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こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『薬屋のひとりごと』第16話「鉛」を鑑賞しました。
本レビューではアニメ感想だけではなく、原作・コミカライズ情報も加え、個人的な解釈による解説・考察をしています。
皆さんの理解の助けになり、作品をより楽しんで頂ければ幸いです。
今回アニメ化されたのは──
- 原作
-
2巻 5話「鉛」
- コミック
-
5巻 19話「遺言」
今話の主なトピック (クリックすると該当項目へ)
今話で解決しなかった疑問
最下部「疑問点まとめ (Q&A一覧)」に記載
本レビューの方針
本レビューは、次話以降のネタバレなし
『薬屋のひとりごと』は、小説投稿サイト「小説家になろう」連載。
ライトノベルと、月刊誌2誌で別の漫画家によるコミカライズ2作品があります。
私は、ライトノベル、コミカライズ共に未読です。
アニメ鑑賞後、アニメ化済み時点までの部分を読み、レビューを作成します。
よって、次話以降のネタバレはなしなので、ご安心ください。
アニメ鑑賞
+
コミカライズ、ライトノベルを読み
知り得た情報を加味して「感想・解説・考察」
本レビューでは、ライトノベル、コミカライズの情報は、「原作情報」として区別できるよう表記します。
- 「ヒーロー文庫」のライトノベルを ── 原作
- 「月刊サンデーGX」連載のコミカライズを ── コミック
緑系の色を目印にしてね!
コミカライズは、別の漫画家による2作品が刊行されています。
- 「月刊ビッグガンガン」連載の「薬屋のひとりごと」
- 「月刊サンデーGX」連載の「薬屋のひとりごと〜猫猫の後宮謎解き手帳〜」
両方読みましたが、本サイトでは、アニメの補完となると情報の多い➋を選択しました。
「コミック」として紹介する情報は基本➋です。
が、今後も両方読んでいくので、➊にしかない情報があれば、その時は注釈を付けて紹介します。
同じ内容なのに、2つも読むんだ・・・
その方が、理解が深まるんだよ
全24話 各話リスト
話数 | サブタイトル | コミック | 原作 |
第13話 | 外廷勤務 | 4巻 | 2巻 |
第14話 | 新しい淑妃 | ||
第15話 | 鱠 | ||
5巻 | |||
第16話 | 鉛 | ||
第17話 | |||
第18話 | |||
第19話 | |||
6巻 | |||
第20話 | |||
第21話 | |||
第22話 | 7巻 | ||
第23話 | |||
第24話 | |||
8巻 |
※話数:リンクは各話レビューへ
※サブタイトル:ネタバレを避けるため次話以降はマスク
はじめに
宮廷御用達の彫金細工師が、後継者を指名せず秘伝技術も伝えず亡くなった。
弟子の息子達それぞれに残したのは作業小屋、開かないタンス、金魚鉢、そして不思議な遺言。
壬氏から調査を依頼された猫猫は、彼らの家を訪ねる。
職人技は見て盗め、親の意図は察すべし!?
彫金細工の才能あれど、気が小さい末っ子。
彫金細工の才能今一つでも、冷静で正確に仕事をこなす長男と、社交的な次男。
兄弟仲良くしろ、と押しつけても反発されるだけ。
父親の意図分かったからと言って、外部の人間が明かしても白けるだけ。
親子や兄弟の問題など、自ら気付かなければ解決しない。
謎を解き明かすだけが目的じゃない。
ましてや、得意げに探偵役をするのはあり得ない。
秘伝についても同様。
本人が気付けば、明かす必要はなし。
(秘伝は確かに残されていました。詳しくは本文で)
薬屋のひとりごとの神髄ここにあり。
それにしても、離れに入ってからタンスの仕掛けが明かされるまでのシーンはワクワクでした。
まさか本作で、こんなに凝った仕掛けが見られるとは!
うんっ!
え?え~~!?って感じだった!
では、今話を振り返っていきましょう!
感想&考察レビュー 第16話「鉛」
鉛 (事件編)
「皆、昔のように茶会でもするといい」。息子に秘伝を授けずに亡くなった宮廷御用達の彫金細工師が残した不思議な遺言。壬氏から調べてほしいと頼まれた猫猫は、彼らの家を訪ねる。
猫猫の興味対象
頭の回るそちらの下女が、調べてくれやしないものかと。
by 羅漢『薬屋のひとりごと』TVアニメ第15話
宮廷御用達の彫金細工師が亡くなり、秘伝の技術を伝えず、後継者も指名せずに亡くなった。
前話終盤、知人である彫金細工師の遺言解明を壬氏に依頼した羅漢。
羅漢は、猫猫に遺言を調べさせ、何を企んでいるのでしょうか・・・。
壬氏は、胡散臭いと思いながらも、軍師からの依頼を立場上断れないのか。
それとも、妓女の希少価値を下げる方法が気になるのでしょうか・・・。
しぶしぶ猫猫に羅漢の依頼を伝えます。
ちと面倒なことなんだが・・・。
by 壬氏『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
猫猫にとって、壬氏から頼まれるのは調薬や(面白い)事件以外は全て面倒事。
何を今更と思いながら聞きます。
なんだか、妙に乗り気じゃないか?
by 壬氏『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
猫猫は、なぜ乗り気だったのでしょうか?
原作でもその理由は述べられていません。
が、確かに原作でも興味をひかれていると記されています。
「ちと面倒なことなんだが」
by 『薬屋のひとりごと』原作2巻
いつもなら、猫猫に有無を言わさず面倒ごとを持ってくる壬氏にあるまじき台詞である。しかし、その一方で猫猫は興味をひかれていた。
原作やコミックに理由が描かれてないなら、推測するしかないですね。
猫猫は、不謹慎だと分かっていても不可解な事象や事件が大好物です。
結果、その手の厄介事への嗅覚が鋭くなっているのではないでしょうか。
粉塵爆発事故では、ボヤ程度に高官である李白がいることで事件性に感付きました。(14話 )
いつもは厄介事を楽しげに頼む壬氏が、今回の依頼を「ちと面倒」だと言ったのです。
壬氏ほどの人物を「ちと面倒」と思わせる事件とは?
そんな、興味が湧いたのではないでしょうか。
実際は ──
壬氏は、遺言の謎を依頼してきた羅漢を面倒だと思っています。
が、猫猫は、(この時点では)事件そのものが面倒と思っている節があります。
猫猫の性格です。
つまり、彫金細工師の秘伝が分かればいいということですね。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
このセリフを言っている頃には、壬氏に「ちと面倒」だと言わせる理由など脇に寄せ、遺言の謎に興味を引かれているでしょう(苦笑)。
もめ事を解決した後、なぜ今回の依頼を「ちと面倒」だと思ったのか・・・。
猫猫さんのことですから、何か気付いたかもしれませんね。
相続人は息子以外も
父親が残した遺言には形見分けの品が書かれていた。
長男には離れの作業小屋。
by 壬氏『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
次男には細工の施された家具。
三男には金魚鉢。
遺産相続にしては、かなり不相応な品。
通常、遺産相続の代表的なものは不動産やお金、あるいは金に換えられる美術品等の価値ある物。
離れや家具、ましてや金魚鉢なんて、最後に来るもの。
よほど貧乏職人かと思いきや(苦笑)、訪れた家屋は立派な屋敷。
まあ、3つの品は、それぞれ意味があったのは最後まで見れば分かりますが。
とは言え、なぜ実子にその程度の物しか相続されなかったのでしょうか?
答えは原作にありました。
母屋は、まだ兄弟たちの母が住んでいるため分けられることはなかったが、小屋と家具と金魚鉢となると、どう見ても下の子ほど損をしている気がする。
by 『薬屋のひとりごと』原作2巻
なるほど!
立派な母屋は母親、つまり奥様に相続されたのです。
軍師と薬師の知恵比べ
── 気になるなら行ってみればいい、ということだ。
準備がいい。
最初からこうなることを読んでいたみたいだ。面白い。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
気になるなら彫金細工師の屋敷へ行って、遺言の品を見てくればいい。
羅漢は、既に住所を書いた紙を壬氏に渡していました。
羅漢が住所を書いた紙をすぐに渡せたのは、既に準備していたからですね。
つまり──
壬氏の所に来る前から、この遺言の話を壬氏が聞いてくれるだけでなく猫猫に相談をして、猫猫がもっと詳しい話を知りたいと興味を持ってくれることまで想定していたのです。
壬氏様は、まんまと羅漢の思惑に乗せられているのです。
羅漢は、どこまで読んでいるのでしょうか。
さすが軍師と言ったところですが、不気味ですね・・・。
でも逆に、猫猫はその用意周到なところも読み切った上で受け取ります。
つまり、この依頼には何かあると分かった上で、受けて立ったのではないでしょうか。
いや、好奇心旺盛だから、ここまで聞いたら止められないか(苦笑)
馬閃連投
おや?
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
あれは・・・確か馬閃と言ったか。
今話も案内人は、若い武官・馬閃。
猫猫の歩き方から馬閃の描き方まで前話と同じで、デジャビュかと思いました(笑)。
宮廷内は、高順が案内。
宮廷の外は、馬閃が案内するよう役割分担されているのでしょうか。
それとも単に高順が忙しいだけか(笑)
そう思ってた
前もそうだったが、必要最低限しか話さない。
こちらを嫌っているようだ。害がないのなら別にそれでいい。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
なぜ馬閃が猫猫を嫌っているのか。
そして、猫猫は、なぜ嫌われても気にしないのでしょうか。
原作でも ──
仕事と割り切ってしまえばどうとも思わない。
by 『薬屋のひとりごと』原作2巻
嫌われている理由を探ったり改善しようとしたりはせず、なんとも思っていません。
馬閃は、なぜ猫猫を嫌っている?
私は、馬閃は猫猫をやっかんでいるのかな、と思っています(笑)。
だとしたら、今話のもめ事もサクッと解決した猫猫を見て、少し見直したのではないでしょうか。
彫金細工師の屋敷から帰る馬車の中、猫猫を見る馬閃の表情からそんな感情を読み取ったのは、私だけではないでしょう。
ミステリー要素たっぷり
── 変わった家具の配置だな。
確かに・・・。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
普通、こんな真ん中に置いたら邪魔だろう。
それでも部屋の見た目が悪くないのは、テーブルの配置の妙な統一感と、タンスの洒落た雰囲気のせいか。
超金細工で彩られたタンスは、美術品!?
まるで、鑑賞するかのように、タンスを囲んで配置された席。
まともに日が差す窓は一つに、妙な位置にあるタンス。
この「離れ」自体が不思議な存在。
タンスは動かないよう固定され、引き出しの大きさは不均衡。
鍵が見当たらない鍵穴に、鍵はあっても入らない鍵穴。
ミステリー好きには、何か仕掛けがある予感十分の舞台装置!
確かに!絶対何かありそう!
言いつけどおり
── 本当に分かるんですかね、おやじの残したものについて。
それは・・・。
by 馬閃『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
長男に直球で尋ねられ、一瞬口ごもる馬閃。
猫猫は、アゴで返します。
うん、うん、んっんっ!
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
猫猫は、馬閃に頷いて、何かを促しています ──
原作によると ──
馬閃は、ちらりと猫猫を見る。猫猫はとりあえずこくんと頷いて、首をくいっと三兄弟に向けた。馬閃が猫猫の意図を読み取ったかは知らないが、なにごともなかったかのように三兄弟を見る。
by 『薬屋のひとりごと』原作2巻
「話をもっと詳しく聞かせてもらわないとなんとも言えない」
「大丈夫だから、もっと詳しく話を聞いて」
「解決するために、もっと情報を聞き出して」
「そのために来たのだから、どんな些細なことでもいいから話して」
的な意図を伝えようとしたのでしょう。
なぜ、猫猫は言葉にせず、ジェスチャーだけで返事をしたのでしょうか?
しかもアゴで使うような失礼な真似を(苦笑)。
これは、事前に馬閃自身から ──
前もそうだったが、お前はお付きという形だ。
by 馬閃『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
勝手に動くなよ。
「勝手に動くな」と言われたので、勝手に口を開くわけにはいかない。
その割には、部屋に入った途端すぐにチェックしてたけど
一応、言いつけを守っているのだから、馬閃も猫猫に対して何も言えないのでしょう(苦笑)。
いや、でも十分猫猫の意図を読み取って、兄弟に対応しています。
良いコンビなのでは?(笑)
原作は、もっと明快でした。
「家人には話がついている。ただ、表向きは私が話を聞くことになっていて、おまえはお付という形だ」
by 『薬屋のひとりごと』原作2巻
「わかりました」
馬閃が猫猫に指示をしたのは、「話を聞くのは馬閃」ということだけです。
話以外は指示されなかったので、猫猫は部屋に入ると勝手にチェックし始めたのです。
でも「話を聞くのは馬閃」だから、促されても口を開かずに、ジェスチャーで返したのです。
猫猫さんは、言いつけを守っているのです!
定位置
全員わざわざ移動して座ったということは、定位置が決まっているんだろう。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
遺言にある茶会をするよう頼んでいたのか、奥方にお茶を用意してもらい、離れの作業小屋で茶会をなぞる三兄弟。
窓の前を避けてるのは、ただの習慣か。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
ちょうどこの時間は窓から光が差しているし・・・。
いやいやいや。
窓の前は、椅子もあるし、真ん中だから亡くなった父親が座っていたのでは??
私もそう思った!
それとも、父親は馬閃や猫猫が座っている場所に座っていたのでしょうか。
いずれにせよ、窓の前 ── 窓とタンスの間に誰もいないことが重要なのです。
馬閃は高順似!?
── 何か分かったのか?
誰かに似ていると思ったら・・・こいつは高順に似ているのだな。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
馬閃に出会った時から、猫猫は、誰かに似ていると言っていました。
でも、馬閃の何を見て高順に似ていると思ったのでしょうか?
しかもこのタイミングで・・・。
正直、話しかけてきた馬閃の姿を見て、高順には見えません(すみません)。
その答えは原作にありました。
はて、と首を傾げたまま歩いていくと、三兄弟に変な目で見られた。馬閃が額を押さえてうつむいている。誰かに似ていると思ったら、こいつは高順に似ているのだな、と妙に納得してしまった。
by 『薬屋のひとりごと』原作2巻
馬閃が猫猫に声をかけるより前。
皆が席に座っているのに、猫猫は一人立ち上がり ──
焼けた跡?
── おい。
日が当たるのは、そんなに長い時間じゃない。
ん?中に何か詰まってる?
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
アニメ化されていませんが ──
猫猫が黙って勝手に動き出したので、三兄弟は不審に思い、馬閃は頭を抱えていたのです。
この馬閃の頭を抱える仕草が、高順に似ていたのではないでしょうか。
だから、アニメで ──
── 何か分かったのか?
誰かに似ていると思ったら・・・こいつは高順に似ているのだな。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
上記セリフの後、高順と馬閃が、額に手を当てため息をつくシーンが流れたのです。
それにしても、馬閃が高順に似ているとはどうしてでしょうか?
武官は似てくる?
ならば、武官である李白も似ているはずですけど、そんなことは言っていません。
ならば、親族かもっと近い関係が思い浮かびますが・・・。
そう言えば、5話冒頭で ──
さすがは馬の一族。
by 壬氏『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
壬氏が馬閃を褒めると、高順の表情が満足そうに見えたのは気のせいでしょうか・・・?
さて、この後、猫猫は自ら三兄弟に話しかけます。
先ほど、馬閃の言いつけを守って猫猫は口を閉じていると書きました。
なのに話しているじゃないか!とお思いですよね(笑)。
さっきは、馬閃の促しにアゴで返したのに、なぜ急に話すようになったのでしょうか?
猫猫が口を開いたのは ──
馬閃が「何か分かったのか?」と質問したからではないでしょうか?
猫猫のことです。
「話を聞くのは私」と言っておきながら、猫猫に質問をする。
これは、答えても良い証拠、あるいは馬閃とは会話しても良い証拠。
次男と会話を続けても馬閃は注意しないので、そのまま自分が三兄弟に話しかけても良いと判断したのでしょう。
猫猫らしい・・・
まあ、実際は ──
謎と推理に夢中になって、言いつけなんて忘れてしまったのでしょう・・・。
あっ!?
確かにそっちの方があり得る!
鉛 (解決編)
兄弟に渡された品と残された遺言を組み合わせて考えると・・・猫猫にある推測が浮かんだ。
収れん現象
触るな!
── ひっ・・・
すみません、目に入ると失明してしまいます。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
水を入れた金魚鉢を窓際に置くと、太陽光が一点に集まりタンスへ。
「太陽光の収れん現象」ですね。
「太陽光の収れん現象」
太陽光が、レンズや鏡等で屈折・反射して、1点に集まる(収れん)こと。
子どもの頃、虫眼鏡使って黒い紙をジリジリ燃やしたな~~
実際、現実世界でも鏡やガラス玉で太陽光の収れんによる火災は起きています。
水の入ったペットボトルで火災が発生したなんて事例もあります。
普通のハンダを溶かすまでの温度にはならないまでも、燃えやすいもの(例えば新聞紙等)を火種にして火災が発生してしまいます。
「目に入ると失明してしまう」は大げさじゃないですね。
遺言の意味
私はただ「皆で昔と同じように茶会をしろ」という遺言に従っただけです。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
「皆、昔のように茶会でもするといい」とは ──
- 皆
-
皆に渡した品
- 昔のように
-
昔と同じように、水を入れた金魚鉢を窓際に置いて
- 茶会をする
-
いつも茶会をしていた時間に
三兄弟が品を持ち寄り茶会をしないと、引き出しは開かない仕掛けになっていたのです。
アニメだけでなく、原作でも描かれていませんが ──
遺言にある茶会をすれば、何か分かるのではないか。
そう思い、昔やっていた茶会と同じ場所・同じ時間に訪問して、お茶会をするよう依頼したのではないでしょうか。
まあ、実際は太陽の位置は日々ずれるので、いつもと同じ時間だからと言ってこれほど正確に同じ所に収れんするとは思えませんが・・・。
そこはまあ、本筋ではないのでご愛敬ということで(笑)。
今話で述べたいのは、3人揃わないと動かない仕掛けと、短時間の収れんでも溶けるハンダが重要なのです。
三兄弟が昔と同じように茶会をして、開かずの引き出しが開いた。
ならば、中に入っていた品々は秘伝の秘術!?
死期を悟っていた?
もしかしてお父上は、貧血や腹痛などを繰り返していませんでしたか?
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
他に吐き気や気うつなども。
猫猫が突然尋ねだした彫金細工師の体調。
貧血、腹痛、吐き気、気うつ。
これらの症状と、直後にハンダの使用を確認していることから、三兄弟の父親は鉛中毒だったと思われます。
それらしいことが、ミニアニメでも語られています。
花街の緑青館という店に羅門という薬師がいます。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
医術の腕も確かなので、何か体調が悪いようであれば訪ねてみて下さい。
彫金細工師を継ぐであろう三男も鉛中毒になる可能性があるので、猫猫はオヤジのことを伝えたのでしょう。
鉛中毒と言えば ──
「おしろいは毒」だったのも、そのおしろいに鉛が入っていたからです。(1話 )
おしろいに含まれている鉛が皮膚から浸透し、鉛中毒症状を起こしたのです。
つまり、三兄弟の父親は死期が近いと感じていたのです。
秘術を実子に伝えなければならない。
でも、三兄弟の仲は疎遠。
だから、手の込んだ仕掛けで伝えることにしたのではないでしょうか。
三人が協力しなければ、タンスの引き出しは開かない。
タンスの引き出しの中身を見なければ、秘術は分からない。
後継者は父親が指名しなくても、三兄弟は誰が適任か分かっているので話し合って決めれば良い。
だからと言って、後継者一人が家を継ぐのではなく、三兄弟が協力して家業を盛り上げていけば良い。
そんなメッセージを仕掛けに込めたのではないでしょうか。
残した秘術は・・・
恐らく、死んだ父親の意図を理解できたのは、末っ子だけだろう。
ハンダは数種類の金属を混ぜ合わせることで、本来個々で溶ける温度より低い温度で溶けるという。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
「死んだ父親の意図」とは、秘術と三兄弟仲良くの二つでしょう。
だから、末っ子は、二人の兄に協力を求めたのです。
では、三兄弟の父親が残した秘術とは何だったのでしょうか?
その解は、猫猫の独り言の中にありましたね。
3つの塊のうち2つは鉛と錫、そしてもう一つの塊を合わせることで、新しい金属ができるとすればどうだろう。
しかも、金魚鉢で集約した光の熱とはいえ、さして当たった時間は長くなかった。
それだけ、溶ける温度が低いということだ。大きさが違う引き出しは、配合の比率に関係しているかもしれないが・・・。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
父親が残した秘術は ──
ずばり「通常のハンダよりも低い温度で溶ける金属」ではないでしょうか。
だから、太陽光を収れんしたとはいえ、短時間の照射で溶けたのです。
それも冬の日差しで!
(収れんしたからといって)太陽の光程度で溶けるハンダなど誰も知らない様子です。
そこに気付けば、あの鍵は新素材であることが分かります。
その作り方は、タンス上段の引き出しに、材料と配合が残されていたのです。
まあ実際は、彫金細工で低い温度で溶ける金属が何に使えるのか想像できませんが(笑)。
何かの仕掛けに使えるんじゃね?
いや、仕掛けいらないから!
逆に言うと ──
彫金細工で使っていないから、熱心だった末っ子も知らなかったのでしょう。
父親はその金属を見つけてはいたが、作品には活かせなかった。
息子がその技術を継ぎ、新しい作品を生み出していく?
いい話じゃないですか~~。
原) 鉛も毒
ハンダは数種類の金属を混ぜ合わせることで、本来個々で溶ける温度より低い温度で溶けるという。
by 『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
博識なのは分かっていましたが、ハンダの材料まで知っている我らが猫猫さん!
でも、なぜ猫猫は、金属のことにまで詳しいのでしょうか?
教えて日向夏先生!
ということで原作に当たってみると・・・ありました!(笑)
『はんだ』は数種類の金属を混ぜ合わせることで、本来、個々で溶ける温度より低い温度で溶けるという。猫猫が知っているのは、鉛と錫を合わせたものだ。なぜ詳しいかと言えば、鉛もまた毒となる金属だからだ。
by 『薬屋のひとりごと』原作2巻
鉛は人体には毒!
猫猫にとっては、毒であれば興味の対象!?
興味があれば、調べるのも覚えるのも苦ではないのです。
猫猫らしい理由で、なんだかとても納得です!(笑)
確かに、納得できる!
この手の根拠はしっかり記載してくれているので嬉しいですね!
イタズラ防止
ワザは見て盗めとか、職人気質の客人が昔言ってたな。
それを真に受けて、オヤジが採ってきた薬草を見よう見まねで煎じて、中毒を起こして・・・。
── まずは、聞きなさい。
と諭されたこともある。
by 猫猫『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
オヤジが教えてくれないと思ったのか、教えてもらうのを待てなかったのか・・・。
「ワザは見て盗め」という言葉を信じて、実行する猫猫。
「ワザは見て盗め」ってなんか格好いいよね!
あーー確かに・・・
園遊会での毒混入事件で、猫猫が銀の器に粉を付けて指紋を浮き立たせました。(9話 )
猫猫にこの知識があったのは、実際オヤジに仕掛けられていたからです。
昔、おやじが猫猫の悪戯防止にと、さわってはいけない器に染料をつけていたことがあった。
by 『薬屋のひとりごと』原作2巻
オヤジが仕掛けをするようになったのは、「ワザは見て盗め」を猫猫が実行したのがキッカケかもしれないですね(笑)。
鉛 (エピローグ)
後日、羅漢は壬氏の元に訪れ、彫金細工師の三兄弟の結末を伝える。
なぜ猫猫に?
── やはり、あの三兄弟、一番できるのは末の息子だったようですね。
軍師殿には分かっていたのだろう。
by 壬氏『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
羅漢は弟子達の技量を見抜いていた、ということですね。
気になるのは ──
なぜ末っ子が一番だと分かっていたのに、猫猫に調べさせたのでしょうか?
一番の腕前は三男だと分かっていたが、遺言の意味や秘術は分からなかった?
それなら話は簡単で、単に自分では謎を解けない(あるいは興味がない)ので猫猫を頼ったのでしょう。
問題は、羅漢は遺言の意味も分かっていた場合。
そうなると、なぜ猫猫に任せたのか?という疑問が残ります・・・。
羅漢はどこまで分かっていて、何の為に猫猫に調べさせたのでしょうか。
羅漢は三男が一番の腕前だと知っていて、なぜ猫猫に調べさせた?
羅漢は、なぜ猫猫に調査させたのでしょうか?
特に根拠はなく、考察と言うより妄想なので話半分で聞いて下さい。
ここまで私のレビューを読んで頂いた方なら、何となく察して頂いているかもしれませんが・・・。
私が、一つ思い当たるのは ──
猫猫は、手の荒れ具合や、父親の体調を唯一把握していたことから、三男が一番有望だと気付いていました。
タンスの引き出しと中身を見て、秘伝の秘術も目星が付きました。
が、どちらも猫猫は口出ししていません。
猫猫は、遺言の謎を解き明かし、父親が残したメッセージの解釈は個々人に任せています。
三兄弟の誰が後継者かなど、部外者の猫猫が口を挟むようなことではない。
親子や兄弟のことなど、皆いい大人なんだから自分達で決めなくてはならない。
門外不出の秘術を、後継者ではない猫猫が知ったとは分からない方がいい。
(ここで話したら、馬閃にまで知られてしまいます)
このような気遣いは羅漢にはできません。
だから、猫猫に任せたのではないでしょうか。
これも適材適所と言えるな…
壬氏曰く、羅漢の人を見る目は確か。
猫猫の人柄、性格、解決へのアプローチ方法も分かって依頼したのではないでしょうか。
猫猫と会ったこともないのに、なぜそこまで詳しいのかですって?
そのために、ボヤ事故の噂話を聞いて、鱠のフグ中毒事件を調査させたのかもしれないですね。
帝弟
兄、弟など関係ない。
by 羅漢『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
才能があるなら目をかけてやるべきだろうとね。
表向き彫金細工師の三兄弟の事を言っていますが、何かを含んでいるのは明らかですね。
猫猫のこと、壬氏のこと。
どちらを取ることも可能です。
私は、話の流れから、壬氏のことだと捉えました。
根拠はその前のセリフ ──
最後に先代が作った細工は素晴らしかった。
by 羅漢『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
あれは、単なる金具でしたが、祭具にあの細工を使うと映えるでしょうな。
祭具とは、祭で使う道具。
帝のような天上人が祭で使う道具のことを指しているのでしょう。
でも、壬氏は高官ではあるが(表向き)皇族ではありません。
壬氏の今の宦官長は仮の姿で、正体が時折見え隠れしています。(11話 )
羅漢は、壬氏の正体を見抜いているのではないでしょうか。
となると ──
兄、弟など関係ない。
by 羅漢『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
才能があるなら目をかけてやるべきだろうとね。
というセリフが効いてきます。
羅漢は、壬氏はもっと別のポストの方が活きると言っているのではないでしょうか。
ん?だとすると、羅漢が完全悪くは見えなくなってきたぞ!?
まあ軍師ですから、胡散臭くても悪人ではないのでしょう・・・多分(笑)。
知っているのか偶然か
ああ、妓女の希少価値を下げる方法ですか。
そういうことは、その世界を知る者に聞いた方が早い。
by 羅漢『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
「妓女の希少価値を下げる方法」を聞くために遺言状の謎の依頼を受けたのに、解決しても方法は教えてもらえず。
「その世界を知る者に聞いた方が早い」とはぐらかされる。
なんとも腹立たしい男ですね、羅漢は・・・。
それに「その世界を知る者」と言えば ──
少なくとも壬氏に対しては、傍にいる猫猫を指しています。
何やら、猫猫には聞いてはいけない予感がしますが・・・。
壬氏様大丈夫でしょうか・・・。
なんか、嫌な感じ…
羅漢が仕込んだ布石では?というのは言い過ぎか…
続いて ──
これは部屋付きの女官たちにでもあげてくだされ。
by 羅漢『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
甘すぎない飲みやすい口ですから。
猫猫は甘党ではなく辛党です。
猫猫の好みを知っていて「甘すぎない」ジュースを渡したのでしょうか?
やはり、羅漢は不気味で、まだまだ何を考えているのか分からないですね。
どこへ行く!?
俺に化粧をしてくれないか?
by 壬氏『薬屋のひとりごと』TVアニメ第16話
羅漢と壬氏のやり取りで、羅漢と猫猫との関係や、壬氏の正体を羅漢がどこまで知っているのか気になっていたのに、最後のセリフで吹っ飛びました!(笑)
今話冒頭、彫金細工師の遺言は「ちと面倒なこと」と渋々話し出しておきながら・・・。
化粧を頼むのはサラリと言ってのける!(爆)
壬氏様らしいかな
いや、これぞ壬氏様か~~!
そのままでも見た目麗しき天女のような容姿を持つ壬氏様。
さらに化粧をしてどこへ行くのでしょうか?
いや、一体全体、この作品の方向性はどこへ進んでいくのでしょうか~~~!?
えっ!?そこまで!?
おわりに (『薬屋のひとりごと』16話とは)
前話同様、今話も原作1話分がアニメ化されました。
それまでは、大体2話分進んでいました
前話「鱠」は26ページと、他よりページ数が多いので当然として。
なんと今話「鉛」は、14ページ!
他の話数より少し多い程度。
次の話数に入ってもいい位のボリュームですが、留めています。
原作の量は少ないのに、アニメ鑑賞初見時、どこをどう引き延ばしたか(失礼)全く分かりませんでした。
前半クールは尺稼ぎしてるなーと思った箇所がチラホラあったから(苦笑)
原作を読むと、アニメは行間を補足するように映像化。
それどころか、三兄弟の結末をアニメオリジナルで描いて、ヒューマンドラマに仕立て上げています。(羅漢との後日談も原作にはありません)
お見事でした!
太陽光が収れんされ、全ての引き出しを取り出すまでのシーンなんてアニメならでは!
うん。ハンダが解けるシーン、キレイだった!
本当に『薬屋のひとりごと』は、丁寧にアニメ化されています。
嬉しいですね。
以上、TVアニメ『薬屋のひとりごと』第16話の感想&考察レビューでした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
17話のレビューも書いています。
良かったらご覧ください。
ではでは。
するといいな(笑)
ミステリー脳!
疑問点 まとめ(Q&A一覧)
この章では、疑問点をまとめていきます。
- 今話で生まれ解決した疑問は、本文で解説して本章でまとめ
- 今話で解決しなかった疑問を、疑問XX-XX(話数-通し番号)として記録
⇒ 本章「疑問点まとめ(Q&A一覧)」でまとめ - 答えは、推測ではなくできるだけ(原作含む)作品内で明らかになった事実を記載
※推測が入る場合は、断りを入れる
⇒ 解決した疑問は、次話で削除
今話で解決した疑問 (クリックすると答えが表示されます)
今話で新たに発生し、解決しなかった疑問
- 疑問 16-01 羅漢は三男が一番の腕前だと知っていて、なぜ猫猫に調べさせた?
残っている疑問
- 疑問 02-01 壬氏は、後宮管理者なのに、なぜ後宮の外まで判断を求められている?
- 疑問 02-02 水差しの弁償、仕送りから引いたのは期間限定?
- 疑問 02-03 結局、秘薬は何の為だったの?
- 疑問 03-01 西都の玉葉妃が、異国の姫とは?
- 疑問 03-02 時折、猫猫が左手を見ているのはなぜか?
- 疑問 05-01 粉を染み込ませた木簡は、誰が何に使っているのか?
- 疑問 05-01 簪(かんざし)を渡す意味は?
- 疑問 06-01 園遊会で、なぜ壬氏は違うカンザシを挿し、襟が乱れていたのか?
- 疑問 07-01 壬氏の本当の身分とは?
- 疑問 07-02 腕の筋肉の意味は?
- 疑問 08-01 緑青館の離れにいるのは誰?
- 疑問 09-01 壬氏と亡くなった武人・浩然との関係は?
- 疑問 10-01 後宮内の事件に最終判断を下しているのは誰?
- 疑問 10-03 現帝の東宮時代、妃はなぜ一人しかいなかったのか?
- 疑問 11-01 阿多妃を南の離宮に住ませるのは、帝の愛着か、それとも・・・
- 疑問 11-02 阿多妃の子は生きているのか?
- 疑問 12-01 やり手婆は、なぜ猫猫を妓女にしたい?
- 疑問 13-01 壬氏は、帝に何を頼まれたのか?
- 疑問 13-02 契約書を見た時、羅門(オヤジ)が表情を曇らせたのはなぜ?
- 疑問 13-03 官女・翠苓は、なぜ白檀の香りがする?
- 疑問 14-01 猫猫は、なぜ軍部を気にしている?
- 疑問 14-02 爆発現場にあった上等なキセルは、倉庫番のもの?
- 疑問 15-01 馬閃は、なぜ猫猫を嫌っている?
- 疑問 15-02 同じ海藻でも下ごしらえによっては毒があると、悪知恵を与えたのは誰か?
- 疑問 15-03 羅漢が馴染みのある緑青館の妓女とは?
今週の感想ツイート
#薬屋のひとりごと 16話
— 時文@ここアニ(薬屋のひとりごとレビュー中) (@toki23_a) January 28, 2024
ワザは見て盗め 親の意図は察すべし
押してダメなら 自ら気付き歩ませる
才能あれど気が小さく ワザ今一つでも他優れてる
押しつけると反発され 意図明かしても白けるだけ
謎を解くだけじゃない 独り言の神髄ここにあり
タンスの仕掛けがイタズラ好きのセンス😆
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