こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『サマータイムレンダ』全25話の放送が終了。
アニメ放送終了後に発売された『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』の第一章「危機回避倶楽部」を読みました。
本小説は、『サマータイムレンダ』ラストの延長線上の世界が舞台のスピンオフ。
単体でも楽しめますが『サマータイムレンダ』、そしてコミック『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』を知っている方がより楽しめます。
アニメ版でも原作コミックでも良いので、先に『サマータイムレンダ』を最後まで観て(読んで)から読むのがオススメです!
ここから先──
「はじめに」では『サマータイムレンダ』およびコミック『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』の内容に触れています。
「感想&考察レビュー」以降は、加えて小説『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』の内容に触れています。
特に『サマータイムレンダ』は、ネタバレ厳禁の類いの作品なので、未視聴(未読)の方はご注意を!
本レビューの方針
本レビューは、章を読み終えたあと書いています。
よって『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』の次章以降のネタバレはなしなのでご安心ください。
各章リスト
※ 話数:リンクは各話レビューへ
本ブログ「ここアニ」では、アニメ『サマータイムレンダ』、コミック『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』のレビューも書いてます。こちらからどうぞ。
はじめに
舞台は、2026年9月の東京。
大学生の南方波稲は、同級生の湊あゆみと今日も他愛もない会話を楽しんでいた。
すると、突然、あゆみが奇妙なことを言い出す。
「危機回避倶楽部」では、ミスター・レイが、あらゆる危機を教えてくれると言う・・・。
本小説は、『サマータイムレンダ』本編の未来を描いたスピンオフ作品。
主人公は南方波稲と南方ひづる。
二人が奇妙な事件を解き明かす物語。
まずは、『サマータイムレンダ』シリーズの作品内の時期を押さえておきましょう。
サマータイムレンダ 時代設定
作品名 | 時期 |
サマータイムレンダ | 2018年7月 |
サマータイムレンダ2026 未然事故物件 | 2026年3月 |
サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景 | 2026年9月~ |
作品タイトル『サマータイムレンダ2026』の”2026″は、2026年という意味ですね。
『サマータイムレンダ』のラストから8年後の2026年。
当時9歳だった波稲は16歳※となり、飛び級で東京大学へ合格。
※波稲の誕生日は7月(25話)なので、大学合格時は16歳
『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』では、波稲が上京し、住まい探しをするエピソードが描かれています。(未然事故物件)
その後、波稲は、住まいを決め大学生活がスタート。
『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』は、大学生活も落ち着いた頃から始まります。
大学生活と言っても、ひとたび奇妙な事件が起きれば、やはり頼れるのはひづるのみ!?
ひづると波稲が、事件を解き明かしていきます。
本作でも、ひづるは全開!(笑)
小説は、波稲の一人称で描かれます。
アニメやコミックでは見られなかった、波稲の心情描写が多くあるのは小説版の楽しみ。
波稲がGカップ・・・失礼、ひづるのことをどう思っているのか、等々が分かったりするのが『サマータイムレンダ』ファンとしては嬉しい♪
登場人物のメインは、波稲とひづるの二人。
『~未然事故物件』終盤に登場した、静寂島警部も出てきます。(未然事故物件)
気になるのが、冒頭の登場人物紹介にアニメ『サマータイムレンダ』主役の名があること・・・もしかして登場する!?
それと忘れてはいけません。
小説版の主役は、やはり奇妙な事件と言って良いでしょう。
第一章では、あらゆる危機を回避する「危機回避倶楽部」が対象。
危機を回避するという事は、予知能力?
予知能力と言えば・・・。
さて、予知は実在するのか?その真偽は?
ひづるはその力をどう捉え、波稲はどう見るのか──
小説家・南雲竜之介の異聞百景の始まりです。
未読の方は、ここで離脱して本作品をお読み下さい。
既読の方は、ここから御一緒に振り返りましょう。
感想&考察レビュー (以降、ネタバレあり)
ここからは『サマータイムレンダ』および『~未然事故物件』に加え、『~小説家・南雲竜之介の異聞百景(第1章)』の内容に触れているので未読の方はご注意下さい。
主なトピック
※クリックすると該当項目へ
プロローグ
波稲が大学へ入学して5ヶ月。友人のあゆみと今日も他愛もない話をしていた。
あれから5ヶ月
波稲が東京大学へ合格して、住まいを探す様子が描かれたのがコミック『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』。
住まいも決まり大学生活が始まり、5ヶ月経った9月頃から小説はスタート。
4月、飛び入学の影響もあって少し浮いていた自分に、最初に話しかけてくれたのが彼女だった。それから5ヶ月、いまでは気心の知れた友人であり、そしてSNSの投稿に助言もしてくれる。
by 南方 波稲『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
波稲は飛び級で東京大学へ入学。
通常、大学への入学時は18歳。
16歳の波稲は、普通なら高校2年生。
2年早く、大学生になったのです。
16歳で、一人暮らし。
それも和歌山の小さな島とは大違いの、東京での一人暮らし!
そりゃあ、父親・竜之介も心配をするはずです。
波稲は声を掛けづらいオーラを出しているわけでもなく、人気者になっていると思ったのですが・・・。
同級生から見ても、2つ年下。
テレビにも出演し、天才少女と謳われて、周囲から少し浮いていた様子。
そんな中、最初に声を掛けてくれたのが湊あゆみであり、今では気心知れた友人になっていたのです。
飛び入学制度
「考え方しだいだよ。大学がどうして飛び入学制度なんて新設したと思う? 話題をつくって入学希望者をたくさん増やしたいからだよ。飛び級でやってきた16歳の美少女。しかも映像記憶もできちゃう天才。これ以上の広報材料はないって。だからいま学ばせてもらっているこの大学のためにも、稲ちゃんは自分を全面的に出していくべきなんだよ」
by 湊 あゆみ『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
天才と言われるだけでなく、美少女と言われても否定しない波稲。
その辺りは、ひづると同じ血筋を感じますね(笑)。
それにしても、あゆみの指摘、なかなか興味深い(笑)。
海外では一般的な飛び入学制度。
大学が飛び入学制度を採用するのは、優れた資質を持つ人に早く大学入学の機会を与え、その才能を伸ばすため。
それが狙いだと思うのですが、あゆみの指摘も面白い。
国立大学とは言っても、入学者数は重要。
少子化の影響で年々大学入学適齢期の人口が減っています。
「話題作り」をして入学希望者を募る考えも、あながち無下にできないのです(笑)。
それにしても、驚いたのは、映像記憶について。
波稲が生まれつき持っている映像記憶能力。(未然事故物件)
波稲が映像記憶できることは、公になっているのです。
ファイゲンバウム点
ファイゲンバウム点。ロジスティック写像だよ。世代を重ねた生物の個体数がどういう風に変動していくのかとか、そういうときに使うモデル
by 南方 波稲『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
「ロジスティック写像」
人口の推移を表す単純なモデル。
数字の並びや意味に興味を持つ波稲。
『~未然事故物件』でもいくつかの数字に魅了されてました。(未然事故物件)
人々が占いを楽しむように、見かけた数字で運勢を占う波稲。
ファイゲンバウム点や、ロジスティック写像がどういうものなのか分からなくても、何を意味しているのかを理解すると面白いです。
このモデルに値を代入していくと一定の法則性のもとで収束していくんやけど、ある時点から規則性が乱れていくんよ。それの臨界値がファイゲンバウム点!
by 南方 波稲『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
人口の推移を表すモデルである「ロジスティック写像」に値を入れていくと、ある時点から規則性が乱れる。
その臨界値がファイゲンバウム点。
波稲の食券番号と、あゆみの食券番号を足すと、見事にファイゲンバウム点となる。
ファイゲンバウム点は、規則性が乱れる臨界値──
数字は、波稲とあゆみ、二人の仲が乱れる予兆だったのではないでしょうか・・・。
少し抜けてる?
何気なくスマートフォンを確認すると、いつもより何倍も速いスピードで、何倍も多い数の高評価が押されていた。
「うわ、すご。みんなファイゲンバウム点好きなのかな?」
「違う。全然違う。あんたの顔が映ってるから」by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
映像記憶能力を持っているとは言え、飛び入学制度で東京大学へ合格した波稲。
天才少女と呼ばれていますが、思考は至って女子高生。
いや、むしろ少し抜けている!? (苦笑)
あゆみの方がしっかりしています(笑)。
波稲は、見た映像は完璧に覚えてますが、人としては全然完璧ではないのです。
そこが彼女の憎めない所であり、魅力でもありますね。
二人のこのやりとり、好きです(笑)。
危機回避倶楽部
『危機回避俱楽部』って知ってる? 会員制の秘密俱楽部なんだけど、いま私、そこに入ってるの
by 湊 あゆみ『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
昼休みの終了を告げるチャイムと同時に、波稲が座っていた場所に一人の女子が転倒してくる。
あゆみの助言により、被害を免れた波稲。
あゆみは事前に、このことを知っていた!?
回避俱楽部ではミスター・レイの危機回避予知を聴講できるの。
by 湊 あゆみ『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
ミスター・レイの予知で危機を回避した!?
ミスター・レイは予知能力者?
あゆみの入れ込み様から、倶楽部というより、宗教に近い感じ。
会費を取るので、会員制はただの集金システムか。
波稲よりずっとしっかりしていると思われた、あゆみが完全に信じている。
新手の宗教か、それともカルトか。
予知は単なる偶然か、それとも何かのカラクリがあるのか。
『サマータイムレンダ』の世界観だけに、超常現象が実在していてもおかしくはない。
はてさて、ミスター・レイは本物の予知能力者なのでしょうか・・・。
南方ひづる
怪しい倶楽部にハマってしまった友人を助けたい波稲は、叔母のひづるに相談を持ちかける。
意外と遠い?
父の姉である南方ひづるのマンションまでは、電車を乗り継いで40分の距離だった。
by 南方 波稲『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
上京早々、熱烈なファンに危うく殺されそうになった波稲。(未然事故物件)
危ない目に遭ったから、てっきりひづるのマンションに転がり込むか、少なくともひづるの近くに住むのだと思ってました(笑)。
でも、波稲が選んだ住まいは、ひづるのマンションから電車を乗り継いで40分。
結構離れていて、田舎の感覚だと近くとは言えません。
波稲は上京時、大学の近くに住みたいと言ってました。
でももっと大学に近い方が・・・島から高校遠すぎたんでよォ。
通学時間はミニマムにしたい。by 南方 波稲『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』
希望通り大学近くへ住んだのだと思われます。
つまり東京都文京区ですね。
文京区と大田区なので、40分程かかってしまうのです。
心配性の父・竜之介はよく許可したものです。
安全のためにも、姉・ひづるの近くに住まわせようとは思わなかったのでしょうか?
「作家先生って……いやいやいやいやあかんあかん! それはあかん! 絶対にあかん!」
電話口からの父の声が、とたんに大きくなる。ほとんどパニックだ。あわてふためいている様子が容易に想像できた。
「ロクなことになるわけない! ええか波稲、絶対このこと喋ったらあかんで! 相談もあかん!」
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
あっ!なるほど!
私の解釈とは逆でした。
姉は、小説家・南雲竜之介。
不思議な現象、不可思議な事件があれば首を突っ込む。
近くにいると、ロクでもない事に巻き込まれ、リスクの可能性が上がるのです。
姉の近くは安全──ではなく、姉の近くは危険なのです(笑)。
ひづるはベストセラー作家なので、大豪邸に住んでいると勝手に思ってました(笑)。
ひづるが住んでいるのはマンション。
それも一人暮らしの様子。
振りかえると──
「影がいた世界」では竜之介を亡くし一家で島を出ました。(14話)
想像するに、ひづるが竜之介の死の原因を追求するも誰も取り合ってはくれず、周囲はひづるがおかしくなったと思い、両親は島を出ることにしたのでしょう。
「影のいない世界」では、南方家は、島を出てない可能性がありますね。
だから、竜之介は島に住み、波稲も島から高校へ通っていたのです。
『~未然事故物件』巻末記憶#001によると、ひづるも東京大学出身。
ひづるも、波稲同様、大学生になってから東京で一人暮らしを始めたのではないでしょうか。
置き忘れ
「何が『ていうわけ』なんだ。文頭を自宅に置き忘れてきたか。正しく国語を使いたまえ。もしや寝ぼけているのか。ならば起床時間からやりなおせ」
by 南方 ひづる『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
今話も頂きました、ひづるの置き忘れツッコミ!
『~未然事故物件』では──
10分、早いぞ。
小説家との待ち合わせに10分も早く現れるとは、常識を和歌山に置いてきたのかね?
雑踏にいるとアイデアがまとまるのだよ。10分くらい遅刻したまえ!
by 南方 ひづる『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』
待ち合わせ場所に10分早く来たことに文句を言うひづる!
この時は、どっちが常識知らずなのか意味不明だったのですが(苦笑)。
今回は、確かに「ていうわけ」で話し出したのだとしたら、確かに波稲の説明不足(笑)。
前回同様、波稲はひづるの口撃を気にしません──
親戚相手にも容赦のない物言い。だけど家族とか年齢関係なく、対等な相手として話をしてくれている気がするので、波稲は嫌な気持ちにはならない。
by 南方 波稲『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
ひづるの暴言を、波稲は自分を対等な相手として見てくれていると理解していたから、気にしてなかったのです。
なるほど~~!
雁切真砂人!?
「いやちょっと先生ェッ、僕来たばっかじゃないですかァ! まだお土産も渡してませんよ」
by 編集者・強羅『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
小説家・南雲先生の担当編集登場。
挿絵にある田中靖規先生の漫画で描かれる強羅編集と、このセリフ──
どこか雁切真砂人と同じニオイを感じたのは私だけでしょうか・・・。
ひづるは生理的に雁切が嫌いでした。(6話)
もちろん雁切真砂人は「影がいた世界」の登場人物なので、今のひづるにその記憶はありません。
が、真砂人がいなくても、人の好き嫌いは変わらないはず(笑)。
ひづるが強羅編集に手厳しいのも、生理的に嫌ってるからではないかと思うのは考えすぎでしょうか(苦笑)。
ひづるは大抵の人に対して塩対応なので、強羅編集に対してだけではないかもしれませんが(爆)。
ひづるが雁切真砂人を嫌っていたのも、身勝手で醜い本性を見抜いていたからかもしれませんが。
Gカップに憧れ・・・てない!?
性別限らず、一度会えば誰もが、彼女の胸元に視線が向いてしまうだろう。いつか自分もあれくらいは、と憧れたこともあったが、最近は実験の邪魔になりそうだな、という感想が勝つようになった。
by 南方 波稲『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
8年前とスタイルが変わらない、黒のタンクトップにジャケット姿のひづる。
ジャケットを脱ぎタンクトップになると、どうしてもGカップが目立ってしまう。
ウシオは当時17歳、ひづるの裸を見て触りたいと言い放ちました(笑)。(17話)
でも16歳の波稲は、『~未然事故物件』で、ひづるの裸を見ても見慣れているのか、気にしている様子はありませんでした。
が、実のところ、波稲は気にはしていたのです(笑)。
憧れたこともあったが、今は実験の邪魔になりそうだから必要ないとの結論。
数字や数式といった好きな物にしか興味がない、どこまでも理系女子な波稲なのでした(笑)。
けしかける波稲
「つまり私がここに来てひづるちゃんに話を持ちかけた時点で、ひづるちゃんが怒られることは決まってしもたな」
by 南方 波稲『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
ひづるを騙すような形で、交渉をする波稲。
普通の大人なら怒るが、ひづるはむしろ波稲の成長を喜んでいる様子。
ひづるは根っから「普通」が嫌いです(笑)。
アニメ『サマータイムレンダ』ではカットされてますが、フェリーで慎平がひづるに胸ダイブした時、ひづるはこんなことを考えてました──
この男、その行動の意味は何?
そんなに汗をダラダラかいて顔をうずめて・・・苦しくないのか!?
いや、そもそも窒息が目的!?
自殺志願者?おもしろいじゃないか!
なかなかユニークなヤツだと、こいつ!※アニメでは全文カット
by 南方 ひづる『サマータイムレンダ』コミック3巻
だけど、慎平は謝ります。(当然ですよね(笑))
謝ったことで慎平はひづるに「普通」と認定され、怒りを買い叩かれたのです(笑)。
4周目で、ひづるが影アランを駆除した時(6話)──
時間、場所・・・。
襲うなら、アランが一人になる時だ。
17パターン想定していたが・・・トイレとはキミ──普通か。by 南方 ひづる『サマータイムレンダ』TVアニメ第6話
ひづるは普通であることを、つまらないと思う人間なのです。
ひづるの担当編集者・強羅に対して──
土産を置いたらとっとと帰れ。というか強羅編集、キミが持ってくる土産は毎回同じだな。『ワンパターン』という私が一番嫌いな言葉を体現するやつだ。不快で打ち合わせどころではなくなった。
by 南方 ひづる『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
「ワンパターン」を嫌うのも同様ですね。
ひづるには小賢しいくらいの攻めがちょうど良いのです。
餌に食いついた。確かな感覚。一番興味がそそられるであろう内容は、実はいままで明かしていなかった。
by 南方 波稲『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
なんと、波稲は予知について話してなかったのです。
ひづるに対して、波稲がどう説明したのかは描写されてません。
読者は学食での出来事を知ってますから、同じ話を二度されても退屈なだけ。
だから説明を省略したのだろうと分かったし、ひづるは予知能力になぜ興味を持たなかったのか不思議に思ってました(苦笑)。
単に、まだ話してなかったのです。
未来予知については、事件に興味を持たせた上で、ダメ押しの一手として残していたのです。
なかなか、策士ですね、波稲!
いや、ひづるの扱いをよく分かってますね!(笑)
執筆の手は止まっていた・・・
いまにも好奇心と書かれたブースターを背負って、ひづるは飛び出すかに思えた。だが直前、「原稿が・・・」と、立ち上がるのを躊躇する。波稲はとどめの一言を投げる。
「原稿、先週から止まっとるよね? いま開いてるワードファイルの文章、この前遊びにきたときから進んでへんやん」
「こ、これは前の部分を加筆している最中だ」
「ノンブル※の番号も変わってないのに?」
「・・・厄介だな、キミの映像記憶能力は」授かった才能をここで活かさない手はなかった。
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
なんと、波稲はもう一手隠し持っていました。
ワードファイルのノンブル(ページ数)から、ひづるの執筆が先週から止まっているのを見抜いていたのです。
ひづるは波稲の映像記憶能力を知っています。
だから、言い逃れできないと観念したのです(笑)。
担当編集者の強羅は言ってました「せめてプロットだけでも──」と。
相当切羽詰まっている状況だと想像できます。
そこへ、興味を引く「未来予知能力」の話を持ちかける。
執筆は思うように進まず、このままでは埒が明かない。
時間はないが、アイデアかキッカケが欲しい。
気分転換をするだけでも何かヒントが得られるかも・・・。
──という感じでしょうか(笑)。
ついに、ひづるは席を立ったのです。
「取材に行くとしよう」
ひづるが答える。
「ミスター・レイが本物の予知能力者か、確かめる」by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
波稲、お見事です!
危機回避倶楽部 調査
波稲は、ひづると共に、危機回避倶楽部の集会場所へ乗り込む。
パリジェンヌ
だけどTシャツ。「パリジェンヌ」と書かれたこのTシャツは、潮からのお下がりでもらった特別なシャツだ。彼はそこまで言い当てた。
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
おお!唐突に出てきた潮の名前!
波稲は、潮のお下がりのTシャツを着ていたのです。
予知したことより、そっちに歓喜してしまいました(笑)。
「パリジェンヌ」と言えば!
4周目、ウシオが外に出るとき着ていたTシャツ! (8話)
この時のウシオは影の記憶が戻っておらず変身できなかったので、移動時に変装せざるを得なかったのです。
あの時のTシャツが、今は波稲の手にあるとは・・・。
感慨深い(笑)。
でも、波稲にとって「お下がりでもらった特別」とはどういう意味なのでしょうか?
波稲にとって潮は特別な存在なのでしょうか?
今後明かされるのか楽しみです♪
時間を飛び越える
会員のみなさまにもたまに勘違いされますが、僕は未来予知ができるわけじゃない。時間を飛び越えることができるのです。クロノスの目が未来も過去も、すべて教えてくれる。さあ、今日も危機回避を始めましょう
by ミスター・レイ『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
未来予知と聞いて、私が最初に思い浮かんだのはリュウノスケの2秒予知。
だけど、2秒どころか、相当先まで予知しています。
そこへミスター・レイの「時間を飛び越える」という言い方。
これはもうリュウノスケどころかハイネ級ですね(笑)。
覚醒した、その目を持つ者は、現世よりも、ひとつ「上」の次元に至る。
そうなれば、現世すべての時間も空間も思いのままじゃ。by ハイネ『サマータイムレンダ』TVアニメ第23話
覚醒した目があれば、時間も空間も思いのままでした。(23話)
ミスター・レイは、その時間を飛び越える能力を持っているのでしょうか?
と思わせるような煽りですね(笑)。
本家本元の波稲を目の前にして。
14年間リュウノスケと共に生き、2秒予知を使ってきたひづるを前にして。
見え透いた三文芝居をしているようなミスター・レイに失笑してしまうのは私だけでしょうか(笑)。
もちろん、波稲もひづるも「影がいた世界」の記憶がないので、そんなことは考えないでしょう。
もし、波稲に以前の記憶があれば──
○秒かそこら、先の方へズレちゃある。
by ハイネ『サマータイムレンダ』TVアニメ第11話
とか言ったのではないでしょうか(爆)。
予知できてない
突然、ひづるがずかずかと、円卓へ歩み寄る。波稲も、少し離れた位置から見張っていたミサキも、彼女の行動に完全に虚をつかれていた。
「南方様!」
ミサキが叫ぶのと、鞄から出したそれをひづるが振り下ろすのは、ほぼ同時だった。by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
突如、破壊行動という暴挙に出たひづる。
ひづるは直前、波稲に「試したいことがある」と言いました。
この行為で何を試したのでしょうか?
次の二つを確認するために鏡を破壊したのではないでしょうか。
一つ目は、危険予知など「嘘っぱち」ということ。
ミスター・レイは、鏡がなくても予知できるから、危機ではないと返してますが、これはただの強がり。
なぜなら、会員に大きなショックを与えています。
予知能力には影響ないにしても、会員への危機回避は全くできてないのです。
ではなぜ、そのことをひづるは突っ込まないのか?
それは、この時は、会員がミスター・レイと結託して予知を実現させていると推理していたからですね。
会員に指摘をしても、ミスター・レイの味方だから、はぐらかされると踏んでいたのでしょう。
二つ目は、鏡には何の仕掛けはなかったこと。
ひづるが、もう一つ確認したかったのは、ミスター・レイへの伝達手段。
如何にも怪しげなテーブルと天井の鏡。
この鏡を通して、ミスター・レイに裏方と連絡を取り合っているのでは?と推理したわけです。
これが、ひづるの言う──
わかったことは二つ。一つは鏡を使わなくても予知は可能だということ。本人が言ったように、あれはただの舞台装置に過ぎないのだろう。あそこに仕掛けはない。
by 南方 ひづる『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
の意味ですね。
ミスター・レイへの伝達手段は別にあると分かり、それが後の推理の耳元から目を逸らすための装置だったに繋がっていくのです。
囮捜査と振り出し
翌日、波稲はスナック菓子を買いに一人外を歩いていると・・・。
静寂島警部
静寂島警部。ひづるの知り合いである警察関係者の一人。何度か事件解決に貢献し、それ以来交友を持っている。どれくらいの数の事件解決に貢献したのか波稲は詳しく知らないが、電話で連絡を取ればかけつけてくれる程度には、信頼関係があるのだろう。
by 南方 波稲『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
波稲が暴漢に襲われかけたのを救ったのは、静寂島警部。
静寂島警部は、コミック『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』終盤に登場した人ですね。(未然事故物件)
ひづるは、静寂島警部の協力を得て、波稲を囮にするワナを危機回避倶楽部側に仕掛けたのです。
会員ではない!?
予知の力の正体は至極単純。マンパワーだ。あの男が予知をする。それを叶えるために忠実な信者である会員たちが動く。少々退屈なシナリオだが、現実とは残念ながらたいていそういうものだ
by 南方 ひづる『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
ひづるの見立ては、ミスター・レイの力は、予知ではなくマンパワー。
つまり自作自演ですね。
ミスター・レイに狂信している会員達を使って、予知を実現させていると睨んでいたのです。
が、襲ってきた男は会員ではなかった・・・。
調査は振り出しに戻ったのです・・・。
しかし、退屈なカラクリではなかったと知り、余計に熱が入るひづる(笑)。
そして、波稲も──
確かに怖かった。けど、こんなことを平然と仕掛けてくるやつのところに、友達を置いておくことのほうが、よっぽど怖いよ。あいつをけちょんけちょんにしてやりたい
by 南方 波稲『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
相手を脅し恐怖を与えることを平気でやる危機回避倶楽部から少しでも早く友人を救いたいと、波稲は気持ちを新たにするのです。
それにしても、「けちょんけちょん」という表現、久しぶりに聞きました(笑)。
ん?
もしかして・・・と思って調べてみると──
「けちょんけちょん」は、和歌山の方言「けちょに(=非常に)」が語源。
「けちょに」を使う地域が広がるうちに「けちょんけちょん」へ変化していったようです。
危機回避倶楽部 解決編
ひづると波稲は、再び危機回避倶楽部の集会場へ向かう。
1週間程度の出来事
土曜日。波稲とひづるは、再び危機回避俱楽部の拠点がある邸宅に訪れていた。
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
波稲が、あゆみから危機回避倶楽部の話を聞いてから解決するまで。
小説を読んでいる最中は、1ヶ月程度の出来事かと思ってました。
が、どうやら1週間程度の出来事のようです。
今日は日曜日で講義もなかったので、波稲は明日からの講義で行う実験の準備と別の講義で提出するレポートの作成に時間をあてていた。
昼を過ぎた頃、あゆみからメッセージが一件だけ入っていた。飛びついて確認すると、波稲を心配する内容だった。
『昨日は来てくれてありがとう。ミスターレイの力はわかったでしょ?しばらくは夜道を歩かないで。お願い』
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
この後、波稲は図書館とコンビニに出かけます。
つまり、最初に危機回避倶楽部の集会場へ行ったのは土曜日。
翌日、日曜日の夜に、波稲が刃物男に襲われた。
3日ほどあゆみと連絡がつかなくなっていた。
- 中略 -
駅間前のカフェで会わないかとメッセージが送られてきた。
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
3日程度、日を置いて、あゆみとカフェで会う。
カフェを出た後、デモがあり、見覚えのある顔を複数見つける。
3日程ということは、あゆみと会いデモを見たのは水曜か木曜。
そして、次の土曜日に再び集会場へ。
あゆみは、集会は週に1回開催されていると言ってました。
毎週土曜に開催されているのでしょう。
物語冒頭の、あゆみが波稲を誘った日付だけが、よく分かりません。
でも、波稲はすぐに心配して竜之介&ひづるに相談した様子。
ならば、前日か前々日?
第一章はわずか1週間から10日程度の出来事なのです。
だから、竜之介への週に1回の連絡も、最初の相談と、事後の決着しか言う機会がなかったのです(笑)。
虚像を徹底的に破壊
「ふむ、やってみると案外、楽しいな。それでは最後の予知だ」
会員が茫然とするなか、誰よりも大きく、「は?」と混乱の声を上げたのはミスター・レイだった。彼だけが知っているからだ。自分の用意していたこの部屋の予知の細工はもうないと。ひづるがこれから告げる予知の内容を唯一知っているのは、波稲だった。
「円卓から離れてください! いますぐ」
波稲の声が響く。最初に円卓から離れる影があった。見ると、あゆみだった。彼女に続き、円卓から次々と会員たちが引きはがされていく。by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
ミスター・レイのお株を奪い、次々予知していくひづる。
ミスター・レイが用意した予知に乗っかっただけでなく、最後にド派手な予知(仕掛け)を用意していました。
なぜ、こんな大仕掛けをわざわざ用意したのでしょうか?
私は、会員、特にあゆみの目を覚まさせる為だったと解釈します。
予知を実現させていたのは、会員ではなく別集団でした。
ならば、会員は、予知が偽物だとは知らなかった。
本気でミスター・レイを信じ込んでいたのです。
それを打ち砕くには──会員の危機を予知してみせる。
それも、危機回避倶楽部のシンボリックな存在である鏡を使って!
ひづると波稲は、予知を破っただけでなく、ミスター・レイに代わって会員の危険を予知してみせたのです。
それも、象徴的存在である鏡を破壊することで、会員、いや信者の目を覚まさせたのではないでしょうか。
それでも、すぐには受け入れられない信者達・・・。
では、肝心のあゆみは、どうだったのでしょう?
「円卓から離れてください! いますぐ」
波稲の声が響く。最初に円卓から離れる影があった。見ると、あゆみだった。彼女に続き、円卓から次々と会員たちが引きはがされていく。
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
波稲の声に一番最初に反応したのは、あゆみ。
あゆみはミスター・レイに陶酔しきっていた感じでしたが、波稲のことを気遣う様子は残っていました。
ミスター・レイに狂信しながらも、波稲のことも好きだったのではないでしょうか。
ミサキ
キミが黒幕だな
by 南方 ひづる『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
エキストラから聞いたのか、ミスター・レイの資質を見抜いていたのか、ミスター・レイの妻であるミサキが、全ての黒幕だとひづるは見抜く。
自分は矢面には立たず、後ろへ下がり、全てをコントロール。
ミサキが、エキストラを使って、過去を探り、予知を実現させていたというのです。
ただ、一つだけ解けない謎が・・・。
波稲が『鈴竹』を食べたことを、どうやって見抜いた? あの予知だけは、エキストラを使っても不可能だ
by 南方 ひづる『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
ひづるの部屋を調べても誰かに入られた形跡はなかった。
波稲が「鈴竹」を2つ食べたことは、ひづると波稲しか知らないはずなのです。
ひづるの部屋に侵入された形跡がなければ、普通考えられるのは盗撮でしょう。
作品の時代設定は2026年と、今から4年後。
小さくて高性能なカメラがあっても不思議ではありません。
でも、「侵入された形跡は見つからなかった」ことを信じると、カメラやマイクの類いが仕込まれていたのではありません。
ただ、部屋ではなく、人の衣服や持ち物に仕込むことだってできるのですけどね(笑)。
ひづるはパソコンで執筆作業をしていたので、カメラがハッキングされた可能性も考えられます。
スマホだって、同様です。
後に、真実が明かされる可能性はありますが、今は論理的に説明できる仕掛けは「ない」と解釈しておきましょう。
続けて発した、ひづるのセリフが興味深い!
キミは、・・・本物か?
by 南方 ひづる『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
本物とは、ミスター・レイのようなインチキではなく、本当に予知ができるのではないか、と問うたのです。
その問いに、ミサキは──
私の視たことを一つ忠告として教えておきましょう。南雲先生
by ミサキ『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
ひづるが小説家・南雲竜之介であることは、秘密です。
なのに、ミサキはひづるの正体を知っていたのです。
ただこれは、ひづるの部屋で波稲が「鈴竹」を2個食べたことを知るよりかは簡単です。
部屋で「鈴竹」を食べているのを知ることができるのなら、ひづるが執筆しているのも分かるはず。
細かい文字が読み取れるなら、書いている原稿や所有している書物からでもおおよそ絞り込める。
ひづるの部屋に頻繁に出入りしている編集・強羅を尾行すれば編集者であることも分かるのです。
ただ、先にも書いたとおり、あゆみが波稲に危機回避倶楽部のことを話してから僅か1週間~10日程度しか経ってないのです。
南雲先生ネタを予知に使おうとはしませんでした。
マンパワーは金もかかります。
使いもしないネタに金をかけるはずがありません。
となると、ミサキは本当に何かが視えているのではないでしょうか・・・。
ミサキの能力は透視?
さて、ミサキは本物なのでしょうか?
分かったのは、ミサキは未来予知はできない。
なぜなら、今回のことを予知できなかったのですから。
予知ができるのなら、最初、ひづるがトンカチで鏡を破壊するのを防げたはず。
最後のエキストラが買収されていることだって、予知できるなら見抜けたはず。
大体、ひづるの挑発に乗って、予知を見せなければ負けることはなかったのです。
もっと言うと、波稲を誘ってはいけなかった。
ひいては、あゆみを入会させてはならなかった。
これらの失敗は、全て「予知できない」ことを証明しているのです。
ただ、ひづるに最後に放った言葉は、未来予知。
もし、この予知が本物なら、自分に関する未来予知ができないだけか?
いやいや、他人の予知ができるのなら、今回ミスター・レイや会員の予知として視えたはず。
可能性があるとすると──
予知は予知でも、全ての未来が視えるのではなく、お告げのように不定期なのかもしれないですね。
予知ではないとすると、ミサキの力はどういった類いなのか?
過去視、過去透視・・・。
いや、『サマータイムレンダ』の流れから考えると、人の記憶を読む──
読心術、テレパシー、サイコメトリーの類いなのかもしれません。
であれば、波稲が「鈴竹」を2個食べたことも、ひづるが南雲竜之介であることも見抜けます。
さてさて、ミサキは本物なのでしょうか?
彼女の出番は、このエピソードだけではない気がします・・・。
いや、また出てきて欲しいと思うのは私だけでしょうか(笑)。
本物ならば、いや、ひづるにも見抜けないほどの凄腕ならば、刑務所からは早々に出て、再び相まみえるかも。
それに、彼女は奇妙な言葉を残しました。
くれぐれもファンには、お気をつけください
by ミサキ『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
波稲は、熱狂的なファンに襲われました。
今度は、ひづるがファンに襲われる!?
ひづるのファンとは誰なのか、ここでは分かりません。
が、南雲先生の熱狂的なファン、いや南雲オタクならすぐに思い浮かびます。
自己紹介がキモくなる程、南雲先生が好きで、本小説冒頭の登場人物紹介でも掲載されている彼しか・・・。
トリックの種明かし
波稲が『鈴竹』を食べたことを、どうやって見抜いた? あの予知だけは、エキストラを使っても不可能だ
by 南方 ひづる『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
ひづるは、波稲の「鈴竹」だけは、エキストラには無理だと結論づけました。
逆に言うと──「鈴竹」以外は、全てエキストラで細工が可能だと言っているのです。
暗がりで波稲を襲ったのは仕込みだと解き明かされました。
ラストのミスター・レイの身近な予知も全てエキストラの仕込み。
他の予知も、エキストラがやったと言うのです。
ならば、順に考察していきましょう!
食堂での出来事
短い悲鳴が聞こえて、波稲が振り返ると、一人の女子がおぼんを持ったまま足を滑らせ、派手に転倒した。どうやら講義に急ごうとしていたらしい。近くにいた女子の友人らしい何人かが、転んだ彼女を補助し始める。
本来なら助けようと波稲も手を貸していた場面だが、それ以外の事実に意識を奪われていた。女子が転倒したのは、まさに波稲が数秒前まで座っていた場所だったからだ。あゆみの言う通りにその場を移動した。直後に転倒が起きた。
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
あゆみに言われるがまま、波稲が移動すると、直後にさっきいた席に女子が転倒してきた。
最初から仕込まれていたと考えると話は簡単。
タイミングは昼休みの終わりを告げる、チャイム。
驚くべき事ですが、学校内にもミスター・レイの息がかかったエキストラがいたのです。
それとも食堂だから一般の人も入れるのでしょうか?
食事中に、波稲は周囲から視線を感じてました。
SNSに写真をアップしたからだと思ってましたが、エキストラが予知を実施するために観察していたのかもしれないですね。
インターホン
波稲がまともに取り合おうとしている横で、ひづるは声を無視してインターホンを押そうとした。マイクから女性の声が聞こえてきたのは、インターホンを押す直前のことだった。
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
これは、簡単ですね。
ミスター・レイに協力していたのは、反抗集団側。
門の前で抗議していた人達はエキストラだったのです。
こうして、外部から来た人をチェックして、インターホンを押す前に知らせる。
いや、門に監視カメラがあれば、エキストラから連絡をもらう必要もないかも。
でもそれならば、門の前で反抗させる意味がありません。
やはり、何らかの役割を与え、訪れる人にワナを仕掛けていたのではないでしょうか。
既に来ることを予知していたので、駅前辺りからマークしていたのかもしれません。
門前での抗議だって、波稲とひづるが邸宅へ近づいてくるのを見計らって始めたのかも。
大体、インターホンを押す前に、中から話しかけるなんて小細工を用意していることが、観客を乗せるための演出に過ぎないのです(苦笑)。
二人が訪れることを予知
ああ、視えます。二人の女性がここにやってくる。一人は少女ですね。赤のパーカーに白のTシャツ。カタカナで「パリジェンヌ」と書かれてますね。それにジーンズ。スポーツブランドのスニーカー
by ミスター・レイ『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
これは、波稲が言うように、エキストラを使って波稲を見つけたら連絡するようにしていたのでしょう。
問題は、時間です。
2時間前は、流石に時間がかかりすぎ。
波稲が言うようにタブレットの時間を進めておいて、録画後元へ戻した。
1時間程度なら、熱中している信者達です、2時間と言われたらそんなものだと信じたでしょう。
が、仮に駅前でエキストラが待機していて連絡した場合。
駅から歩ける距離だから、せいぜい15分程度か。
15分だとしたら、2時間前と誤魔化すには厳しいですね。
ただ、ミスター・レイは──
みなさんで二人を歓迎しましょう。間もなく来るはずです。
by ミスター・レイ『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
2時間先に来るのに「間もなく来る」と言いますか?
私は言いません。
「間もなく」という表現は5分~15分後、せいぜい30分程度ではないでしょうか。
このことからも、タブレットの時間を操作した可能性が高いですね。
ただ、問題は、これらをエキストラが仕込んでいることを、あゆみは知りませんでした。
つまり、波稲を誘ったのはあゆみの考え。
ひづるを誘ったのは波稲の都合。
あゆみが偶然誘った波稲を使って、予知を考えた?
その割には用意周到ですよね。
どこで見張っていたにしろ、波稲をマーク。
夜に襲ったときには、波稲が見つけたファイゲンバウム点まで用意していた・・・。
恐らく、逆なのではないでしょうか。
何が逆かと言うと──
ミスター・レイが、あゆみに波稲を誘うように誘導したのです。
まずは予知からですね。
君の友達が昼食後、大変な目に遭います。
その子を救ってあげなさい。
それほどの友人なら、集会を見学させてあげても良いですよ。
とでも言えば、信じ込んでいるあゆみです、自然と波稲を集会に誘います。
反対に、波稲はあゆみが心配で集会に来ると予想できる。
食堂で波稲がいた場所に転倒したエキストラは、リレー形式で波稲を監視。
逐一、ミスター・レイ(ミサキ)へ報告。
そこまでする目的は?
波稲を入会させたかった?
いいえ、倶楽部の席は23人で満席でした。
なのに、手間をかけて金まで使って予知を仕込んだのは、新たに会員を増やすためではなく、あゆみを完全に信じさせるためではないでしょうか。
ここまでして、一人の信者を作り上げる。
まさにマンパワーですね(苦笑)。
エピローグ
危機回避倶楽部の件は、無事に解決。波稲は、あゆみと・・・。
抱きつき上戸
「今日は良い数字、見つかった?」
待ちわびていた声が降ってきたのは、そのときだった。by 南方 波稲『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
危機回避倶楽部の騒動は解決し、ひづるにはアイデアが、波稲には念願の声が降ってきた(笑)。
そっと顔を上げると、親子丼の乗ったお盆を抱えたあゆみが立っていた。抱きしめたくなるのをこらえて、「あゆみちゃん」と、笑顔で呼んだ。
by 南方 波稲『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
波稲があゆみを見て、抱きしめたくなるのをこらえるがいいですね。
波稲は嬉しいときや寂しいときに人に抱きつきます。
『~未然事故物件』では、上京してひづるに会った瞬間、抱きつきました。(未然事故物件)
本作でも、刃物男に襲われた後、ひづるを見かけた瞬間、抱きつきました。
これは、波稲時代にひづるが抱きしめた名残でしょうか、というのは感傷に浸りすぎでしょうか(笑)。(14話)
次は自分の番
「ありがとう」
いいんだよ、と波稲は答える。あゆみはもう一度、ありがとうと言ってきた。二回目、三回目と続き、波稲はすべて受け止めた。それから泣いていたあゆみの手を握った。
入学してから、初めてできた友達。たくさん支えてもらった。大学が楽しいと思えているのは彼女のおかげ。だから今度は、自分の番だ。by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
波稲が大学生になってから、初めてできた友達。
飛び入学した波稲は周囲から浮いていたが、あゆみのお陰で大学が楽しいと思えた。
だから、怪しいカルトから何としてでも救い出したかった。
段々、やつれていく友達を放ってはおけなかった。
上辺だけの付き合いだけでない。
この瞬間、二人は本当の意味での友人となったのです。
信仰よりも、強い絆で結ばれる親友に──
おわりに (『サマータイムレンダ2026』第一章とは)
本作品はアニメ化もされてないし、漫画『サマータイムレンダ』を読んでないとなかなか手に取らないでしょうから、レビューを書くか迷いました(笑)。
しかし、読み始めたら、語りたい(書きたい)ことが出てくる出てくる!
でも、次に悩んだのは、どんなスタイルで書くか・・・。
結果は、いつものスタイルで(笑)。
ストーリーに沿って、シーンを取り上げ考察する、アニメ各話レビューのスタイルで、単体小説を取り上げるのも初めて。
だけど、型が決まると、書くことが湧いてくる湧いてくる(笑)。
あっと言う間に1万文字を超えそうだったので、第一章で1本にしました。
結果、第一章だけで2万文字です(爆)。
超長文失礼しました。
小説の取っかかりというのもあって、コミック『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』との関係や、最初はどうしても解説が多くなってしまいました。
第二章から、(多分)コンパクトになると思うので、見捨てないで下さい!(笑)
以上、小説『サマータイムレンダ2026』第一章の感想&考察レビューでした。
超長文にもかかわらず、最後まで読んで頂きありがとうございます。
第二章のレビューも書いています。
良かったらご覧下さい。
ではでは。
予知と言えばリュウノスケ!
他の奴が予知できるなんて許せない!(笑)
関連記事
小説『サマータイムレンダ2026~』第二章「ゴースト&ドライブ」のレビューはこちら
TVアニメ『サマータイムレンダ』各話レビューはこちら
前半クール (1~12話)
コミック『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』レビューはこちら