【文字数(本文):約1万2千文字(目安20分)】
こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『チ。-地球の運動について-』第25(最終)話「?」を鑑賞しました。
本レビューではアニメ感想だけではなく、原作コミック情報も加え、個人的な解釈による解説・考察をしています。
皆さんの理解の助けになり、作品をより楽しんで頂ければ幸いです。
今回アニメ化されたのは──
- 原作コミック『チ。-地球の運動について-』第8集
-
第61話中盤 ~ 最終話まで
今話の主なトピック (クリックすると該当項目へ)
今話で解決しなかった疑問
最下部「疑問点まとめ (Q&A一覧)」に記載
本レビューの方針
本レビューは、次話以降のネタバレなし
アニメ『チ。-地球の運動について-』の原作は、魚豊先生による同名漫画。
私は原作未読です。
アニメ鑑賞後、アニメ化済み時点までの部分を読み、レビューを作成しています。
アニメ鑑賞
+
原作コミックを読み
知り得た情報を加味して「感想・解説・考察」
よって、次話以降のネタバレはなしなのでご安心ください。
なお、原作コミックの情報は、「原作情報」として区別できるよう記載します。

こんな感じです
緑系の色を目印にしてね!
引用部分も次のように緑系をワンポイントに ──
燃やす理屈、なんかより!!
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』コミック1巻
僕の直感は、地動説を信じたい!!
ちなみに、考察や疑問はオレンジ系 ──
補足や余談、参考情報はブルー系 ──
と色分けしているので、読む際の目安にして下さい。
全25話 各話リスト
話数 | サブタイトル | 原作漫画 |
第16話 | 行動を開始する | 第6集 |
第17話 | この本で大稼ぎできる、かも | |
第18話 | 情報を解放する | |
第19話 | 迷いの中に倫理がある | 第7集 |
第20話 | 私は、地動説を愛している | |
第21話 | 時代は変わる | |
第22話 | 君らは歴史の登場人物じゃない | |
第8集 | ||
第23話 | 同じ時代を作った仲間 | |
第24話 | タウマゼインを | |
第25話 | ? |
※話数:リンクは各話レビューへ
はじめに
アルベルトは、少年時代、家庭教師ラファウからある集会に招かれ目を輝かせるが、観測記録が気になり途中退出してしまう・・・。
人間とは、矛盾そのもの ──
自由を求めながら不自由に安心する。
理性を信じながら好奇心に動かされる。
変化を恐れながら変わらずにはいられない。
それが神でも獣でもない人間。
この世の全てを知るには1人では不可能。
矛盾抱え込み、意見対立何のその、信じて進み疑っては立ち戻り、試行錯誤を繰り返し、飽くなき探求続けてく。
作品の展開自体に「?(タウマゼイン)」は残ったものの、メッセージ性はお見事!
では、今話を振り返っていきましょう。
感想&考察レビュー 第25話「?」
世界の美しさの為なら犠牲はやむを得ない
青年ラファウからある集会に招待された少年アルベルトは、好奇心に目を輝かせる。
原) 我らが大将
僕たちは何だ?
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
無論、次の時代を担う存在だ。
突如始まるラファウのスピーチ。
原作によると ──
おっ、ラファウが来たぞ!
俺らの大将だ。開催のコトバ、頼んだぜー。
by 男『チ。-地球の運動について-』コミック第8集
どうやらラファウは、この集会のリーダー的存在のようです。
ラファウが来たので、開催の挨拶、日本で言うところの乾杯を頼まれたのです。
リーダー的存在のラファウから、紹介されるアルベルト ──

彼の明晰ぶりには驚くよ。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
まるでこの少年の中には、手練れの論理学者が入ってるかのようだ。
アルベルトの中には、手練れの論理学者が入っている!?
そんな描写ありましったっけ??
ただでさえ展開が早い『チ。』。
前話から更に加速され、少年アルベルトが学者のような論理展開をすることは読み取れませんが・・・。
我らが大将ラファウが言うのだから、その通りなのでしょう(苦笑)。
確信犯?
どうやら集会は、変なものではなくマトモでした(苦笑)。

正直言うと怪しい会だと思ってたけど、違った(苦笑)

あっ…同じく思ってた(笑)
17世紀になると、文化人や学者など知識人を集めて知的な会話を楽しむサロンが流行りましたが、そのはしりでしょうか。
集会での議論内容を、もっと聞きたかったのですが・・・。
ちょっと僕は用があるから席を外すけど、君は楽しんでくれ。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
この集会の主役とも言える、ラファウが席を外す!?
いや、まだ子供の少年アルベルトを連れてきたのに、一人置いて出ていく!?
せっかく来たんだ。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
途中で帰るなんて悲しい事しないで、しっかり最後までいてくれよ。
自分はいなくなるのに、アルベルトに対しては最後までいるよう念を押す・・・。
この時のセリフと、この後の行動から推測するに ──
ラファウは、最初から強引な手段を取ることを想定していたのかもしれませんね。
ひいき目に見ると、父親との言い争いを子供に見せたくはなかった、金で取り引きをする汚い部分を見せたくなかった、という事になるのでしょうが・・・。
そんなことを気にするような人に見えません、ラファウは(苦笑)。
よって、力尽くで資料を奪う選択肢を最初から計画していた。
だから、アルベルトを遠ざけた・・・。
それじゃあ、またあとで!
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
ラファウは、集会に戻ってくるつもりだったようです。
だとしたら、この集会をアリバイにするつもりだった・・・。
ラファウは仕方なかったと言っていましたが ──
衝動的犯行ではなく計画的犯行という推測は、ラファウ推しに叱られるでしょうか(苦笑)。
まあ、1つの解釈だと捉えてください。
念のため言っておきますが ──
決して、ラファウは最初から父親を殺すつもりだったと言っているのではありません。
ラファウは、どうしても資料を手に入れたかった。
その為には手段を選ばない。
どうしようもなければ力尽くででも・・・。
とまで考えていたのではないか、という推測です。
だから、ラファウはナイフを準備していたのではないでしょうか。
それだけではありません。
もっと言うと、家庭教師になったのも、資料を調べるため・・・とか?

えっ、そこまで!?
はい、ラファウは言っていますね ──
実は、少し前に噂で聞いたんだ。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
君のお父さんが、ある資料を持っていると・・・。
前話、家庭教師ラファウに疑問を持ちました。(24話 )
家庭教師を雇えるなんて、アルベルトの家はそんなに裕福なのかと。
ましてや、今回の集会での立ち位置、(自ら言っているように)ラファウの社会的地位から想像するに、安い給金ではやらないはず・・・。
そもそも、ラファウは裕福な家庭のようですし、家庭教師などしなくて良いはず・・・。

あっ、確かに!
だとすると、導かれる結論は ──
ラファウがずっと探していた資料を、アルベルトの父親が持っている噂を聞いた。
噂の真偽を確かめるために調べていたら、家庭教師を探していると知った。
そこで、調査&信用を得るために家庭教師になったのではないでしょうか。
噂は本当で、資料はこの家にあると確信、あるいは確認できたので、今回交渉(犯行?)に及んだのです。

おお~~、なんとなくそんな気がしてきた(笑)
観測記録
ところが、トラブル発生。
ヤバい・・・。
by アルベルト『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
今日の観測記録、すっかりつけ忘れてた・・・。
前話 ──
僕は、そんな大きな目標はなくて・・・。
by アルベルト『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第24話
というか僕のつけている記録は何の目的もなくて・・・。
毎日つけている観測記録には何の目的もない、と言っておきながら・・・。
観測記録を1日つけないだけで、居ても立ってもいられなかったのです。
アルベルトは、とっくに星に魅せられていたのです。
ある資料
君のお父さんが、ある資料を持っていると・・・。
それは宇宙の形を根本から変えてしまう、画期的な説に関するものだ。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
「宇宙の形を根本から変えてしまう、画期的な説」。
とくれば、地動説でしょうか。
僕は、もうずっと昔からその説に興味があってね。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
ただ、どこにも手がかりがなくて諦めたんだが・・・。
なぜ知っていたのかは不明ですが、ラファウは以前から地動説に興味があったようです。
いや、ここで重要なのは逆ですね。
ラファウは地動説を詳しく知らない、ということ。
だから、地動説の資料を欲しているのです。
前話、青年ラファウは「学者に拾ってもらえて」と言っていました。
てっきり、フベルトかポトツキの養子になっていたのだと、(自分の願望を込めて)推測していました(苦笑)。(24話 )
どうやら、フベルトでもポトツキでもない学者に拾ってもらったようです。

なぜなら二人の養子なら裕福なはずがない!

そんな身も蓋もない…
まあ、冗談はさておき・・・。
第1章では ──
ポトツキが地動説を研究し、フベルトはその研究を引き継ぎました。(3話 )

ならば、この世界では、二人とも地動説を研究していなかった・・・。
ではなく ──
(こちらの世界の青年)ラファウは、ポトツキとフベルトとは出会っていないと考える方が自然ですね。
話を戻しましょう。
青年ラファウは、地動説を研究していない様子。
だから、資料を何としてでも入手したいのです。
第1章、フベルトから動いているのは地球だと聞き、ラファウは(転んで自転の可能性に気付き)自力で地動説は正しいかもしれないと辿り着きます。(5話 )

どうも、こちらのラファウは違うようですね・・・。
どちらも…

父は言った「疑え」と ──
結果、彼は誰も信頼せず、資料を共有しないで殺された。先生は言った「信じろ」と ──
結果、彼は自らの信念に従って、殺人も厭わなくなった。これが”知”に関わった者の末路です。
by アルベルト『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
集会に招待され高揚していたアルベルト少年が目撃したのは ── 父親が尊敬する先生に殺されている場面。
知の共有を拒んだことで殺された父。
知を得るために殺人まで犯した先生。
トラウマになってしまうのも当然ですね・・・。

確かにこれはショック…
それにしても ──
父親と家庭教師ラファウ、どちら側にも立っていないことがアルベルトの素晴らしさ?というか不思議なところですね(苦笑)。

どゆこと?
父親側に立てば ──
父親は、ラファウに資料を渡すと危険と考え守った善。
ラファウは、そんな父親から資料を暴力で奪おうとした悪。
となります。
先生側に立てば ──
・・・いや、普通は、どんな理由があったにせよ殺人を犯してはダメです。
普通の子供なら父親を殺したラファウに失望し、恨みます。
にもかかわらず、先生にも(父親を殺した)理由がある・・・。
アルベルトは恨むどころか、父親殺しのラファウ先生を未だに一目置いている様子さえあります・・・。

確かに
ラファウが家庭教師として教えたことと、殺人は別?
犯した罪は恨んでも、教えたことは悪くない?
もう少し俯瞰して見る必要がありますね。
この父親とラファウの対立構図は、知に関わった人々 ──
第1章~第3章までの登場人物達のことを表現しているのではないでしょうか。
地動説を愛し、知の継承に命を懸けた者。
教会を信じ、地動説の弾圧で異端者の命を奪ってきた者。
アルベルトに起きた過去を通して、これまで描かれてきた人物達のことを述べているのではないでしょうか。
だから、肉親である父親の味方でもなく公平に・・・いや逆ですね。
知の継承に命を懸けるのも、(異端である)知の継承を命を奪ってまで阻むのも、どちらも結果的に間違っていたとアルベルトを通して評価させたのではないでしょうか。

3章までの物語を見てきて、どちらももっと上手いやり方あるのに…と思っていた視聴者の姿を、アルベルトに投影したんだね

お~~、そういうことか~~
あくまで個人的な解釈です
人は神でも獣でもない
子供時代の話を聞いた司祭は、人間は矛盾を持っているものだと言う。
人は矛盾を受け入れられる
疑念と信念、2つ持っていて不都合が?
- 中略 -
これらの矛盾は両立します。
なぜか ──
by 司祭『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
それが人間だからです。
ここまで様々な対立軸を描いてきた『チ。』。
信仰と異教、天動説と地動説、天国や神を信じる者と信じない者、無神論者と自然主義。
そして疑うことと信じること。
これらが全て対象ではないでしょうが、矛盾は両立するという司祭。
人間は、神でも獣でもない。
その中間に存在する。でも、だからこそ矛盾を曖昧を混乱を受け入れられる。
by 司祭『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
むしろそこで理性の息継ぎをする。
人間は、常に理性的で正しい判断を下せる神(のような存在)ではありません。
だからと言って、本能や好奇心の赴くまま自由に生きる獣でもありません。
人間は、理性と本能の間で揺れ動く存在。
結果、曖昧さがあり、矛盾したことを考え、混乱を抱えることになります。
それでも人間は、矛盾や曖昧さを受け入れ、考え、工夫しながら生きていくことができます。
理性と本能の間にあるからこそ、いや理性と本能を行き来することができる存在だからこそ、白黒はっきりさせられない問題にも向き合うことができるのです。
むしろ、矛盾は必要で、受け入れないといけない、とまで思わされますね・・・。
「疑念」と「信念」。
人間にとって、いや、ここでは学者にとってでしょうか。
両方とも必要なのです。
司祭の正体
私も人には言えない悩みを告白します。
それは、私が昔友人を見殺しにしたことです。
発端は、友人がある仕事で重大な違反を犯してしまったんです。
by 司祭『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
取り返しのつかないことをした。
その結果、彼は死んだ。
昔、友人を見殺しにしたと言えば ──
同僚が処刑されるのを黙って見ていることしかできなかった金髪の異端審問官レフですね。(15話 )

どうすれば友を助けることができたのか。
どうすることが正解だったのか。
答えを得ることはできず、ずっとこれまで目を逸らしていたのです。
さて、ラファウだけでなく、新人異端審問官のレフも登場。
一体、この世界は、前々話まで描かれた世界とどのような繋がりなのでしょうか。(後述)
アルベルト・ブルゼフスキ
── アルベルト・ブルゼフスキ?
ええ。
ブルゼヴォ、僕の地元の名です。サインの際には、それを。
by アルベルト・ブルゼフスキ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
今話ラストでも紹介されたように ──
アルベルト・ブルゼフスキは実在する人物で、地動説を唱えたコペルニクスの恩師です。
不明Unknown author, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で
アルベルト・ブルゼフスキの幼少の記録は残っていないようですが、普通より遅い23歳で大学に入学したことは明らかなようです。
史実によると ──
アルベルトが大学に入学したのは1468年。
23話終盤から始まった最終章は、アルベルト・ブルゼフスキが大学入学する年が描かれていたのです。
アルベルトは、実際に「アルベルト・ブルゼフスキ」と著名していたようです。
「ブルゼヴォのアルベルト」という感じでしょうか。
ポルトガル語は、語尾に-skiを付け形容詞化します。
「ブルゼヴォ」に「ski」を付けて、「ブルゼフスキ」というわけですね。
前々話ラスト、出身地を聞かれ堂々と言えなかったアルベルト。(23話 )
今では、堂々自分の名前同様に記せるようになったのです。
一通の手紙
ポトツキ?
by 住民『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
いや、そんな名前の人、前々知らないよ。
おっと、この世界は、第3章までとは違う世界と思っていましたが・・・。
ここに来てポトツキの名が!
伝書鳩飛ばして送った手紙が、時空を越えて届いた!?

ヨレンタ~~
ドゥラカ~~~
前話鑑賞時、この世界(最終章)は、以前の世界(第1~3章)とは違う世界だと考えていました。(24話 )
ですが ──
少年ラファウとは似ているようで別人な青年ラファウ。
異端審問官レフの登場。
そして、極めつけはヨレンタが最期に送ったと思われる手紙・・・。
違う世界とは言い切れなくなってきました。
この世界は、第3章までと同じ世界なのか?
それとも、違う世界なのでしょうか・・・。
恐らく、どちらでも解釈可能なのでしょう。

というか、そういう風に見せているのだと思われます

えっ、そうなの!?
ポトツキへの手紙は、内容まで酷似。
異端審問官のレフが実在。
アルベルトの父親によると、こちらでも地動説は弾圧されている。
でも、ラファウは死んだはずなのに、生きていた?
それに青年ラファウは、地動説を知らない様子で、第1章に出てきたラファウとは別人のよう。
異端審問官レフは、友人を見殺しと言っていましたが、その理由どころか処刑とも言っていません・・・。
第3章までの世界と、この世界は、同じとも別とも、どちらとでも解釈できるのです。

確かに・・・
と、ここで終わっては面白くないですね(笑)。
私なりの解釈を記しておきましょう。

おお、聞きたい!

正解かどうかは知らないよ
(そもそも正解はないと思います)
私の解釈の結論は、次の通りです。
二つの世界は同じ世界。
第1~3章も(創作物として)存在した話だと私は解釈しました。
あまり、この手の話を単純化するのは良くないと思いつつ(苦笑)、簡単に言うと次のように捉えました。
最終章は、史実を元にしたフィクション。
第1章~3章は、完全なフィクション。

ん?
フィクションに、完全と、そうでないのがあるの??
(最終章の)「史実を元にしたフィクション」は、分かりますよね。
地動説を提唱したコペルニクスに影響を与えた、アルベルト・ブルゼフスキ。
どちらも実在する人物ですが、アルベルトの幼少期の記録は残っていません。
- 優秀なのに、なぜ大学へ入学するのが遅かったのか?
- なぜ幼少期の記録が残っていないのか?
- 署名に、なぜ出身地を入れているのか?
これらの事実から、原作者である魚豊先生は、アルベルトは過去に何かあったのではないかと想像を膨らませ、幼少期の事件を創造して物語を創っただけでなく、『チ。』全体のまとめ役を担わせた。

魚豊先生、スゴッ!
第1~3章は、もしかするとあったかもしれない魚豊先生の完全創作物語。
現代に生きる私たちからすると、記録が残った人しか知ることはできません。
でも、名を残す人だけで歴史が作られたのではありません。
むしろ、名を残さない人の方が大多数でしょう。
歴史の影には、記録に残らない無数の人生があります。
何者でもなく、一見、無意味で、ささやかな無数の現実。
記録を残すことはできなかったけれど、歴史を変えるような真理にここまで情熱を懸けた人、発見(発表)までここまで近づいた人がいるのではないか・・・。
そんな、歴史に取りこぼされた人々を描いたのではないでしょうか。
何よりも ──
もしかすると本当にあったかもしれない・・・。
そんなリアリティを感じさせる力ある物語でした。

それは、とてもよく分かる!
それならば、違う世界であってはなりません。
この世界と地続きでなければ、彼ら彼女らが報われません。

おお~~、確かに~~
正解かどうかは置いといて、いい解釈かも!

人間は曖昧さを受け入れないとね!

・・・
あくまで個人的な解釈です
でも、この世界が、第3章までと地続きだとすると、大きな謎が残りますね。
ラファウが二人存在することになってしまいます・・・。
私の解釈はこうです ──
青年ラファウ
最終章に出てきた青年ラファウは、第1章に出てきたラファウであって、ラファウではない。

?
どゆこと?
ラファウが、実在する人物ではなく、魚豊先生による想像上の人物であることは、皆さん同意して頂けると思います。
ならば、複数存在していても問題ないのではないでしょうか?

えっ、それとこれは別では!?
すみません、書き方が雑でしたね(汗)。
同じ人でも、環境や状況が違えば結果が変わることを示す象徴としてラファウは描かれた、のではないでしょうか。
神童ラファウは頭が良く・・・いや、頭が良すぎて要領よく生き、世の中チョロいと考えていました。

世界、チョレ~~。
大変申し訳ないが、この世はバカばっかだ。
- 中略 -
僕の信条は”合理的に生きる”。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第1話
愛とかに代表される無為な感情や無駄な欲望に惑わされず、合理的な選択をすれば、この世は快適に過ごせる。
物事を合理的に選択することを良しとしていたラファウが、地動説に出会い危険を顧みずのめり込んでいく・・・。
最後は命を賭してまで研究資料を後生に残し、地動説を信じる視聴者にその熱意を訴えかけました。
でも、命に替えてでも愛するその姿勢は、時と場合によっては人に害を与えてしまう。
それが今話で見たラファウ。
魚豊先生は、ラファウを聖人化したいわけでなく、命を捧げるほど没頭する熱意は、時と場合によっては悪となる。
そういったメッセージを込めるために、同一人物で描いたのではないでしょうか。

おお~、それなら分かる!
だから、最終章の青年ラファウは、第1章のラファウであって、ラファウではないのです。

う~~ん、それは分かるような分からないような…

そだよね
簡単に咀嚼できないよね(苦笑)
あくまで私の個人的な解釈です。
これが正解とは限らないですし、ある意味正解はないと思っています。
視聴者(読者)がそれぞれ解釈すれば良い。
むしろ、作品のテーマである「?(タウマゼイン)」を感じて欲しい。
そんな問いを投げかけている気がします。
しつこいようですが、あくまで個人的な解釈です(苦笑)
一旦、私の解釈の結論は書いたものの、正解かどうか不明なので疑問点として残しておきます。
原作は完結しているので、解決する時が来るか分かりませんが・・・。
「?(タウマゼイン)」を持ち続けるという意味で(笑)。
23話までの世界と、この世界は同じ世界?
些細な事かもしれないが…
さて、この世界が第3章までと地続きだと解釈すると ──
結局、フベルト(あるいはポトツキ)から始まった知の継承は完全に途切れたことになってしまいます。
研究資料は焼かれ、唯一残ったオクジーの本も出版できず仕舞い。
皆の努力と命は無駄だったのでしょうか・・・。
いいえ、そんなことはありませんね。
いや、そんな風に考えたくありませんね(笑)。
最期の最後、ドゥラカは伝書鳩を飛ばしました。
そして、ヨレンタの手紙は届いたのです ──
この本ってやつの題名も何だ?
「地球の運動について」って・・・。
by 住民『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
本は出版されなかったようです。
だから、住民は本の題名を知らなかったのでしょう。
アジトに埋めたオクジーの本も見つからなかったのでしょう。
だから歴史に残っていないのです。
でも、「地球の運動について」という言葉だけが、アルベルト・ブルゼフスキの耳に届いた・・・。

書き違いかな。
運動するのは天球だし・・・。「地球の運動について」か・・・。
ん?
by アルベルト・ブルゼフスキ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
地動説を提唱したコペルニクスは、アルベルト・ブルゼフスキの講義で初めて天文学に触れました。
その際、アルベルト・ブルゼフスキ教授は天動説に懐疑的だったと言われています。
・1468年
アルベルト・ブルゼフスキは23歳でクラクフ大学に入学。後に同大学で20年にわたり教員として働く。大学では主に数学と自然哲学を教えた。
その際、従来の天動説一般に対して疑念を示すような講義を行ったが、結論は保留した。
by 『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第25話
このとき聞いた「地球の運動について」が「?(タウマゼイン)」のキッカケになったのでしょうか?
だとしたら、フベルト、いやポトツキから始まった知の継承は無駄ではなかったのです。

なんて、ロマンだ!!
論文が残されなくても。
本が出版できなくても。
ほんの僅かなキッカケが残ってさえいれば、人はそこから掘り下げていける。
あったかもしれないifが、ひょっとすると歴史を動かすようなキッカケになっていたかもしれないのです。
おわりに (『チ。-地球の運動について-』25話とは)
いや~~ついに終わってしまいました。
正直、それはないでしょと突っ込んだり、スッキリしない点はありました。
好みの問題でしょうが、展開に引き込まれたのは第2章(オクジー&バデーニ編)まで。

これは、私が『チ。』は地動説の研究者物語だと思って見ていた影響かも
ですが、心に訴えかけてくるメッセージ性は、最後まで落ちることなく心に響き、刺さりました。
まるで壮大な思考実験を見せられた感覚、とでも言いましょうか。
様々な痺れる究極の選択を突き付けられ、自分を試されているような感覚。
ずっとレビューを書いていたので、そう感じたのかもしれません。
1話見ては考え、整理して、文章に落とし込む。
魚豊先生から突き付けられた課題のアンサーを書き続けていた感じです。

私の頭では全て理解できなかったので、浅い自覚はあります(苦笑)
恥を忍んで書きますが。
私は理系偏重で、歴史や哲学、そして宗教に全く興味を持てず、これまで触れてきませんでした。
そんな私でも『チ。 -地球の運動について-』を見て色々気付きを得ました。
人々に与える信仰心の強さ。
信仰は、生きる支えとなり、時に刃となる。
信仰心は宗教に限った話ではありません。
対象が人であれ星であれ考え方であれ、同様です。
適度であれば心地良く、度が過ぎると諸刃の剣となる。
まるで、それがなくなってしまうと自分ではなくなってしまうかのように。
好奇心の行き着く先は、この世の全てを知ること。
現代はあらゆる事が解明され、全てを知ることは不可能です。
特に凡人にとっては・・・。
(判明していることが多くなく)頑張れば全てを知ることができるかもしれない、と考える事ができた中世時代。
だからこそ、全てを知りたいと情熱を燃やせたのかもしれません。
いや、どの分野も未開拓だったので、あらゆる人が”分からない事”に対して知的探究心を持てたのかもしれません。
現代は、先人によってあらゆる事が研究され尽くされています。
私たちはネットを探れば、ある程度の答えを得られます。
自分の力で解き明かしたい。
そんな夢を描くことができた時代を羨ましく思いながらも、自由なことを発信できる現代のありがたみを実感する今日この頃です。
私は、どちらかというと、アニメは一気に見たいタイプです。
でも、本作は、1話見ては立ち止まって考える。
(原作連載も同じでしょうが)次話放送までの1週間が、とても良かった気がします。
登場人物達と、はたまた同時期に観ている皆様と。
喜び、驚き、悔しがり。
悩み、苦悩し、考え抜く。
放送は、1週の休みもなく、駆け抜けた半年間。(←これが凄い!)
お陰で熱は冷めることなく、皆の感想、考察がネットを駆け巡る。
登場人物達が、夜空を通じて繋がっていたように。
視聴者は、ネットを通じて繋がり、互いを刺激し、干渉し合い、理解を深める。
作品内でも、場外でも、様々な気付きとタウマゼインを与えてくれたTVアニメ『チ。-地球の運動について-』。
原作者・魚豊先生、アニメ制作に携わって下さった皆々様。
素晴らしい作品を本当にありがとうございます。
本当に為になりました。
生き方というと大げさですが、物事の見方が変わった気がします。
これだからアニメは止められない。
さて、『チ。-地球の運動について-』の原作は完結しているので、アニメもこれで終了。
本作に関する感想&考察レビューも、これで終了です。
これでネタバレを知るリスクがなくなったので、雑誌やネットにある『チ。-地球の運動について-』の記事を読むことができます(笑)。
書籍関連では公式トリビュートブック 『チ。 -地球の運動について-』 第Q集というのがあり、既に購入済み。
ようやく読むことができます(笑)。
解説本ではなくトリビュートなので、新たな情報はないかもしれませんが、気付きがあったらレビューに追記したいと思います。
以上、TVアニメ『チ。-地球の運動について-』第25話の感想&考察レビューでした。
最終話も長文になってしまいましたが、最後の最後までお付き合い下さり本当にありがとうございました。
本ブログでは、他のアニメ作品も取り上げています。
良かったらご覧下さい。(レビュー一覧)
最新情報はX(@toki23_a)にて!
ではでは。
「地球の運動について」の「ち」
応援(投げ銭)
本レビューを面白いと思って下さった方、気に入って下さった方、サポートして頂けるとブログ作成の励みとなります。
Amazonギフト券の贈り方
次の4点(金額、受取人)を記入願います。
- 金額:一番右に自由記入欄があるので、1記事100円を目安に、お好きな金額ご記入下さい。もちろん100円以上でも大歓迎です♪
- 「宛先」or「受取人」:メールアドレス「gift2toki23@gmail.com」
- 贈り主:ご自身のお名前をご記入下さい(匿名でも可)
- メッセージ:好きなメッセージをご記入下さい(デフォルトでもOK)。
全て記入終えましたら、「カートに入れる」or「今すぐ購入」を押して決済に進んで下さい。(ここからは、普段お使いのAmazonでの商品購入時と同様です。)
よろしくお願い致します。

これで毎日ケーキ食べられるかな!?

(君のケーキの為にサポートお願いしているんじゃないだけどね…) 皆に応援してもらえるよう頑張ろう!
疑問点 まとめ(Q&A一覧)
この章では、疑問点をまとめていきます。
- 今話で発生し解決した疑問は、本文で解説して本章(ここ)でまとめ
- 今話で解決しなかった疑問を、疑問XX-XX(話数-通し番号)として記録
⇒ 本章(ここ)でまとめ - 答えは、推測ではなくできるだけ(原作含む)作品内で明らかになった事実を記載
※推測が入る場合は、断りを入れる
⇒ 解決した疑問は、次話で削除
今話で解決した疑問 (クリックすると答えが表示されます)
今話で新たに発生し、解決しなかった疑問
- 疑問 25-01 23話までの世界と、この世界は同じ世界?
残っている疑問 (クリックすると表示されます)
- 疑問 05-01 ラファウの手紙、ポトツキ贈与に込めた意図は?
- 疑問 06-02 なぜ太陽の大きさが、禁書にされている?
- 疑問 06-03 バデーニは、なぜオクジーに観測を頼んだ?
- 疑問 07-01 コルベのヨレンタに対する態度は本心か、それとも・・・
- 疑問 08-01 バデーニは、なぜアリスタルコスを知っている?
- 疑問 08-02 教会は、貴族相手でも異端扱いできる?
- 疑問 10-01 ピャスト伯の観測資料、どこに運び込んだ?
- 疑問 10-02 オクジーは何を書いている?
- 疑問 12-03 バデーニとオクジーを捕らえるのに、なぜ良い人材を回してもらえない?
- 疑問 15-01 ヨレンタはどこへ逃げた?
- 疑問 15-02 クラボフスキが、ふさわしいとは?
- 疑問 16-01 本の内容が奇妙とは?
- 疑問 16-02 異端解放戦線の組織長は、地動説の本で何をしようとしている?
- 疑問 17-01 ドゥラカは、どうやって大金を蓄えた?
- 疑問 18-01 アントニ司教も前司教同様、宇宙論重視?
- 疑問 23-01 本の出版はどうなった?
- 疑問 23-02 埋めて隠したオクジーの本はどうなった?
- 疑問 23-03 アルベルトは、なぜ出身地を言えない?

残った疑問は、後日整理します
今週のX感想ポスト
#チ。 #チ球の運動について 25話(終)
— 時文@ここアニ(『チ。』『薬屋』レビュー中) (@toki23_a) March 16, 2025
自由を求めながら不自由に安心する
理性を信じながら好奇心に動かされる
変化を恐れながら変わらずにいられない
それが神でも獣でもない人間
全て知るには1人では無理 矛盾対立抱え込み試行錯誤繰り返し飽くなき探求続けてく
?は残ったもののメッセージ性は見事
#チ。 #チ球の運動について 全話総括
— 時文@ここアニ(『チ。』『薬屋』レビュー中) (@toki23_a) March 16, 2025
時代の蹤跡か人々の欲望か
地動説に命を懸ける研究者の物語と思って見たが、それだけはなかった…自然科学は当時の神の領域にまで及び真理を追究すると壁にぶち当たる。それでも突き進む姿に心震えた。信念や探究心とは人をそこまで熱くさせるのか、と
お見事👏