こんばんは。時文(@toki23_a)です。
『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』の第二章「ゴースト&ドライブ」を読みました。
本小説は、TVアニメ『サマータイムレンダ』ラストの延長線上の世界が舞台のスピンオフ。
単体でも楽しめますが『サマータイムレンダ』、そしてコミック『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』を知っている方がより楽しめます。
アニメ版でも原作コミックでも良いので、先に『サマータイムレンダ』を最後まで観て(読んで)から読むのがオススメです!
ここから先──
「はじめに」では『サマータイムレンダ』およびコミック『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』の内容に触れています。
「感想&考察レビュー」以降は、加えて小説『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』の内容に触れています。
特に『サマータイムレンダ』は、ネタバレ厳禁の類いの作品なので、未視聴(未読)の方はご注意を!
本レビューの方針
本レビューは、章を読み終えた後に書いています。
よって『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』の次章以降のネタバレはなしなのでご安心ください。
各章リスト
※ 話数:リンクは各話レビューへ
本ブログ「ここアニ」では、アニメ『サマータイムレンダ』、コミック『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』のレビューも書いてます。こちらからどうぞ。
はじめに
舞台は、2026年10月の東京。
休日の昼下がり、波稲とひづるは、上野公園にある国立科学博物館に来ていた。
その帰り道、大きなブレーキ音を出しながら近づいてくる暴走車に出会う。
小説『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』は、ひづる&波稲が、様々な怪奇現象に挑む1話完結の短編集です。
第一章「危機回避倶楽部」は、予知能力。
第二章「ゴースト&ドライブ」は、車が勝手に動き出す亡霊車。
怪奇現象は、本物か?
誰かが意図したトリックか?
読み始めると、真実が明らかになるまで止まらない!
扱う現象が実に『サマータイムレンダ』の作風と合ってます♪
いや、ひづると相性が良いという方が正解か(笑)。
ひづるは決して探偵でも何でも屋でもありません。
小説家の性か、ひづるの性癖か(苦笑)。
奇妙な事象に自ら飛び込んでいくひづると、どこか楽しんでる波稲の二人のやりとりが、とにかく楽しい♪
各章で波稲の成長も見られるのも、本作の特徴。
第一章では友情。
第二章では・・・。
そして、今話は、ついにあの主人公も特別出演!?
では、今章を振り返っていきましょう。
感想&考察レビュー (以降、ネタバレあり)
ここからは『サマータイムレンダ』および『~未然事故物件』に加え、『~小説家・南雲竜之介の異聞百景(第1・2章)』の内容に触れているので未読の方はご注意下さい。
主なトピック
※クリックすると該当項目へ
遭遇
休日の昼下がり。波稲とひづるは、国立科学博物館を楽しんだ後、上野公園内のカフェで休憩を取っていた。
プロローグ
亡霊にとり憑かれた車に波稲とひづるが初めて出会ったのは、10月に入ってすぐ、休日の昼下がりのことだった。
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
第二章のスタートは10月。
第一章は、波稲が大学へ入学して5ヶ月が経った9月頃から始まり(第一章)、1週間から10日程の話でした(第一章)。
第二章は、その数週間後から始まります。
約束を守るひづる
「連れてきてくれてありがとう! 国立科学博物館、上京してからいつか行こうと思てたんよね」
「危機回避俱楽部の件で、お詫びをするという約束だったからな」by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
ひづるが言う、危機回避倶楽部のお詫びとは──
第一章「危機回避倶楽部」で、からくりを暴くため、波稲が襲われる予知を利用したこと。
実をいえば作戦の直前、興奮の冷めたひづるから、やはりやめるべきでは、と中止を提案されていた。しかし最終的に、決行を決めたのは波稲本人だった。
「作戦は面白かったけど、もうやりたくない」
「今度何かお詫びをしよう」by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景(第一章)』
決めたのは波稲本人なので、波稲自身は悪いのがひづるとは思ってません。
が、おとり作戦を提案したのは、ひづる。
文脈から察するに、ひづるは興奮状態で、姪を危険にさらす事など忘れて作戦を立案した様子(苦笑)。
落ち着いてから、ひづるは、波稲に中止を打診していたのです。
それでも決行すると決めたのは波稲。
だから、波稲はひづるが悪いとは思ってませんが、ひづるは作戦を立案したことを悪いと思っていたのです。
そのお詫びに、波稲を国立科学博物館へ連れてきたのです。
やはり、ひづるは優しいですね。
事故?事件?
「事故か?」
「事件かも」
その二つのどちらであるかの判断がつかず、誰も現場に近づこうとしなかった。事故であれば運転手を救出するべきだろうが、意図的に起こされた暴走行為なら一早く逃げないといけない。近づくべきか離れるべきか。誰も答えを見出せない。by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
平穏な休日の昼下がり、突如、相応しくない出来事が起きる──
けたたましいスキール音を出しながら、近づいてくる車。
電柱にぶつかり止まった車を見ても、慌てない二人。
色んな人がいる昨今(苦笑)。
ぶつかる前に、普通ではない走り方をしていれば、警戒するのが常識!?
普通は事故と思って、体が動くか、逆に固まってしまうと思いますが・・・。
二人はかなり冷静です。
特に、ひづるは冷静で、「助けて」と声がしても演技かもしれないと警戒する。
これは、ひづる自身というより、波稲を危険な目に遭わせたくないのでしょう。
ところが──
「とり憑かれてる・・・・・・」
「え?」と、波稲。
「とり憑かれてるんだ。こんな車、やっぱり買うんじゃなかった」
「どういうことだ」
ひづるが近づき、男性に説明を促す。その瞳に好奇心が宿っているのを、波稲は見逃さなかった。
震える男性はこう続けた。
「この車は、亡霊にとり憑かれてるんです」by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
さっきまでの慎重さはどこへやら(笑)。
ひづるは、「とり憑かれてる」と聞き、好奇心を持つのです。
にしても、波稲さん。
ひづるの一瞬の変化を見逃さない。
これも映像記憶の能力でしょうか(笑)。
シュエット
「ルビー社のシュエット。これは型落ちで割とめずらしくない車種です。ただ、車に根付いた『歴史』をみんな欲しがっていて」
- 中略 -
「20年前、ノアが乗った車が何かの縁で日本に直輸入されてきたんです。日本のマニアがこぞってなんとか手に入れようと 躍起 になってました」
by 坂下 安芸『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
車は詳しくないですが・・・。
ネットで調べた程度ですが、ルビーという車会社もシュエットという車も実在しません。
架空の車だと思われます。
フランス車と言えば、プジョーとシトロエンが有名ですが・・・。
亡霊車設定なので、実在する車ではイメージを悪くしてしまいかねないので架空の車にしたのでしょう。
事故した車は、F1レーサーがプライベートで乗っていた最後の車としてマニア内では人気の一品。
日本に輸入されたのが20年前ということは──製造されてからはもっと年月が経ってますね。
後の車検証を調べるシーンで、日本での事故は2001年と記録されています。25年以上前に日本へ輸入されたのだと思われます。
20年前というのは、”亡霊の噂”が出始めた時期ですね。
いずれにせよ、よく動いているものです。
「コレクターたちが乗るたびに修理を繰り返すわけです。色々なパーツや部品が代わりますが、見た目や重さは変わらないようにするんです」
by 坂下 安芸『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
所有者が修理を繰り返し乗り続ける車。
これが、車を長らえさせると同時に、事件の根幹へと繋がっていくのです・・・。
「シュエット」はフランス語、「梟(フクロウ)」を意味します。
フクロウは知恵や美を象徴する鳥で、フランス語で「シュエット!」は、「いいね!」「素敵ですね!」という意味になります。
シュエットは、フランス語で褒め言葉。
製造メーカーが思いを込めた名前は、皮肉にも恐怖を振りまいていたのです・・・。
再現率100%
「亡霊の正体はわかりません。けど、購入するとき、ディーラーから忠告を受けました。この車に乗ると、なぜか必ず妙な事故を起こすと」
by 坂下 安芸『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
「必ず妙な事故を起こす」──出ました!再現率100%!
二人は、コミック『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』で──
波稲:再現率100%ってのが興味深いよ。心霊現象が44年間100人以上に100%で起きてる・・・再現性の危機が叫ばれて久しいこの現代で!
- 中略 -
ひづる:この再現性はありえないレベルなのだよ。
波稲:うん!うん!ホンマに起きるんか検証したいよな!!by コミック『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』
世の中の現象は、実は再現率100%は数が少なく。
必ず起きるとはいっても、(厳密に言うと)絶対とは言えません。
特に、怪奇現象の再現率100%は珍しく──
「ふふふ」
こらえきれず、ひづるが笑いだす。
「面白い。とり憑いた亡霊が悪さをする車か。それが本当なら実に興味深い」
「ひづるちゃん。笑いすぎ」
「キミこそ口元の笑みを隠してから言いたまえ」
噴水近くの水面に映る自分の顔を見ると、なんと口元がにやけていた。残念ながら波稲も人のことは言えないようだ。by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
理系女子な二人にとっては、検証したくなる対象となるのです(笑)。
例え危険であろうとも。
第一章「危機回避倶楽部」で襲われ、反省しようとも──
しゃあないよ!
好奇心には勝たれへんっ!
by コミック『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』
二人は好奇心には勝てないのです(笑)。
うん。
二人は親類どころか、同類ですね!
亡霊付きシュエット
シュエットを手に入れた、ひづるは、波稲と共にドライブがてら海沿いのレストランへ行く。
根津銀次郎
二人を出迎えたディーラーは、白い無精ひげを生やした70代ほどの男性で、キャップに工場作業着という出で立ちだった。誰かに似ていると思って、島の猟師の 根津銀次郎だとわかった。見れば見るほどよく似ていた。男の名は高泉といった。
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
『サマータイムレンダ』視聴者(読者)なら、根津と聞けばイメージが分かる。
職人気質の老人とくれば根津ですね!
それより何より──
私は、波稲から、根津の名前がサラッと出てきたのに驚いたし、嬉しかったです。
「影がいた世界」では、根津と波稲は、ハイネとしてしか面識がありませんでした。
なので、根津は、ハイネ(ヒルコ)を敵としてしか認識してなかったはず。
今は、「影のいない世界」──
この世界では、変わり者の老人・根津と若い波稲に接点などあろうはずもなく(苦笑)。
それでも、根津の奥さんは影に殺されず夫婦仲良く暮らしている様子だったので良しと思ってました。(25話)
根津が変わり者なのは、「影がいた世界」で、ひづると共に影を知る者として偏屈者になっていったのかもしれないですね・・・。
「影のいない世界」では、偏屈ではなく普通の人なのかも。
いや、ちょっと堅物のおじいちゃんかな(笑)。
でないと、波稲が、すぐに思い出したりはしませんよね。
本小説の原作には、田中靖規先生も名を連ねています。
よって、波稲が根津を知っていることは田中先生の公認。
波稲が知っているなら、竜之介も根津を知っているはず。
根津と波稲。
いや、根津と、ひづる姉弟との会話もいつか観てみたいですね♪
事故物件?
「亡霊の噂は前に買った男から聞いたか? 説明はいらないよな。というか告知義務もない。事故物件とは違うんだから」
事故物件と聞いて、波稲は上京したばかりのときに出くわした事件を即座に思い出したが、いまは置いておく。あれも幽霊がらみの興味深い事件だった。by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
「事故物件と聞いて、波稲は上京したばかりのときに出くわした~」というのはコミック『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』のことですね。
波稲が上京して住まいを探した時の話。
不動産屋は、マンション等の紹介時、事件や自殺があった物件は「事故物件」として告知する義務があります。
しかし、車には「事故物件」の告知義務はありません。
以前の持ち主が、その車で死亡事故を起こそうが、車内で何があろうが、告知する義務はないのです。
ディーラー・高泉はそのことを言っているのです。
告知義務がないので、逆に噂を否定することもできません。F1レーサー ノア・クストが車内で死んだのではないかと言う噂を否定できないでいるのです。
中古車販売は、大きな事故をして修理した場合、その車に「修復歴あり」と表示しなければなりません。
ただ、修復歴の有無では物損事故か人身事故かは判別できません。
また、大きな修理がなければ「修復歴あり」になりません。
ボンネットがヘコんだ程度の事故であれば、死亡者が出ようが出まいが、軽い修理扱いとなり「修復歴あり」とはならないのです。
よって、修復歴があろうとなかろうと、その車が死に関係しているかは判断できないのです。
ここ20年で購入した26人が全員、奇妙なアクシデントが原因で事故を起こしてる。普通だったら即座に廃車だが、コレクターに目をつけられた不運な車だ。
by 高泉『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
シュエットの持ち主は、(日本に入ってきてから)20年間で26人が所有。
26人全員が、奇妙な原因で事故を起こしているというのです。
これは確かに何かありそうですね・・・。
ひづるでなくても好奇心が湧いてきます。
ただ、事故するのが分かっていて、大枚をはたく趣味はありませんが(苦笑)。
「破損したトランク部分と劣化していたエンジン、その他必要なパーツを交換した。総重量は変わっていない。新品同様に走るはずだ」
by 高泉『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
トランク部分と、エンジンを交換。
恐らく修理代だけでも、新車を買うのと同程度のお金がかかったと思われます(笑)。
ペーパードライバー
「問題ない、ゴールド免許だ。免許を取ってからこれまでに一度も事故を起こしたこともなければ、一度も交通違反をしたこともない」
「・・・・・・ 一度も運転したこともない、とか言わんよね?」
「するどいじゃないか。洞察力が増したな」by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
ペーパードライバー・ひづる。
そのことをおくびにも出さずに、無事故無違反だと(多分)ドヤ顔のひづる(笑)。
波稲は車を運転しないから分かっていないのでしょう・・・。
ひづるが免許をいつ取ったか分かりませんが──
免許を取ってから一度も運転してない・・・。
それだけでも相当危険です。
ましてや、左ハンドルのマニュアル車。
普通は、まともに運転すらできない状況なのですが・・・。
そこは、南雲先生!肝が据わってらっしゃる!(笑)
というか、エンストさせずにスムーズに運転するなんて、器用ですね。
網代慎平
「そうだ。来週あたり、網代慎平に会いに行くがキミも来るか」
「え、慎平と会うの?」
「彼がファンレターのなかにレストランの招待券を入れてきた。いま働いているレストランで、 厨房を任されているらしい。味を見極めてくれという依頼だ」by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
第二章序盤、慎平から届いたファンレターの中にレストランの招待券が。
どうやら、ひづるは美食鑑定もしているらしいです。 (←違う(笑))
来週あたりと言ってましたが、シュエットの修理と受け渡しを待って1ヶ月後に変更したようです。
最初のドライブ先に、慎平のレストランを選ぶとは粋ですね。
事故を起こして、行けなくなったらどうするつもりだったのでしょう(笑)。
網代慎平。中学卒業と同時に日都ヶ島を出て上京し、東京の専門学校に通い、そのまま料理の修業を積んでいることは波稲も噂で聞いていた。たまの休みに島に帰ってくることはあったが、会う回数もここ数年はめっきり減っていた。
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
なんと「影のいない世界」でも、慎平は調理師専門学校へ通い、卒業して東京の店に就職していたのです。
と言うのも──
慎平は両親が(影に殺され)亡くなったので、小舟家へ引き取られ、潮と澪と一緒にアランに育てられました。
中学卒業後、地元の高校へは行かず、東京の調理師専門学校へ行ったのは、早く一人前になって潮と対等になるため。(8話)
「影のいない世界」では、両親は健在で小舟家へ世話にもなってないので、潮に負い目を感じる必要はありません。
なので、慎平は中学卒業後、調理師専門学校へ行く必要などなかったはずなのです。
てっきり私は、「影がいた世界」では小舟家へ引き取られ、洋食コフネの手伝いをしていたから料理好きになったのだと思ってました。
「影のいない世界」でも調理専門学校へ進んだということは──慎平は、純粋に料理が好きだったということですね。
ひづるが遅れてやってくると、慎平の態度が豹変し、深くお辞儀をした。
「あ…先生!! 今日はわざわざご足労いただきありがとうございます! あの、新刊の『オクシモロン』、最高でした・・・・・・」by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
そして、ひづるを南雲先生と呼び、大ファンであることは、8年経っても変わってないのです。
仕事
『サマータイムレンダ』の舞台は2018年7月で、慎平は当時18歳。
慎平の誕生日は5月。(原作2巻 巻末記録より)
小説第二章は2026年10月。
慎平は既に誕生日を迎えているので、8年後なら26歳。
慎平もすっかり大人、良い青年ですね。
「仕事してるひとって、なんかかっこええよね」
「仕事はそのひとの本質を表す鏡の一つだ。格好よく見えているということは、自信と誇りを持って 臨んでいるのだろう」by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
ひづるさん、良いこと言いますね~~。
第一章では、波稲と湊あゆみとの友情を描いた本作。
どうやら第二章では、波稲の仕事に対するイメージを膨らませる内容になってます。
慎平云々ではなくて、仕事に打ち込んでいる人に波稲が憧れる姿を描いているのです。
「そういえば、彼女のほうは元気か?」
「ええ、和歌山の小学校で教師続けてますよ。二人にも会えればよかったんですけどね。まあ元気にやってます」
「潮とも会いたいなぁ」波稲がつぶやく。by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
彼女とは、潮のこと!?
突然出てきてきた潮の名前に狂喜乱舞!(笑)
潮は和歌山で小学校の教師をしていたのです。
『サマータイムレンダ』で小学校の教師と言えばぶっちーこと、人渕先生。
一瞬、潮が人渕先生と一緒に先生をしているのかと思いました。(17話)
が、日都ヶ島小学校であれば「日都ヶ島で」と言うはず。
「和歌山の小学校」という言い方からして、日都ヶ島ではなさそうですね。
波稲の父・竜之介は高校の教師。
潮は、小学校の教師。
教師率が高いですね。
澪や、窓、朱鷺子は何をしているのでしょうか・・・。
失敗の連続
どの仕事もそうだと思いますけど、料理って、基本たくさん失敗するんですよね。失敗して試行錯誤して、また失敗して。そうやって同じことを繰り返して、死ぬほど繰り返して、やっと成功する。そういうのなんか、俺、嫌いじゃないみたいです
by 網代 慎平『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
慎平のこのセリフを聞いて、ニヤリとしたのは私だけではないはず!(笑)
「死ぬほど繰り返して、やっと成功する」──
まさに『サマータイムレンダ』で、主人公・網代慎平がやってきたことですね!
『サマータイムレンダ』最終話、「影のいない世界」でも最後の最後、慎平は「影がいた世界」のことを思い出したように見えました。(25話)
本当の意味で、慎平は何度も死に、命を削って同じ夏の日を繰り返しました。
そのことと重ねて言っているのか、純粋に料理のことを言っているのか。
そもそも、「影がいた世界」のことを、慎平はひづるにどれだけ話しているのでしょうか・・・。
いつか知りたいですね。
仕事のことや、自分の夢のことを語る慎平が、波稲にはとても眩しく見えた。
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
波稲さん、覚えてないでしょうが・・・慎平が実際に死ぬほど繰り返したのは、前世?のあなたのせいですからね、と心の中で突っ込んでおきます(苦笑)。
だからと言って、今の波稲に責任があるわけではないですが(笑)。
暴走車
レストランの駐車場で、勝手に移動していたシュエットの検証を進めながら帰路につく。
歩くドライブレコーダー
その仮説には穴が三つある。一つは、我々を尾行するには車が必要だ。我々の今日の目的地は他人に知られようがない。だから待ち伏せはできない。常に張りついて追いかけてくる必要がある。キミがここに来るまでの間、後部座席に亡霊が乗っていないか期待してしきりに後ろを確認していたな。そのとき長時間、同じ車はついてきていたか?
by 南方 ひづる『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
ひづると波稲のコンビ。
ひづるが探偵役なら、波稲は助手役。
波稲の映像記憶は、歩くドライブレコーダー(笑)。
見たものを瞬時に記憶。
駐車場では、(購入初日で見慣れてないので)自分たちの車かナンバーで照合。
尾行している車がいたか、チラチラ後ろを見ていれば、尾行車を意識してなくても、それらも記憶。
高泉が立ち上がり、それから二人を置いて店内に入っていく。やがて書類の束を持って戻ってきた。
「本当に見るだけだぞ。写真はだめだからな」
ひづるが波稲に目を合わせてくる。それで意図を察した。by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
車検証の束だって、波稲がいれば、コピーを取るのと同じこと。
波稲は、実に優秀な助手なのです。
そして──
「本当に見るだけだぞ。写真はだめだからな」
ひづるが波稲に目を合わせてくる。それで意図を察した。
波稲が代わりに笑顔でこたえる。
「もちろん」by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
小説内で、波稲が「もちろん」と応えたのはこれが2回目。
1回目は、第一章序盤、父・竜之介に友達のことを相談したとき──
「一人だけおる。頼れる大人。お世話になっている教授、じゃないけど、お世話になっている作家先生ならおるよね」
「作家先生って……いやいやいやいやあかんあかん! それはあかん! 絶対にあかん!」
電話口からの父の声が、とたんに大きくなる。ほとんどパニックだ。あわてふためいている様子が容易に想像できた。
「ロクなことになるわけない! ええか波稲、絶対このこと喋ったらあかんで! 相談もあかん!」
「あかんあかん言いすぎ。わかったよ」
「ほんまかぁ!?」
もちろん。by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
竜之介が絶対話してはいけないという相手は姉・ひづるのこと。
次のシーンで、波稲は即ひづるに相談をしています(笑)。
どうやら、波稲の「もちろん」は、ごまかす時の返事のようです(笑)。
お風呂回
結局、車で帰ることをあきらめた二人は、高泉に最寄りの駅で送ってもらった。服と体が泥だらけになっていた二人は、駅の近くにあったスーパー銭湯に寄ることにした。
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
泥だらけになった二人は、スーパー銭湯で汚れを落とす。
待ってましたのお風呂回!?
いや、入浴シーンどころじゃない展開になりました(笑)。
こんなところでも!? いやちょっと待って! 誰も見てないとしてもやばいから!
by 南方 波稲『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
波稲も他人のフリをしてしまうほどの、ひづるの行動。
これではアニメ化は・・・。
いや!
だからこそのアニメ化です(爆)。
わめく波稲も気に留めず、ひづるは淡々とこう告げる。亡霊にとり憑かれた車。その正体を、とうとうつかむ。
「面白いアイデア、閃いたかも」
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
亡霊車の謎を解き明かしたひづる。
「面白いアイデア、閃いたかも」
「謎は全て解けた」等、探偵が事件を解明したときに言う言葉──
どうやら、ひづるの場合はこのフレーズが、決め台詞のようです。
第2章の決め台詞を言う重要なシーン!
ぜひ、挿絵にして欲しかったし、コミックでもいいです。
できればアニメで観たいですね♪
亡霊車 解決編
ひづるは、全ての謎を解き明かし、ある人物の元へと向かう。
AIブーム
現代の洗練されたスマートアシスト機能よりも、もっと原初的なもの。すなわち、 黎明期において開発途中だった『自動運転技術を搭載したAI』。その機械による暴走が、今回の亡霊の正体だ
by 南方 ひづる『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
ひづるが気付いたのは、車検証のちょっとした差異から。
事故の履歴は──
1件目:横転
2件目:川に落車
4件目は、追突を受けての事故だが、5件目以降は前方への衝突が多い。
次に冒頭で事故を起こした坂下が──
「コレクターたちが乗るたびに修理を繰り返すわけです。色々なパーツや部品が代わりますが、見た目や重さは変わらないようにするんです」
by 坂下 安芸『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
コレクターがずっと見た目と重さを変わらないよう気を遣っていたのに、安形充が所持していた時だけ重量が増えている。
その増えた年と言えば──
「あなた以降の運転手の起こした事故が、すべて衝突事故になっていたこと。それからあなたの車検証の発行年が2006年になっていたこと。2006年といえばテクノロジー関連では大きな転換点になった年だ。それでたまたま閃きました」
「第3次AIブーム」
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
「第3次AIブーム」
人工知能自体は、第二次世界大戦後にすぐに研究が開始され、多くの科学者が挑戦してきました。
が、研究は盛り上がったものの、それを実現する技術的な処理能力が追いつかず、次第に世間の興味は薄れ、ブームは下火になっていきました。
第3次AIブームが始まったと言われる2006年は、ディープラーニング(深層学習)が生まれた年。
この頃には、コンピュータの性能も高くなっており、いわゆるビッグデータを処理することが可能となり、将棋や画像認識などで高い評価を得ていきます。
これが、現在も続いている「第3次AIブーム」と呼ばれるブームに繋がっています。
参考をまとめると──
機械学習、厳密にはディープラーニングの開発が劇的に進むきっかけになった年。冬の時代だったAIの開発が盛んになりかけてた
by 南方 波稲『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
長い間、ブームになっては「使い物にならない」と言われたAIが、今度こそはと研究者がこぞって取り組んだのです。
だから、技術者の安形も、自動運転を世に出したいと強く願ったのです。
自動追尾機能
「『前の車両を追尾する』。それが最初にAIに教えたプログラムでした。機械学習を重ねれば成熟していき、やがて完全な自動運転が実現するだろうと」
「なるほど、追尾か。だから追突や衝突が多かったんだ」by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
自動運転を実現すると言っても、いきなり自動運転に挑戦したのではありません。
安形が、最初に取り組んだのは「自動追尾機能」。
前方を走る車に、一定距離で追いかけていく機能。
仕組みを簡単に説明すると──
前を走る車を補足し、前の車と同じように走行する機能です。
前の車が減速すれば、ブレーキを踏み。
前の車が加速すれば、アクセルを踏む。
カーブを曲がれば、同じようにハンドルを切る。
だから、前方に車がいないと、追いかけるために加速したのです。
でも上手くいかなかった。音声認識でエンジンを始動させたり、ギアやサイドブレーキをかける機能も導入したが、誤作動が多かった。失敗した矢先から機能を追加していき、取り返しがつかなくなっていた。事故を起こしたことをきっかけに挫折し、夢をあきらめました。
by 安形 充『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
音声認識でエンジンを始動させる機能。
レストランの駐車場では、これが誤認識して勝手にエンジンが始動して移動したわけですね。
「失敗した矢先から機能を追加」──これが一番マズい(苦笑)。
機能が複雑化すると、失敗の原因はますます分析不能となり、成功の道筋が見えません。
失敗したら、その機能を外すべきでした。
結果、キーが無くてもエンジンが始動する、サイドブレーキやギアも関係なく勝手に動き出す亡霊車が誕生したのです。
燈台もと暗し
でも、とここで波稲は首をかしげる。一つ疑問が残っていた。
「そのAIが搭載された本体の機械って、どこに隠されてたの? 車両点検では一度も見つからなかったよね。カーディラーの高泉さんも自信満々に答えてたし」by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
車が勝手に動くという怪奇現象。
分かってみれば至極単純なカラクリ。
怪奇現象に仕立て上げていたのは、AIなど搭載されているはずがないという思い込みです。
F1レーサー、ノア・クストを感じるため、コレクターは内装には手を付けないよう気を遣ってきました。
どれだけ事故をして修理を繰り返しても、内装だけは昔の状態を保持していた。
そのことが、かえって未成熟なAIを発見できない原因となっていたのです。
皮肉なことに、所有者の強いコレクター愛が、亡霊車を存続させていたのです。
念のために言っておきますが・・・。
正直、このレベルの装置を付けていて、車検で見つからない事はあり得ません(苦笑)。
最近の車は電気制御の塊なので、特に電気周りは入念に調べられます。
余計な物が付いていたら、すぐに見つけられます。
ただ、シュエットは、25年以上前のクラシックカー。
電気制御が少ない時代の車なのかもしれません。
それと、内装には手を付けるな、という所有者からの強い要望が、カーディーラー・高泉の、AIなど搭載されてない、という思い込みを促進していたのでしょう。
いずれにせよ、現実にはこのような事件は起こりえないのでご安心を。
ああ、意図的にやればできますけどね(笑)。
エピローグ
謎は解明し、亡霊は去った。シュエットは、今後ひづるの足となっていく。
仕事観
出発前、ひづると高泉がまだ話し込んでいる間、波稲は技術者の安形のことを考えていた。仕事に誇りを持っていたひと。抱えた夢が暴走し、執着してしまったひと。仕事や夢を持つということは、ひとによっては最良の薬にもなるし、そして蝕む毒にもなる。
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
「仕事や夢が最良の薬になる」とは、ひづるが慎平に言った言葉から連想したのでしょう。
ふむ、目標があるのは良い。それさえあれば人は腐らない。天職が見つかったようで何よりだ
by 南方 ひづる『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
夢や目標を持って仕事をしていると、たとえ辛くても、たとえつまらない仕事でも、その人は腐りません。
ただ、その夢が叶わないと知った時、暴走してしまうことも・・・。
まさに、仕事や夢は薬にも毒にもなるのです。
ひづると慎平の会話を、側で聞いていた波稲は、こんなことを考えてました──
仕事のことや、自分の夢のことを語る慎平が、波稲にはとても 眩しく見えた。好きなものはすぐに答えられるけど、なりたいものは、まだ明確に見つかっていない。自分は将来、何になりたいのだろう。
by 南方 波稲『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
波稲はまだ大学生。
しかも、年齢はまだ16、17歳。(波稲は飛び級入学)
「ひづるちゃん。大人ってすごいなあ。私はやっぱり、まだ未熟な子供やわ」
「なんだいきなり」
「私のまわりには、色んな職業についてる大人がいっぱいおるけど」
波稲は言う。
「いつか、これが天職やって胸を張って言えるもんが、私にも見つかったらええなあ」by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
自分の天職なんてなかなか見つかるものではありません。
ましてや、その天職に就ける人なんて、そうは・・・。
でも、それを探すのも見つけるもの、そして目指すのも自由。
そうして、みんな少しでも自分に合う仕事、生き方をしていくのです。
そして波稲は、目標にしたい大人も、すぐそばにいることに気づく。
by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
さて、波稲は誰を目標にしているのでしょうか(笑)。
一方の、ひづるは愛車を手に入れご機嫌。
車を降りて二人で手すりにもたれる。見晴らしがよく、都内を一望できた。
「わあ、すごい。きれい」
「執筆に行き詰まったときにたまに来る場所の一つだ。普段は電車を使ってわざわざ来るが、これから車が使えるのは便利だな」by 『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
ひづるは、シュエットが怪奇現象を起こすから興味を持ったのであって、F1レーサーノア・クストに興味があるわけでも、クラシックカーが好きなわけでもありません。
が、シュエットを手放すときは廃車にすると約束したせいか、乗り続けることにしたようです。
ひづるのことです。
大金払ったから、廃車にするのが惜しくなったわけではないでしょう──
ちょっと、いまの見たひづるちゃん!? いま勝手にドア閉まったで! やっぱまだ亡霊ついてんちゃうっ?
by 南方 波稲『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
どうせ持つなら、普通の車は、つまらない。
コレクター内で有名な、いわく付きの車なら、ひづるの好みにピッタリ。
ならば、それらしい仕掛けを・・・。
と言った所でしょうか(笑)。
くれぐれも走行中の誤動作にはご注意を(笑)。
おわりに (『サマータイムレンダ2026』第二章とは)
第1章は、それぞれ登場シーンも含め、紹介回みたいな印象がありました。
が、第2章は、各々キャラ付けも明確になり、年の差一回り以上のコンビが怪奇現象に挑んでいく。
ひづるは、非科学的な視点から、波稲は現実的な視点からアプローチ。
波稲の映像記憶で得た記録を元に、ひづるが分析、推理する。
実に補完関係のある上手い組合せですね!
小説は「影のいない世界」で、ひづると波稲が主人公。
派手なアクションはないだろうと思っていましたが、第2章では緊張感あるカーアクションがたっぷり!
アニメ化されれば、映えるでしょうね~~
#色んな意味で(笑)
ぜひ、映像で観たいものです♪
◇◇◇◇◇
さて、第1章は小説の紹介もあって、レビューも長くなってしまいました。(第一章)
第2章は、すぐに事件も始まり、コンパクトなレビューになりました~~!
って、1万5000文字超です(苦笑)。
1万文字は越えないと思っていたのですが・・・。
この半年間、『サマータイムレンダ』のレビューを毎週書いて、終盤はずっと2万文字超のレビューを書いていたので感覚がおかしくなっているようです(苦笑)。
次章はもっと引き締めていきます!
以上、小説『サマータイムレンダ2026』第2章の感想&考察レビューでした。
超長文にもかかわらず、最後まで読んで頂きありがとうございます。
第3章のレビューも書いています。
良かったらご覧下さい。
ではでは。
毎回かかる取材費?
どれ位かかったのか知りたい(笑)
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