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こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『チ。-地球の運動について-』第3話「僕は、地動説を信じてます」を鑑賞しました。
本レビューではアニメ感想だけではなく、原作コミック情報も加え、個人的な解釈による解説・考察をしています。
皆さんの理解の助けになり、作品をより楽しんで頂ければ幸いです。
今回アニメ化されたのは──
- 原作コミック『チ。-地球の運動について-』第1集
-
第3話~第4話 (第1集最後まで)
今話の主なトピック (クリックすると該当項目へ)
今話で解決しなかった疑問
最下部「疑問点まとめ (Q&A一覧)」に記載
本レビューの方針
本レビューは、次話以降のネタバレなし
アニメ『チ。-地球の運動について-』の原作は、魚豊先生による同名漫画。
私は原作未読です。
アニメ鑑賞後、アニメ化済み時点までの部分を読み、レビューを作成しています。
アニメ鑑賞
+
原作コミックを読み
知り得た情報を加味して「感想・解説・考察」
よって、次話以降のネタバレはなしなのでご安心ください。
なお、原作コミックの情報は、「原作情報」として区別できるよう記載します。
こんな感じです
緑系の色を目印にしてね!
引用部分も次のように緑系をワンポイントに ──
燃やす理屈、なんかより!!
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』コミック第1集
僕の直感は、地動説を信じたい!!
ちなみに、考察や疑問はオレンジ系 ──
補足や余談、参考情報はブルー系 ──
と色分けしているので、読む際の目安にして下さい。
全25話 各話リスト
話数 | サブタイトル | 原作漫画 |
第1話 | 『地動説』、とでも呼ぼうか | 第1集 |
第2話 | 今から、地球を動かす | |
第3話 | 僕は、地動説を信じてます | |
第4話 | ||
第5話 | ||
第6話 | ||
第7話 | ||
第8話 | ||
第9話 | ||
第10話 | ||
第11話 | ||
第12話 |
※話数:リンクは各話レビューへ
※サブタイトル、原作漫画:ネタバレを避けるため次話以降はマスク
はじめに
フベルト亡き後、地動説の研究を続けるラファウ。
上手く隠しているつもりだったが、義父ポトツキに見つかり、異端審問官ノヴァクには目を付けられていた・・・。
想像力、好奇心 ── 知性は時に命より重要?
「血」より「知」を繋ぐ物語。
教会の敵は異端ではなく、制御不能の知性。
一度燃え上がると抑えられない。
息を吐くように嘘をつき、無理と分かれば命よりも知を優先す。
周囲が羨むような頭脳を持ちながら、狂人のような選択をする。
自分一人で辿り着けぬなら、まだ見ぬ誰かに思いを託す。
知的好奇心、極まれり。
探究心が、まだ見ぬ宇宙の真理が、生存本能を打ち負かす。
地動説とは、そこまでか!
いやいやいや
ちょっと待ってよ、何この結末!
うん、ラファウどうやって乗り切るんだろうって思いながら、ずっと見てた
まだ12歳でこれからなのに、何でこんな選択するの!?
すぐには理解できないよね
順を追って見ていこうか
では、今話を振り返っていきましょう。
感想&考察レビュー 第3話「僕は、地動説を信じてます」
隠しごと
ラファウは、隠れて地動説の研究に着手。ラファウが異端研究をしていると察した異端審問官ノヴァクは、義父ポトツキに揺さぶりをかける。
密かな研究
そろそろ義父さんの帰りか。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
前話、ラファウは宣言しました ──
── さあ宣言してくれ、天文はやらないと!
了解です、宣言します!
天文は二度としません。普通にウソをついた。
- 中略 -
ウソほど便利なものはない。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第2話
培ってきた合理的判断力により、トラブルは回避するのだ。
サラッとウソをつき改心したと義父を安心させ、大学進学への道を復活させます。
それだけではなく、早速家で隠れて天文の研究を続ける始末。
データ収集に繋がる天体観測くらいは続けるのかも知れませんが、本格的な地動説の研究は大学に行ってからやるのだと思っていました。
大体、なぜ家で研究ができるのでしょうか?
それは、家に天文の資料があったからでしょう。
そこへフベルトの地動説の資料と観測データが加わったのです。
となると ──
前話、フベルトが残した資料に火を付けましたが、すぐに消したので残っていたのかもしれませんね。
にしても…
研究続けてるのも、そもそも天体に興味を持ったのも、家に資料がある事が一因のような…
あっ、そうじゃん!
異端に興味を持たせる火種を近くに置いておいた、親の責任もあるんだよね…少しモヤモヤ…
さて下書きは燃やした。
清書した資料はここへ。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
よーし、だいぶ貯まってきたな。
下書きは燃やし、清書した資料はフベルトの石箱に資料を隠し、研究を続けるラファウ。
「だいぶ貯まってきた」と言っているので、そこそこの研究はできたのでしょう。
って、毎回山登ってたの!?大学入学前にそんなに長い期間休みなの!?という疑問は置いといて(苦笑)
順調に思えた研究も、一瞬の油断が計画の綻びとなったのです。
ん?
by 義父ポトツキ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
何を燃やしたんだ?
普通の人が見ても分からないだろう数式。
でも、同様の研究をしていたポトツキには、一目で地動説と分かってしまったのです。
皮肉ですね・・・。
完璧には研究を隠しきれないラファウ。
ラファウは油断していたのです。
いや、ウソで切り抜けられると思っていたのかもしれないですね・・・。
ここは、教会が幅を利かせている世界。
自分以外、全員敵。
チョロくはなかったのです。
戦略的ウソ
── 本当に関わっていないと神に誓えるか?
もちろん誓います。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
僕は今の宇宙を信じています。
息を吐くように嘘をつくラファウ。
前話、義父ポトツキは簡単に騙されましたが、異端審問官ノヴァクは疑っている様子。
って、前話ラファウの顔色見たらバレバレだったよね…
そうだね、この辺はまだ子供なんだよね
ラファウの部屋から地動説を描いたノートが見つかった際、ラファウは明らかに焦っていました。
ある意味、教会関係者はのどかで人が発する言葉を信じます。
ですが、ノヴァクは ──
異端審問官ですが、その前は傭兵、そして家族持ちで俗世を知っています。
普通(俗世)を知っているだけに、教会の連中とは一味も二味も違う。
人というものをよく分かっているのです。
そんなノヴァクは、ラファウが地動説を知っていると見抜きます。
そして一筋縄ではいかないことも・・・。
異端審問官ノヴァクも、自分の直感を信じて動いているのでしょう。
綻び
その紙は自然消火しやすい。
by 義父ポトツキ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
燃やすなら灰になるまで見ておけ。
まるで自分も同じようなことをしたかのような口ぶり…
あっ、確かに!
義父から警告されるラファウ。
一瞬、見逃されたかと思いましたが、義父は義父でラファウの下書きを見て確信したのでしょう。
ラファウは、地動説の深い所まで研究を進めている、と。
それは、地動説に魅了されている証拠。
かつては自分も、そしてフベルトも経験しているので、容易に想像がついたのでしょう。
天体を観測するのは(神学ではないので)本流ではありませんが、異端ではない。
だけど、地動説は教会が信じている天動説を真っ向否定する異端。
ラファウは、自分(義父ポトツキ)にウソをつき、天文をやっていたどころか異端研究をしていたと知ってしまったのです。
一時停止
ここのところ派手に動きすぎたな。
資料も足りなくて、少し行き詰まってたところだ。ここらで一旦休んで、大学が落ち着いてから研究を再開するか。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
義父に研究をしているのがバレてしまった。
だが、追求してこないところを見ると見逃してくれる?
義父は教会側の人間。
いつ何時、教会に漏れるかもしれない。
そうでなくても、大学入学を取り消されるかもしれない・・・。
ラファウは研究を一旦止めて、大学へ入学してから再開すると決めます。
前話、地動説を証明するには ──
地動説を証明するには、30~40年はかかるだろう。
ただ夢物語じゃない。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第2話
地道に確実に進めるんだ。
30年以上必要と言っていました。
しかも、それだけの期間、隠れて研究しなければならないのです。
焦ってやるのは危険。
そう考えると、早い段階でボロが出すぎたのです・・・。
アニメは原作にかなり忠実です。
構成もセリフもほぼ同じ、完璧と言ってもいいほです。
が、前話上記部分のセリフ、珍しくカットされていました。
専攻、神学・・・。
そうだ、これでいい。よく考えたら神学で入学しても天文に編入できる。
大学に行けなくなる方が、本末転倒だ。それに、地動説証明の為、最初は神学から着手するのは案外妙案かもしれない。
※太字部分はアニメではカット
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』コミック第1集
ラファウは、地動説を証明するのに神学が役に立つとまで考えていたのです。
ラファウの頭には「神学からの移動計画」という名の中長期計画が ──
長文なので引用は避けますが、その中ではいつ頃天文へ編入し、地動説をいつ公表するかまで目標を立てています。
神学を学んで教会の思考を修得し、説得するための糧にしようとまで考えています。
さすが神童ラファウ!
お見事です。
ぜひ、原作をご覧下さい。
なんでカットされたのかと思ってたけど、まさか無意味になるからだったとは…
そこまで生きないからカットしたの!?
いや、冗談だよ(笑)
結構長いラファウの中二病的妄想だから、尺の関係で外したのだと思う
対策
ここらで一旦休んで、大学が落ち着いてから研究を再開するか。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
地動説の研究を一旦休むと決めたラファウ。
その後、(ラスト石箱に入っていた)あの手紙をしたためます。
恐らく、ラファウはここで最悪の事態を想定したのでしょう。
理由は分からないが、今のところ義父は見逃してくれたっぽい。
でも、異端審問官は自分が何か隠していると目を付けているだろう。
備えあれば憂いなしか、もしもの時のための保険でしょうか。
誰に託すか分かりませんが、フベルトがやったようにラファウも次世代に手紙を残したのです。
虫の知らせか、直感か。
この時、どこまで覚悟していたのか、今となっては分かりません。
が、これを境に、ラファウの胸からフベルトのネックレスがありません。
翌日、外出したときに、誰かに託した、あるいはどこかに隠したのだと思います。
フベルトがウソをついてまで牢獄を出てやり残したこと。(2話 )
ラファウは、ここで実行したのです。
それがラストシーン、10年後に繋がるのでしょう。
ネックレスは、どのようにして渡った?
ポトツキも地動説
あなたに異端の前科があって、それがフベルトと同じ地動説の罪でも?
- 中略 -
恐らくフベルトは、勝手にあなたの過去の研究を見たんでしょう。
by 異端審問官ノヴァク『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
なんと、義父ポトツキも地動説を研究していた!?
ポトツキの関係者三人が三人とも地動説を研究していたなんて、世間が狭すぎる・・・。
いや、逆ですね。
ポトツキが地動説を研究し、そこに資料があるからフベルトが寄ってきて、ラファウが(少なくとも最初は)巻き込まれたのです。
地動説は ──
義父ポトツキ ⇒ フベルト ⇒ ラファウと受け継がれていたのです。
だから前話ラスト言っていた ──
それにしても、父さんはあれほど天文を毛嫌いしているのに、どうしてこの家にはこんなに資料があるんだろう。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第2話
ポトツキの家には天文学の資料が多くあったのです。
自分可愛さか養子のためか
ただ火炙りに於いて、そんな肉体的苦痛なんて些細な事だ。
あなたならその意味が分かるでしょう?肉体が灰になっちまうんだ。
by 異端審問官ノヴァク『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
最後の審判で復活する体がなくなる。
ラファウが尻尾を出さないと踏んだノヴァクは、義父ポトツキに揺さぶりをかけます。
『チ。』に出てくる教会のモデルは、キリスト教だと思われます。(1話 )
キリスト教では、死は「召天」と言われ、神がいる「天に召され」最後の審判を受け、復活の日まで天国で過ごすとされていました。
よって、死者が復活するための肉体が必要と考えられ、土葬埋葬が基本です。
教会(死者の復活)を信じる者にとって、肉体を燃やされることを最も恐れていたのです。
義父ポトツキは、前科持ち。
二度目の異端は、即火炙り。
ポトツキは自分の身可愛さに養子を売ったのでしょうか?
私はそうは思いません。
確かに、ラファウの異端研究を知りポトツキは恐れていました。
が、ノヴァクに脅かされるまで密告する気などなかったように見えます。
ノヴァクからも隠そうとしていたしね
うん、確かに…
地動説は証明できると思うか?
by 義父ポトツキ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
でも、ラファウの回答を聞いて、ポトツキは覚悟を決めたように見えます。
これはどういう事でしょうか?
2つ考えられます。
一つ目は、シンプルに捉え ──
ラファウの答えを聞いて、ラファウは異端研究をしていると確信したのでしょう。
燃え残った下書きを見て、ラファウが何をしているのか分かったような感じでしたが、確信は持てなかった。
「地動説を研究しているのか?」と問うても、聡いラファウのことだ、またウソをついてはぐらかされるかもしれない。
ラファウが信じている本質を突く。
地動説にのめり込んでいればいるほど、ウソをつけない核心を衝く質問 ──
地動説は証明できると思うか?
by 義父ポトツキ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
過去、義父ポトツキやフベルトが夢に見ていたからこそ、心から欲していたことが手に取るように分かっていたのです。
この問い対して、ラファウはウソをつけないだろう、と。
一方、ラファウにとっては、この質問はポトツキが自分側に立ってくれる可能性があるとも捉えられます。
だからこそ、本心を語らざるを得なかったのでしょう。
この辺、持って行き方がメチャクチャ巧い!
(ラファウのウソにすぐ騙される)チョロい義父だと思っていましたが・・・。
なかなかどうして、過去には地動説を研究し、前科持ちでありながら今の立場まで上り詰めただけはあります。
こうして、養子ラファウが異端研究をしている証言を得た義父ポトツキ。
庇いたかったが、ラファウは異端審問官ノヴァクに完全に(自分共々)目をつけられています。
だから、仕方なく、ノヴァクの誘いに乗って密告したのではないでしょうか。
あくまで、ポトツキは、ラファウに(自分と同じように)改心してほしいと願ったのです。
だから、裁判所で入学許可書を受け取った瞬間、ポトツキは安堵したのです。
確かに…
二つ目は、真逆です ──
義父ポトツキは、ラファウに地動説を証明してほしいと思ったのでは?とも考えます。
その為には、異端審問官ノヴァクの疑惑の目を一旦逃れなくてはならない。
ラファウはまだ12歳と若い。
今すぐ証明しなくても、まだまだ時間はある。
慌てなくても良い。
ここさえ乗り切れば、ほとぼりが覚めれば、チャンスはある。
自分だって、一度異端で有罪とされ前科持ちだが、ここまで来た。
ポトツキには前科持ちの可能性が分かっているのでしょう。
ここを凌ぎきり、ついては自分が果たせなかった夢を叶えてほしい、義理ではあるがそんな親心を持っていたのでないかと考えるのは甘いでしょうか・・・。
でも、そうだとすると、あまりに悲しいラスト。
親の心子知らず。
ラファウは、研究資料の焼却を望まず、自分の肉体が焼却されることを選んだのです。
えっ、だとしたらメチャクチャ悲しい結末じゃん!
そうなんだよね、ポトツキが何も語らないのを見ると前者なのかな…ポトツキもまだ地動説に未練があるように思えたんだけどね…
あー、まーね
気持ちは分かる
さて、義父ポトツキの本心が語られることはあるのでしょうか・・・。
覚悟
すまない、今日はもう寝てくれ。
by 義父ポトツキ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
詳しいことは明日話そう。
義父ポトツキの質問に正直に答えたラファウ。
だけど、ポトツキは本心を話そうとしませんでした。
それどころか、教会へ密告・・・。
だけど、このとき既にラファウは教会に連行されると覚悟していた様子。
寝る前に、毒物が入った袋を準備しています。
にしても、毒よく持ち込めたよね(笑)
恐らく、懐にでもしまったんだろうね
でも、それよりも逃げれば良かったのに…
あっ、そうじゃん!
なんで逃げないの??
ですね。
手紙を書いてる時から、ラファウは捕まることを想定していました。
なぜ逃げなかったのでしょうか?
ここで逃げなかったのは、義父ポトツキに迷惑がかかるからでしょう。
ラファウ優しい!
密告されたのにーー
密告されたのはポトツキが悪いのではなく、自分のミスだからね…
でも、そういや、なぜフベルトは逃げなかったのでしょうか?
フベルトは(拷問により?)目が悪く一人で研究を続けられませんでした。
後継者ラファウを見つけ、自分の研究(=人生)に区切りをつけたのでしょう。
が、ラファウはまだまだ若い。
研究もこれからです・・・。
ん?
そう言えば ──
ここのところ派手に動きすぎたな。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
資料も足りなくて、少し行き詰まってたところだ。
ラファウは、地動説の研究を始め、山頂の石箱には資料が「だいぶ貯まってきた」と言っていました。
前話から僅かな日数しか経っていない気がしますが、もしかするとある程度研究が進んでいたのかもしれないですね。
異端裁判
義父ポトツキの密告により捕縛されるラファウ。「地動説を捨てれば全て赦される」── 裁判所で選択を迫られたラファウは、信じられない行動を取る。
苦悩の梨
これはまだ試作品なんだけど、”苦悩の梨”と言ってね、ネジを回すとこのとおり梨が開く。
by 異端審問官ノヴァク『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
おお、「苦悩の梨」の説明があるとは思いませんでした。
前話ネタバレしてしまいました、すみません。(2話 )
でも、前回疑問に思っていたことが解消しました。
なぜ、秘密を吐かせようとするのに、話せないようにするのか。
頬は裂けて、1年はしゃべれなくなる。
by 異端審問官ノヴァク『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
君は知らないだろうが、この世には如何に効率よく苦痛を与えられるか考えつくされた道具が沢山あるんだよ。
しゃべれなくなる事を分かってやっているのです。
話せなくても、筆談があります。
イエス、ノーくらいなら、首を振るだけで可能。
場所や人を示すのも、選択肢を示せばジェスチャーでOK。
口がきけなくても、聞き出す手段はあるのです。
それよりも、如何に効率よく苦痛を与えられるかが重視されているのです。
恐ろしい・・・。
そういや、フベルトも口の辺りに傷が…
あっ、そういうこと?
そういうことなんだろうね…
見えてきた真理
なぜ僕はこんなことをしてるんだ?
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
なぜ僕はこんなことになったんだ?
(手紙を書いたり毒の準備をしたりと)覚悟はしていたものの、実際に牢獄へ放り込まれると我に返るラファウ。
地動説に出会ったことを後悔し始めます。
でも、月明かりを見て、以前義父ポトツキに言われて天体観測を止めようとしていた時のことを思い出します ──
僕が天文を続けるのは合理的じゃない。
あの頃と同じで空はずっと遠くにある。
それどころか窓はあの頃よりも小さい。でも・・・でも、なぜだ?
今はあの頃より、はっきりと宇宙がよく見える。こんなに美しかったのか・・・。
※宇宙と書いて「そら」と読ませるのは原作から引用
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
なぜあの頃より宇宙が見えるのでしょうか。
牢獄の窓は家の窓より小さいのに、なぜはっきりと宇宙が見えるのでしょうか。
それは、ラファウが宇宙の真理に近づいたからですね。
1話、ラファウが天体観測を止めようとしていた時、こんなことを言ってました ──
いやいや空のことは忘れろ、あんなのどうだっていい。
規則正しく決まって動く星に、一時は合理的な美しさがあると思ったが、蓋を開ければ複雑な軌道計算とバラバラな星の集まり。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第1話
一見、宇宙は美しく見えるが、(天動説では)それぞれの星々が複雑で不合理な軌道で動きバラバラ(=美しくない)。
だけど地動説を知り、星々が合理的な動いていると知り、美しく見えるようになった。
更には、地動説を研究し始めたラファウにとっては、宇宙の一部を見ただけで、その周囲の星々まで頭の中に描かれるのでしょう。
ラファウは、真理に近づいたので宇宙が美しく見えるのです。
その美しさは、ラファウにある決意をさせる程に・・・。
裁判
被告は全天体が地球ではなく、太陽を中心に回転しているとした地動説を研究していたことを認めますか?
by 裁判長『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
このシーン、2つの意味で驚きました。
国の裁判ではなく、教会の裁判なのにこんなに大々的にやるのだと。
そして、これだけの聴衆がいる前で地動説を説明するのだと。
あっ、確かに
この様子から、教会は完全にこの国の支配しているのでしょう。
だから義父ポトツキを始め、誰も逆らえないのです。
教会も、人々を支配している自信があるから地動説の説明を堂々とするのでしょう。
地動説を研究して欲しくないなら、まず第一にやることは知られないことです。
知らなければ、気付くこともありません。
普通の生活をしている限り、地球が自転や公転しているなんて気付きません。
天文を研究している学者が気付く程度です。
ならば、その学者をチェックしていれば効率よい抑え方。
だけど、ここでは地動説を大っぴらにしているのです。
それだけ地動説なんて考えはバカげている(誰も信じない)という自信があるのでしょう。
だけどそれは(教会にとって)デメリットもあります。
人々に異端思想を広めることになってしまいます。
悪い考えだと聞いた瞬間、興味を持ってしまうかもしれません。
いけない考えの方が興味を引いてしまう可能性もあります。
もしかすると、ラファウの次に続く研究者も、この中から出て来たのかもしれないですね。
だとしたら、ラファウが裁判で派手に宣言したのも狙ったのかもしれないですね・・・。
その入学許可書を受け取りますか?
by 裁判長『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
入学許可書の右下部分が、書き直されています。
これは一体何をどう書き直したのでしょうか?
astronomia:天文学
teologia:神学
入学許可書に最初は天文学と書いて、義父ポトツキにサインしないと言われ神学に書き換えていたのです。
全て地動説のため
囚人でもこんなにいい物が飲めるんですね。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
原作では、「こんないいワイン」と言っています。
12歳の子供、子供と言いながら、子供にワインを出す世界
あっ・・・
毒を飲むには(簡単に味が変わらない)アルコールは丁度良い。
もし、水とか(子供が相手だからと言って)ジュースだったら、ノヴァクは一緒に飲めませんし、そうなるとこの後のシーンが成り立ちません。
アルコールを別の飲み物に変えることはできないが、アニメでは配慮してアルコールであることを伏せたのでしょう。
賢いラファウのバカな選択に戸惑う異端審問官ノヴァク。
── なぜ、こんな台無しにした。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
単純ですよ。
資料を焼かない方が、地動説の為になると思った。
ラファウが拷問の道、いや死を選んだのは地動説のため。
拷問されれば、いずれ研究資料の隠し場所を話さざるを得ない。
いや、話すまで教会は拷問を止めないでしょう。
改心の宣言をして研究資料を燃やすことはできない。
拷問に堪える根性も自信もない。
ウソをついて解放され、資料が燃やされても、再び隠れて研究をすれば良いと思うのですが・・・。
残った資料がそれほど重要なのか、これまでにまとめた研究を無駄にしたくないのか・・・。
頭にあれば、もう一度辿るのは前回より容易いと思うのですが・・・。
何と言っても、12歳のラファウにはこの先の人生の方が時間が長いのですから・・・。
だけど前科がついてしまうと、フベルトのように異端審問官に目を付けられてしまう。
実は、地動説研究者としては詰んだと思ったのかもしれないですね。
ならば、この時点で次へバトンを渡すのも分かります。
が、自死を選ぶのは賛同できませんが・・・。
別の場所にダミーでも作っておけば良かったのに…
あっ、そうじゃん!
でも、ことこの手の類いは教会は甘くないと思ったんだろうね
そっかー、ノヴァクしつこそうだもんね…
人の想像力・好奇心は止められない
敵は手強いですよ。
あなた方が相手にしてるのは僕じゃない、異端者でもない。ある種の想像力であり、好奇心であり、畢竟それは知性だ。
それは流行病のように増殖する。
宿主さえ制御不能だ。一組織が手なずけられるほど可愛げのあるものじゃない。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
教会が目くじら立てて異端扱いしている地動説。
ラファウは、教会が相手にしているのは自分でも異端者でもないと言う。
教会が対峙しているのは、人の想像力であり、好奇心。
宇宙を美しいと思う人がいる限り、その構造を知りたい人が現れる。
地動説はその度に土台に上がる。
地動説が異端かどうか、神を冒涜しているかどうかは関係ない。
ラファウは、宇宙に(まだ明かされていない)真理が残っている限り、人の探究心は止められない、地動説を研究する者は後を絶たない、と言っているのです。
人の探究心、好奇心は止められない。
ならば、(自分が証明できなくても)いつか誰かが解明する。
だから、次の研究者達に資料を残すと決断したのです。
ラファウは、地動説を証明するには20~30年かかると見込んでいました。
一人の研究人生ではなかなかの長期間。
ならば誰かの研究を土台にして、次の研究を進めれば良いのです。
実際、フベルトはアリスタルコスの研究を元に地動説を研究していたと思われます。(1話 )
ラファウは、アリスタルコスの研究とフベルトの研究を引き継いだのでしょう。
そうして、研究は次へと繋いでいくのです。
── では勝つのは君か?
── この選択は君の未来にとって正解だと思うのか?そりゃ、不正解でしょう。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
でも不正解は無意味を意味しません。
この決断は ──
ラファウの未来を閉ざすという意味では不正解。
でも、地動説を研究する未来の学者にとっては意味があるのです。
異端審問官ノヴァクが、ラファウの上記セリフを聞いたとき少し驚いたような表情を見せました。
これはなぜでしょうか?
まあ普通に考えれば、若干12歳のラファウが達観した考え、あるいは理解できないので恐れおののいたのでしょう。
もう一つ、私は思い至りました。
もしかすると、フベルトも同じ事を言ったのかもしれないですね。
フベルトはラファウに言いました ──
私は命を張る場面でこそ直感を信じる。
── 信じて間違ったらどうするんですか?
構わない。
by フベルト『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第2話
不正解は無意味を意味しない。
拷問中、異端審問官ノヴァクに対しても言ったのかもしれませんね・・・。
ケシの実
ケシの実の効果は知ってますか?
── ケシの実? いや・・・。古くは、アテナイなんかで使われてたようですが、それと毒物を混ぜると・・・まあ簡単に言うと苦しまずに死ねる。
by ラファウ『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
拷問道具には詳しいが、毒のことは知らない異端審問官ノヴァク(笑)。
この辺になると完全にラファウのペースですね
うん、爽快なんだけど結末が…
先にも書いたとおり、二人が飲んでいるのはワインです。
ワインだから、毒を入れられていても簡単には気付かないので、自分が毒を飲まされたとノヴァクは勘違いしたのです。
その選択は、教えに反してる。
by 異端審問官ノヴァク『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
どこまで教会をコケにするんだ。
教えに反しているとは、教会では自殺を認めていないのでしょう。
教会がモデルとしてるキリスト教に限らず、多くの宗教は自死を認めていません。
命は神から与えられたものであり、いつ死ぬかを決めるのは神だと考えているので、自ら死を選ぶのは神への冒涜になるのです。
教会で認められない自殺をしたとなっては、当然復活は認められず。
ラファウは、異端ということもあり、その遺体は火葬されたのです。
10年後
なんで俺がこんなことに・・・。
by オクジー『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
※名前はエンディングのキャストから
10年後。
ある男が、ラファウがフベルトから受け取ったペンダントを手に、アルニラムが指す山へ・・・。
彼がラファウからペンダントを受け継いだのでしょうか?
あるいは、託されることになったのでしょうか?
ネックレスは、どのようにして渡った?
“地”?
by オクジー『チ。-地球の運動について-』TVアニメ第3話
石箱の中には「ziemia」と記された手紙が。
「ziemia」は、ポーランド語で「大地」。地球のことですね。
この事からも、P王国とはポーランドだと分かりますね。(1話 )
この手紙は、今話中盤ラファウが書いたものですね。
ラファウの計画通りか不明ですが、10年後に次の人に渡ったのです。
一体、何と書いてあるのでしょうか。
そして、ラファウの研究は受け継がれるのでしょうか・・・。
おわりに (『チ。-地球の運動について-』3話とは)
いや~~~まさかの主人公退場!
地動説を提唱したコペルニクスが生きていたのは「1473-1543年」。
説を唱えたのも人生の後半です。
1話冒頭で「15世紀(前期)」とあったので、地動説唱えたコペルニクス時代じゃないことはすぐに分かったし、ラファウ個人では証明まで辿り着くことはできず、誰かに引き継ぐんだろうな~~とは想像していました。
が、まさか3話で退場とは!
個性的で魅力的なキャラなので、全25話の前半クール(12話まで)は主人公だと思ってました(苦笑)。
早すぎる!
ホント、それ!
なんとなく嫌な予感はありました。
原作の表紙です。
※3話で1巻最後まで描かれました
表紙にもネタバレがあるので、次巻以降の表紙は見ないようにしていますが、どうしても視界に入ってしまいます(苦笑)。
直視しなくてもラファウがいないことはなんとなく分かっていました。
いやいや、最近のコミックはサブキャラを次々紹介するパターンもあるし・・・ぐらいに考えてました。
が、もっと気になる事が1巻の表紙にありました・・・。
ん?
ラファウ、首吊ってね?
あっ、ホントだ!
えっ、でもどういうこと!?
苦しんでいる様子はないので、一瞬腰を縛って吊るされているのかとも思いました。
が、天体観測にそのようなことをする必要はありません。
3話を見終わった後なら分かります。
これは、首を吊られても天体観測を続ける。
ラファウの意思、信念を表しているのではないでしょうか。
先に気付いたとしても、それは信念であり、まさか3話(1巻)で自主退場するとは思いも寄りませんでしたが・・・。
それに、本作原作コミックは、第1巻、第2巻と呼んでません。
第1集、第2集と銘打っているのです。
一部、完結していない作品を「集」としている出版社もありますが・・・。
私は、和歌集や短編集 ──
複数の人の作品が収められた書籍、同じ作者でも違う作品、時代等背景が違うエピソードを収めた書籍だと思っています。
つまり『チ。-地球の運動について-』は、そういう物語なのでしょう。
前話鑑賞後、今話からラファウのほのぼの学園物が始まると思ってたのに…
うん、ほのぼのになるとは思ってなかったけど、少しくらいはあると思ってた。違う意味で描かれなかったね…
あれ?
ラファウの大学学園生活を心待ちにしていたのは私だけですか??
知の探求に危険は付き物。
世界を動かすとは、世界を敵に回すのと同義。
(特にこの時代)終わりは突然やってくる。
本作は、時代に抑圧され振り回され、それでも真理を求め続ける者達の物語。
心して見届けましょう。
以上、TVアニメ『チ。-地球の運動について-』第3話の感想&考察レビューでした。
長文にもかかわらず、最後まで読んで頂きありがとうございます。
次話のレビューも書く予定です。
良かったらまたお越し下さい。
最新情報はX(@toki23_a)にて!
ではでは。
地動説の「ち」
疑問点 まとめ(Q&A一覧)
この章では、疑問点をまとめていきます。
- 今話で発生し解決した疑問は、本文で解説して本章(ここ)でまとめ
- 今話で解決しなかった疑問を、疑問XX-XX(話数-通し番号)として記録
⇒ 本章(ここ)でまとめ - 答えは、推測ではなくできるだけ(原作含む)作品内で明らかになった事実を記載
※推測が入る場合は、断りを入れる
⇒ 解決した疑問は、次話で削除
今話で解決した疑問 (クリックすると答えが表示されます)
今話で新たに発生し、解決しなかった疑問
- 疑問 02-02 異端審問官ノヴァクの娘の手紙に何がある?
- 疑問 03-01 ネックレスは、どのようにして渡った?
今週の感想ツイート
#チ。 #チ球の運動について 3話
— 時文@ここアニ(『チ。』レビュー中) (@toki23_a) October 13, 2024
血より知繋ぐ物語
相手は異端ではなく制御不能の知性
一度燃え上がると抑えられない。息を吐くように嘘をつき、無理と分かれば知を優先す。自分が辿り着けぬなら、まだ見ぬ誰かに託すのみ..
探究心が宇宙の真理が生存本能打ち負かす
素直に言えないが贈りたい..天晴れ
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