
第21話 | 黄金だと思っていた時代の終わり | |
第22話 | 報い |
※話数:リンクは各話レビューへ
※原作小説:S3(シリーズ第3弾)「秋期限定栗きんとん事件」
S4(シリーズ第4弾)「冬期限定ボンボンショコラ事件」
はじめに
小鳩と小佐内さんが病室に戻ると、そこには ──
3年前の事件に小鳩が関わったことが、今回のひき逃げ事件へと繋がっていた。
緊迫した状況の中、二人はこの危機をどう切り抜けるか・・・。
悪人の最悪は、蜜の味。
スイーツ好きの小佐内さんなら見過ごせない!?
最初から分かっていたなら、普通は警察に連絡するところ ──
「最悪」をぶつけるのが小佐内さんらしい。
実は英子も小佐内さんも、どちらも復讐。
でも、小佐内さんの方が一枚も二枚も上手(苦笑)。
これはもう、相手が悪かったとしか言いようがない!?
大学の話、あれは「追いかけてきてほしい」という告白では?

だよね!
そう思った!
小佐内さんと一緒なら、毎日がミステリー・・・。
いや、サスペンスかも!?
では、今話を振り返っていきましょう。
感想&考察レビュー 第22話「報い」
罪深き人には鉄槌を
ひき逃げ事件の犯人は看護師。彼女は日坂祥太郎の姉で、3年前の事故で姉弟が一緒にいた事実を明らかにした小鳩を許せなかった。
原) フロアには人が!?
10階です、上へ参ります。
by エレベーター『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
エレベーターに乗って逃げる二人。
エレベーターがそのフロアに来ていれば話は別ですが、病院のエレベーターは安全重視で速度が遅いことが多いです。
だから、エレベーターで逃げるのはおすすめできません。
エレベーターが到着する前に犯人に追いつかれる可能性が高いです。
ましてや、エレベーターに乗って扉を閉める時間なんてかなり厳しいです。
今回の状況で最善の選択は ──
小佐内さんと小鳩は病室の外にいたので、コショウを撒いて英子がひるんだ後、病室の扉を閉めて押さえつつ、大声で助けを呼ぶことだと思います。

みんな、覚えておこう!

いや、そんな目に遭わないから!
冗談はさておき(笑)。
運悪くナースステーションには誰もいませんでした。
でも、フロアには誰かいるはずなので、大声で助けを呼べばいいのに、ただ逃げるだけという展開。
しかも向かった先は、誰もいなさそうな屋上・・・。
ここ、かなり違和感を覚えました。
でも原作を読むと印象が変わりました。
原作では ──
ナースステーションの中田さんが目を剝いて、それでも叫ぶことはせず、鋭く言う。
by 小説『冬期限定ボンボンショコラ事件』
「廊下は走らないでください!」
小佐内さんは忙しそうなので、ぼくが言い返す。
「警察を呼んでください!」
ナースステーションには看護師の中田さんがいて、車椅子を走らせる小佐内さんを注意しています。
その中田さんに対して、小鳩は警察を呼ぶよう頼んでいます。
さらに ──
廊下の突き当たりはエレベーターだ。そしていまちょうど、そのドアが開いていく。小佐内さんは車椅子を押すスピードを緩め、下りる医師と入れ違いにぼくたちはエレベーターに乗り込む。
by 小説『冬期限定ボンボンショコラ事件』
ちょうどエレベーターがフロアに到着し、扉が開いた瞬間だったので、すぐに乗り込めたのです。
その際、医師とすれ違い、最上階に上がる時は別の看護師も一緒でした。
病院内には他にも人がいて、上階へ向かうエレベーターに乗ったことで屋上へ行く流れになったのです。
これで違和感はなくなりました。
ただ、病院内には他にも人がいるのに、金槌を持った犯人と追いかけっこする展開はやはり少し不自然に感じます(苦笑)。
アニメではこの場面を ──
消灯後の静まり返った病院を舞台に、金槌を持った看護師が追いかけてくるサスペンス風の演出に仕上げていました。
現実とは異なるものの、視聴者の不安や恐怖をしっかり煽る映像表現が際立っていました。

最終回にふさわしい、手に汗握る展開だったね

うん、ハラハラドキドキした!
英子は見ていた!?
── あなたは、歩道を歩いているのが僕だと認識して車をぶつけてきたんですか?
もちろん。
by 日坂英子『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
あんたの顔は忘れない。
ここがずっと引っかかっていました!
この看護師、最初からぶっきらぼうで怪しさ満点。
でも、まさかひき逃げ犯だとは思いませんでした。
なぜなら、小鳩の顔を知らない、あるいは覚えていないと思っていたからです。
名前を隠している時点で日坂の関係者だろうとは想像していました。
ただ、堤防道路で偶然見つけた小鳩を撥ねるには、小鳩の顔を知っている必要があります。

小鳩と日坂英子の接点は、小鳩が黄葉高校前の掲示板に張り紙をした時、先輩が「エーカンのエーコじゃない?」と言って確認してくれた時だけ。
あんなに離れた場所から一瞬見ただけで、顔を覚えていたとは考えにくい。
だから私は、この看護師がひき逃げ犯だとは思いませんでした。
原作でも、小鳩は同じ疑問を持っていました。
ただ、思い出したことがありました ──
ただ、日坂さんはぼくだけを認識し、小佐内さんは憶えていないらしい。ぼくだけで行動したタイミング……日坂さんは、ぼくと日坂和虎さんが伊奈波川ホテルで会ったその日、あの場所にいたのだろうか。こいつの顔だけは忘れないと、ぼくの顔を盗み見ていたのだろうか。
by 小説『冬期限定ボンボンショコラ事件』
なんと、小鳩が日坂父と会ったあのホテルに、日坂英子もいたというのです。

えっ、そうなの!?
そんな描写、なかったですよね。
でも、原作を読んだとき、実は引っかかっていました ──
小鳩が日坂父と会っていた回想シーン ──
「日坂さまですね。壁際の席でお待ちです」
by 小説『冬期限定ボンボンショコラ事件』
短い階段でラウンジに下りる。約束の午後四時、ぴったりだ。ラウンジに人の姿は少なくない。夫婦らしい初老の二人組、仕事の話をしているらしいスーツ姿の四人組、ちょっと場所にそぐわない高校生ぐらいの女子ひとり、人を待っているらしいけれど日坂くんの父親とは思えない高齢男性……けれど壁際の席にいると教えられれば、電話の相手を探すのは難しくなかった。
「ちょっと場所にそぐわない高校生ぐらいの女子」
この一文が気になっていました。
この「高校生ぐらいの女子」こそ、日坂英子だと考えられます。
アニメを改めて確認すると ──
確かにホテルのラウンジに英子らしき人物が映っています。

ホントだ~~!!
ただ、この時は日坂父と英子が疎遠だと思い込んでいたので、結びつきませんでした・・・。
実際は、疎遠だったのは日坂父と姉弟ではなく、両親が不仲だったのです。
英子は何らかの方法で父が小鳩に会うことを知り、弟と会っていたことをバラした小鳩の顔をしっかり覚えていたのでしょう・・・。
憎み合う両親
ご両親は、憎み合ってたんですね。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
そして、あなたと祥太郎くんが会うことも許してなかった。
日坂姉弟の両親は、仲が悪かったのです。
いえ、違いますね ──
子ども同士が会うことすら認めないほど、憎み合っていたのです。
事故に遭い救急車で病院に運ばれれば、家族に連絡が入り誰かが駆けつけます。
ましてや祥太郎は中学生。
当然、親が病院に来ますよね。
祥太郎は、姉からもらったお守りを大会のときは隠すほど、母親に姉と会っていることを隠していました。
事故のとき、姉と一緒にいたことが母親に知られるのは絶対に避けたい。
だから祥太郎は、すぐに姉・英子を事故現場から離れさせたのです。
そして藤寺にも口止めし、小鳩にも事件を探らないよう念を押したのです。
最後の大会
日坂祥太郎くんは、夏の大会の後、苗字が変わる予定があった。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
だからそれは日坂祥太郎最後の大会だった。
両親が離婚し、祥太郎は母親に引き取られて苗字が変わることになっていたのです。
牛尾が日坂の話をしたとき ──
以前は笑っていたが2年の秋の大会後から日坂はピリピリしていた、3年の夏の大会が最後だとかなり気合いを入れていた、と語っていました。(20話 )
日坂祥太郎は、両親の離婚によって苗字が変わる。
だから、「日坂祥太郎」として挑める最後の大会だったのです。
日坂和虎
日坂和虎さんは、3年前の事故の時点で祥太郎くんとは一緒に住んでなかった。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
日坂の父・和虎は、この時点ですでに祥太郎と別々に暮らしていたのです。
さらに、連絡も取っていなかった様子。
だから、和虎は祥太郎と直接話すことができず、退院したことすら知らなかったのでしょう。
そこで小鳩に尋ねたのでしょう。
しかも、確認したかったのは祥太郎が娘・英子と会っているかどうか・・・。
正直、かなり違和感がありますね。
夫婦仲が悪かったとしても、子どもは大切な存在のはず。
息子が事故に遭ったなら、まずは息子の体を心配するのが普通です。(そうであってほしい)
それなのに、小鳩に確認したのは祥太郎が英子と会っていたかどうか!?
私と祥太郎はもう会えなくなった!
by 日坂英子『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
私たち家族を建て直す、たった一度のチャンスだったのに!
このセリフからも、そう読み取れます。
だとしたら、なんてひどい父親なんでしょう・・・。
恨む理由
あたしと祥太郎は、どうやったらパパとママを仲直りさせられるか、どうやったらまた一緒に暮らせるか、バレないように相談してたんだ。
でもあんたが、私と祥太郎が会ってることを突き止めた!
それを張り紙にして学校の前に張った!噂になったんだよ、パパが気づいたんだ。
それで終わりだよ、全部!私と祥太郎はもう会えなくなった!
by 日坂英子『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
私たち家族を建て直す、たった一度のチャンスだったのに!
英子が小鳩を殺したいほど憎んでいる理由が明らかになりました。
英子は両親に内緒で、弟の祥太郎とどうすれば両親が仲直りできるか相談していたのです。
しかし、小鳩の張り紙を見た父親が、その内容から二人が会っていることに気づいてしまいました。
それで、父親は小鳩に連絡を取り呼び出したのでしょう。
おそらく、あのホテルには英子もいたのでしょう。
英子は、かなり焦ったでしょうね。
せっかくここまでうまく隠してきたのに、小鳩が余計なことを話さないか不安だったはずです。
そんな状況で、小鳩は(おそらく)得意げに自分の推理を披露。
制服から日坂と一緒にいたのが黄葉高校の女子生徒だと突き止めたことを、自慢げに話していたとしたら・・・。
そりゃあ、腹が立つのも当然ですね・・・。
小鳩の顔を睨みつけて、しっかり記憶に刻んだことでしょう。
良いか悪いかは別として ──
小鳩は、確かに英子に恨まれても仕方ないことをしていたのです。
悪いのは…
家族が元通りになってれば、私がそばにいれば、祥太郎はあんなことしなかった。
あんたが余計なことしたから、あんたのせいで、祥太郎は飛び降りた!
by 日坂英子『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
やはり、日坂は自殺を図っていたのです。
小鳩に責任はあるのでしょうか?

小鳩が悪いんじゃ・・・

一見そう見えるよね
最初に断っておきますが ──
日坂が飛び降りた理由ははっきりしていません。
小鳩が明らかにした事実が直接関係しているか分かりません。
だから、英子が祥太郎と一緒にいれば、祥太郎が飛び降りなかったのかも分かりません。
ただ、英子の言う通り自分がそばにいれば防げたと仮定して ──
英子が祥太郎と一緒にいられなかった原因を考えてみましょう。
まず、悪いのは小鳩ではありません。
もし小鳩が、日坂と英子を引き離すために秘密を暴いたのなら話は別ですが、そうではありません。
小鳩は知らずに行動していました。
確かに、止められたのに調べたのは配慮に欠けますが、結果的には不可抗力です。
では、本当に悪いのは誰でしょう?
(復讐するかどうかは別として)英子が恨むべき相手は誰でしょうか?
それは、両親ではないでしょうか。
父親と母親が仲違いして離婚した。
それ自体はよくあることですが、子供たちに会うことを禁止するのはやりすぎです。
責めるべきはそこだと思います。
ただし、小鳩に全く責任がないとも言い切れません。
でも、順位は低いですよね。
1番は、やはり両親。
そもそもの元凶です。
2番目、いや同率1位は、3年前に日坂を撥ねたひき逃げ犯ではないでしょうか。
もしあの事故がなければ、日坂は大会に出場できたし、スポーツ推薦で入学した高校で人生が変わっていたかもしれません。
ひき逃げ犯が逃げなければ、小鳩が事件に関わることもなかったはずです。
3番目くらいに小鳩でしょうか(苦笑)。

3番目なんだ(苦笑)

表彰台に上がっちゃったね…

いや、そういう意味じゃないから!
まあでも、英子からすれば ──
全く関係ないのに、しかも日坂が止めたのに、しゃしゃり出てきた小鳩が気に入らなかったのでしょうね・・・。
そこへ現れたのは…
残念だけど、時間切れ。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
そこへ現れたのは、日坂祥太郎!?
どうやら、小佐内さんが日坂に病院へ来るよう頼んでいたようです。
でも、いつ屋上に来るよう連絡したのでしょうか?
まさか事前に打ち合わせていた!?
原作では、説明されています。
「……それで、大晦日に来てくれたんだ」
by 小説『冬期限定ボンボンショコラ事件』
「ほかにしたいこともなかったしな。バスの乗り継ぎに手こずって遅刻して、ようやく着いたってメッセージ送ったら、屋上庭園に来てって返ってきて驚いたよ。まさか……まさかね。こんなことになるとは」
屋上庭園に入った時、小佐内さんが何か携帯を操作していたことは気づいていた。日坂くんを呼んでいたのか。
日坂は到着が遅れ、病院に着いたと連絡したら「屋上庭園に来て」とメッセージが届いたのです。
アニメでも、小佐内さんが警察に電話する前にスマホを操作している描写がありました。
この時、日坂に屋上へ来るよう伝えていたのです。
エピローグ
ひき逃げ事件の犯人は捕まった。小鳩は3年ぶりに日坂と再会し、久しぶりに言葉を交わす。
結果良ければ全て良し?
でも、そんなふざけた奴だったら、あんな顔はしなかったんじゃないかって・・・。
そしたら後で牛尾の奴に話を聞かされたんだ。
by 日坂祥太郎『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
お前、俺の治療費のことを考えてくれてたんだってな。
確かに、小鳩は治療費のことを話していました。(20話 )
このことが、小鳩は本当に日坂のことを思って犯人を捜していた、という根拠になっていたのです。
でも、実際は逆ですね。

逆?
どういうこと?
小鳩は、賠償金や治療費のために犯人を捜していたのではありません。
犯人を見つければ賠償金が得られる。
そのためなら、秘密を暴いても構わない。
何をしても許される。
そんなふうに考えて調査を続けていたのです。
このことを振り返って ──
僕は本当にバカだったんだ。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
と自分を省みていたのです。
原作では、こう自己分析しています。
それを善意と呼ぶのは間違っていないだろう。ただし押しつけがましい、望まれていない、ひとりよがりの善意だ。結果的に事件を解き明かせばきっと喜んでもらえる──途中でどんな事実が転がり出たとしても。ぼくはそんなふうに考えていて、その考えは間違っている。
– 中略 –
愚かとしか言いようがない。それが好意だと思っているのはこちらだけで、相手にそれを受け取る義理などひとつもない。まして、心の中に土足で踏み込んでさえ、好意の表れだから許してもらえると思っていたなんて。
by 小説『冬期限定ボンボンショコラ事件』
ぼくは自分の甘さに愛想を尽かした。いまも、ずっと。
犯人を捕まえれば賠償金が得られるかもしれません。
でも、その過程で失うものもある ──
中学生の小鳩には、そこまで考えが及ばなかったのです。
── 小鳩、殴って悪かった。
僕こそ、悪かった。
── いいよ。
日坂くん、生きてて良かった。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
小鳩は、ようやく中学生時代からの宿題を終えたのです。
3年前の真相
Uターンする場所がなかった以上、事故現場を通過する車は全部映るはずなのに・・・。
なぜか、救急車もパトカーも映ってなかった。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
おお~~確かにそうです!
Uターンできない前提なら、救急車やパトカーは行きか帰り、どちらかで必ず映るはず。
映っていないことが不自然です。
私はてっきり、道幅が広いのでUターンできると思い込んでいました(苦笑)。(19話 )
だから、救急車やパトカーはコンビニとは逆方向から堤防道路に入り、Uターンして戻ったのだろうと勝手に解釈していました。

かなり強引な推理(苦笑)
でも冷静に考えると ──
(Uターンできなければ)コンビニ前を救急車もパトカーも通っていないし、事故後は交通規制もあったはず。
事故から2時間、車が普通に走っていたこと自体に違和感を感じないといけなかったのです。

あっ、確かに・・・
永原匠真は、あのコンビニの店員だったんじゃないかな。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
おそらく彼はひき逃げの後、自分の車が映ってる映像と別の日の映像を入れ替えた。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
なんと、防犯カメラに映っていなかったトリックは ──
録画データのファイル名を入れ替えただけだったのです。
確かに、19話の防犯カメラ映像には日付が表示されていませんでした。
私が現実で見た防犯カメラ映像には、時刻や日付が必ず入っていたので、当然入っているものだと思い込んでいました・・・。

あんなに何度も映像が映っていたのに…

うん、全然気づかなかった
本当に、まんまと騙されました。
米澤穂信先生のミスリードや伏線の張り方、やっぱり巧みですね(苦笑)。
最初から知っていた?
── もしかして、私が仕組んだって思ってる?
犯人にとって最悪の結末ってことは、小佐内さんにとって最高の復讐だったかもしれない。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
小鳩は、小佐内さんが全て仕組んだのでは?と疑います。
原作では、小鳩の推測がより詳しく描かれています。
「えっ。小鳩くん、もしかしてわたしが仕組んだって思ってる?」
by 小説『冬期限定ボンボンショコラ事件』
小佐内さんは日坂くんに会っているのだから、その姉が木良市民病院の看護師だということは聞いていてもおかしくない。その情報と、ぼくが病院内で睡眠薬を盛られているという推測を結びつければ、日坂英子さんに疑いを向けるのはむしろ自然だ。
小佐内さんは病院に来る前に日坂と会い、話をしています。
小鳩が入院している病院の話をした際、日坂の姉が看護師として働いていることを知った可能性は十分あります。
小佐内さんは、小鳩が看護師に睡眠薬を盛られていることにも気づいていました。
この状況なら、日坂の姉が小鳩に何かしたのでは?と考えるのは自然な流れ・・・。
でも、問題は英子が小鳩の病室に来たことです。
そんなわけない。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
犯人がここに来るって分かったはずないでしょ?
原作では、この後にもセリフが続きます。
「そんなわけない。犯人が今夜ここに来るって、わたしにわかったはずがないでしょう」
by 小説『冬期限定ボンボンショコラ事件』
「でも、明かりをつけるように誘導してぼくが眠っていないことを外から見えるようにしたのは、小佐内さんだったよね」
小鳩の病室は個室です。
個室の電気が点いていれば、小鳩が起きていると分かります。
原作では、小佐内さんが電気をつけるよう誘導し、英子に小鳩が夜中に起きたことを知らせた、と描写されています。
だから、英子が部屋にやってきたのです。

おお、そういうこと!?
確かにタイミング良かったもんね!
(原作によると)実際は、日坂は約束の時間に遅れて到着しました。
日坂が遅れたのは本人の事情であり、小佐内さんがコントロールできることではありません。
もし小佐内さんが全て仕組んでいたとしたら ──
元々の計画では、小鳩の病室に小佐内さんと日坂が訪れ、(部屋の電気をつけるなどして)そこに日坂英子を呼び込んだのです。
だから ──
日坂くんとお姉さんを会わせたら面白いことになるかも、って全然思ってなかったってこと?
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
と小鳩は尋ねたのです。
小佐内さんには敵わない

そんなの思ったに決まってるじゃない。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
つまり、小佐内さんが仕組んだのは ──
小鳩が日坂のことを気にしている様子を利用し、日坂を小鳩の病院に呼び出し、そこで姉の英子と鉢合わせさせることでした。

なるほど!
日坂を呼んだ時点で、小佐内さんの復讐計画が始まってたんだ!
でも、日坂は約束の時間になっても病院に現れません。
おそらく面会時間が迫っていたのでしょう。
仕方なく、小佐内さんは一人で病室に向かいました。
そこで(電気をつけるなどして)英子を誘い出し、案の定、英子は現れたのです。
小佐内さんは英子を追い詰めます ──
あなたがとれる手段は2つしかなかった。
1つ目は小鳩くんを殺しちゃうこと。
── 殺すなんて・・・。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ第21話
英子の反応を見る限り、(少なくともこの日)小鳩を殺すつもりはなかったようです。
でも、いつの間にか英子は殺意をむき出しにしていました。
小鳩や小佐内さんとの対話で、怒りを募らせていったのでしょう。
小佐内さんは、さらに英子を挑発します。
となると、本レビュー冒頭で触れた違和感 ──
病院内なのに、なぜ大声で助けを呼ばず、わざわざ人気のない屋上へ行ったのか。
その理由も見えてきます。
英子の怒りをさらに煽り、小鳩への敵意をむき出しにさせる。
そして、その本音を弟に聞かせる・・・。
小佐内さんは、英子の恨みや殺意を大好きな弟に聞かせただけでなく、英子の罪をひき逃げから殺人未遂へと確実にランクアップさせたのです。

そういうことか!
追いかけてきて

── 治ったら行きたい所ある?
アリスかな。
by 小鳩常悟朗『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
イチゴタルトを買いたいんだ。
小鳩のケガが治るのは半年以上先。
その頃には小佐内さんは大学生になっていて、岐阜にはいないはず。
だから小鳩は、小佐内さんの質問を「自分ひとりで行きたい場所」と受け取り答えたのでしょう。
それでも、小佐内さんは時々帰省するはず。
だったら「また一緒に行こう」と言えばいいのに・・・(笑)。
高校生ももう終わりだね。
3年間で一番、これは忘れないだろうって瞬間って何?私はね、今だと思う。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
原作では、小鳩はこんなことを考えていました。
「小鳩くん。三年間でいちばん、これはずっと忘れないだろうって思う瞬間って、なあに?」
by 小説『冬期限定ボンボンショコラ事件』
なんだろう。
まっさきに頭に浮かんだのは、ぼくに向かって突っ込んでくる車と、視界いっぱいに広がった、冬の重く垂れこめた雲だ。でもきっと、これはいつか忘れていくのだろう。
ひき逃げ事故の瞬間を思い出しています(苦笑)。

小鳩~~!
そういうとこだよ!
一方、小佐内さんは ──
私はね、今だと思う。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
小佐内さんが3年間で一番忘れない瞬間。
それは、完璧な復讐をやり遂げて達成感を得た今・・・じゃなくて(笑)。
小鳩が事故に遭い、なかなか会えず、ずっと眠っていた。
その謎も解け、犯人も逮捕され、事件も解決。

小鳩が無事で、こうして話せていること。
それ自体が小佐内さんにとって何より幸せな瞬間だったのでしょう。
これ以上は、女の子の口からは言えません。
少なくとも自分から先に言うことじゃない。
だから ──
私、京都がいいと思う。
by 小佐内ゆき『小市民シリーズ』TVアニメ第22話
── なんで?
私が京都の大学を受けるから。
自分が行く京都に来て欲しい誘ったのだと思います。
連続放火事件の後、小佐内さんは、船戸高校にいる限り小鳩は次善の選択肢、と言っていました。
そんな彼女が、大学進学前から小鳩に「一緒に行こう」と伝えている。
これはもう、ほぼ告白ですよね。
願わくは、小鳩が小佐内さんの“期間限定”じゃありませんように。
おわりに (『小市民シリーズ』22話とは)
試し試され、泣き笑い。
選び選ばれ、時巡り。
傷つき癒やされ、夢描き。
最後に見つけた、運命の人 ──
頭は切れるが、他人の気持ちにはちょっと鈍感な二人。
大小さまざまな事件を通して、人との距離や関係性を探っていく物語。
主人公の二人が決してクラスの人気者になるでもなく。
理解者が一人いれば十分だと感じさせてくれる着地が心地いい。
最後まで小佐内さんの狡猾さが物語の軸になっていた展開も見事でした。
このまま大学生になった二人の姿を見てみたい。
小佐内さんが用意した京都の迷路を舞台にした物語をも、ぜひ味わいたいですね(笑)。
ああ、ついに終わってしまいました。
2期の終了というより、『小市民シリーズ』そのものの完結ですね。
完結したので、もうネタバレを気にせず、本作に関する記事やインタビューを思う存分読み漁れます(笑)。
短編集『巴里マカロンの謎』のエピソードは、(1期5話)『伯林あげぱんの謎』だけがアニメ化されました。
アニメ化されなかった短編があと3つ残っているので、そちらも読んでみます。
その後は、1期1話から改めて見直そうかなと考えています(笑)。
小佐内さんの本当の姿を知った上で、もう一度アニメも原作もじっくり味わいたい気分です。
新しい発見があれば、レビューに追記していきますね。
以上、TVアニメ『小市民シリーズ』第22話の感想&考察レビューでした。
1期と合わせて長きにわたってお付き合い下さりありがとうございました。
『小市民シリーズ』は終わってしまいましたが、他の作品レビューも書いているので、良かったらまたお越し下さい。
ではでは。
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疑問点 まとめ(Q&A一覧)
この章では、疑問点をまとめていきます。
- 今話で生まれ解決した疑問は、本文で解説して本章でまとめ
- 今話で解決しなかった疑問を、疑問XX-XX(話数-通し番号)として記録
⇒ 本章「疑問点まとめ(Q&A一覧)」でまとめ - 答えは、推測ではなくできるだけ(原作含む)作品内で明らかになった事実を記載
※推測が入る場合は、断りを入れる
⇒ 解決した疑問は、次話で削除
今話で解決した疑問 (クリックすると答えが表示されます)
残っている疑問
- 疑問 04-01 小佐内は、なぜ警察と関わりたくない?
- 疑問 09-01 中学生時代、小佐内は石和と何があった?
- 疑問 10-01 小佐内さんが石和を怖がっていたのは本当?
- 疑問 10-02 小佐内さん、中学時代の宿題はまだ残っている?
- 疑問 12-03 生徒指導教師・新田高義は、なぜこのタイミングで異動になった?
- 疑問 17-01 瓜野はどうなった?
- 疑問 19-01 3年前の事故、小佐内さんがいたのに、なぜブレーキを踏まなかった?
今週のX感想ポスト
#小市民シリーズ #小市民 22話(終)
— 時文@ここアニ(『薬屋』『小市民』レビュー中) (@toki23_a) June 22, 2025
悪人の最悪は蜜の味
甘い物好きなら見過ごせない!?
分かってたなら警察…ではなく最悪ぶつけるのが彼女らしい😓実はどちらも同じ復讐なのに何枚も上手
大学話は告白では!?
彼女といれば毎日がミステリー、いやサスペンスか🤣
本当にこれで完結なの!?大学編希望😆
#小市民シリーズ #小市民 全話総括
— 時文@ここアニ(『薬屋』『小市民』レビュー中) (@toki23_a) June 22, 2025
試し試され時巡り 最後に見つけた運命の人
頭は切れるが他人の気持ちには鈍感な2人が、様々な事件通して人との関係性模索する物語。2人を人気者にするでなく、理解者が1人いれば十分という着地が心地良い👍
最後まで狼の狡猾さを軸に据えていたのもお見事でした🎉