小説【バビロン】3巻感想(5/5) アニメと違う結末 アレックスは?曲世の新能力?そして正崎は・・・

バビロン 12話

こんばんは。時文(@toki23_a)です。
TVアニメ『バビロン』第12話「」を鑑賞しました。

本レビューは小説『バビロン』3巻の感想レビュー(5/5)です。

アニメ化された部分の感想はアニメ各話レビューをご覧下さい。

今話の原作

原作3巻は、TVアニメ8~12話に相当。
本レビューではアニメ12話に相当する部分を対象とします。

次話以降のネタバレは「なし」なので、ご安心を。

作品レビュー 一覧

バビロン (全12話)各話リスト
話数サブタイトル原作巻数ページ数原作R
第1章 「一滴の毒」
第1話疑惑1巻136P1巻①
第2話標的93P1巻②
第3話革命83P1巻③
第2章 「選ばれた死」
第4話追跡2巻128P2巻①
第5話告白49P2巻②
第6話作戦72P2巻③
第7話最悪53P2巻④
第3章 「曲がる世界」
第8話希望3巻56P3巻①
第9話連鎖67P3巻②
第10話決意79P3巻③
第11話開幕93P3巻④
第12話50P3巻⑤

話数:リンクは各話レビューへ
原作R:リンクは各原作レビューへ

※:8話前半は先の部分が元ネタ。そのページ数(7P)を含む

バビロン 感想レビュー(全話総括)
話数レビュー
全体【ネタバレあり】感想レビュー
目次

はじめに

本レビューは「アニメ」⇒「原作小説」の順で見た「原作の解説・感想レビュー」です。

アニメではカットされたシーンや、原作との違いを取り上げます。

アニメはアニメならではの良さがありますが、キャラクターが考えている事や感情の描写はどうしても情報が少なくなります。

原作小説は主に正崎一人称で描かれ、心情描写がとても丁寧に描かれています。
正崎の内面を知ると、より作品を理解できます。

原作の魅力を全て伝えることはできないと思いますが、少しでも作品理解の助けになれば幸いです。

原作小説の情報量は、想像していたより膨大でした。
私が取り上げたのはごく一部で、原作にはもっと楽しめる箇所があります。
アニメとは違う魅力があるので、アニメ鑑賞後でも楽しめます。

本レビューの内容
  • アニメでカットされた原作部分
  • アニメオリジナルシーン
  • 原作を読んで分かったこと
ご案内

見出しの頭にアニメオリジナル、原作のみの記号を記載したのでご参考に。

  • ア):アニメオリジナルシーンに関する記述
  • 原):アニメではカットされたシーンに言及

では、小説の内容順(時系列順)に紹介していきましょう。

原作感想レビュー (TVアニメ第12話 相当分)

原) 曲世の影響は”直接”接した者だけ

アニメ9、10話、正崎がハートフォードへ曲世の痕跡を捜査したエピソードはアニメオリジナルだと言うことは以前取り上げました。
#原作3巻③のレビューはこちら からどうぞ。

原作では、曲世がハートフォードのフローレス市長に電話した事実は出てこないので、電話の通話で影響を受けるのかは不明です。
そのような状況で判断を迫られます。

正崎が考え込む。情報は壊滅的に少なく、正崎が唯一の糸だった。

「・・・これまでに曲世の影響を受けた者は基本的に”直接”です。私が知る限りでは、同室に居た、面と向かって話をした、そういった場合に曲世の”力”に支配されています。茫然自失になる者や・・・自ら遺書を書いて拳銃自殺した者も」

-中略-

直接と言うことは、通話なら平気なんだろうか?電話の音声なら・・・」
「それも不明です」
「仮に一方的な音声でも彼女の力が効くのだとしたら、わざわざ指名する必要もないよね。勝手に放送でも何でもすればいいんだ。これが”直接話さないと駄目”という裏付けにならないかな」

それでも、絶対に話してはいけない」正崎は語勢を強めて言った。「確定できる情報は何もないんです。安全と言えることが一つもないだから貴方は、絶対に話してはいけない

by 『バビロン』小説3巻より

こうして、正崎はアレックスを説得するのです。

ところが、そこでアニメ同様、通訳の存在に気づく──

ア) 通訳を買って出るのはアニメオリジナル

3巻(2/5)レビュー (アニメ9話相当)からお伝えしているように、FBI捜査官ハーディはアニメオリジナルキャラクターで、原作には存在しません。

原作では少女と話すための通訳は、別に用意されます。

アニメでは、正崎が通訳をやろうと前へ出ますが、FBI捜査官ハーディがそれを止め自らが申し出ます
これらは全てアニメオリジナルです

原作には、正崎が買って出ようとする描写もありません。
通訳担当が呼ばれます。

決して、正崎が臆してとか英語が下手だからと言うレベルの話ではありません。

同時通訳という役目の重要さを知ってのことだと言うのは、小説3巻を読んでいると分かります。

原) 通訳サム・エドワーズ

原作3巻では、割と序盤からアニメには登場しない通訳のサム・エドワーズが登場しています。
登場したシーンを、アニメに照らし合わせると8話辺りから登場している感じです。

合衆国国務省言語サービス課 日本語担当通訳
サム・エドワーズ

これがサムが所属する職場。
その中でも優秀でサミット会場ではとりまとめ役を任されてます。

ただ序盤からちょくちょく登場しますが、ここまではアレックスや正崎と絡むことはありません。
サムの職場である国務省の通訳が、自殺法の影響やサミットの日程が近づくにつれ、騒がしくなっていく様子が描かれます。

サム自身は通訳という仕事に誇りを持ち、言葉が持つ力をとても真摯に捉え、勉強も絶やさない真面目な青年。

サム視点で、通訳の重要さが心情描写として語られていました。

同時に通訳にも高い品質の仕事が要求されている。ミスが許されないだけではない。可能な限り正しい、完全なニュアンスを伝えなければならない自身の言葉選び一つが先方に多大な影響を与える可能性があった。それは自殺の是非、つまり命に関わることだった。

by 『バビロン』小説3巻より

交渉事、議論の場での、通訳の仕事は、内容を正しく伝えるだけでは駄目で、ニュアンスをも完全に伝えないとならない。

サムは究極の通訳をも考えてます。

だが誰よりも言葉に向き合ってきた自負と同時に、理想的な、百パーセントの通訳には未だ程遠いと思っている。感覚が鋭敏になるに連れて、その認識はさらに強くなった。

理想を語るならば、通訳者の声は通訳対象者のそれと同じにあるべきだとサムは考える。通訳が伝える情報は言語情報だけではない。発声には文章以上の情報が無数に盛り込まれているトーン、ボリューム、声質、すべてが意思の発露で、すべてが必要な情報だ。極論、彼は男性の通訳を女性が行うこと、またその逆も、あまり良くないとすら思う。

だがそれは本当に極論で、現実には全く適用できない話だった。通訳者の人数は限られているし、優秀な者となれば尚少ない。その上で性別や声質まで問えばとてもではないが仕事が回らなくなる。自分自身の仕事も制限されることだろう。

by 『バビロン』小説3巻より

言われてみれば確かにそうですね。

相手の言葉だけでなく、話すトーンや抑揚、声の大きさ、流暢かたどたどしいか、真剣か軽いか、それら全てを総合して判断しています。

同時通訳はそれらを、その場でやってしまうのですから、どれだけ大変なのか・・・
通訳という仕事の重要さと難しさが勉強になりました。

さて、本編に戻りましょう。

原作者は通訳という仕事をここまで考えているので、正崎が通訳を買って出るなどの愚行はさせなかったのです。

ましてや相手は自殺を思い悩む少女なのですから──

ただ、アニメでのハーディはちゃんと少女の感情をも伝えようとしていました。
この辺を解ったうえでの通訳を全うしたのだということなのでしょう。

原) サムは少女の通訳を即決

アレックスが少女と話すには日本語通訳が必要。
すぐに呼び出されたのは国務省の日本語担当通訳サム・エドワーズ。

サムと正崎は初対面
サムは正崎から曲世愛という女の存在と、その特殊能力について説明を受ける。

サム・エドワーズは奇妙な気分だった。

FBIの捜査官だという男の話はとても奇妙だった。催眠術、超能力、普段暮らしている中では縁のない、一生かかってもまず縁がないだろう、奇抜なことばかりだった。

だがそれよりよほど奇妙だと思ったのは、自分がそんな話を聞いていくにつれて、どんどん”収まっていく”ことだった。入れ物の形に自分が変形してぴったりと収まっていくような、”ちょうど良くなっていく”感覚が身体に染み渡っていくのがわかった。

一人の少女が、自身の生死をかけて話をする。
自分は通訳として、自身の生死をかけて話をする。

多分、言葉一つが命を左右することになるのだろう。

-中略-

そしてサムは。

“言葉とはそういうものだ“と思い続けてきた

by 『バビロン』小説3巻より

アニオリのFBI捜査官ハーディのような正義感、少女を助けたいと言う思いも素晴らしいです。

だけど原作のサムは気負うことなく、言葉とは元来そういうものだと言う自負で、通訳をやっていた。
今回のことで考えたのではなく、以前から覚悟ができていたことが伺えます。

原作には時刻表示までされています。

原作情報

04:04 アレックスが緊急対策室へ到着、齋からの呼びかけ
04:07 対応策検討
04:09 正崎が緊急対策室へ
04:11 通訳サム・エドワーズが緊急対策室へ
04:14 正崎から曲世の説明完了(本項)

“言葉とはそういうものだ“と思い続けてきた

問題ありません
サム・エドワーズは何のブレもなく答えた。驚いたのは周りの方だった。

「同時通訳ブースに入ります」

by 『バビロン』小説3巻より

齋の呼びかけから約10分。
サムが少女が曲世かもしれないという話を聞いてから僅か3分の出来事です

原) 万全の体制?

テイラー国務長官が齋と段取りを交渉。
同時通訳を通し、アメリカ側の映像は無し、音声のみであることを伝える。
齋は、通話の内容を日本と世界に放送することを前提に。

4時20分。
サムは同時通訳ブースに入る。

廊下には万一の事態に備え、SS(シークレットサービス)が2人、医師、看護師、救急救命士が各1人ずつ待機。

4時24分。
新域庁舎の職員が屋へ生き、少女に電話機を渡す。

そうです、アメリカ大統領が話してくれるかは分からなかったので少女は手ぶらで屋上へ行っていたのです。
アメリカ側から了承を得られ、準備を整え、音声のみなので電話機を渡したのです。

バビロン 12話
TVアニメ『バビロン』公式HP「STORY第12話」より引用

だから少女は12話でインカムを着けてましたが、11話ラストでは何も着けてなかったのですね。

原) 少女の願い

アレックスと少女の会話。
アニメはほぼ原作通りです。

1点だけ、少女側も大事な想いを言ってますが、アニメ化されていませんでした。

少女は新域の恐らく自殺総合支援機構の窓口へ相談。
自殺総合支援機構に何を求めたのか・・・

同情してほしかったんじゃないんです・・・明るい未来の話を聞きたかったのでもなくて・・・ただ知りたかったどうするのが《よい》のか、よいことってなんなのか・・・。でも、まだ知っている人はいないんですね」

「少なくとも、僕の周りにはね」

── ここまでがアニメではカット ──

「わかったらすぐに教えてもらえますか、大統領」
「約束するよ」

by 『バビロン』小説3巻より

アレックスが「奇遇なんだけど僕達は同じ事で悩んでたみたいだ」で包含されるので、アニメでは省略したのでしょう。

原作では、同情や将来の話を聞きたいのではなく、「善い」とはなんなのかを知りたかった、とはっきりと言っているのです。

裏を返せば、新域では「善い」とはなんなのかを教えてもらえないということ。
齋が言う、自殺を勧めるからという偏見ではなく、どうするのが「善」なのかは新域は教えてくれない、もしくは教えないのです。

この辺が、突き所だと思うのですが、それはまた別の話。

原) 通訳サム・エドワーズの達成感

バビロン 12話
TVアニメ『バビロン』公式HP「STORY第12話」より引用

少女が自殺を思いとどまった瞬間、アニメではアニオリキャラFBI捜査官ハーディが達成感と共に安堵。

原作の通訳であるサム・エドワーズも達成感を感じています。

サム・エドワーズは大きな喜びの中にいた。それは一人の少女を救った喜びではなく、二人の人間の心を過不足無く繋げられたという、通訳者の法悦だった。

水のようになれたと思う。空気のようになれたと思う。

-後略-

by 『バビロン』小説3巻より

少女を救ったのはアメリカ大統領アレックスの言葉。
通訳であるサム・エドワーズは、少女とアレックスの”心を過不足なく繋げた”ことに喜びを感じているのです

さすが通訳の仕事に全てをかけているだけあります。

原) 曲世が入り込んでいたのは英国の通訳!?

アニメのハーディ同様、サムにも曲世の魔の手が及びます・・・
FBI捜査官と違い、サムは曲世を力技で止めるようなタイプではない。
殺さなくても、外部へ追いやれば済むことなのに・・・

なぜ、自殺させるのか?
理由らしきことが曲世の口から語られるので、後ほど。

通訳のサムは達成感を感じ、誰かと分かち合いたいと思っていたそのとき──

自分は今日のために通訳者になったとすら思えた。同じ感覚をもつだろう通訳者と、この喜びを分かち合いたい気分だった。

そこでちょうど通訳ブースの扉が開いた。サムは気付いて笑顔を向けた。入ってきたのは英国・ロウ首相に帯同していた同時通訳者だった

by 『バビロン』小説3巻より

これが、サムが”生きていた”時の最後のシーン。

曲世は通訳の中に紛れ込んでいたのは後ほど語られます。
では、紛れ込んでいたのはイギリスの通訳だったのか?

はっきりと示されているわけではなく、根拠となるのはこの一文のみ。

ですが、考えてみれば当然かもしれません。

自殺法導入を宣言した最後の都市は、イギリスのサウサンプトン

曲世の能力で仕込んでいた可能性もあるので断定はできませんが、順番に洗脳していったのであれば、最後はイギリス。

イギリスが自殺法導入を表明したのはサミットの4日前。

日程から言って、イギリスの同時通訳、少なくともイギリスのスタッフとして入ってくる可能性は充分考えられたのです。
ただその考えは、サミット会場に曲世が来ることに気付かなければ考えすら及ばない。

この時の注目は新域自殺サミットであり、まさかサミット会場を”直接”襲うなんてことは想定してなかったのです。

これまた後から分かる、齋の周到さ。
いえ、 野崎まど先生の巧みさですね。

原) 正崎は警備と連携できなかった

バビロン 12話
TVアニメ『バビロン』公式HP「STORY第12話」より引用

アレックスが曲世の声を聞き影響下に入った後、大統領の身柄確保の指示が出される。

アニメ観賞時、違和感があったのは、なぜ正崎は単独で動き、屋上へ行ったのか
複数で行動していれば、証言者がいただろうに・・・

原作を読んで理由が分かりました。

特別捜査官としてチームに編成されていれば警備と連携することができた。だが今の正崎はアレックスに召喚されただけの身で、サミット警備の一員には加わっていない。自分で向かうしか手段がない。

by 『バビロン』小説3巻より

今回正崎がサミット会場にいられたのは、齋スペシャリストとしてのアドバイザー的立場と自殺法問題に関してヒントを持っていそうだと、アレックスが考えたから。

アレックスの意思で、正崎が個人として呼ばれていたのです。

だから、警備と連携を取ることができず、テイラー国務長官を介して指示を出し、正崎自身は一人で行動するしかなかったのです。

違和感は解けてスッキリしました。
悔やまれる感情は残りますが(苦笑)。

原) テイラーは飛び降りの対策をしていた

アニメ観賞時、違和感があったのは屋上から飛び降りようとしたアレックスに対して何も対策しようとしなかったこと。

原作では対策を取ってました。

テイラー国務長官はアレックスの姿を見つける前に、飛び降りる可能性を想定しています。
しかも、通訳達が自殺をした事実を知る前に、対策に動いてます。

移民博物館のフロアは3階まであり、大型の建物なので一つの階が高い。3階の窓は十数メートルというところだろう。普通に飛び降りれば死ぬか生きるかという高さ、打ち所が悪ければ助からない。だがこの高さなら100%ではない。下に人数を集め、受け止める体制が作れれば生存は十分可能だ。

by 『バビロン』小説3巻より

アニメでは屋上でしたが、原作は3階窓です。
屋上のことは一切触れてないので、屋上へは行けないのでしょう。

それにしても、アレックスの姿を見つける前に対策を打つのは流石です。

ア) 正崎がアレックスを撃つのはアニメオリジナル

アニメでは、屋上に上がり飛び降りようとするアレックスに、正崎のみがたどり着きます。
このシーンを含め、以降は、Cパートも含め全てアニメオリジナルです。

原作では、正崎は屋上(3階)にすら行ってません

正崎は、少女との会話が終わった時にアレックスと同室にいましたが、それ以降はアレックスと会ってません

アレックスのことは警備に任せ、正崎は一人曲世を追跡したのです。

では、原作のアレックスは?
正崎は曲世を見つけることができたのか?

そして曲世は?

以降は、全て原作の展開です。

原) アレックスは3階の窓を割り、外へ出る・・・

原作では、アレックスは屋上ではなく3階の窓を割り、外へ出て、壁の縁を横に移動していきます。

テイラー国務長官は、アレックスの下に人を集め、なんとか受け止め、命だけは救おうとつとめます。

報道陣が一斉にカメラを向けるので、それを制止しつつスタッフの位置を調整する。

が、その努力も虚しく・・・

なぜ助けられなかったのか、ぜひ原作をご覧ください。

一つ言えるのは、アレックスは曲世の力で自殺をしたいと考えている。
だから、下に人がいるのを見て、確実に死ねる所を選んだのです。

ということは、アニメのように屋上に登り、正崎が時間稼ぎをして、下で受け止める準備をしていたとしても、なんらか別の手段を取ったのでしょう。

それだけ、《悪》=「自殺」したい欲求に強烈に支配されていたのです。
一度支配されると逃れられないのです・・・

原) 正崎は甘いと考えを改める

正崎は一人曲世を追いかけ、サミット会場の島を出る。
既に島は厳戒態勢で封鎖されていたが、ブラッドハムFBI長官に連絡を取り、抜け出す。

そのときに、アレックスが自殺を図ったことを聞く──

アレックスとの会話で曲世を殺さずに解決する方法を考え続けると誓った正崎。
#詳細は前回原作レビュー をどうぞ
だが、やはりそれは甘かったと反省する。

(甘かった)
正崎は心の中で言った。繰り返し言った。
俺が甘かった

捨てろ全部捨てろ家族を捨てろ迷いを、躊躇を、考えを捨てろ人間らしさなどすべて捨てろ

相手は
人間じゃない

by 『バビロン』小説3巻より

アレックスが自殺に追い込まれたのは決して正崎のせいではない。

が、唯一、曲世に最も近づき多くの仲間を殺された男。
その男は曲世に対抗するには殺すしかないと確信していた。

にも関わらず、手をこまねいている内に、アメリカ合衆国大統領を自殺させてしまったのだ。

半信半疑だったとは言え、曲世の存在に注意を払っていたアメリカですら、簡単に曲世を近づけてしまった。
そして、まんまと蛮行を許してしまった。

今回も、曲世を法で捕らえることはできないだろう。

曲世の姿が近くにある、今、この時、これ以上犠牲を出さないためにも、ひいては家族を守るためにも、曲世を抹殺しなくてはならないのだ。

だから正崎は、アレックスを追わず、すぐさま曲世を追ったのです。

原) 曲世対策は万全?

正崎が曲世に追いつく。
正崎は曲世対策をしていました。

走りながら懐に手を差し込む。距離が近づく。遠過ぎれば当たらない。だが近づけば”話しかけられてしまう”見越してすでに拳銃用の耳栓を詰めている。今はほとんど何も聞こえない。これで、これで。

女の姿がはっきりと見えてきた。何も聞こえない。静かだった。

正崎善は、
銃を抜いた。

「曲世えぇ!!!」

by 『バビロン』小説3巻より

正崎は、銃を使ってどのようにして曲世を始末するのか、既に考え準備していた様子。

耳栓をして曲世の声が聞こえないように。
曲世と話す気もなく、近づくこともせず、すぐさま撃つ。

完璧なはずだった。
油断もせず、躊躇もせず、心構えもできていた。

なのに・・・

原) 曲世愛 新能力発動!?

正崎の作戦は破られる、というか実行すらされません。
ここまできて!?

なんだか不思議なことが起きてます。
原作を読んでも何が起きたのか最初よく分かりませんでした。

肝心要な部分なので引用は控えます。
ぜひ原作をお読みください。

ただ、正崎の無念さだけお伝えしましょう。

正崎の心に絶望が広がっていく。

触れてはいけない
聞いてもいけない
見てもいけない

そんなもの。
そんなものを、どうしろと。

by 『バビロン』小説3巻より

既に人間の能力を超えていますが、もはや手がつけられない状態。

せめて、この情報を、FBIに伝えて欲しいものですが・・・

原) 曲世のいたぶり・・・

動けなくなった正崎を目の前にして、曲世は彼をいたぶります。

曲世は、アレックスが自殺し、世界中に放送されたことを告げる。
そして、その映像をスマホで見せる・・・

「(前略)ねえ、正崎さん。アメリカ合衆国の大統領ってとても重要な役職でしょう?影響力があって、大きな責任があって・・・。みんなに大切に守られていて、ご本人も自身の大切さをよく理解されている世界の要人、でしょう?だから正崎さん、こう思いません?」

曲世は上から正崎を見た。

アメリカ合衆国の大統領が自殺していいなら、もう世界の誰だって自殺していいって

by 『バビロン』小説3巻より

アニメでは、間違ったメッセージを出さないために、アレックスが言っていたセリフ。

原作では、役目を果たした曲世が、その目的を語るのです。
なんとも屈辱的なシーン。
正崎は曲世に一矢報いることもできないのか・・・

原) 曲世が語る悪人

動けない正崎に、得意気に語る曲世。

どうやら、アレックスと話し、彼が《善》の意味にたどり着き、同時に《悪》の意味を知ったことに”喜んでいる”ようだ。

2巻(アニメ7話)のラストで言っていたように「悪とは何かを知って欲しい」。
アレックスが悪の意味を知ってくれたのが、そんなに嬉しいことなのか?

そして曲世は恐ろしいことを語り出す──

私、《終わる》のが好きなんです

それは最悪の告白だった。

「なんでもいいの。本当になんでも。生き物でも。生きてない物でも、形のあるものも、ないものも、なんでも。終わるのが好きなの。何かが終わるのが好きなの。正崎さん、悪いって《終わる》ことよ。貴方は善人、《続く》が好きな人。私は悪人、《終わる》が好きな人」
それだけ、と曲世愛は言った。

by 『バビロン』小説3巻より

だから、曲世は人を死に追いやるのです。
通訳サムを自殺させたのも、アレックスと通話するのに邪魔だったからではない。
人を《終わらせる》のが好きなだけ。

“たったそれだけ”

では、曲世の望みは世界が終わって欲しいのか?
だから齋を手伝い、自殺法導入を手助けした?

自殺を促進するために、先進7ヵ国の都市に自殺法導入を仕掛け、アメリカ大統領を自殺させた。

最悪ですね・・・

原) 物語の結末は・・・

正崎も自殺させられるのかと思いきや、正崎は生かされる。
それよりも、曲世は正崎にもっと悪いことを知って欲しいと言う。

アニメと違い、原作では、曲世は瀬黒の件以降、正崎に連絡を取ってません。

が、アメリカニューヨークで再び出会い、正崎に世紀の瞬間を見てもらえた。
本気かどうかは分かりませんが、曲世は正崎に運命を感じたようだ。

ただそこで、曲世はもっと悪いことはないか考える──

正崎が胸ポケットに入れていた一枚の写真を抜き取り、それを見て、曲世は微笑む。

これで、3巻終了。

おわりに (原作小説『バビロン』3巻とは)

3巻終了。
アニメでは最終12話に相当。

原作も続きが出るのか予定がはっきりしてないので、現時点これが最後。

アニメとは違う結末で、2巻(アニメ7話)ラストほどの衝撃と狂気はなかったですが、それでも充分衝撃的なラスト。

少し変わった大統領でしたが、それだけに常識にとらわれず、齋や曲世に対抗できる存在なのかと思いきや・・・
曲世の声を聞くと、一溜まりもなかった・・・

一体、こんな敵を相手にどう対応すれば良いのか。
結局、齋や曲世の目的は何なのか。

アニメとは違い、原作ではアメリカ合衆国大統領の自殺が大々的に報じられた。

これで、アメリカ大統領自身が自殺を推奨するメッセージを発したことになる。

世界は大騒ぎするだろう。
自殺に関して様々な議論がされるだろう。

その先に一体、何があるのか。
続きがあるなら、早く読みたいですね。

以上、『バビロン』原作小説3巻のレビューでした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。

アニメは完結させたので続編は難しいでしょう。
が、原作4巻が出たらレビュー書きたいと思います。

ではでは。

きょうのひとこと

もう狙撃かピンポイント爆撃しか・・・

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