レビュー

【約束のネバーランド】2期1~11(最終)話 分析レビュー アニメは原作をどれだけカットしたのか

約束のネバーランド 2期

こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『約束のネバーランド 2期』第11話(最終回)まで鑑賞しました。

本レビューは『約束のネバーランド』2期が原作のどこまでをアニメ化したのか検証します。

各話単位で感想&解説レビューも書いてます。
良かったらご覧下さい。

約束のネバーランド(2期)

話数 各話レビュー 原作巻数
EP01 1話R 5・6巻
6巻
(7巻)
EP02 2話R
EP03 3話R
EP04 4話R (9・12巻)
EP05 5話R (12巻)
EP06 6話R (14巻)
EP07 7話R (15巻)
EP08 8話R (9・16・17巻)
EP09 9話R (18巻)
EP10 10話R (19巻)
EP11 11話R (20巻)

※リンクは各話レビューへ
※原作巻数()表記はアニメオリジナル脚本、()内は元ネタ巻数
※総集編は除く

1期や小説のレビューはトップページからどうぞ

はじめに

約束のネバーランド』は週刊少年ジャンプで連載された漫画作品。
重くて残酷な内容は、一見ジャンプらしくないですが、ジャンプ三大原則「友情・努力・勝利」を踏まえたダークファンタジーです。

1期でアニメ化された「GFハウス脱獄編」は、頭脳戦、心理戦が楽しめる脱出+サスペンス活劇。

伏線、心情描写といった情報量が多く、濃密な原作を全12話で見事にアニメ化。
詳細は以下のレビューをどうぞ。

約束のネバーランド 1期
TVアニメ【約束のネバーランド】1~12話(最終話) 分析レビュー 構成がお見事!アニメ化は成功したのかTVアニメ『約束のネバーランド』1話~12話(最終話)分析レビュー。アニメ化は成功か?アニメと原作の違い、アニメならではの表現、工夫、そしてアニメオリジナルシーン。アニメと原作の対応表も作りました。...

続編が製作されると聞き、原作既読の私は大興奮!
いったい、どこまでアニメ化されるのか?

『約束のネバーランド』は全20巻

1期で1~5巻序盤(1/3)までアニメ化。
4.3/20(22%)進んだことになります。

ならば、スピンオフや七緒さんの小説エピソードも入れて、4期できるのでは!?
と、原作ファンとしては妄想していました(苦笑)。

まあ、アニメはテンポ良く進めないといけない。
現実的な落としどころは3期(全3クール)に収めることになるだろうと推測していました。

が・・・え!?

2期で最終巻まで進んでしまいました・・・

私は決して原作原理主義ではありません。
面白ければ原作改変、アレンジ肯定派です。

アニメと漫画は状況が違います。
尺の関係でカットしなければならないこともあるでしょう。
放送には適さない、テンポが悪くなるのでカットすることもあるでしょう。

が、『約束のネバーランド』2期には、そんな意図も汲み取れません。
それどころか、カットしたことにより薄っぺらい内容に・・・

ここでは、一体どれだけの内容がカットされてしまったのか事実を述べ、その上で個人的な見解を述べます。

以降、内容に触れているのでネタバレありです

レビュー (以降、ネタバレあり)

『約束のネバーランド』アニメ1期

まずは基準を決めましょう。
漫画原作のアニメは数あれど、ジャンルも作風も違えば比較になりません。

同じ『約束のネバーランド』1期を基準に見てみます
製作会社、監督、シリーズ構成は基本的に同じなのですから。
#2期は途中まで白井カイウ先生が絡んだようです

続き物の作品ですから、続編から見る人は基本的にはいないはず。
1期を見てから2期を見るので、この点からも1期を基準にするのが妥当でしょう。

アニメと原作の対応表

では1期のアニメと原作の詳細な対応表をご覧下さい。

約束のネバーランド アニメ-原作 対応表

単に尺に収めただけではない見事なアニメ化

上記表は、1期放送終了後に作った表です。
当時の私は「アニメ化した原作のページ数が60Pを超えた話数は駆け足」とほざいてました(苦笑)

今思うと、なんて贅沢なことを言っていたのだと・・・。

細かい解説は、1期放送後に書いたレビューを見て頂くとして。

ここで知って頂きたいのは、1期は原作1冊あたり2~3話でアニメ化していること
カットされたのは1エピソードのみ

原作『約束のネバーランド』は心理戦、頭脳戦がキモなので、セリフや説明描写が多い。
原作1冊を2~3話でアニメ化していても尺に入りません。

尺に入れる為に様々な工夫がされました。

  1. モノローグ(心情描写)をカットし、表情と演出で表現
  2. セリフをまとめる
  3. 本筋に影響ないエピソードは大胆にカット

とは言え、エピソード単位でカットされたのは1巻5話。
「ママが時間稼ぎのため年長5人に部屋の片付け等をさせる」エピソードのみ。
ページ数にすると、カットされたのはわずか15ページでした。

1クールでGFハウス脱獄まで描くために工夫する一方。
伏線をより明確に描き、原作本編にはなかったオフシーン(ノーマンの子供時代)を挿入したりと、単に原作を間引くだけのアニメにはしていませんでした。

それでいて、毎話ラストに強い”引き”を持ってくる神業構成!

サラッと流され勿体ない部分はありましたが、テンポの良い上質なサスペンスアニメとなっていました。

『約束のネバーランド』アニメ2期

ここからが本題。
2期の話をしましょう。

原作準拠は3話前半まで

2期は3話前半までは概ね原作準拠
それ以降は、アニメオリジナル展開を含め、ところどころ登場人物、設定、経緯や状況を変えて原作内容を取り込んでいました。
#本サイトでは「元ネタ」という表現をしています

状況が違うと、もうそれは原作のアニメ化ではない言われるかもしれませんが、それだと3話以降は全てアニメオリジナルになり話が終わってしまいます。

経緯や状況は違っても、展開・内容が同じであればアニメ化されたと判断していることをご了承下さい

通して見ても、原作準拠と言えるのは3話前半まで
#1話「アルヴァピネラの蛇」など、カットはありました

状況違えど、比較的原作の内容に沿っていたのは、3話後半、6、7話と8話前半くらい。
残りは原作内容は半分以下でした。

話数 原作準拠 原作近し アニオリ多し
EP01
EP02
EP03 ○(前半) ○(後半)
EP04
EP05
EP06
EP07
EP08 ○(前半) ○(後半)
EP09
EP10
EP11

※リンクは各話レビューへ
※総集編は除く

アニメと原作の対応表

もっと詳細に見ていきましょう。
アニメ化された部分と、されてない部分の量を把握するため、見える化しました。

アニメ化されたエピソードを可視化

1期と2期の比較、カットされた量を把握するために──

  • 原作1冊の高さを統一
  • グレー部分がアニメではカット
    一部シーンやセリフの流用はあり
  • エピソード単位で確認
    経緯、状況は違っても、概ね同じ内容であればアニメ化と判断
    シーン単位、セリフ単位だともう少し増減あり
約束のネバーランド アニメ2期-原作 対応表

原作15.7巻分を11話でアニメ化

原作コミック1巻の高さを統一したので、2期が1期に比べて、どれほど一気に話を進めたのかお分かり頂けるでしょう。

1期は、1巻~5巻(1/3)を全12話で
2期は、5巻(2/3)~20巻を全11話で

単純比較でも3倍のスピードで展開

もちろん、3倍のスピードで描けるわけはなく、大幅カットされることになります。

アニメ化されたのは原作の3~4割

アニメ鑑賞時、漠然と半分程度は原作ネタを取り込んでいると思ってました。

こうして一つ一つ拾ってみると・・・

アニメ化された部分は3~4割程度

そりゃあそうです。
1期の3倍の量を、1期より1話少ない全11話でアニメ化したのですから。

それも、通常スピードでアニメ化しているのです

説明が難しいですね・・・
1期の3倍の原作を尺に収めないといけない。
であれば、エピソードカットだけでなく、速度を上げてアニメ化すればいい。

面白くないですが、総集編のような方法もあります。
誰かに説明をさせる、最悪、ナレーション。

そういった工夫もなく、描くところは通常スピードでアニメ化。
カットしたエピソードは、その事実さえなかったことにする。(詳細は後ほど)

そのくせ、展開には影響を与えないアニメオリジナルシーンを入れたりしているのです。

シェルターでの食事シーンや、鬼の集落の辺りです。
尺に余裕があれば嬉しいかもですが、重要なエピソードを削ってまで入れる必要があったのでしょうか・・・

逆にこうして見ると、いかに1期が丁寧にアニメ化されていたかよく分かります。

原作カットした事による弊害

ここまで、2期について”事実”を述べてきました。
ここからは、個人的な見解を述べていきます。

時間を共有できない

2期でアニメ化されたのは3~4割。
確かに原作ファンとしては、できるだけ多くの部分がアニメ化されるのを望みます。

だけど、アニメ化された部分が少ないことが問題なのでしょうか?

繰り返しになりますが、私は原作準拠が絶対だと言う原作原理主義でありません。
面白ければ改変、アレンジ大いに結構。

ただ面白くなるならというのが前提。
ましてや原作の評判を落とすようなアニメは反対です。

『約束のネバーランド』2期アニメは、原作カットは百歩譲って仕方ないにしても。
カットした後の作りが頂けない。

問題は大きく2つ。

一つは、時間の流れを実感できないこと

たとえば、ノーマンとの再会。
原作では、9巻で”読者には”ノーマンが生きていたのが分かります。
でも、エマとはすぐには出会えず、14巻でようやく再会。
それまでエマはノーマンは死んだと思い込んでいたし、出会い方に捻りを利かせていたので感動の再会シーンになっています。

アニメでは、1期10話、GFハウスからノーマンが出て行った。
再会は、2期5話ラスト。
再会するタイミングが早いのです。

約束のネバーランド2期 5話

もっと如実なのは、フィルとの再会。
こちらも原作では最後の最後でようやく約束果たして迎えに。
脱獄当時4歳だったフィルには2年という長すぎる時間を経ての再会。

両方とも、それまでに起きた出来事が濃密だからこそ再び会えたことに喜ぶエマに共感できる。

アニメ派の方には、イメージ湧きやすいよう”アニメ時間”で伝えましょう。

もし仮に、2期が1期同様のペースで作られたとしたら・・・
#単純計算で全4クールになります

ノーマンが生きていると(視聴者が)知るのは、2期中盤
エマがノーマンと再会、生きていると知るのは、3期終盤になるのです。

フィルに至っては、4期終盤、ラスト2話でようやく再会できたのです。

どうです?
やっと会えたという実感が湧きませんか?

それと、原作では農園の無線を傍受していません。
フィルが無事かどうかは、実は分かっていないのです。
時々、GFハウスの状況が描かれ、フィルが無事だと確認して安堵していたのです。
#正直、連載を読んでても、フィルや他の子ども達の安否が心配でした

そんな感情の中で、無事に出会えたので感動もひとしおだったのです。

(原作情報)原作では、エマ側にも死者が出ています。ノーマンやフィルにいつ何があるか分からない緊張感がありました。「まさか」があるのが約ネバですから。
約束のネバーランド2期 11話

もう一つ例を挙げると、ママ(マム・イザベラ)も同様です。
アニメでは、4話で再登場。(4話)
このタイミングで登場するのはアニメオリジナル。

原作では、最後の最後、GFハウスへ乗り込むまで登場しません。
仮に、全4クールでアニメ化されたとしたら、ママが再登場するのは4期終盤

当初、敵だったママ。
でも私は嫌いにはなれなかったので、グランマになって再登場したときには嬉しかった。

殺されてなかったのだと。
好敵手復活!と。

カットされたエピソードは、その間の経緯はもちろん、待ち焦がれた時間を削ぎ落としているのです

これが再会の感動シーンを、弱めてしまっているのです。

フォローしておくと・・・

フィルとの再会は、もう少しじっくりと見せ、余韻も欲しかったところですが、感動しました。

問題は、ノーマンの方。
想定内だったのもありますが、再会の舞台をもっと演出できなかったのでしょうか・・・

でも、実はもっと罪作りなことをしてしまっているのです・・・

約束のネバーランド2期 9話

一番の罪は、辻褄を合わせ

原作カットの問題は、時間経過を実感できないだけではありません。

もう一つ問題があり、そちらの方が悪影響を与えています。

大切なエピソードをカットした結果、辻褄を合わせるため、登場人物に変な行動・言動をさせているのです

あまりにカットされすぎて、該当箇所はいくつもあるのですが・・・
主人公エマは外せません。

4話後半でシェルターが襲撃され脱出。
5話冒頭で、一気に1年が経過します。

(原作情報)原作では、シェルターを起点にしてミネルヴァに示された次の目的地(GP)へ行き、そこで他の食用児と共闘します。その後、あの方と約束を結び直すために七つの壁を探します。

アニメでは、この1年は「鬼から逃げるのに精一杯」と説明
原作にあったGPはもちろんのこと、七つの壁や、あの方との約束を結び直すことも、描写しないだけでなく、そのような事実すらなかったことに

これにより、7話ノーマンとの交渉の際。
エマは単に「理想論を振りかざす偽善者」に見えるのです

原作では、エマはここまでで、鬼の強敵と対峙し仲間の死も経験し成長。
人間の世界へ行くために、あの方と約束を結び直す場所も探し出し、実行する手前まできてました。

その結果「食用児が安心して生きるには鬼を全滅させるしか道はない」と言うノーマンに、代替案を提唱することができたのです。(7話)

アニメは重要エピソードを飛ばし、その事実をなかったことにしたので、アニメで描いた選択肢の中から、行動・言動を選んでいるのです

そのため、つじつま合わせのオンパレード。
平凡な選択か、説得力のない行動。

エマは普通の子になり、周囲はエマだから仕方ないとエマをワガママか頑固者のように見立てているのです

そのせいで、感情移入できなくなってしまいました・・・

これが原作エピソードをカットした、一番の罪

最終話のように止め絵で描きナレーション等で説明するとか。
カットするにしても、もう少しうまいやりようがあったと思うのですが。

まあ、プロフェッショナルの製作陣が出した結論。
私のような素人考えは浅はかなのでしょう。

おわりに

ここでは、『約束のネバーランド』アニメ2期と原作の違いを焦点として。

アニメ2期は、どれだけ原作がカットされたのか。
カットしたことにより、どのような影響が出ているのかを述べてきました。

内容については、別途レビューを書く予定です。

良かったらまたお越し下さい。
最新情報はTwitter(@toki23_a)にて!

ではでは。

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EP05 5話R (12巻)
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EP08 8話R (9・16・17巻)
EP09 9話R (18巻)
EP10 10話R (19巻)
EP11 11話R (20巻)

※リンクは各話レビューへ
※原作巻数()表記はアニメオリジナル脚本、()内は元ネタ巻数

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