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こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『チ。-地球の運動について-』第8話「イカロスにならねば」を鑑賞しました。
本レビューではアニメ感想だけではなく、原作コミック情報も加え、個人的な解釈による解説・考察をしています。
皆さんの理解の助けになり、作品をより楽しんで頂ければ幸いです。
今回アニメ化されたのは──
- 原作コミック『チ。-地球の運動について-』第3集
-
第16話~第18話序盤まで
今話の主なトピック (クリックすると該当項目へ)
- ヨレンタは、なぜ二人を断らない?
- (原作) バデーニとオクジーが案内された部屋は、どこ?
- (解説) 普遍論争とは?
- (考察) 普遍論争について、ヨレンタの推しから何を見た?
- ヘラクレイデスとは?
- フィロラオスのバカげた仮説とは?
- (原作) 評価されるヨレンタの論文
- (考察) なぜピャスト伯が井戸に!?
- (原作) コルベに謝罪!?
※「(原作)」は、原作情報を根拠の中心にして考察しているトピック
今話で解決しなかった疑問
最下部「疑問点まとめ (Q&A一覧)」に記載
本レビューの方針
本レビューは、次話以降のネタバレなし
アニメ『チ。-地球の運動について-』の原作は、魚豊先生による同名漫画。
私は原作未読です。
アニメ鑑賞後、アニメ化済み時点までの部分を読み、レビューを作成しています。
アニメ鑑賞
+
原作コミックを読み
知り得た情報を加味して「感想・解説・考察」
よって、次話以降のネタバレはなしなのでご安心ください。
なお、原作コミックの情報は、「原作情報」として区別できるよう記載します。
こんな感じです
緑系の色を目印にしてね!
引用部分も次のように緑系をワンポイントに ──
燃やす理屈、なんかより!!
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』コミック1巻
僕の直感は、地動説を信じたい!!
ちなみに、考察や疑問はオレンジ系 ──
補足や余談、参考情報はブルー系 ──
と色分けしているので、読む際の目安にして下さい。
全25話 各話リスト
話数 | サブタイトル | 原作漫画 |
第1話 | 『地動説』、とでも呼ぼうか | 第1集 |
第2話 | 今から、地球を動かす | |
第3話 | 僕は、地動説を信じてます | |
第4話 | この地球は、天国なんかよりも美しい | 第2集 |
第5話 | 私が死んでもこの世界は続く | |
第6話 | 世界を、動かせ | |
第7話 | 真理のためなら | 第3集 |
第8話 | イカロスにならねば | |
第9話 | ||
第10話 | ||
第11話 | ||
第12話 |
※話数:リンクは各話レビューへ
※サブタイトル、原作漫画:ネタバレを避けるため次話以降はマスク
はじめに
持てる者を見つけたバデーニは、ヨレンタを試すように見定める。
思想上問題がある禁忌を聞いたヨレンタは、コルベに相談しようとするが・・・。
夜空見上げて、歴史動かす。
地球儀動かし、心震わせる。
知的探究心か、研究者の性か・・・。
たとえ禁忌と分かっていても、そこに真理があるとみれば手を出さずにいられない?
それはピャスト伯も同様で、真理チラつかせ、ボス巻き込むヨレンタが逞しい。
いや、でもこんなに早くピャスト伯に話すとは思わなかった(笑)。
時にはイカロスのような大胆さ。
研究へのアプローチだけでなく、行動面まで大胆になっていくとは・・・面白い!
さて、ピャスト伯が伸るか反るかの大バクチ?
そういや、貴族なら禁忌を研究しても問題ない??
貴族と教会、どちらが強い権限を持つのか・・・。
ただ、ピャスト伯の残り時間は少ないと思うが・・・。
それにしても、バデーニが闇バイトの仕掛け人にしか見えない
それ!
では、今話を振り返っていきましょう。
感想&考察レビュー 第8話「イカロスにならねば」
ヘッドハンティング
声を掛けられたヨレンタは、難問を解いたのは主人だと誤魔化すがバデーニには見抜かれていた。バデーニは、ヨレンタを見定めるために少しずつ核心に近づいていく。
持てる者…否、慌てる者
── たった半日であなたが解いたんですか?
いえいえ、私は解答者じゃありません。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
ほら、ここ男性名、男性名。
前話、あれほど自分の名を出すのに拘っていたのに、今回は自ら男性名を書いて主張しないヨレンタ。
でも、バレバレですね(苦笑)。
うん、動揺しすぎ(苦笑)
まあ、14才だからね…
では、そのご主人に会わせて頂けますか?
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
14歳の女の子です。
怪しい輩もいるだろうし、注意するよう父親から言われていないのでしょうか・・・。
威圧感たっぷりの明らかに怪しい男二人に声を掛けられ、なぜヨレンタは断らないのでしょうか。
バデーニが掲示板に難問を貼ったのは ──
暇つぶしでも、自己アピールでも、問題を解いて欲しいのでもありません。
“解答者へ 宇宙論について用件あり“
“連絡されたし“何だろう、これ?
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
問題を解いた人に対して用件がある、と最初から断っています。
単に問題のやりとりをするだけでなく、接触したいと書いてあったのです。
ヨレンタも少しは意識していただろうから、男性名を書いたのでしょう。
ですが、解答者に会いたいと言われた時の回答を用意していなかったのです・・・。
いや、それだけ、難問を解くのに意識が集中し過ぎていたのでしょう。
でも・・・悪いとかどうでもいいからあれの答えが気になる・・・。
いいや、解いてから考えよう。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第7話
バデーニの問題が面白かったのでしょうね。
とにかく答えを知りたくて、それ以外のことは一旦置いといたのです。
「用件があるので連絡されたし」と書いてある問題に対して解答し、(偽名とは言え)名前を書いたのです。
偽名を書いたので、名前からは見つからないと考えていたのでしょう。
でも、解答を貼った瞬間を抑えられたので逃げられなかったのです・・・。
当分ってどれ位?
── 当分です・・・。
分かりました。
では伝言をお伝えしたいのですが、ここでは少し・・・。失礼ですが、そちらへ伺わせて頂けないでしょうか。
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
兎にも角にも、ヨレンタが曖昧に答えたので、悪徳・・・失礼。
強引で狡猾なバデーニにグイグイつけ込まれてしまったのです。
悪徳って言った!
だって、やり方が悪徳商法みたいだもん…
確かに…
原) 研究所?
失礼ですが、そちらへ伺わせて頂けないでしょうか。
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
さて、そちらとはどちら?
そうだ、あの部屋どこだったの?
解答者はヨレンタの「職場の主人」なので、てっきりその職場、つまり研究所に連れて行ったのだと思っていました。
でも、そこでは研究所員とは誰とも出会わず。
それどころか、バデーニはヨレンタの職場がピャスト伯の研究所だと気付いていません。
だから中盤、バデーニは ──
まさか、あなたが働いてるのって、あのピャスト伯の施設ですか!?
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
驚いたのでしょう。
では、一体全体、前半のあの場所は何だったのでしょうか?
答えは原作にありました。
── 失礼ですが、そちらへ伺わせ頂けないでしょうか。
え、えぇ、ではあの・・・下宿先の応接室まで・・・。
※太字部分はアニメではカット
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』コミック第3集
バデーニとオクジーを招いたのは、ヨレンタの下宿先。
それも応接室だったのです。
いや~いきなり自宅に招き入れるのも変(危険)だし、一体どこだろうと思っていました。
なるほど、下宿先の応接室だったのです。
だったら安心だね
地球儀が置いてあるので、所員もここに下宿してるのかな?
中央修道院
そういえば自己紹介まだでした。
- 中略 -
俺はええと、こちらのバデーニさんの・・・。
── 雑用係です。えっ!?
by オクジー『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
オクジーは、交渉に向いていませんね(苦笑)。
地動説は異端なので、信頼できる相手にしか話せません。
協力者は役に立つ人でなくてはならず、かつ口が固くなくては地動説は話せません。
よって、相手の実力と素性を見極めるまでは、禁忌を研究していると相手に悟られてはダメなのです。
ましてや引き込もうとする相手だと尚のこと慎重にならないと・・・。
にも関わらず、オクジーはバデーニの「共同研究者」と言いかけたのです。
「共同研究者」と名乗れば、何を研究しているのか聞かれてしまいます。
その場合、適当に答えるか誤魔化すしかありません。
いずれにせよ、相手に隠し事をしていると不審がられてしまう可能性が出てくるのです。
だから、バデーニは「雑用係」と被せたのでしょう(笑)。
私はバデーニ。
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
中央修道院から、今は村の副助祭をしています。
物は言いようですね(苦笑)。
バデーニは禁書を読んだ罰で田舎の教会に左遷されたのに、まるでまだ中央修道院に席があり、派遣されたかのように言って自分の格を高めています。
最初、ヨレンタを信用させるためにウソを付いたのだと思いました。
現に、ヨレンタは驚き関心を寄せます。
中央修道院!? あの?
── ええ、あの。
すごいな、初めて会いました。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
中央修道院は、修道院の中でも優秀な人が集められています。
覚えているか、この修道院に入る条件を?
── 3校以上の上級大学から推薦されている者のみ、です。
そうだ。
by 修道院長『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第6話
我々は神に仕える仕事をする、選ばれし集団だ。
上級大学に行くことすらエリートなのに、その大学3校から推薦されないと中央修道院に入れないのです。
勉強好きなヨレンタにとっては憧れの対象でしょう。
でも、バデーニはヨレンタを信用させるためにウソを付いたのではないでしょう。
これまでの言動を見るに ── バデーニは相当プライドが高い人間です。
修道院に入ったのも、神に仕えたいとか聖職者になりたいとか、そんな殊勝な心がけではなく、天文学を自由に勉強できると言ったところでしょう。
だから ──
もうここで得られるものは全て得たし、還俗して大学でも行くか。
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第6話
還俗とは、修道院を辞めて一般人に戻ること。
修道院にこだわりもないのです。
あと、修道院に期待しているのは自分の格付けでしょうか・・・。
このままでは近いうちに対抗勢力によって、教会正統派は崩れるぞ!
そしたら・・・そしたら私の格も落ちるではないか!
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第6話
バデーニは、教会正統派のことより自分の格が落ちることを気にしています(苦笑)。
ヨレンタに中央修道院を肩書きっぽく名乗ったのは、プライドの高さ故。
つまり、相手を信用させる云々関係なく、外部の人には昔の栄光を語っているのではないでしょうか。
普遍論争
普遍論争ではどちらの立場を?
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
哲学っぽい話が出て来ましたね(汗)。
理系の私には縁遠い世界…
「普遍論争」とは、中世ヨーロッパ時代、スコラ哲学で論じられた論争のこと。
「普遍」とは、複数の個に対する概念のこと。
例えば「人間のヨレンタ」は、「ヨレンタ」が個であり、「人間」が普遍です。
「普遍論争」とは、その普遍(概念)が実際に存在するかという論争です。
って言っても、なんのこっちゃだよね
うん…
でも、これ地動説研究に繋がっていく話だよ
えっ、そうなの!?
うん
バデーニが、なぜヨレンタを気に入ったかに繋がる
お~~、じゃあ頑張って理解する
教えて!
では「普遍論争」とは何なのかを、できるだけ簡単に。
そして、ヨレンタの答えを聞いて、バデーニは何が分かったのかを説明しましょう。
まずは、「普遍論争」から。
「普遍論争」とは ──
普遍のあり方をめぐる中世スコラ学の論争。普遍の実在を認める実在論、個物にのみ実在を認め普遍は言語・名のみとする唯名論、- 中略 - などの立場が対立した。
(広辞苑から一部抜粋)
要は ──
普遍と個物。
個物は存在するが、普遍は存在するか否かの論争です。
少し例を出して考えてみましょう。
例えば「人間の太郎」「犬のポチ」。
定番の名前なので、実際にいるでしょう。
2023年の名前ランキング1位は、女の子は「陽葵」犬は「ムギ」だそうです。
1位だからきっと多くいるでしょう。
さて、「人間の太郎」と「人間の陽葵」。
「犬のポチ」と、「犬のムギ」。
太郎さんに陽葵さん、ポチにムギ。
実際、こんな名前の人や犬は、この世に存在するでしょう。
では、普遍(概念)である「人間」「犬」という概念は実在するでしょうか?
これが、「普遍論争」の論点です。
我々現代人は、人間や犬というのは他の個体と区別するための呼び方だと感覚で理解しています。
人間には共通の特徴は見られます。
が、個々は独立しており、全員が目に見えない何かに縛られているのではないと(多くの人は)考えているでしょう。
でも、中世ヨーロッパ時代は違いました。
11世紀頃、「スコラ哲学の父」と呼ばれたアンセルムスは、「普遍は個に先だって実在する」という「実在論」を唱え、それがキリスト教の正統的な理論とされました。
現代に生きる私たちは(少なくとも私は)個を尊重しているので、人間や人類はもちろん人種や性別でだって括れるとは考えていません。
でも、中世ヨーロッパ時代の人々は ──
「人間」や「犬」といった概念的なもの(普遍)が存在し、個はそれに準ずると考えていたのです。
これが「普遍論争」の「実在論」です。
だから「人類は無力で罪深い」「女は愚か」「貧民は罪を犯す」と分類する考えが主流になるのかもね
あっ、そういうことか!
実在論と唯名論
── 普遍論争ではどちらの立場を?
唯名論です。
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
アベラールを支持します。
普遍(概念)は実際に存在するとした「実在論」に対して ──
普遍(概念)は単なる名辞(今で言う概念の意味)であり、実在するのは個のみである、と主張しているのが「唯名論」です。
教会が広まり、神様の存在を信じて疑わなかったのも、実在論という考えが人々の根底にあったからではないでしょうか。
私・・・の主人様も唯名論です。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
オッカムを支持してます。
オッカムは、14世紀イギリスのスコラ哲学者。
オッカムは、実在論が主流だった普遍論争で唯名論を主張。
それどころか、徹底した唯名論を説きます。
── オッカムは少々過激では?
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
でも真理の探求には、ある種の大胆さは不可欠かと。
オッカムの唯名論は徹底しており ──
普遍(概念)は名前であって心の中に存在はするものの、現実には実在しない、と説きました。
とても重要・・・。
いや、この時代にとても危険な事を言っているのが、お分かりでしょうか?
えっ、そうなの!?
人間や動物といった普遍(概念)は存在しない。
人は個々に存在しているのであって、それぞれ(何かに縛られも影響されもしておらず)独立している、と言っているのです。
オッカムの主張を認め、考えを進めていくと ──
人間や犬といった概念が存在しないなら、神様も存在しない?という結論に至ってしまうのです。
あっ、確かに!!
「神様」「人類」云々と説いてきた教会にとっては大問題。
ヨレンタは、そんなオッカムを支持していると言ったのです。
教会の教えに反していても真理を追究するオッカムに、共感していたのです。
これはつまり、ヨレンタは教会の教えより真理に重きを置く可能性があることを示しています。
それにヨレンタの勉強熱心なのも伺えます。
好奇心、知的探究心、大胆さ、研究に必要な資質をヨレンタに感じたのではないでしょうか。
だからバデーニは ──
ツイてるぞ。
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
幸運な人物に巡り会った。
と言ったのでしょう。
実在論の起源を探ると、プラトン(BC427年-347年)のイデア論にまで遡ります。
イデア論とは ──
この世に本当に実在するのはイデア(理念)だけであって、現実世界にあるものはそのイデア(理念)の模倣である、というもの。
えっ、何言ってるか分かんない…
だよね、ぶっ飛んでいるよね(苦笑)
現実は不完全だけど、完全で真実な世界がある
それがイデアって感じかな
ああ、それならなんとなく分かる…かも?
まあ、ここで言いたいのはイデア論ではなく──
4話、異端者はこんなことを言っていました ──
2000年前、アテナイの老人が毒杯をあおった惨事から、今の哲学が生まれた。
by 異端者『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
アテナイの老人とは、古代ギリシャの哲学者ソクラテスのことでしょう。
ソクラテスは、紀元前399年、毒殺刑(毒杯)で最期を遂げています。
ソクラテスの最期を描いた『ソクラテスの死』
CC0, ウィキメディア・コモンズ経由で
先のイデア論を唱えたプラトンは、ソクラテスの弟子。
哲学を学びながら政治家を志していましたが、師ソクラテスの死により政治から距離を置いたそうです。
これが、異端者の言う ──
2000年前、アテナイの老人が毒杯をあおった惨事から、今の哲学が生まれた。
by 異端者『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
ではないでしょうか。
おーー、そういう意味だったのか~~
地動説の前身
異教徒のヘラクレイデスはご存じで?
── はい。
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
ヘラクレイデスは古代ギリシャの哲学者で、地動説に近い考え方をした一人です。
構図が変わらない天体が東から西へ動いているように見える(これを日周運動と言います)のは、地球が自転しているからだと信じていました。
後に出てくるアリスタルコスは、地球の自転により日周運動が起きているヘラクレイデスの影響を受けていると言われています。
おお!
ではフィロラオスは?── あのバカげた仮説の・・・ですよね。
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
フィロラオスも紀元前の数学者であり哲学者。
ピタゴラスの後継者の一人であり、(ピタゴラスと共に)地動説の原形(とっかかり)を唱えた人です。
バデーニは、地動説へ繋がるであろう、ある意味下地となる知識がヨレンタにあるか確認したのです。
(信じているかはともかく)二人とも知っていたヨレンタ。
思わずニヤリとしてしまうバデーニ。
ヨレンタには地動説を(少なくとも)聞くことができる基礎知識があったのです。
地動説は、天動説を信じている人にとっては、あまりに荒唐無稽。
そうなんだ?
それこそ天地がひっくり返る話だからね
信じられないし、受け入れられない
後に出てくるアリスタルコスは、ヨレンタは知らないでしょう。
アリスタルコスの名は、ラファウも知りませんでした。(1話 )
ヨレンタどころか、学者も含め普通の人はアリスタルコスを知らないのではないでしょうか。
実際、勉強熱心で博識のヨレンタもアリスタルコスを知りませんでした。
恐らくですが、教会が禁書にしているのではないと私は推測しています。
となると、なぜバデーニが知っているのか不思議ですが・・・。
6話の過去回想で、バデーニが見た禁書は(恐らく)アリスタルコスの資料です。(6話 )
この時バデーニは、この禁書を初めて見た感じでした。
ならば、なぜ・・・いや、いつバデーニはアリスタルコスを知ったのでしょうか?
と考えていくと ──
石箱の中には、アリスタルコスの研究資料を元に、ポトツキ、フベルト、ラファウらが手を加えていった可能性が考えられますね。
バデーニは、なぜアリスタルコスを知っている?
ある意味地動説?
少しずつ少しずつ、バデーニは核心に近づいていきます。
彼のそのバカげた仮説は確か・・・。
宇宙の中心には中心火なる謎の火があり、人類はその火が見えない片側だけに住んでいて、さらにその火の周りを地球も太陽も動いてるとか。
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
一瞬、地動説に聞こえますが・・・違います。
地動説は、太陽を中心に地球を含む惑星が公転している、という考え方。
フィロラオスが説いたのは ──
(太陽ではなく)中心火を中心に、地球を含む惑星が円運動している。
中心火を中心に、地球を含む惑星だけでなく太陽も円運動していると説いたのです。
下図をよく見てください。
Ronev, CC0, ウィキメディア・コモンズ経由で
ラテン語で書かれているので分かりにくいですが、「SOLE」が太陽のこと。
中心火(HESTIA)を中心にして、地球(TERRA)、水星(MERCURIO)、金星(VENERE)と共に太陽(SOLE)も回っています。
上記図の面白いのが、月(LUNA)も同じように(地球ではなく)中心火を回っていることでしょうか。
そして、もっと面白いのが ── ANTI-TERRA。
英語読みで「anti」と読むと、「反対の」「敵対する」という意味になります。
が、これはラテン語、「前に(ante(英語)の語源)」という意味でしょう。
もう1つの地球、対地球(ANTI-TERRA)。
だから、アニメでは ──
人類がいる地球(TERRA)を「T」、対地球を「A」と表記したのでしょう。
バデーニが「人類はその火が見えない片側だけに住んで」と説明したのは、てっきり球体である地球の反対側(太陽側)を言っているのだと思っていました・・・。
が、そうではなく ──
中心火を中心として、2つの地球が同じように回っている。
が、人類がいるのは外側の地球なので中心火は見えない、と唱えたのです。
なんでそんな考えになったか分からないけど、すごッ!
ホントぶっ飛んでるよね
確かにフィロラオスの説は、今から見ると少し笑ってしまいますよね。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
現代だと当然ですが、中世ヨーロッパ時代から見ても「バカげた仮説」だったのでしょう。
神の存在
地球が宇宙の中心に磔になってるのは、神様が意図的にしたことですしね。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
現在を背負った我々の宿命というか、この世が不幸な根拠というか。
このセリフ、とても興味深いですね。
ヨレンタは唯名論、それもオッカムを推しています。
オッカムは、人類や犬といった普遍(概念)は存在せず、実在するのは個のみ。
普遍(概念)はただの名前にすぎない、と説きました。
ヨレンタは、そんなオッカムの考えを支持しているのに、普遍の象徴たる存在である神は信じているのです。
私は言いたいのは ──
唯名論派は神様を信じないだろう、と言っているのではありません。
本作での教会や、オクジーが聞かされた内容。
上記、ヨレンタのセリフ。
神様がこの世の全てを采配している、と考えている事に対しての疑問です。
唯名論を信じ普遍に縛られない個の存在を信じるなら、それぞれが自律しているとの結論に至ると私は考えます。
ならば、持って産まれた宿命や運命は、(親や環境ならともかく)会ったこともない神様に制限される事はないのではないか、との考えに行き着くのではないかと思ったまでです。
この辺りは表現が難しいですね
唯名論推しのヨレンタが、神様を信じて疑わないのは ──
それだけ、中世ヨーロッパ時代の人々に神様は浸透しているのでしょう。
ヨレンタの後の行動を見ても分かるように、神様の存在を信じ切っています。
逆に、バデーニは、決められた運命に疑問を持つように仕向けているのです。
決して、神様の存在を否定することなく・・・。
今のままでいたいですか?
もし仮に、我々は生まれながらに罪だけじゃなく、自由も持ってるとしたらどうします?
もし仮に、今従っていること、信じているもの、見ている現実、その多くがウソだったらどうします?
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
ヨレンタは教会を信じていますが、教会の教えにある意味挑戦している唯名論を受け入れる、真理に対する探究心と柔軟性を持ち合わせているのです。
真理
この世界は、本当に動いてるとしたら、どうだ?
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
地動説をヨレンタに明かすバデーニ。
あまりに荒唐無稽で不適切な考えなので、(1話のラファウ同様)ヨレンタの頭は受け付けません。
ここぞとばかりに畳みかけるバデーニ ──
そこじゃあ神は宇宙に階級など創っていない。
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
強いられた不幸を堪える根拠などない。
(この時代)基本的に人は生まれた時点で階級が決まります。
さらに女性に生まれれば将来の選択肢は狭まります。
バデーニが述べた世界は、実はヨレンタにとっての理想です。
それにも関わらず、頭が受け付けません。
その考えは危険だと、身体がアラームを上げるのです。
やめてください!
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
これは不適切です。
バデーニは、自らの不適切を認めます。
ですが、それでも進むべきだと説きます ──
我々は正しい方向になど導かない。
目指すのは、ただ1つ。真理だ。
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
(この世界で言う)正しい道ではないことは分かっている、と開き直ったのです。
地動説は(この世界では)正しくないと理解し、それでも研究していると宣言したのです。
教会に密告されれば、異端判定される内容です。
それを先ほど会ったばかりのヨレンタに話したのです。
ああ大丈夫だ。
あの顔を見れば分かる。── 女性だから?
いや、研究者だからだ。
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
ヨレンタは研究者。
バデーニは、ヨレンタとの僅かな会話から、根っからの研究者気質だと見抜いたのです。
研究者であれば、好奇心旺盛で、面白いと思った課題を理解するまで探求します。
バデーニは、研究者の性を突いたのです。
真理に魅了され探求しているバデーニだからこそ、分かるのでしょうね。
それにしても…
ん?
難問を掲示板に貼って観測データを持っている者を探す展開はとても素晴らしいし面白い。
自分の身分を偽り(中央修道院の方から的(笑))。
ヨレンタを思い切り持ち上げ、話を聞き出し気分良くさせ。
真理をチラつかせれば食いついてくると見込み、切り札(地動説)を出す。
バデーニが ──
ホワイト案件で釣って、実際はブラック案件をさせる闇バイトの仕掛け人にしか見えないのですが(苦笑)。
確かに…
イカロス
思想上の禁忌を聞いてしまったヨレンタは、コルベに相談しようと部屋に向かうが・・・。
密告
コルベさんに報告しなきゃ。
もしかしたら異端と関わったことで私まで魔女扱いされるかも・・・。でも、それでも言わなきゃ。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
バデーニの予想は大外れ(苦笑)。
ヨレンタは、速攻でコルベに報告しようと部屋へ向かいます。
随分時間が経っているように見えますが・・・ヨレンタの論文をコルベの名で出したと聞いた同じ日です。
えっ・・・あ、確かに
つい先ほど、コルベに酷い仕打ちをされ、ヨレンタは落ち込んでいたのに・・・。
相談すべきはコルベだと、すぐに頭に浮かんだのです。
ヨレンタは、それだけコルベを信じているということでしょう。
前話 ──
彼は善人だ。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
本当に私を庇ったんだ。
本気でそう思っているということですね。
と、同時に ──
信じるコルベが言うように・・・。
きっと、ここが私が見られる最上の景色なんだ。
これが私の現実だ。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
今の状況がヨレンタが置かれた現実だと認識しているのです。
だから、バデーニの甘言には乗らなかったのです。
闇バイト絶対ダメ!
いや、闇だけど、闇バイトじゃないから!
しかし、そこにコルベはおらず。
運命は、バデーニに味方したのです・・・。
足らぬ無謀さ
異教徒の神話にイカロスという者がいる。
蝋の翼で太陽を目指し、墜落した者だ。彼の誤りは太陽に挑んだ傲慢さではない、蝋が溶けるという父の警告を軽んじた無知にある。
我々は蝋で駄目なら鋼の翼を作り、太陽という名の真理へ挑み続ける。
今、あと一歩足りていないのは、その無謀さだ。
真の宇宙を完成させるため、イカロスにならねば。
by ピャスト伯『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
ピャスト伯は、自らの寿命を念頭におきつつ、宇宙論を完成させるにはイカロスのような無謀さが必要だと皆に説きます。
アニメではカットされていますが、原作では上記セリフ後にコルベの論文が評価されています。
真の宇宙を完成させる為、イカロスにならねば。
さて、そこで近頃最もその気概を感じさせた者がいる。
コルベだ。彼の論文は、危うい話題に怯まず果敢に緻密な考察をしていた。
── 光栄です。(コルベ)
※太字部分はアニメではカット
by ピャスト伯『チ。-地球の運動について-』コミック第3集
評価されたコルベの論文は、もちろんヨレンタの物でしょう。
ヨレンタは、コルベに名を書き換えられ、ピャスト伯に問われても「私のものではない」と答えました。
今まさに聞いたイカロスのような無謀さを欠き、苦渋を飲んでいたのです。
全部まるっとお見通し?
そこで何をしてる?
by ピャスト伯『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
さて、本題に入る前に ── なぜピャスト伯はこんな所にいたのでしょうか?
まあ、たまたま今回は、ヨレンタが井戸からゆっくり出て来たのかもしれませんが・・・。
研究会開始前にも咳き込んでおり調子が悪そうなので、終了後はすぐに部屋で休んだ方が良いはずですが、たまたま散歩していて井戸を見かけたのでしょう。
って、そんなわけあるかい!
えっ、どゆこと!?
まず、ピャスト伯は先の論文を書いたのはヨレンタだと気付いていたのでしょう。
だから ──
今後、見せたい論文があったら持ってこい。
by ピャスト伯『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
コルベではなく私にな。
「コルベではなく私に」見せろと言ったのです。
更に、ヨレンタが研究会を聞いていることにも気付いたのではないでしょうか。
えっ、なんで!?
ピャスト伯の立場になってみましょう。
前話、コルベとヨレンタの会話から、コルベの名で出された論文は、実はヨレンタが書いたのではないか疑惑が生まれました。
おい、君。
by ピャスト伯『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第7話
今、この前の論文を君が書いたと言ったか?
でも、ヨレンタは否定しました。
が、疑問を持ってコルベの論文を読むと確かに違和感を感じます。
まるでコルベが別人になったかのよう感覚を ──
(先にも書きましたが)アニメではカットされましたが、ピャスト伯はコルベの論文を ──
さて、そこで近頃最もその気概を感じさせた者がいる。
コルベだ。彼の論文は、危うい話題に怯まず果敢に緻密な考察をしていた。
※アニメでは全文カット
by ピャスト伯『チ。-地球の運動について-』コミック第3集
「近頃」と言ってるのは、これまではそうではなかった、ということ。
コルベの論文は、最近になって危うい話題に怯まず挑戦していた、というのです。
いや、もしかすると先のコルベとヨレンタの会話を聞く前から、引っかかっていたのかもしれません。
もしこの論文をコルベではなく、ヨレンタが書いたと仮定したら・・・。
そうすると不思議なことに気付きます ──
論文には、研究会を聞いてなければ書けない、あるいは気付かない内容が含まれています。
研究会に顔を出していないヨレンタが、書けるはずがない。
コルベに教えてもらっている?
いや、研究会の内容をどこかで聞いている?
ここまで気付けば、長年働いている施設です。
涸れ井戸の可能性に気付いたのかもしれません。
実は昔も誰かが使っていたりして(笑)
ここまで気付けば検証は簡単ですね。
研究会が終わった直後に、井戸を見張れば良いのです。
おお~~凄い!
まあ、何の根拠もない私の想像ですから…
話半分でしょ!
はいはい、分かりました!
・・・・・
では、妄想ついでに・・・
ついに妄想って言った!
ピャスト伯、突然イカロスの話を持ち出したのは、もちろん自分の残された時間を覚悟したからでしょう。
仮に、ヨレンタの論文に刺激されたと考えたら、どうでしょう?
さて、そこで近頃最もその気概を感じさせた者がいる。
コルベだ。彼の論文は、危うい話題に怯まず果敢に緻密な考察をしていた。
※アニメでは全文カット
by ピャスト伯『チ。-地球の運動について-』コミック第3集
ヨレンタは、これまでにないアプローチをしていた。
彼女は有望である。
でも、彼女は自分で論文を書いたことを否定した。
女性だから?自分の立場を諦めている?自信がない?
なんとかして研究に参加させたい・・・。
ピャスト伯が突然イカロスの話を持ち出したのは ──
ヨレンタに研究者には「無謀さ」が必要だと伝えたかった、と解釈するのは飛躍しすぎでしょうか。
おお~~
面白いけど、さすがに深読みしすぎな…
だから「妄想」って言ったでしょ!
雇い主
ピャスト伯は、コルベの論文はヨレンタが書いたものだと気付いていました。
今後、見せたい論文があったら持ってこい。
by ピャスト伯『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
コルベではなく私にな。
ピャスト伯は、女性だからというだけで、ヨレンタが劣っていると評価してはいなかったのです。
そうか、肝心なことを忘れていました!
何々?
君は確か研究職志望だったろ?
── はい。覚えて頂けたとは光栄です。
侮るな。
by ピャスト伯『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
私が金を払い雇っているのだ。
この研究所で、いや雇用主のピャスト伯に女性差別の意識があるなら採用時点で女性を落としています。
そもそもヨレンタが採用された時点で、女性差別はなかったのです。
あっ、そうか!
女性差別していたのは所員達。
ピャスト伯は純粋に実力を評価していたのです。
解釈次第
聖書は真理だ。
── いえ、もちろんそれはその通りです。
だが、今の我々に正しい読み方ができているかは分からない。
by ピャスト伯『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
聖書は真理。
つまり、聖書は本当の事が書かれています(と信じられています)。
ですが、正しい読み方をしているかは分からないというのです。
本作では、「聖書には~~と解釈できる箇所がある」というような表現が何度か出てきました。
今シーンでも ──
聖書には「女は黙って学ぶべきで、教えるべきではない」と取れる箇所もある。
だとしたら、女性は元来、議論や研究発表は向いてないとも言える。
by ピャスト伯『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
「女性は議論や研究発表に向いていない」と取れる箇所があるが、それが正しい解釈かは分からないとピャスト伯は言っているのです。
ヨレンタは、自分が議論や研究発表に向いてないとは思っていません。
間違いだと考え、受け入れていません。
だから「それは本当に真理なのでしょうか」と反論したのです。
本シーンで大事なのは、女性云々ではありません。
聖書に書いてあることが真理でも、解釈は真理とは限らない、ということ。
つまり、他の箇所でも解釈が間違っている可能性があるのです。
ならば、(教えに反する)地球が動いている考えも真理である可能性がある。
宇宙の真理を見つけるには、無謀さが必要と言われたばかり。
教会の教えを真っ向否定する地動説を、研究してみなければその真偽も分からないのです。
ピャスト泊は意図していないでしょうが、ヨレンタは思わぬ人に背を押されたのです。
原) 決意
アニメではカットされましたが、原作では、井戸のシーン後、コルベの部屋へ行きます。
コルベさんに、2つお話ししたいことが。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』コミック第3集
1つは謝罪。
部屋に無断で入って資料を閲覧したことを謝ります。
コルベは、次の論文の為だろうと、許してくれます。
2つ目は、バデーニから異教の考えを聞いたことでしょう。
地動説のことをコルベに報告しようとしますが・・・。
溶ける蝋を見てイカロスの話を思い出し、別の話題に変えます ──
コルベさんの善意は大変感謝しています。
- 中略 -
でも、どちらかと言うと私は、この世の中で上手く動くより、この世自体を、動かしたいんですが、それは無謀すぎるでしょうか?
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』コミック第3集
まだ研究員にもなっていない雑用係が、この世界を動かしたい、などと突拍子もないことを言い出したのです。
コルベは、何のことか分からず適当に応えます。
皆さんはお分かりですよね?
ヨレンタは、ここで決意したのです。
アニメでは上記シーンをカットして、井戸でのピャスト伯とのシーンにまとめたのでしょう。
良いシーンになっていますし、(原作にはない)「コルベではなく私にな」というセリフはグッジョブです。
が、カットされた上記セリフ ──
ヨレンタの決意は、アニメでも聞きたかったですね。
今後、どこかで出てくるかもしれませんね
この世を動かす
ヨレンタはバデーニに協力することにしたが、自分に観測資料を見る権限はないのでピャスト伯を紹介すると言う・・・。
完璧な天動説
天文でピャストといえば1人しかいない。
今の天動説を越える、完璧な天動説の証明に人生を捧げてる貴族だ。
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
ピャスト伯が追い求めているのは、宇宙の真理ではなく「完璧な天動説」!?
いや、そもそも「完璧な天動説」ってところから始めましょうか。
うん、よろしく!
「完璧な天動説」の証明を目指しているってことは、今は完璧ではないってことです。
あーうん、それは分かるけど、具体的に?
そうだね
根本的に間違ってるから具体的にと言われると難しいんだけど…
そもそも、真実は「天動説」ではなく「地動説」が正しいってことは知ってるよね?
うん、それは知ってる!
天動説は間違っています。
が、2世紀にプトレマイオスが唱えた天動説は、1500年経った中世ヨーロッパ時代も信じ続けられていました。
でも、間違っているのだから、当然完璧ではありません。
天動説では、天空の星々は地球を中心に回っているはずですが、多くの星々と惑星は違う動きをしています。
その理由を天動説では理論的に説明できていません。
しかも惑星は、時折、逆行しています。(4話 )
Eugene Alvin Villar (seav), CC BY-SA 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で
逆行する惑星を円運動で説明するために、計算式はどんどん複雑になっていきます。
じゃあ、なぜ誰も疑問に思わなかったの?
間違っていても、何も問題ないからだね
中盤、ピャスト伯も ──
今、我々人類は、プトレマイオスの宇宙を受け入れている。
by ピャスト伯『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
実際、それでも日常的には大した問題はない。
世の中の人々にとって、それくらいの誤差は日常に何の影響もないので気にしていません。
今、我々人類は、プトレマイオスの宇宙を受け入れている。
実際、それでも日常的には大した問題はない。だが、大衆が納得しようと、我々だけは真理の探究を諦めてはならん。
by ピャスト伯『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
あれは真理とは思えない。
ですが、研究者であるピャスト伯は、その僅かな違いが許せなかったのです。
反地動説
何を言ってるんだ!
働いてるなら分かってるでしょう。
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
彼が我々に協力するわけない!
ピャスト伯は「完璧な天動説」の証明に人生を捧げているなら、天動説を真っ向否定する地動説研究に協力してくれるわけがありません。
なぜなら、自分が信じ研究し続けてきた、天動説の間違いを証明する後押しになるからです。
確かにピャスト伯は誰よりも天動説を重んじてる。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
でも、きっとそれよりも真理を重んじてる。
ヨレンタは、ピャスト伯は ──
自分が人生を捧げてきた天動説を否定することになっても、真理であれば協力してくれると考えたのです。
そこまで言われ、やってみる価値はあると判断したバデーニ。
いざとなったらヨレンタを身代わりにする気なのが怖いけど…
ホント、ずる賢い!
さて、二人にとってこの判断は、吉と出るのでしょうか凶と出るのでしょうか。
そういえば、異端を判断するのも捕らえるのも教会。
でも、ピャスト伯は貴族です。
教会は貴族相手でも、捕らえることはできるのでしょうか??
それとも、貴族がその気になれば異端でも研究できるのでしょうか?
教会は、貴族相手でも異端扱いできる?
金属アストロラーベ
この金属アストロラーベをやろう。
── え? そ、そんな、これ1つしかない特注品じゃ・・・。
優れた道具は、優れた能力の人間に使われるべきだ。
by 教授『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
一点物の金属アストロラーベをピャストに授ける教授。
どうやらこの貴族の教授は、気前が良いようです。
いや、成果を出した者に報いる人のようです。
教授は遠目が利き、精度の高い観測記録をつけていたピャストを高く評価。
特注品の金属アストロラーベを授けたのです。
そして、ピャストを鼓舞します ──
いいか?
神が君に与えた才能を出し惜しむな。思う存分、天文をやれ。
そして君を否定した節穴どもに分からせてやれ。
君が夜空を眺めれば、歴史が変わると。
君こそが、一族の誇りであると。
by 教授『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第8話
恐らく、ピャストは天文をやっていることを初めて褒められたのでしょう。
それどころか、歴史を変え、一族の誇りになれる!?
ピャストもまた、天文研究に魅せられ、先人から託された者。
歴史を動かして一族を見返してやろうとの気概を持つ者だったのです。
おわりに (『チ。-地球の運動について-』8話とは)
今話も情報量が多い!
普遍論争に実在論に唯名論、ヘラクレイデスにフィロラオスにアリスタルコス。
レビューを書く度に長くなっているので今話こそ短くしようと思っていたのですが・・・それどころか『チ。』レビュー史上最長の1万7千文字超になってしまいました・・・。
ふーん
まあ長くなっていくのは毎度のことじゃん!
ぐぬぬ・・・
それにしても、哲学まで出てくるとは思いませんでした。
でも、考えてみれば当たり前ですね。
地動説を通じて、本作が描こうとしているのは中世ヨーロッパ時代の人生のあり方。
突き詰めていくと哲学的な考えが登場してくるのです。
正直、これまでの私の人生では哲学は避けてきました(苦笑)。
が、今話を機に(少しですが)調べてみました。
なるほど、当時の生き方の指標になっていたのが僅かながらでも分かったかも。
いや~勉強になりました
作品を楽しむと同時に天文学を知れる。
天文学を通じて、当時の情勢、人々の生き方、思想、拠り所にしているものに触れる。
ますます深みを増していく『チ。-地球の運動について-』。
扱うカテゴリーもどんどん広がっていくので、置いてきぼりにならないよう勉強しながら楽しみたいですね。
そうだね!
今後も解説よろしく!
丸投げかよ…
なんだか、自分も真理を追究してる気になってきた
以上、TVアニメ『チ。-地球の運動について-』第8話の感想&考察レビューでした。
長文にもかかわらず、最後まで読んで頂きありがとうございます。
次話のレビューも書く予定です。
良かったらまたお越し下さい。
最新情報はX(@toki23_a)にて!
ではでは。
地球儀の「ち」
疑問点 まとめ(Q&A一覧)
この章では、疑問点をまとめていきます。
- 今話で発生し解決した疑問は、本文で解説して本章(ここ)でまとめ
- 今話で解決しなかった疑問を、疑問XX-XX(話数-通し番号)として記録
⇒ 本章(ここ)でまとめ - 答えは、推測ではなくできるだけ(原作含む)作品内で明らかになった事実を記載
※推測が入る場合は、断りを入れる
⇒ 解決した疑問は、次話で削除
今話で解決した疑問 (クリックすると答えが表示されます)
今話で新たに発生し、解決しなかった疑問
- 疑問 08-01 バデーニは、なぜアリスタルコスを知っている?
- 疑問 08-02 教会は、貴族相手でも異端扱いできる?
残っている疑問 (クリックすると表示されます)
- 疑問 02-02 異端審問官ノヴァクの娘の手紙に何がある?
- 疑問 04-01 なぜ地球が宇宙の中心から底辺へ教会の教えは変わった?
- 疑問 05-01 ラファウの手紙、ポトツキ贈与に込めた意図は?
- 疑問 06-01 異端者護送中に裏切ったのに、オクジーは教会から手配されていない?
- 疑問 06-02 なぜ太陽の大きさが、禁書にされている?
- 疑問 06-03 バデーニは、なぜオクジーに観測を頼んだ?
- 疑問 07-01 コルベのヨレンタに対する態度は本心か、それとも・・・
- 疑問 07-02 ヨレンタの父親は誰?
今週の感想X
#チ。 #チ球の運動について 8話
— 時文@ここアニ(『チ。』レビュー中) (@toki23_a) November 17, 2024
夜空見上げて歴史動かす
地球儀動かし心震わせる
探究心か研究者の性か…
たとえ禁忌と分かっていても真理があると見れば手出さずにはいられない。それは伯も同様で事案にボス巻き込む彼女が逞しい😆
思考だけでなく行動面でも大胆さ
さて、貴族なら禁忌許される?🤔
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アニメ『チ。-地球の運動について-』次話のレビューはこちら!