こんばんは。時文です。
TVアニメ『約束のネバーランド(第1期)』最終話(12話)まで鑑賞しました。
原作は「週刊少年ジャンプ」連載中のコミック。
私は連載時リアルタイムで読んでいた既読組。
「ノイタミナでアニメ化」「脱獄編を描く」を聞いた際、1クール12話で1部終了まで描くのは難しいのでは?と思ってました。
結果は、カットされた部分、少し駆け足な所もありましたが、アニメだけでも充分楽しめたのではないでしょうか。
この投稿レビューでは『約束のネバーランド』がうまくアニメ化できたのか、“尺”の観点から検証したいと思います。
各話レビューも書いてます。
良かったらご覧下さい。
※リンクから各話レビューへどうぞ
話数 | サブタイトル | 原作巻数 |
EP.01 | 121045 | 1巻 |
EP.02 | 131045 | |
EP.03 | 181045 | |
2巻 | ||
EP.04 | 291045 | |
EP.05 | 301045 | |
EP.06 | 311045 | |
3巻 | ||
EP.07 | 011145 | |
EP.08 | 021145 | |
EP.09 | 031145 | 4巻 |
EP.10 | 130146 | |
EP.11 | 140146 | |
EP.12 | 150146 | 5巻 |
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2期や小説のレビューは目次
はじめに
私は原作ファンで、これまで原作既読者目線でレビューしてきました。
アニメ化を聞いた時はうれしかったですね♪
しかも、1部終了まで描いてくれると宣言してくれたので、(中途半端なまま終わる心配もせず)安心し、楽しみで仕方ありませんでした♪♪
が、12話(1クール)と聞いて、いやいやいや尺が足らないでしょーー
と心配(苦笑)。
1部終了は原作コミックで言うところの1~5巻(の1/3)まで。
『約束のネバーランド』は会話や思考シーンが多い作風。
アクションでページ数を使うことは少ない。
また、ボリュームが多いだけでなく、『約束のネバーランド』は、推理や情報収集によって得た新情報を積み重ねて、次の行動や推測に移るので、省略ができません。
#省略すると理解できなくなる!?
省略できないとなると、とにかく駆け足?
細かい心情描写や、推測した後の駆け引きが魅力なのに、急ぐと視聴者置いてきぼりになるのでは??
と素人考えながら心配をしてました。
ところが(私ごときの)予想に反して、若干駆け足やカットしたエピソードはあるものの、見事収めてくれました。
収めたどころか、緩急を付け、見せるところは存分に見せてくれ、お見事!!
原作コミックを単に一作業としてアニメーションにしたのではなく、アニメの特徴を活かした構成、演出をして『約束のネバーランド』の違った面を見せてくれました。
素晴らしい!
では、もう少し具体的に掘り下げていきましょう。
#以降、内容に触れているので、ネタバレもあります。
#未視聴の方は、お気を付け下さい。
#「脱獄編」より先のネタバレはしてません。
レビュー (以降、ネタバレあり)
アニメと原作の対応表
まずは、1クール12話が、どのように構成されていたのか見ていきましょう。
次の表をご覧下さい。
#クリックすると大きく表示されます
- アニメ各エピソードが、原作コミックのどの話数に該当するか
- 原作コミックの本編ページ数をカウントし、枠の大きさへ反映
#ストーリーと関係のない、独立した扉絵はページ数としてカウントせず
どのアニメの回が、どれだけの原作をアニメ化したのか、一目で分かるようにしました。
60P超のエピソードは少し駆け足に感じた
私個人の感想ですが、大体60Pを超えるエピソードは、”少しだけ”駆け足に感じました。
明らかに「随分駆け足だったな」と感じたのは、EP.02、03、06。
- EP.02(2話):83P (※実質68P)
※原作の「年長組に雑用をさせ時間稼ぎ」エピソードが完全カット。
これにより15Pカットされ、EP.02全体では実質68Pをアニメ化。 - EP.03(3話):73P
- EP.06(6話):68P
上記の3エピソードは60Pを大きく超え、かなり早く感じましたね。
もちろん、動きのあるシーンもあり、ページ数だけで判断してはいけないのですが、あくまで目安ということで。
それと、私は原作既読で内容を知っていたので、そう感じただけであり、未読の方が見た場合は気付かない(そういうものだと思う)こともあったでしょう。
微細な部分は気にせず、テンポと主軸理解を優先
では、駆け足だったから、アニメだけでは理解できなかったか?
そうではありません。
アニメの大筋は充分理解でき、面白さも伝わりました。
謎解きや心理戦と言った、登場人物の深掘りは必要最小限にし、脇道にそれず、ゴールをめがけて一直線というイメージでしょうか。
むしろ、アニメはサスペンス寄り、ホラー寄りにして娯楽性、見ていて理解できる方向へ振った、いや、そこへ特化したと言う表現が正しいでしょうか。
原作は多くの要素と情報が詰まっており、それを理解するのが、これまた楽しい。
原作コミックの読み方は人それぞれ。
私のように全てを味わいたい人は、じっくり穴があくほど見て(読み)、時にふと手を止め、考える。
ストーリーが分かれば良い、という人は、サーッと読む。
自分の好きな楽しみ方に合わせて、原作コミックの読み方も変わってきます。
が、アニメはTV放送という性格上、初見の方もいれば、内容を知らずに見る方も。
それに、進むスピードは視聴者は調整できず、製作者が意図するテンポで物語は展開。
私のような酔狂な楽しみ方をする輩は少数派?なのでしょう。
まずは『約束のネバーランド』という作品を広く知ってもらう。
また、アニメーションという動きと音と声優さんの演技で演出ができるメディアだからこそ、(立ち止まって考えて楽しむより)見ていて面白い、早く先が見たい、ドキドキする作品へと仕上げたのではないでしょうか。
何が言いたいのかと言うと。
原作コミックの該当部分を”無理矢理”1クールに収めたのは事実かも知れません。
が、アニメは長けりゃいいってものではない。
原作に忠実だったらいいってものでもない。
アニメにはアニメのコミックと違ったメディアの特徴がある。
であれば、その特徴を活かし、アニメ視聴者に慣れ親しんでいる1クール12話というフレームで『約束のネバーランド』の「脱獄編」を描いてやろうじゃないか。
という意気込みもあったのではないでしょうか。
そんなことを感じた全12話でした♪
構成はアニメも原作もほぼ同じ!
コミックとアニメは違う。
では、原作の構成を変えてまでアニメ化しているのか?
いいえ、『約束のネバーランド』は構成が命。
次々と判明する新情報、新情報で既知情報をアップデートしノーマン達が推測を始める。
推測した結論により、次の行動を決定。
それが、何重にも、そして他の子ども達や大人陣営でも同時並行で進んでいる。
シーンの順番を入れ替えると、論理的に成り立たず。
結果、原作の構成を入れ替えは勿論、カットするのも慎重だったことでしょう。
もう一度、「対応表」をご覧下さい。
結果、ものの見事に、原作の話数は1話から37話まで順番にアニメ化されてます。
#実際には、話数より小さいシーン単位で、入れ替えや同時というのはありました。
#アニメの方が分かりやすいシーンもあり、上手いなーと感心してました♪
そして、カットされたのはEP.02(原作5話)の「時間稼ぎ」エピソードのみ。(詳細後述)
それ以外は、しっかりアニメ化。
#細かい部分(コミックで言うと数コマ)のカットはいくつかあります。
そして、毎話のラストの引き!
原作の構成を変えず、ラストには気になる”引き”となるシーンを持ってきているのです!
#特に絶望シーンが多くなったのが特徴(笑)
原作は毎回強い引きがあるわけではありません。
結構希望を持たせる終わり方も多い。
が、アニメは作品をサスペンス風に特徴づけるかのようなオチが多い。
EP.05とEP.09は原作話数の途中でわざわざ止めて、引きを持ってきてました。
(結論)この構成は神業
こうして分析していくと構成の凄さを実感できます。
- 1クール12話と言う枠内で
- ストーリー上必要なシーンはカットせず
- 論理的に矛盾する構成の入れ替えもせず
- 毎回、ラストに強い”引き”を持ってきて
- 「脱獄編」最後までを描ききる!
- もちろん、話を理解でき楽しめるのは当たり前!
こんなことをやってのけたのです。
もう脱帽です
製作スタッフの方々、グッジョブ!ブラボー!!
原作とアニメの違い
次に、具体的にどう30分アニメの枠に収めていったのか。
“尺の観点“から原作とアニメの違いを見ていきましょう。
- モノローグをセリフではなく表情と演出で表現 (減)
- セリフをまとめる (減)
- 本筋に影響ないエピソードは大胆にカット (減)
- 伏線をより明確に描く (増)
- 原作本編にないシーン(オフシーン等)を挿入 (増)
モノローグをセリフではなく表情と演出で表現
原作既読者がアニメを見てすぐに気付くのが、(原作に比べ)話がサクサク進むと思うのではないでしょうか。
テンポよくシーンが切り替わることもありますが、大きな違いは①。
原作では登場人物が自分の頭の中で、情報を整理し、考察、推察するシーンがとても頻繁にあります。
そのモノローグ部分をカットして、映像によるキャラクターの表情と声優さんの演技、伴奏音楽や効果音といった演出で心情描写をしています。
表情の変化をじっくり見せることもあり、モノローグ(セリフ)がないからと言ってゼロ秒というわけではありませんが、大幅な時間短縮になってます。
また、モノローグカットは尺を短くする効果だけでなく、テンポをよくしています。
セリフに続いてモノローグがあると、アニメを見ている視聴者に取っては延々と同じようなシーンを見せられている印象を受けてしまいますからね。
その辺を加味して、モノローグ部分を割り切り、アニメらしい映像表現に変えた。
そして、(モノローグ部分を知らないと)理解が難しい場面では、モノローグを”セリフ”として発言させるなど柔軟に対応しているのが、本当に丁寧にアニメ化している様子が伺えファンとしてうれしいですね♪
セリフをまとめる
モノローグだけでなく、セリフも工夫が見られました。
長いセリフは要点を絞ったり、違う場面でのセリフを一箇所にまとめたり。
例えば、原作ではハウスの中で話し、その後場面が変わり森で話す展開を、アニメでは森で一気にまとめて話す、など。
前半でちょくちょく見かけました。
ちゃんと辻褄は合い、おかしな所はなかったです。
駆け足な所はありましたが、カットされるよりはずっと良いです♪
①②の積み重ねで時間短縮をしてましたね。
本筋に影響ないエピソードは大胆にカット
先に記載した通り、唯一大胆にカットしているのはEP.02(2話)の原作5話に収録されたエピソード。
ママはシスターが来るまでの間、年長5人が何もできないよう雑用を与え、監視下(目の届くところ)に置いた。
フルスコア3人が手玉に取られ、完全に先を読まれ、ママの隙のなさを見せつけられるエピソード。
そして、ノーマンがこのままではママを出し抜くことができないと決意する重要なエピソードでもあります。
しかも、その雑用がシスターが来る部屋の片付けという皮肉も効いてました。
このエピソードが丸々カットされています。
カットされたことが分かったときは、正直言うと私は少しショックでした。
ただ、確かにこのエピソードには心情変化やママの狡猾さを知ることはできましたが、ここでしか描けない新事実はありません。
最終話まで見ると、確かに一番カットして影響のないエピソードなのです。
ママの狡猾さは他のエピソードでも表現できるし、ノーマンの決意も同様。
入れられれば良いですが、本筋への影響を最小限に留めた選択です。
さらに、アニメの序盤でママの描写(およびママのモノローグ)を抑えたことにより、ママをミステリアスで不気味な存在にしていますね。
伏線をより明確に描く
感心するのは、これだけ「尺に収め」「引きをラストに持ってくる」という難題があるのに、(原作本編にはない)アニメオリジナルを入れてきていること!!
一つ目が伏線を明確に描いている事。
(時間があれば、別レビューを起こしたいのですが)原作ではさりげない伏線が、アニメではしっかりと描かれてます。
#私は原作既読なので、気付きましたが(笑)
レイの意味深な言動と振る舞い。
ギルダの怪しげな描写。
11話で分かった事実。
ちゃんと7話で伏線がありました。
#11話レビューで解説
このシーン、原作では小さい3コマの中にさりげなく、本当にさりげなく描かれ、原作を読んだ時は全く気付きませんでした。
アニメを見た時はあからさまで、「こんなシーンあったっけ?」と思った程(笑)
いや~~面白い発見でした♪
原作本編にないシーン(オフシーン等)を挿入
もう一つのアニメオリジナルは、原作既読の方ならもうお分かりですよね。
10話、ノーマンが風邪を引いたのに、エマが何度も近寄ってくる幼少時代をアニメ化したこと。
この幼少時代のエピソードは原作本編にはなく、原作の本編と本編の間に収録された「オフシーン」を繋ぎ合わせてアニメ化しています。
#10話レビューでも解説してます。
良いエピソードを最高のタイミングで入れて効果抜群の秀逸シーンとなりました。
(原作既読者にとって)これは本当にうれしいサプライズでした。
(結論)緩急つけた全体構成も神業
先に述べたように、情報量が多い原作を1クール12話に収め、毎回ラストに引きを持ってきたことだけでも、既に凄いこと。
さらに、早められる所はテンポ良く。
そして、じっくりと描きたい(見せたい)ところは丁寧に時間をかけて描いてくれる。
- 1話、コニーのシーン
- 5話、レイの正体が判明し、ノーマンとの会話シーン
- 8話、シスターに辞令が出て、最後を迎えるまでのシーン
- 10話、ノーマンの出荷直前からハウスを出て行くまでのシーン
- 12話、ママの半生を振り返るシーン
ポイントとなるシーン、物語の転換点はとても丁寧に描いて盛り上げてくれました。
全体の時間配分など全体構成が、巧みでした。
当初、カットされたり、駆け足だったシーンを見ると残念と思ったのですが、これだけ良いシーンを見せられると、何も言えないですね(苦笑)
お見事でした
おわりに アニメ化は成功したのか
以上、述べてきたように、1クール12話の尺の中に、情報量が多く、難解なストーリーをきっちり収めただけでなく、重要シーンはテンポを落とし丁寧に描くことで、素晴らしいメディアコンバートができていると私は思ってます。
原作の魅力を全て描ききったか?
と問われると、それは「NO」です。
では、アニメ化は失敗か?
そうではないのは、記載してきたとおり。
コミックにはコミックの良さ、アニメにはアニメの良さがあり、本作はアニメの良さで原作コミックを巧みに表現しているのです。
アニメとコミックが別モノとまでは言いません。
原作コミックの沢山ある魅力を、エッセンスを、アニメ作品として一本筋を通して作り上げたのです。
最後に、質問形式で締めくくりましょう。
どちらも完成度が高く面白いです。
アニメはテンポの良いサスペンスと緊張感を楽しめ、原作は次から次へと判明する事実と登場人物の思考に度肝を抜かれて下さい。
本当にどちらも良く出来ているので、どっちから見ても問題ないです。好みのままに。
あえて、どちらかと問われれば、私はアニメから先に見ることをオススメします!
なぜなら、アニメを見ると原作を読みたくなるから(笑)
ぜひ、両方をお楽しみ下さい♪
2期も丁寧にアニメ化して頂けると幸いです。
原作共々アニメも応援していきます。
ではでは。
はじめまして。レビュー見させていただきました。
とても細かく書かれており、アニメだけでは分からなかった事、自分なりに考察していたことも含めて読んでとても面白かったです!
映画のCMを見て思ってたよりダークな感じだな~と興味を持ち、子供っぽいアニメを想像していたので(笑)、素晴らしい構成と予想できない頭脳戦、度肝を抜かれる展開に見入ってしまいました!
話毎に書かれており、次からのネタバレがなく、安心してみることができ、こういうレビューを求めていました。ありがとうございます。原作の内容も盛り込んでいただけて嬉しかったです。
リクエストと言ったらおこがましいのですが、進撃の巨人はレビューされていませんか?
ファイナルシーズンに入りましたが、まだなお謎が謎を呼びすぎてどっぷり浸からないと話についていけなくなりますが(笑)最高に面白いです。
時文さんのレビュー、考察を拝見したいと思いました。お時間あるときに考えていただければ嬉しいです。
長々と失礼致しました。
はじめまして。
ご丁寧な、またうれしいコメントありがとうございます。
力が入りすぎ、細かい所まで書いてしまい文量が増え反省していたこともあり、そう言って頂けると救われます。
先を知っていると、ネタバレや「ここ覚えておいて!」とか書きたくなるのですが、後で気付いて膝を打つ感覚が好きなので、皆さんにも味わって頂きたく、注意して書いてます。
さじ加減が難しく、日々勉強中ですが・・・
先週から始まった2期の各話レビューも書いているので、今後も読んでやって下さい(笑)
>リクエストと言ったらおこがましいのですが、進撃の巨人はレビューされていませんか?
『進撃の巨人』!
はい、実は約ネバ同様、特集サイト作って書く予定でした・・・
いえ、書きたかったです!
が、ここまでで約60話。
1話から書くとなるとかなり時間が必要。
途中から書くか?いやそれでは中途半端、端折って書くか?それなら書く意味がない。
そうこうしている間にファイナルシーズンが始まり、原作は4月で終わると言う・・・
原作途中までしか読んでおらず、ネタバレを見たくないので詳しく調べてないのですが。
原作と同時にアニメは完結する予想を聞きました。
となると(他のレビューを書いていることもあり)とてもじゃないけど、追いつけないと判断。
書きたかったのですが、諦めました。
あと『進撃の巨人』は、数多く解説サイトがあるので、必要ないかなとも思ってました(笑)。
約ネバ放送当時は、解説サイトそれほどなかったんですよ。
せっかくご要望頂いたのに申し訳ございません。