【文字数(本文):約1万文字(目安16分)】
こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『チ。-地球の運動について-』第20話「私は、地動説を愛している」を鑑賞しました。
本レビューではアニメ感想だけではなく、原作コミック情報も加え、個人的な解釈による解説・考察をしています。
皆さんの理解の助けになり、作品をより楽しんで頂ければ幸いです。
今回アニメ化されたのは──
- 原作コミック『チ。-地球の運動について-』第7集
-
第47話~第49話序盤まで
今話の主なトピック (クリックすると該当項目へ)
今話で解決しなかった疑問
最下部「疑問点まとめ (Q&A一覧)」に記載
本レビューの方針
本レビューは、次話以降のネタバレなし
アニメ『チ。-地球の運動について-』の原作は、魚豊先生による同名漫画。
私は原作未読です。
アニメ鑑賞後、アニメ化済み時点までの部分を読み、レビューを作成しています。
アニメ鑑賞
+
原作コミックを読み
知り得た情報を加味して「感想・解説・考察」
よって、次話以降のネタバレはなしなのでご安心ください。
なお、原作コミックの情報は、「原作情報」として区別できるよう記載します。

こんな感じです
緑系の色を目印にしてね!
引用部分も次のように緑系をワンポイントに ──
燃やす理屈、なんかより!!
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』コミック1巻
僕の直感は、地動説を信じたい!!
ちなみに、考察や疑問はオレンジ系 ──
補足や余談、参考情報はブルー系 ──
と色分けしているので、読む際の目安にして下さい。
全25話 各話リスト
話数 | サブタイトル | 原作漫画 |
第16話 | 行動を開始する | 第6集 |
第17話 | この本で大稼ぎできる、かも | |
第18話 | 情報を解放する | |
第19話 | 迷いの中に倫理がある | 第7集 |
第20話 | 私は、地動説を愛している | |
第21話 | ||
第22話 | ||
第23話 | ||
第24話 | ||
第25話 |
※話数:リンクは各話レビューへ
※サブタイトル、原作漫画:ネタバレを避けるため次話以降はマスク
はじめに
ドゥラカの記憶から本を復元したヨレンタは、本の出版に向け準備を勧めるよう指示する。
一方、異端審問官アッシュは、異端解放戦線・組織長の居所を突き止めた。
ピンチは最大のチャンス!?
本の出版の成功率を上げるためなら、命使うのも選択の一つ!?
人は歴史の上に立っている。
いや、人の集合体が歴史を作っている、ということか・・・。
一人一人の声が空気を作り、世論となる。
世論は世界を動かし、歴史となる。
だから、誰の命も無駄ではない。
いやいやいや・・・何なのこの選択、この展開!
もっとヨレンタの話を聞いていたかった・・・。

もう声も出なかった…

だよね…
では、今話を振り返っていきましょう。
感想&考察レビュー 第20話「私は、地動説を愛している」
それぞれの決意
ドゥラカの記憶から本は復元できた。シュミット達は、今回の任務の最終目的地である印刷機のある場所へ向かうために準備を進める。
活版印刷
写本と活字と、父型、母型、モールド。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
それがあれば活字が壊れてもあっちで作れる。
以下、原作注釈より ──
父型:母系を作る為の型
by 『チ。-地球の運動について-』コミック第7集
母型:モールドと組み合わせて活字を作る為の型
モールド:活字を作る為の型
父型、母型、モールドはいわゆる金型。
これらがあれば、活字が壊れても再度活字を作り直すことができます。
古い友人
── 本の内容はどうでした? 彼女の虚偽では?
いや、信じられる。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
このセリフから、シュミットはドゥラカを疑っていたようです。
当然ですよね。
部下であるフライが確認できたのは前半部分のみ。
後半は誰も確認できていません。
それに、本1冊丸々記憶しているなんてこと、普通は信じられません。
ドゥラカがウソ付きかホラ吹きだと考えるでしょう。
でも、ヨレンタは即座にそれを否定、本の内容は信じられると断言しました。
なぜでしょうか?
お分かりですよね。
前話ラスト、ドゥラカは本の内容を語りました。
語り始めた瞬間、ヨレンタは昔を思い出し、語っているドゥラカはオクジーの姿になりました。
ヨレンタは、分かったのでしょう。
本の著者がオクジーであると。
ヨレンタは、オクジーが書いた本を実際には見ていません。
ですが、オクジーの人となりは知っています。
本の語りや内容に、その辺が出ていた。
あるいは、日記のようなモノなので、オクジーから聞いた話が一部でもあったのかもしれません。
本の内容は、オクジーらしい内容だったのです。
だからヨレンタも、ドゥラカが語った本の内容は本物だ、と断言できたのではないでしょうか。

ドゥラカ記憶力、すごっ!

こういう巡り合わせも奇跡と言えるんだよね…

お~、確かに
用済み
では、あの娘はもう役割を果たしたというわけですか。
by シュミット『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
消しますか?
本が復元できたら、ドゥラカは用済み!?
なんともドライなシュミット・・・。
ただ仕方ないかもしれません。
本の出版は、組織長が命を懸けてでも成功させたい任務。
部下としては絶対に失敗できないでしょう。
だとしたら、不安要素は取り除いておきたいと考えるのは至極当然です。
どこの馬の骨とも分からない小娘。
ましてや、自分の信念で勝手な行動をする彼女は、予測不能な不安材料でしかないのです(苦笑)。
冷たいようですが、リーダーとしては当然の判断(提案)とも言えますね。
ただそれは、私的な考えが入っていなければ・・・という条件付きですが(苦笑)。(後述)
しかし、レヴァンドロフスキは動揺します。
ここまでの行程でドゥラカに情が移ったのでしょうか・・・。
(原作では)レヴァンドロフスキがドゥラカに妹の話をした後なので、ドゥラカに自分の妹を重ねたのかもしれないですね・・・。
機会は平等
── 大丈夫でしょうか。会ったばかりの素性も分からない娘です。
そういう人には機会をあげたくなる。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
協力されづらいだろうから。
ドゥラカに姿を重ねていたのは、ヨレンタの方でした(笑)。
ヨレンタは、ドゥラカにかつての自分を重ねていたのです。
女性というだけで、研究所に就職しても研究の機会が与えられなかったヨレンタ。
そんな中、コルベやピャスト泊に認められ機会を与えられ救われたのでしょう。

ドゥラカに対しても、女性だから、素性が分からないから、どうせ何もできないだろうから・・・。
と最初から決めつけ排除する。
ヨレンタは、そのようなことをしたくなかったのではないでしょうか。
原) 最後の飯
ほらよ。
by レヴァンドロフスキ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
フライが街で調達してきたんだ。
味わって食えよ。
原作では、ヨレンタに本の内容を語り復元が完成した(アニメでいう前話ラスト)直後、レヴァンドロフスキに声をかけられます。
おう、面談終わったか。
腹減ったろ。今、フライが街へ食料調達に行って・・・
- 中略 -
味わって食っとけよ。
俺らと来るなら、いつ最期の飯になるかわからねぇからな。※太字部分はアニメではカット
by レヴァンドロフスキ『チ。-地球の運動について-』コミック第7集
前話冒頭、ドゥラカはヨレンタに「ちょっと来て」と呼ばれていったので、レヴァンドロフスキはそのことを面談と言っているのです。

面白い!

どれだけ長い面談なんだ(笑)
そして「味わって食えよ」とは ──
異端解放戦線にいると、いつ襲われるか分かりません。
今日死ぬかもしれないので、食事を味わえよと言っていたのです・・・。
先にも書いたとおり、今話冒頭シーンは、原作ではもう少し後です。
アニメでは、先にヨレンタとシュミットとの会話(「消しますか?」等)が見せた事で、ドゥラカの命はヨレンタとシュミットの胸三寸だと強調されています。
レヴァンドロフスキは、ヨレンタとシュミットの会話を聞いたとき心配していた様子だったので、(アニメだと)ドゥラカを気遣っているように聞こえますね(笑)。
構成変更の面白い効果です。
死を受け入れる
なぜあなたは、人生も天国も棒に振ってまでこんなことをしてるんですか?
by ドゥラカ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
先ほども書いたように、このシーンは原作ではヨレンタの本復元が終わった直後。
なので、原作ではヨレンタの ──
迷って。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第19話
きっと迷いの中に倫理がある。
ドゥラカの頭に「迷って」という言葉が強く残っています。
それで、レヴァンドロフスキに質問したのです。
死だ。
by レヴァンドロフスキ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
死を受け入れるためだ。
レヴァンドロフスキが異端解放戦線に入ったのは、死を受け入れるため!?
異端解放戦線は、教会正統派を潰す行為をしています。
それが、なぜ「死を受け入れる」ことに繋がるのでしょうか?
あの日以来、胸を張って「神の為」って言えるようになるには、どうすりゃいいか考え続けた。
その帰結として今、こんなことをしてる。
by レヴァンドロフスキ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
レヴァンドロフスキが異端解放戦線にいるのは ──
10歳で亡くなった妹が何の為に生まれてきたのか、を答えられるようになるため。
レヴァンドロフスキは、神も宗教も大事だと考えています。
ある意味、教会の教えに沿っています。
が、死を目前にした妹に対して、「神の為」と言えなかった・・・。
それは現在の教会が信じられないから。
今の教会正統派は、神の名をかたり異端を迫害し、自分達の思い通りにしようとしている。
それは神の意志ではなく、教会正統派の意思。
そんな教会正統派を潰し、生は、死は、「神の為」と言えるようになる為に異端解放戦線で活動しているというのです。
隊長には言わねえが宗教は大切だ。
宗教がなきゃ、きっと人はここまで強くなかった。- 中略 -
だが教会が設立されてから長いこと時間が経った。
こうなると経年劣化は免れねえ。色んな辻褄が合わなくなってきて、あちこちで時代が軋む音がする。
by レヴァンドロフスキ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
この辺は同感です。
(本作で描かれる教会正統派に限らず)設立当初はどれだけ必要とされ評価された組織や仕組みであっても、変わっていかなければ時代や社会に合わなくなってきます。
たとえそれが人の根底にある考えや、信仰であったとしても・・・。
力だけで頭悪そうに見えましたが(失礼っ)。
レヴァンドロフスキは、意外と考えていたのです。
自然と技術
アリストテレスも”技術は自然を模倣する”と言ってる。
でも、一方でこうも言ってる。
by ドゥラカ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
“技術は自然が成し遂げないことも成し遂げる”と。
自称・自然主義者のシュミット相手に、ドゥラカは真っ向否定。
この布と血の付いたお金は、私の父の形見です。
これを見て私の信念を思い出す、父を思い出す。
この2つは自然に生えてたものじゃない、人が人工的に作ったもの。だからって無価値じゃない。
人の作る模倣は時として、自然が成し遂げないことも成し遂げる。
by ドゥラカ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
このセリフ直後、シュミットはドゥラカを睨みつけます。
ドゥラカを見直したのか、危険人物と見做したのでしょうか・・・。
残念ながら、後者に感じてしまいました。
先ほどから何度も書いてるように、アニメの今話冒頭シーン。
原作では、このシュミットの会話の後に描かれます。
シュミットは、ドゥラカとの会話の後 ──
では、あの娘はもう役割を果たしたというわけですか。
by シュミット『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
消しますか?
と言っているのです。
シュミットは、人の知性を信じていません。
でも、ドゥラカは知性で動いています。
(シュミットから見ると)ドゥラカは危険な存在。
ドゥラカはシュミットの「自然が神」という考えとは相容れない、と感じたのではないでしょうか。
でも、組織長がドゥラカに印刷機を貸すと約束したのです。
その上、生かすよう指示されました。
レヴァンドロフスキとフライも聞いていました。
簡単には殺すようなことはしないと思いますが・・・。
本の出版を邪魔するようなことをすれば、即座に処分されてしまう雰囲気ですね・・・。

コワッ!

怖いよね
なのに、ドゥラカがお気楽なのが、なお怖い…

確かに…
神はこの世にある悪を善に変える
“神はこの世にある悪を善に変える“
それが神の意志。神は人を通して、この世を変えようとしてる。
長い時間をかけて少しずつ。この”今”は、その大いなる流れの中にある。
とどのつまり人の生まれる意味は、その企てに、その試行錯誤に、善への鈍く果てしないにじり寄りに、参加することだと思う。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
一瞬、何を言い始めたのかと思いきや・・・。
よく聞くと、なるほど確かにその通り。
とても興味深い考え方です。
私はヨレンタの上記セリフを聞いて「集合知」という概念が思い浮かびました。
SNSなどで間違った情報の投稿があっても、誰かが誤りを指摘して(時間はかかりますが)正しく修正されます。
誰もがいつも100%正しい事を言うのは不可能です。
誰だって勘違いするし、間違えます。
でも、他の誰かが間違いを指摘して修正される。
※ただし、修正を受け入れる姿勢が必要
こうして、正しい情報や知識が蓄積されていく。
少し俯瞰してみると、世の中の声、世論も同様ですね。
世の中、良い人ばかりではないので、時には悪い方向へ向かう場合もあるでしょう。
ですが、10年、100年単位で見ると概ね良い方向へ進んでいるのです。
ヨレンタは、それが神の意志だと言っているのです。
非常に面白い解釈ですね。

確かに不思議…
全歴史が私の背中を押す
歴史認識は私の決断に関わるから。
- 中略 -
もし今の私が父と対峙したら、道を阻まれたらどうなるだろうって、考えただけでそれは人生最悪の瞬間で混乱して平成を失うと思う。
でも、その時にこそ、正しいと思った選択をしなきゃいけない。
きっとその一瞬の選択のために、私の数奇な人生は存在する。積み上げた歴史が私の動揺を鎮めて、臆病を打破して、思考を駆動させて、いざって時に引かせない。
全歴史が私の背中を押す。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
では、「全世界が私の背中を押す」とはどういう意味でしょうか?
前項の、集合知の考えを当てはめると理解できます。
神様の意志は一先ず置いといて(苦笑)。
ついでに書いておくと、シュミットのような自然主義者も置いといて・・・。
人類は間違いも犯しましたが、(大きな流れで見ると)昔に比べ、貧困や差別、暴力や搾取は減ってきました。
※残念ながら、なくなってはいませんが・・・
ヨレンタは、人類が進むべき方向は過去の歴史が示してくれている、と言っているのではないでしょうか。
歴史認識は、ヨレンタにとって正。
大きな決断をする時や迷った時は、歴史が示してくれた正解を参考にすれば良い。
これが「全歴史が私の背中を押す」の意味ではないでしょうか。
地動説を愛してる
── なんであの本のために、そんな理屈こねてまで・・・。
私は地動説を愛してる。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
ああ、ヨレンタは地動説を愛していたのです・・・。
なぜ、そんな感想を思ったのかと言うと ──
ヨレンタは地動説を恨んでいる可能性もあるのではないか、と考えていたからです。

えっ、そんなこと考えてたの!?

まあ、可能性の1つとしてね
ヨレンタが処刑されそうになったのは、バデーニとオクジーと知り合ったからです。(14話 )
バデーニとオクジーがヨレンタに声を掛けたのは、地動説を研究していたからです。
地動説がなければ、ヨレンタはこんなアウトローな人生を送らなくて良かったはず。
だから、ヨレンタは地動説を憎んでいても仕方ないな、と。

確かに…
でも、ヨレンタは地動説はもちろん、バデーニとオクジーも恨んでもいません。
それどころか「地動説を愛してる」とまで言い切ったのです。

なんだか嬉しいね

うん!
ヨレンタは、地動説に出会った時こそ、異端研究だとコルベに相談しようとしました・・・。(8話 )

が、本当は、ヨレンタ自身も地動説を研究したかったのではないでしょうか。
でも、自分には観測資料を閲覧する権限がないから、ピャスト泊を紹介した。
観測資料を手に入れたバデーニは ──
ヨレンタさんだが・・・。
選択は君に任せるが、私としては、できればここで外れて欲しい。
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第9話
研究は1人で行いたい。
バデーニは、最初こそ地動説の研究は自分一人でするとイキってました(笑)。
が、今思うと、この頃はヨレンタと一緒に研究しても良いと考えていたのではないでしょうか。
だから「選択は君に任せる」と言った。
でも、ヨレンタは ──
分かりました。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第9話
というか、今の私ではこれ以上協力できないでしょうし。
ヨレンタは、自分の実力では役に立たないから協力できない、という意味でバデーニの提案を受け入れたのではないでしょうか。
バデーニから「外れてほしい」と言われたから従いましたが、本当は地動説を研究したかったのではないでしょうか。
だから ──
地動説を完成させてください。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第9話
と言ったのでしょう。
そしてバデーニは ──
もし後日、我々が捕まったとしても、君は無関係を貫け。
by バデーニ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第9話
ヨレンタをこれ以上巻き込みたくないから、研究から外れて欲しいと言ったのではないでしょうか。
今なら、そう解釈しちゃいたくなりますね・・・。
何にしろ、ヨレンタは地動説を愛していた。
地動説を研究できなくても、地動説の本を出版するという機会に巡り会えた。
そう考えたら、かつての憂き節さえも何も無意味なことはない。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
※憂き節:辛いこと、悲しい事。
異端解放戦線に出会った(立ち上げた?)ことを、このように考えているかもしれないですね・・・。
近視眼的
以上のように、分析していくと ──
異端解放戦線の3人(ヨレンタ、シュミット、レヴァンドロフスキ)の共通点、そしてドゥラカとの決定的な違いが見えてきます。
異端解放戦線は、とても大局的な物の見方をしています。
レヴァンドロフスキは、妹を病気で亡くしました。
普通なら、病気の原因、治せなかった医者、あるいは医者が不在の村や貧乏を恨みます。
でも、(病気で亡くなるのは)よくあることだと言い。
神を信じることができなくなった根源である、教会正統派を打倒しようと考えます。
シュミットは、叔父に家族を殺されます。
普通なら、叔父を恨みます。
でも、そんなことはあちこちで起きていると言い。
問題の根源は人工にあると結論付けます。
ヨレンタは、教会の助任司祭アントニに嵌められ処刑されかけました。
普通なら、自分を貶めたアントニを恨み、復讐する流れです。
でも、そんなことを気にする様子はなく。
アントニ個人ではなく、自由を抑圧している教会正統派を制圧の対象にしています。
いや、それどころか ──
ヨレンタは、教会正統派すら恨んでいない達観したところが見受けられますね・・・。
一方、ドゥラカは真逆。
略奪に行った父親が殺されました。
でも、殺した人間を恨むでも、略奪させた村や村長を恨むでもなく、金がなかったことを恨みます。
ここまで書いたら、勘の良い方ならお気付きでしょう。
異端解放戦線の3人の悲劇の根底にあるのは、教会改革派の圧政です。
ドゥラカの父親が略奪をしなければ生きていけなかったのも、差別をしている教会正統派でしょう。
実は、ドゥラカを含めた4人の悲劇は、こんな世の中にした教会正統派が諸悪の根源なのです。
でも、ドゥラカ一人、金が必要だと信念にしているのです。
ドゥラカは、超が付く近視眼的な考えをしている人物として描かれているのではないでしょうか。
異端解放戦線の3人は、超が付くほどの大局・・・いや達観し過ぎてますけどね(苦笑)。
第一章のラファウ然り。
第二章のオクジー然り。
自分が思い描いていた思想が地動説に出会い変化していきました。
ドゥラカも、地動説や地動説を愛したヨレンタと出会い、変わっていくのでしょうか・・・。
ヨレンタ組織長
ノヴァクの助言を得て調査を勧めていた異端審問官アッシュは、異端解放戦線・組織長の居場所を掴んだ。
想定内
やりました。
by 異端審問官アッシュ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
職人に聞き込んで、数ヶ月前から怪しい動きをしている納屋の情報を・・・。
ノヴァクの助言を得て、職人に聞き込みをしていた異端審問官アッシュは、ついに異端解放戦線のアジトを見つけます。
でも、居場所が見つかってしまったことに、ヨレンタはさほど驚いていません。
これはなぜでしょうか?
異端審問官に見つかったのは、ワザと情報を流した。
あるいは職人から漏れることを想定した上で行動していたということですね。
それでも、「意外と早かった」というのは、父ノヴァクがすぐさま気付いたからでしょう。
ノヴァクの優秀さは、娘の命を縮めることになってしまったのです。
もう特定されたんだ。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
思ったより早いね。
この口ぶりは ──
ここが見つかる事は想定していたのです。

えっ、じゃあもっと早く逃げればいじゃん!
いいえ、逃げるのではなく、これを利用しようと考えていたのです。
これも計画のうちだ。
自爆を隠れ蓑に、これから向かう印刷工房を守るのだ。敵の狙いは、異端解放戦線のリーダーを潰すこと。
これで叶った。当分は情報も出ないし、追われづらくなる。
by シュミット『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
異端審問官に異端解放戦線の組織長は死に、異端解放戦線は壊滅したと誤認させるための自爆だったのです。

凄い覚悟…
原) 父娘は気付いた?

── 貴様は異端解放戦線の組織長であるか?
いかにも、私が組織長だ。
by ヨレンタ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第20話
異端審問官に見つかり、火薬で自爆するヨレンタ。
父ノヴァクと一瞬目があったような描き方をされたアニメ。
そこそこ距離も離れているし、ヨレンタ側は火を焚いていましたが、異端審問官側はなく暗いように見えました。
互いに認識することなく、ヨレンタはあの世へ行ったのでしょうか?
原作では ──
ノヴァクと目が合い、ヨレンタは松明を振り下ろした手を一瞬止めています。
ヨレンタは、ノヴァクだと認識したのではないでしょうか。
まさに恐れていた父親との対峙でしたが、全歴史に背を押され任務(自分で決めたこと)を全うしたのです。
では、ノヴァクは気付いたのでしょうか?
私は、ノヴァクは娘に気付いていないと解釈します。
なぜ父娘で差が出たのでしょうか?
考えてみれば当然です。
25年間ぶりの再会。
娘ヨレンタは、14歳が39歳。
14歳から39歳なんて、普通は見違えます。(特に女性は)
一瞬では、分からないのではないでしょうか。(ただ変な感じはしたでしょう)
シンボリックな頭巾を着けていないのも上手いですね。
それに比べ、既に大人である父親は娘ほどは変わりません。
そして、もう一つ。
娘ヨレンタは、父ノヴァクが異端審問官であることを知っています。
でも、父ノヴァクは、娘ヨレンタは死んだと思っているのです。
この差が大きいですね。
ヨレンタは、異端審問官を見る度に父親ではないかドキドキしながら確認しているでしょう。
一方、父ノヴァクは、(娘は死んだと思っているので)異端者を憎き仇だと思って見ています。
この差で、ヨレンタは父に気付き、ノヴァクは娘に気付けなかったのではないでしょうか。
ただ、先にも書いたとおり、ノヴァクは少し違和感を感じています。
それに、いつか組織長の名前を知ることもあるかもしれませんね。
その時、ノヴァクは何を思うのでしょうか・・・。
上記考察のように、私はノヴァクはヨレンタに気付いていないと解釈しました。
が、いずれ気付くような気もします。
そこで、疑問点として残しておきます。
ノヴァクは、自爆した組織長が娘ヨレンタだと気付いた?
おわりに (『チ。-地球の運動について-』20話とは)
なんて展開なんだ・・・、そんなのありかよ・・・。
という感情で終わった今話。

いつもよりエンディングが染みた…

うん…
ヨレンタ自身の覚悟だけではなく、他のメンバー達もヨレンタの選択を尊重。
ドゥラカが言うように、偽装でも異端審問官を騙せたはず。
(酷い話ではありますが)背格好の似た女性を代理を立てても良かったはず。
これが、ヨレンタの覚悟か、それとも幾多の命を奪った贖罪か・・・。
どう言えばいいのでしょう。
どうしようもない時代に生き、数奇な運命を辿った当人しか分からない責任感の重さ、信念を貫き通す覚悟を見せ付けられた感じ。
平和な国・日本に住む私にとっては、心の底から理解することは難しい。
そんな物語を見せられている気がします。
巨人の肩の上に立っているのは、何も『チ。』の人々だけではありません。
現代人の私たちこそ、その恩恵を受けているのです。
『チ。』は創作です。
ですが、先人達の世の中を、いや家族でも、愛する人でもいい、少しでも良くする為の熱意にすっかりあてられてしまいました・・・。
以上、TVアニメ『チ。-地球の運動について-』第20話の感想&考察レビューでした。
長文にもかかわらず、最後まで読んで頂きありがとうございます。
次話のレビューも書いています。
良かったらご覧ください。
ではでは。
命の「ち」
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疑問点 まとめ(Q&A一覧)
この章では、疑問点をまとめていきます。
- 今話で発生し解決した疑問は、本文で解説して本章(ここ)でまとめ
- 今話で解決しなかった疑問を、疑問XX-XX(話数-通し番号)として記録
⇒ 本章(ここ)でまとめ - 答えは、推測ではなくできるだけ(原作含む)作品内で明らかになった事実を記載
※推測が入る場合は、断りを入れる
⇒ 解決した疑問は、次話で削除
今話で解決した疑問 (クリックすると答えが表示されます)
今話で新たに発生し、解決しなかった疑問
- 疑問 20-01 ノヴァクは、自爆した組織長が娘ヨレンタだと気付いた?
残っている疑問 (クリックすると表示されます)
- 疑問 05-01 ラファウの手紙、ポトツキ贈与に込めた意図は?
- 疑問 06-02 なぜ太陽の大きさが、禁書にされている?
- 疑問 06-03 バデーニは、なぜオクジーに観測を頼んだ?
- 疑問 07-01 コルベのヨレンタに対する態度は本心か、それとも・・・
- 疑問 08-01 バデーニは、なぜアリスタルコスを知っている?
- 疑問 08-02 教会は、貴族相手でも異端扱いできる?
- 疑問 10-01 ピャスト伯の観測資料、どこに運び込んだ?
- 疑問 10-02 オクジーは何を書いている?
- 疑問 11-01 司教は、なぜ宇宙論を目の敵にしている?
- 疑問 12-03 バデーニとオクジーを捕らえるのに、なぜ良い人材を回してもらえない?
- 疑問 15-01 ヨレンタはどこへ逃げた?
- 疑問 15-02 クラボフスキが、ふさわしいとは?
- 疑問 16-01 本の内容が奇妙とは?
- 疑問 16-02 異端解放戦線の組織長は、地動説の本で何をしようとしている?
- 疑問 17-01 ドゥラカは、どうやって大金を蓄えた?
- 疑問 18-01 アントニ司教も前司教同様、宇宙論重視?
- 疑問 19-01 フライは裏切っている? バックは誰?
今週のX感想ポスト
#チ。 #チ球の運動について 20話
— 時文@ここアニ(『チ。』『薬屋』レビュー中) (@toki23_a) February 9, 2025
ピンチは最大のチャンス!?
成功の為なら命も手段の1つ!?
人は歴史の上に立っている
いや、人の集合体が歴史を作る? 1人1人の声が世論を作りやがて歴史となる。誰の命も無駄ではない
ちょいちょいちょい何なのこの選択この展開😱
もっと話聞いていたかった😭
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アニメ『チ。-地球の運動について-』次話のレビューはこちら!
